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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第三章:交易の町編【料理人と恩師】

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第四十三話:草原へ向けて出発

「ほ、本当によかっただか? こんな高価な包丁……」


 金物屋を出てトアが恐る恐る質問してきた。紫の布にくるまれているのは用途に合わせた包丁が大小五本入っている。

 どれも柔らかな波打つような刃紋が入っており、美しい仕上がりだった。


「欲しかったんだろ? 店に入ってすぐにその包丁の前で釘付けだったもんな」

「あの様子を見れば他の物を買うなんてできませんね」

(ヨカッタネ、トア)

「一生物だべ、大事に使うだ」


 セットで金貨が二枚だったが多分店主はかなり勉強してくれたと思う。なんせトアときたら最新のテレビゲームを見る子供みたいに包丁の前に張り付いていたからな。

 あの様子を見たら売る方も買って欲しいと思ってしまうだろう。

 

 ギルドを出た後僕らは金物屋へ行って、トアの包丁を始めとして鍋やサバイバルに使いやすそうなナイフを全員分買った。

 他にも市場を巡り、木でできた丈夫そうなお椀や腐敗防止の魔術がかけられた水筒、ロープ、コンパス、丈夫そうなリュックなど冒険者として必要であるだろうものを一通り買った。

 この買い物に関してはトアがいてくれて本当に助かった。僕もファスも世間の常識に疎いので必要なものがわからなかったからだ。


「おっちゃん、この発火石端が欠けてるだ、銀貨一枚と銅貨一枚なら買うだよ」

「馬鹿言うな、キチンと錬金術師の保証書がついてる発火石だぞ。銀貨三枚は適正だろうが」

「よく言うだよ、明らかに色の悪い石もあるだ。銀貨二枚」

「……わかったよ顔布の嬢ちゃん。さっさと持っていきな」

「ありがとうだ。またここで買うだよ」


 今も出店の商人に値切り交渉をしてくれている。というか発火石ってなんだ。火打石みたいなもんか?


「発火石は魔力を流すと発熱する石です。乾いた草木を組んでから発火石を使って火を点けるのが一般的です」


 察してくれたのかファスの説明がはいる。便利なものがあるもんだ。

 ともかく、トアのおかげで買い物は終わったし。いよいよ肉に向かって、じゃなかったポキポキ草を取りに行こうとすると。市場の一角に傘立てに置かれた傘のように杖がさしてあるのが目に入った。


「そういや、ファスは杖とかいらないのか?」


 魔術師の定番だと思うのだが。


「別に無くても困ってないですから、でも興味はありますね」

「じゃあ見てみようか」

「そうですね、試しに一番安いものを買ってみてどれくらい違うのか見てみてもよさそうです」

「……というか魔術師って杖や指輪とかが無いと魔法が使えないと思っていたべ」


 まぁファスはいろいろ特殊っぽいからなぁ。

 ファスは雑に並べられている杖を握って調べているが、どうやらこの店は単純に歩行の補助としてとか物理的に殴りつける意味でのスタッフがメインで魔術師用の装備って感じじゃなさそうだ。


 ちなみにファスに聞いたところ、杖はスタッフ(大体150㎝以上の長いもの錫杖など)、ロッド(60㎝から100㎝ほど片手剣くらいの長さ)、ワンド(大体30㎝くらい指揮棒くらいの長さ)にざっくりと分けられるらしい。

 

「これが良さそうですね、僅かですが魔力が通っていますし丈夫そうです」


 ファスが選んだのはファスの身長より少し短い長さのスタッフだった。真っすぐかつ細身だが両端に石突が付いており丈夫そうだ。


「良さそうだな、武器にもなりそうだ。今度杖術を教えるよ、って魔術師には必要ないか」

「いえ、いつも魔力が使えるとも限りませんし、是非教えて欲しいです」

「オラも戦い方を教えて欲しいだ、戦闘職ではないけど、獣人だからきっと役に立てるべ」


 僕は無手の方が得意だったけど、爺ちゃんは杖術が好きでよく杖捕りの技を練習させられたもんだ。


「トアはどんな武器を使うんだ?」

「昔戦闘奴隷として訓練させられた時はナイフとか鉤爪とか片手で扱う武器が多かったなぁ」

「それでしたら、ダンジョンで拾った手斧とかはどうでしょう?」


 そういやそんなん拾ったな。あれなら片手で扱えるし二本あるから二刀流(二斧流?)とかできそうだ。

 というかそれならスキルスクロールもトアに見せてしまっていいのではないだろうか? なんのスキルのスクロールか鑑定して結果によって武器を決めてもいいし。


「ファス、ダンジョンで拾ったスクロールを鑑定してスキルによってはトアに読ませた方がいいかなと思うんだけど」

「そうですね、どちらにしても鑑定は必要だと思います。しかしスクロールは白金貨で取引されるほどに高価なものですよ、使ってしまってよろしいのですか?」

「そ、そうだべ旦那様。というか使うにしても旦那様が使うべきだべ」

「あれ? ファスから聞いてないのか、僕武器装備できないから剣とか斧のスキルが出ても意味ないんだよ」

「あっそうだったべな、ごめんなさいだべ」


 ズボンからでた尻尾がシュンと力を無くす。わかりやすいなー。


「気にすることないぞ、最初はどうかと思ったけど今のクラスは嫌いじゃないんだ」

「私の呪いやトアの傷も治してくれたクラスですから」

「そうだな、旦那様のクラスはすごいだ」


 よせやい照れるじゃないか、実際【愚道者】はチートクラスというほどでもないけどかなり有用だと思う。そんな話をしながら道具屋に入る。

 店に入ると、ターバンを巻いたおっちゃんが椅子に気だるそうに座っていた。


「すみません、スキルスクロールの鑑定をお願いしたいんですけど」

「スキルスクロール? そうそうあるもんじゃないぞ、おおかた偽物でも買わされたんだろう」

 

 ダンジョントレジャーなんですと、説明するのも面倒くさいな。散々自覚させられたけど今の僕らの装備ひどいからな。


「あー、まぁそれだとしても鑑定したらわかるでしょ?」

「鑑定料は銀貨三枚だぞ、ムダ金だ。やめとけ」

「そこをなんとか、お金は払いますから」

「ったく後悔しても知らねぇぞ」


 そう言って店の奥から鑑定紙を持ってきた。アイテムボックス(見かけただの背負い袋)からスクロールを取り出し鑑定してもらう。


「結果がでたな……驚いた!! 本物か、いったいどこでこんなものを……」


 外れたと思っていた宝くじが当たりだった時のおっさんのリアクションみたいだな。

 さてどんなスキルかな?


「なんのスキルですか?」

「片手斧の【飛斧】だな、あまり聞かないスキルだ。高値で売れるぞ」


 よしっ! これでトアに戦闘のスキルを持たせれるな。まぁ斧と一緒に出てきたスクロールだし関係あるとは思っていたが。

 

「ありがとうございます。お金置いときますね」

「待て待て、売りにださないのか? そうだなすぐには用意できないが白金貨二枚はだすぞ」

「いえ、使おうと思いますので」

「そうか、まぁ仕方ないな、いや、他のスクロールと交換ならどうだ? 例えば……」

「いえ、結構です。それじゃあ」

「ちょ、待ってくれ!!」


 食い下がる店主をあしらい店を後にする。


「やったな、トア。さっそく使おう。どうやったら使えるんだ?」

「スキルを覚えたいものがスクロールを開けばよいはずです」


 ファスの説明が入ったのでトアにスクロールを渡す。


「なんかもう遠慮できる空気じゃないだ。で、でも心の準備があるだ。ここじゃ人もいるし草原へ行く道筋がてら見たいだ」

「別に僕は構わないよ。そうだ、斧を下げるベルトがいるな」

(サッキミタヨ)

「ありましたね、トアに似合うと思います」

「なんていうかもう、お金かけすぎだべ」


 というわけで、もはや気疲れしているトアにゴツイ革のベルトを買う。手斧を下げることができ、留め金を外してすぐに取り出せる作りだ。高身長のトアによく似あっている。


 買い物をしたせいで時間は昼を回ってしまった。今から草原に行くと夜になるな。

 大丈夫なんだろうか? パーティに確認してみると。


「そもそも、狩りをするなら数日かけるのは当たり前だべ」

「アイテムボックスがあるので、ポキポキ草も悪くなりませんしね」


 と返された。日帰りじゃないのは確定だったのか。

 いよいよ、町をでて草原を目指すことにした。


「杖があると歩きやすいですね」

「しばらく歩くと、水飲み場があるだ。そこで休憩するべ。そこなら人も少ないからゆっくりスクロールも見れるべな」

「そこまで歩きか、それにしてもリュックが軽いな。そうだ二人のリュックを持たせてくれ。そうすればよい鍛錬に……」

「ご主人様、奴隷の荷物を持つ主人がどこにいるんですか」

「薄々思っていたけれど旦那様は自覚に欠けるべ」

「時間がありますし、この世界の常識というものを教えますので勉強してください。せめて人前ではそういう態度をとってもらわないとご主人様が軽んじられます」

「……勘弁してくれ」


 そこからまる二時間ほど主人としての嗜みをレクチャーされた。ざっくりした感想はすごい亭主関白な感じであまり好きじゃないなぁ。

 歩きながら寝そうになっていると、水飲み場へついた。小川があり水車が備え付けられていた。

 防腐の魔法がついている水筒に煮沸した水を満タンまで詰め込む。

 別にファスの魔術を使えば水に困ることはないが、いつも使えるかどうかわからないし、こういうところでしっかり練習しておきたい。

 本音を言えば、異世界のキャンプみたいでわくわくしているだけだけど。


 水を飲み保存食の干し肉を少しつまんだら、いよいよトアのスクロールを広げてみることに。


「なんかドキドキするだ」


 そろそろとトアがスクロールを開く。スクロールが青く発光し、焼けるように黒ずみ灰になる。

 あれ? 失敗?


「き、消えちゃったべ」

「おそらくこれでスキルを覚えたはずです。ご主人様、鑑定をお願いします」

「そうだな」


 というわけでなんか久々な気がする鑑定をトアに行う。


――――――――――――――――――――――――

名前:トア

性別:女性 年齢:19

クラス▼

【料理人LV.11】

スキル▼

【料理人】▼

 【解体LV.10】【味覚強化LV.9】【栄養増加LV.11】

 【毒耐性Lv.3】【高速調理LV.10】

【片手斧】▼

 【飛斧Lv.1】

【黒犬】

 【腕力強化Lv.1】【嗅覚強化LV.1】【痛覚耐性LV.1】

――――――――――――――――――――――――


 ほうほう、ちゃんと片手斧のスキルは取れてるな。というかトア19才だったのか年上じゃん。

 他のスキルも気になるな。そもそも料理人のレベルってどういう基準なんだろう料理が旨ければレベルが高いのだろうか?


「ちゃんと取れてるぞ」


 そう言って皆に紙を見せる。


「よかったべ。それにしても鑑定なんてされたの何年振りだったかなぁ」

「【栄養増加】のスキル!! 確かこのスキルってとても貴重だと本で読んだことがあるような……」


 なんだかファスが考え込んでいる。字面からして便利そうだよな【栄養増加】。


「そうなのか、あと疑問なんだけど料理人のレベルってやっぱり料理であがるの?」

「はい、生産職のレベルは職にあった経験を積むことでもレベルを上げられるので、料理人のレベルは料理をすることで上がります。もちろん魔物を倒しても上がりますが、どちらかというと強い魔物を調理することでより多くの経験値が入ると本で読んだことがあります」

「じゃあ、魔物を倒して料理してもらうとトアのレベルはあがるのか。レベルが上がるとスキルのほかになにか上昇するのか?」

「えーと、すみません。調理の腕が上昇するかはわかりません。ただ感覚が鋭くなっていくとは本で読んだことがあるので、おそらく戦闘職に比べて感覚的な部分が強化されやすくなるのではないでしょうか?」


 ふむふむ、ゲームに例えると力や速さはあまり成長せず器用さなどが成長している感じかな?

 トアは鑑定紙を睨み付けて首を傾げている。


「昔、鑑定してもらった時はこんなにスキルはなかったんだけどなぁ。特に【黒犬】のスキルは一つもなかったはずだべ」

「それはおかしいです。いくらなんでもスキルがそんなに発生するはずが……」

(マスターノ、セイ)


 今日はトアの胸元からフクちゃんが出てくる。羨ましい奴め。

 僕のせいってどういうことだ?


「フクちゃん、それはどういう意味だ?」

(マスタート、ケイヤクスル、チカラ、フエル)

「えっそうなの?」

(ウン)


 ファスがフクちゃんの言葉を聞いて鑑定紙を見直している。


「なるほど、そう考えるなら私が【魔術師】のクラスを得た時にした鑑定でも、もしかしたらご主人様との契約によるスキルがあったのかもしれません。思い返すとLv1のスキルが多かった気もします。恐らく【黒犬】のスキルはご主人様と契約することで発現したのでしょう」

「転移者のチートの一つなのか、【愚道者】の効果なのかわからないけどな。僕のスキルにスキルを増やすようなもの無いし」

「現状仮説でしかありません。ただ、なんとなくですが。フクちゃんの言っている事は正しいような気がします」

「オラもだべ、やっぱりご主人様はすごいべな」

「僕がすごいんじゃないけどな、まぁトアのスキルが増えてよかったよ。これで戦闘がしやすくなったな」


 その後水を飲みながら保存食を少しだけ食べて、水飲み場にいる他の冒険者にポキポキ草やブルマンについて話を聴いてみることにした。


まさかまだ草原に辿り着けないとは予想外でした(おいっ

次回予告:牛狩りじゃあああああああ


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― 新着の感想 ―
みんなのんびり草原に向かってるのは、主人公と一緒に居て心が穏やかでいられるからだね。
[気になる点] 長年痛めつけられていたから痛覚耐性はレベル高い方が不自然じゃない気がする
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