第四百三十八話:僕、フクちゃん、ファスのお宝紹介
「じゃあ、物も少ないし僕からアイテムを紹介するよ」
アイテムボックスからダンジョントレジャーを取り出す。
「一つはさっきのダンベルだな。込める魔力量で重さがかわるやつ。正しい名前は【沈み幣】っていうらしいけどな」
「ナルミが言うには、昔は水門の開け閉めや城の昇降機に使っていたものらしいですね。そもそもの用途は不明ですが、古代では何かの儀式に使っていたという文献もあるらしいです」
敷物の上に置いたダンベルをファスが持ち上げる。
「あぁ、なるほど。滑車とかを使えば必要時に魔力で重りの重量を増して持ち上げられるもんね。でも、儀式ってなんだろ?」
「儀式については不明ですが。重石としての用途は実際は魔力の操作が難しく、限られたエルフにしか使えなかったことから錬金術で同様のことができるようになってからは宝物庫でホコリを被っていたようですね」
「こんな神アイテムなのにな」
夢が広がりまくりです。
「エルフがこれを使って体を鍛えるのは想像できねぇべ……」
次に取り上げたのは灰色の薄手の毛布である。これもナルミのおすすめだ。
「【快眠羊の毛布】これを被って寝ると、睡眠の質が上がるらしい。しかも暑いときは涼しくなって、寒いときは温かくなるってダンジョントレジャーだ」
「「おぉ」」
これには他のメンバー達も感心しているようだ。
「これ、いい」
フクちゃんも気に入ったようで、毛布を体に巻き付けている。普段からファスのローブの中にいるし、落ち着くのかもしれない。
「……大きさ的に二人分が限界ですね」
「いつも通り順番でいいんじゃない?」
「色々はかどるべ」
ファス達は何かヒソヒソ話し合っている。何かあるのだろうか?
「ナルミは他にも色々勧めてくれたけど、僕はこんな感じかな。このダンベルだけでもめっちゃ嬉しいよ」
「次、ボク」
フクちゃんが手を上げる。
「フクちゃんが頼んだものは皆わかってるけどな。一体何に使うんだ?」
宝物庫でも一際目立つ物を注文していたし、一番大きいアイテムボックスになんとか入れたからだ。
というわけで、アイテムボックスからフクちゃんが注文したものを取り出す。敷物に収まらず、練兵場の真ん中に出すことになった。
「おさかなっ!」
フクちゃんが選んだのはダンジョントレジャーではなく、宝物庫に飾られていたマグロの数倍はあるであろう巨魚の剥製だった。虹色の鱗に肉食獣のような歯が生えており、鰭はまるで鋭い剣のようだ。複数の目が付いているが流石にそれは剥製としての作り物のようだ。
「【月喰魚】の剥製ですね。雨期に現れた魔王種クラスと言われる魚の魔物です。鱗や鰭、そして骨が丈夫だったために装備の素材として取っていたものだそうですね。フクちゃんはこれをどうするのですか?」
「きれい! たべる!」
「いや、これは肉っぽい所は作り物だべ……食べれねぇだ。んー、鱗を油で揚げればあるいは……いや、加工されてっからなぁ」
トアは真面目に調理を考えているが、腐らない様に加工されているそれは食べれる代物ではない。
「ダイジョブ。生きてるのカナエ、回復」
「回復? やってみるけど【星涙癒光】」
フクちゃんに促されるままに叶さんが回復術を剥製にかけると……。
「「「!!??」」」
ビキビキ音を立てて鱗が動きぬるぬると光沢を放ちながら動き始め、作りものの部分を浸蝕して骨に鱗が直接張り付いていく。ガラスの目が落ちて何もない眼窩がこっちへ向いた。
「ウロコが本体っ!」
フクちゃんが無邪気な笑みを浮かべる。
「なんだそりゃ!」
「仮死状態だったのですか!?」
「いただきますっ!」
僕が教えた挨拶をして、次の瞬間には巨蜘蛛の姿となったフクちゃんが飛び掛かった。消化液をまき散らしながら魚を捕食している。月喰魚は暴れまわっているが、生き返ったばかりであることにくわえ、流石に地上ではフクちゃんから逃げられない。というか仮死から目覚めてすぐに捕食されることに関しては、若干同情しなくもないほどだ。
「加勢はいらないか……」
「流石魔王種クラスと言ったところでしょうか。剥製の姿からでも生き返れるのですね……トレントのバスカトーレンといい、魔王種クラスの魔物は死体が残っていれば特殊な条件下で復活することがあるのかもしれません」
「び、びっくりしたぁ」
「今なら食べられるかもしれねぇな」
鱗を溶かしながら骨ごと平らげたフクちゃんが少女の姿に戻る。
「けぷっ……ごちそうさま」
「フクちゃん。あんまり変なものを食べるとお腹を壊すぞ」
「はーい」
元気に返事をするフクちゃんが可愛いからまぁいいか。
「ええと、で、では私が最後ですね。フクちゃんの後だと変な感じですが……」
ファスがアイテムボックスに手を入れる。
「まずは叶も取り出していた【身代わりの護符】ですね。鍛錬時には外す必要がありますが、非常に有用な装備です」
「うんうん、後衛職には必須だよね」
「次に【盗賊王の鍵束】ですね」
次にファスがアイテムボックスから取り出したのはキーリングに通された一つの鍵だった。
「鍵束っていうわりには束じゃないな」
「このアイテムはこの一つの鍵を鍵穴に当てるとその鍵穴にあった鍵をキーリングに複製するようです。キーリングに一定数鍵束ができるまで複製を作れるという代物ですね。時間が経つと古い複製から順に消えていくそうです」
「えっ、すごっ。でもなんでファスさんはこれを選んだの? ちょっと意外だよ。イメージと違うって感じがするね」
叶さんの問いかけを受けてファスはそっと視線を横にずらす。
「薄々思っていたことなのですが……私達は敵地に侵入することが多いので役に立つかと……」
「「「あぁ……」」」
ファスの言葉に皆が納得する。確かに今回の冒険でも敵の砦に忍び込んだり、屋敷に強襲したりとそっち関係の行動が多かった。
今後もそんなことがないとは言い切れないので最初から準備した方がよいとファスは考えたのだろう。おかしいな僕達は真っ当な冒険者パーティーのはずなのに(震え声)。
「ちなみに、この鍵では当然結界などは突破できません。しかし、ご主人様は結界に干渉して破壊できているので二重に守られている場所や宝箱でも開けられるのでそう言った意味でも有用かと思って取りました」
「なるほど。他には何かあるのか? 色々装備とかも棚にはあったけど」
「装備はやはりしっくりくるものが少なかったですね。ダンジョントレジャーにこだわる必要はなく、今の装備を城の職人に強化してもらった方が良いと思います」
「僕も同じかな。壊れる前提だし」
「旦那様はいつもボロボロになるかんな」
「じゃあ、これで取り出したお宝は以上かな?」
「……いえ、あの、もう一つあって……」
ファスがモジモジしながら言いづらそうにこっちを見ている。
「どうした?」
「……これです」
消え入りそうな声と共に差し出されたのは綺麗な櫛だった。月を象った金の意匠がついている。
「その……髪の艶を増してくれる【月夜の櫛】というアイテムです。……たまにでいいので、ご主人様に髪を梳いてもらいたいです」
耳の先まで真っ赤にしながら上目遣いでそう言うファスは反則的に可愛い。髪に対して特別な想いのあるファスからの言葉は真摯で強い感情が込められていた。思わずファスを抱きしめる。
「うん、やり方よくわからないから教えてくれ」
「はい……嬉しいです」
そして、そんな僕等をジト目で見る他のメンバー達。
「……私、もう一回宝物庫を見てくるよ」
「オラもまだ探してみるだ」
「ボクも」
「……別に皆でこの櫛を使っても良いですよ」
僕から体を離したファスがそう言うが、叶さんは首を横に振る。
「自分の櫛で真也君に手入れしてもらいたいんだよ。ナルミさんを探してくるっ!!」
「オラは尻尾とか、手入れして欲しいなぁって……だったら、櫛よりブラシの方がいいべ」
「マスターにナデナデしてもらう」
こうして再びナルミに宝物庫を案内させた女性陣は無事、それぞれの用途にあった櫛やブラシを手に入れたのだった。
ここまで書いておきたかったので連投しました。
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