第四百三十五話:神アイテムを手に入れた
木製の足場を登って所せましと並べられている宝物を皆と見て回る。壁かと思ったらその後ろにさらに棚が並べられていた。
「うわぁ、奥にもあんのか。ダンジョンみたいだな」
合わせ鏡でも見ているように棚と足場が続いている。明らかに城の外観に収まる広さではない。
「拡張の魔術……というより、この空間自体が独特な魔力を帯びています。実際に大きな空間ですが、幻の部分もありますね」
「その通りだ。この宝物庫を守るダンジョントレジャー【蟲天廓】がこの場所を守っている。部屋を飛ぶ蝶がいるだろ? あれの本体は蝶でなくて部屋の中央にある噴水だ。蝶は噴水から湧き出る蜜を吸って宝物庫に幻を振りまくというダンジョントレジャーだな。正規の方法以外で侵入者が入ると攻撃してくるぞ」
宝物庫の天井を優雅に飛ぶ蝶をナルミが指さす。なるほど、あれ自体が宝であり守り神ってわけか。
「スケールが大きな話だね。で、どこから見て行こうか。もう、待ちきれないよっ!」
叶さんが目をキラキラさせている。ナルミは水晶の書庫から
「持って帰っていいトレジャーがある棚を案内してやる。といっても一日で見れる量じゃないがな」
足場を登って宝物庫を散策していく。大雑把に同じようなものが並べられているようだ。
ナルミが立ち止まる。
「ここの階の壁の棚はどれでも持って帰っていいぞ。冒険者なら役に立つ者があるだろ」
「これは……装備品か。キラッキラだな」
棚というよりは展示のようだ。装飾された剣や槍、弓矢なども置かれている。とりあえず、順番に見て行こうか。
「どれもダンジョントレジャーを職人が加工したものだ。これなんかどうだ? 衝撃を与えると相手に爆風を返す盾だ」
「動きずらい」
「魔物相手には視界が煙で妨げられるのがよくないですね。私は【精霊眼】がありますが、それでも連携がしずらくなります」
「……装備するだけで【狙撃】【角撃ち】のスキルが発現する弓矢だ。これは国宝に指定されているな」
「弓矢使える人が私達のパーティーにいないよね。遠距離ならファスの魔術とかトアさんの斧があるし」
「次は、巨人族が槌で叩いても一ミリも凹まない鎧だ」
「動きづらそうですし、ご主人様の体の方が丈夫です」
「いや、流石に金属鎧よりは弱いから」
「マスターの方がツヨイ」
「マジ?」
え? 今の僕の体って金属より丈夫なの? 確かに最近体よりも先に軽鎧の方が壊れることが多い気はしてたけど。自身の異常性に震えているがナルミは気にせず装備を紹介している。
「装備するだけで魔力量が増えるサークレットだな。これも貴重なものだぞ」
「……装備しましたが大した上昇量ではありませんね」
「元の魔力が多すぎて固定値の上昇だと効果が低いみたい」
「グッ、地面を撃つと木々を生やす槌っ! 風を起こして敵を吹き飛ばす鉄扇っ!」
なんか向きになって武器を取り出してくるが、どれもパッとしない。
「そもそも、僕は武器使えないぞ」
「オラは旦那様にもらった斧があるだ」
「ボクもいらない」
「武器に関しては私達のパーティーはほとんど必要としませんね。本来武器が必要な前衛であるご主人様は武器を装備できませんし。杖に関しても私は無い方がいいです。ワンドがあれば叶は使えるのでは?」
「それはそうだけど……砂漠で作ってもらった杖が凄く馴染んでいて他のワンドはしっくりこないかな。そもそもここの装備は同じ【神官】といっても精霊信仰のドルイドっぽい意匠だし、星の女神様の装備じゃないと違和感あるかも」
ファスの提案に叶さんは首を振る。確かに刀とサーベルが違うように、武器としての性質が似ていても勝手が違うと使いづらいよな。結局、前衛組は武器はいらないし、後衛組も不必要なようだ。
「……そこいらの冒険者がみたら垂涎の装備なんだがな。防具もあるが……そもそも貴様等は魔王種の素材を使った装備だからな。下手なダンジョントレジャーよりも性能が高い」
「フクちゃんが作ってくれたインナーもわりとチートアイテムだからね。【聖糸】のスキルで作っているし、しっかりと編み込まれててこれだけでもかなりの防御力があるのよね」
「エッヘン」
叶さんの言葉にフクちゃんが胸を張る。うん、汚れてもすぐに綺麗になるしちょっとした刃物なら防ぐほど強度も強いからな。実際すごく便利なのだ。フクちゃん……恐ろしい子。
「お前等に普通の冒険者にとっての褒美は意味が無いな。武器以外のものを見て回るか」
というわけで、各々一緒になってワイワイ騒ぎながら他のダンジョントレジャーも見ていく。
途中でトアが棚に置かれていた古びた鍋を見つけた。
「ん? これ鍋だべか? 分厚くて丈夫そうだし、なんていうダンジョントレジャーだべ?」
トアが取り出したのは古びた鍋で、持ち手が何かの動物の角でできているようだ。平たい蓋もセットになっている。
「『秤鍋』だな。見かけよりも多くの食材を入れることができる鍋だ。【防腐】【拡張】【保温】の付与がされていてかつては貴重なダンジョントレジャーだったが、似た性能のものを錬金術で作れるようになってからは価値が薄れている。正直、ダンジョントレジャーとしてはハズレだ」
「そんでも便利なもんだべ。包丁は自前のもんがあるし、この鍋欲しいだよ。この古びた感じが良い味だしているだ」
「ようやく決まった褒美が古びた鍋か……レイトが聞いたら頭を抱えそうだな」
次に目に留まったのはスクロールの束だ。
「スキルスクロールですね。有用なものがあれば習得したいですが、これは利用してもいいのですか?」
「基本的にはこの棚に希少なスキルはないはずだ。ここにある程度のスクロールなら使っても問題はないだろう」
「マジっ!? 【空】系の技あるかな? もしくは派手な技」
「……派手な技諦めてなかったんだね真也君」
遠距離のスキルがあるなら絶対に欲しい。特に砂漠でヒットさんが使っていた【拳士】の遠距離スキルである【空打】があれば戦闘の幅がかなり広がる。全員でスクロールを広げてナルミが確認していくがどれも魔術士や狩人用のスキルばかりのようで【拳士】のスキルは無かった。
「……残念。でも【隠密】とかは欲しいな。ナルミ、他に有用なスキルはあったりするのか?」
「狩人用の【隠密】【重撃】【速射】【角撃ち】【追跡】、他には魔法剣士用の【魔刃】系のスキルだな。剣を持てないシンヤは使えん。使えそうなのは狩人のスキルばかりだな」
「魔術のスキルスクロールはないのか?」
それがあればファスならすぐに物にするだろう。
「魔術は基本的にスキルスクロールは存在しないぞ。その代わり魔術は詠唱であったり、魔力について学ぶことでスキルを習得できることがある。興味があるなら城にいる魔術士にでも聞いてみろ。属性が合えば、何らかの師事はしてくれるだろう」
「なるほど、滞在中にお話を聞くのは良いかもしれませんね。基本的に我流でしたから色々参考になりそうです」
「私は教会で他の【神官】から聖句を学んだり、女神様へお祈りをすることで【星魔術】の基礎を習得してるよ。他の魔術系の【クラス】も基礎は貴族の下で学んで習得しているみたい。ただ、転移者は特別な【スキル】が多いから結局ある程度から先は戦士職と同じように個人の鍛錬になっちゃうと思う」
「へぇ、そういうシステムだったんだ」
適当にレベルを上げれば魔術が使えるようになるのかと思ってた。多分、ファスが規格外過ぎるんだろう。
「ついでに説明しておくが、スキルスクロールによる【スキル】の習得は失敗することもあるからな。あんまり当てにしないことだ」
「オラが【飛斧】を習得できたのは運がよかったんだべなぁ」
トアの【飛斧】には随分世話になったからな。習得できて本当に良かった。スキルスクロールに関しては役に立ちそうな【隠密】と【追跡】のスクロールを数枚持っていくことにした。実際、これだけでも白金貨数枚の価値があるわけで、金銭感覚がバグってくるな。
一通り見て回ったが、僕の方はいまいちピンとくるものがない。結構歩いたので休憩をすることにした。乾燥した果物を齧りつつ、座って休憩をするとふと壁の下段に置かれている物が目に入った。
「え? ナルミ、このアイテムなんだけれど……」
近寄ってみると間違いない、元の世界で似た形のものを何度も目にしてきた。手に取ってナルミに見せる。
「なんだそれは? ちょっと待ってろ、今調べる……あぁ、ハズレだな。役に立たない物だ。正直宝物庫に置くような代物ではないが、献上品だからな。効果は――」
その説明を聞いた後に僕は手に持ったそれを掲げた。ファスが目を輝かせる。
「ご主人様がいつも欲しいと言っていたアイテムです!」
「しかもちゃんと二つセットである! 神アイテムきたっ! ナルミ、僕はこれを持って帰るぞ!」
「は? お前、こんなものが欲しいのか? 『魔力を注ぐことで重たくなる重り』なんぞ何に使う?」
ナルミは怪訝な顔をするが、これこそは日々の鍛錬に欠かせない神のアイテム。
「筋トレに決まってるだろ!」
そう『ダンベル』だった。
真也君は筋トレグッズを手に入れた。
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします!!
ただいま、コロナEXでコミカライズを公開中です。よろしくお願いします!!
https://to-corona-ex.com/comics/183646580850820
ブックマーク&評価ありがとうございます。ここまで読んでいただけたことが嬉しいです。
感想&ご指摘いつも助かっています。一言でもいただけるとモチベーションがあがります。






