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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第三章:交易の町編【料理人と恩師】

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第四十二話:やっぱり肉だよね!

 目が覚めると、宿屋のベッドの上で右にはファス、左にはキズアトじゃないやトアが寝ていた。

 窓から外を見るとまだ薄暗い。早く起きてしまったらしい。

 トアはダボっとしたシャツを着て寝ている、僕が気絶した後服を着たのか。


「体は……どこも痛くないな」


 伸びをして体をゴキゴキと鳴らす。見ると服が着替えさせられている。気絶した後にファスが【回復泡】で手当てしてくれたのだろう。


「んっ、ふぁ~……おはようございます、ご主人様」


 寝ぼけ眼をこすりファスが起きる。珍しいな寝起きはいいほうなのに。


「眠そうだな、僕への手当のせいで寝るのが遅くなったか?」

「いえ、これまでのことをトアと話をしていてすっかり夜更かししてしまいました」

(オハヨー)


 フクちゃんも起きたらしい。前足を伸ばして伸びをしている、せっかくだし皆でストレッチでもするかな。

 トアを見ると、幸せな顔で爆睡している。起こすのが可哀想だな。


「久しぶりにストレッチでもするかな、ファス手伝ってくれ」

「でしたらトアも起こしましょう」

「せっかく寝ているし、起こすのは可哀想じゃないか?」

「フフッ、ここで起こさないほうが後で怒りますよ」


 そう言って、トアをゆすり始める。僕が寝ている間に大分仲良くなったようだ……なんだか寂しい。


「んー。朝だべか、おはようだ……ムニャムニャ」

「ご主人様がストレッチをすると言っていますよ、起きてください」

「んーわかっただ」


 トアは腕を頭の後ろで組み背筋を伸ばして犬のように(そもそも犬の獣人だが)ブルブルと体を振るう。

 ついでにシャツ越しの胸部装甲もプルプルと……。


「ご主人様?」


 ニッコリと口だけ笑いながらファスがこっちを見ている【恐怖】は発動してないはずなのに圧迫感がすごい。


「い、いや。僕は背を伸ばせるようになってよかったなぁと」


 体の歪みから猫背だったトアが背を真っすぐに伸ばしているのを見て感動したのも本音だ。

 次は顔の傷を消さなきゃな。


「おはようございますだ、旦那様、ファス、フクちゃん」

「おはようトア、体はどうだ?」

「おはようございます、トア」

(オハヨー)


 ベッドから降りたトアが丁寧に礼をしてきた。ちなみに上半身はシャツを着ていたが下半身は下着だけだった。

 なんちゅう格好をしてるんだ。あとキチンと背筋を伸ばしたトアは僕よりも背が高かった。

 170後半くらいはあるだろうか。こうしてみるとスタイルよかったんだな。


「おかげ様で、とっても具合がいいだ。本当に、本当にありがとうだべ」

「すぐに、顔の傷も消すよ。あと下を履いてくれ」

「寝巻を持っていなかったから、寒くないときはいつも裸だったんだけども」

「あー、わかります」


 なんなのこの二人、朝から理性がゴリゴリ削られてんだけど。

 とにかく着替えをさせて、丁寧にストレッチをした。

 朝稽古をするときは丁寧に柔軟をして体をほぐしたもんだ。


「旦那様、柔らかいんだべな」

(マスター、ジュウナン、ヨクヤッテル)

「私も、少しは柔らかくなりましたよー」


 牢屋での生活でも余裕がある時は、ストレッチをしてたからな。

 ちなみにファスも付き合ってやっているので結構曲がるようになっている。


「オラも昔は結構体柔らかっただが、すっかり固くなっちまったな、鍛え直すだ」

「あんまり勢いつけすぎないようにな、張り切ると怪我するぞ」

「そうですゆっくりやればいいのです」

(ヒッヒッフー)


 そういうファスさんは森で受け身を張り切りすぎたせいでばてていたけどな。

 あとフクちゃんその掛け声はなんか違う。


 しばらく柔軟をしたが、まだ朝ご飯までは少し時間がありそうだ。

 せっかく早起きしたのだから走り込みでもしようか、やはり鍛錬の基本は走り込みだよな。


「簡単に外を走ってこようと思うけど、二人はどうする?」

「あの、ご主人様。私達昨日襲われたばかりなのですよ、索敵は必要でしょう。当然ついて行きます」

「オラも久しぶりに走りたいだ」

(ボクハ、マスターニ、ノル)


 そういや襲われたばっかりだったな。固まって動いたほうがいいか。


「じゃあ皆で走るか、ちょうどいいやファス【重力域】をかけてくれ、重り付きで走ればいい鍛錬になる」

「わかりました」


 というわけで外へでて、ゆっくりと走る。僕だけ重りつきだがちょうどいい塩梅だ。

 

「ハァ、ハァ動きながらスキルを制御するのはよい練習に、ハァ」

「気持ちいいべなー」

(ハイヨー、シルバー)

 

 フクちゃん元ネタ知ってる?

 トアは体を動かすのが楽しくてしょうがないらしく先に走っては戻ってまた先に行くということを繰り返していた。

 散歩が楽しくて先々行く犬みたいだな。

 ファスはしばらく走ると、肩で息をし始めた。これでも大分体力がついたと本人は言っております。


 商人達の朝は早くすでに店の準備を始めている町の中をゆったりと走り、宿へ戻るといい時間のようだ。

 焼けたパンの匂いが宿の外へ漏れていた。


「……あれ? いつもと香りが違うべな」


 トアが首をひねる。ファスはヒュー、ヒューとヤバイ呼吸をしている。途中ペースを落とそうかと提案したがファスは頑なに最初のペースを維持し続けたのだ。

 トアは見ての通り余裕で完走していた。なんならまだ走り足りないようにすら感じる。


「み、水を」

「僕には違いはわからないけどな、それより水だな」


 ファスのスキルで水を呼べばいいのだろうが、疲れている人間に自分でなんとかしろというのも悪いので食堂へ行き水を貰ってファスに渡す。


「ゴクゴク……生き返りました。というか私、自分で水を出すことができるんでした」

「頑張ったんだ少しくらい楽してもいいさ、それよりもお腹減ったな」


 ファスの背をさすりながら給仕を呼んでパンとスープを頼む、というか朝はメニューがこれしかない。

 出てきたパンを玉ねぎのスープに付けて食べる。

 ん? 確かに昨日となんか違うような。どこがと言われるとわからないが、何となく風味が薄いような。


「やっぱり、昨日オラが仕込んだパンに混ぜ物してカサ増ししてるだ。スープも具を減らしているだよ」

「道理で違和感あると思った。なんでまたそんなことを?」

「前々から、女将さんに安く料理を作れって言われてただ。オラは安く作る工夫はするけんども、料理人として味を損なうことはしなかっただ、だけどもオラがいなくなったから厨房の奴らがカサ増ししてるだな」


 え? トアさん? あなたあれだけ虐待されていたのに女将に逆らっていたの?

 ファスも疑問に思ったらしくトアに質問をぶつける。


「あの女将に散々にひどいことされていたのに、そんなことをして大丈夫だったのですか?」

「もちろん、しこたま打たれただ。でも、たとえ殺されても料理人としての矜持は捨てねぇべ」


 ムンと胸を張るトア、素直にスゴイと思うわ。

 トアにとっては自分の命よりも譲れない一線だったのだろう。


「すごいな、尊敬するよ」

「はい、誇り高い行為です」

(エライ)

「いやぁ、それほどでもないべ」


 尻尾がパタパタを通り越してブンブンと振られている。

 とりあえず、物足りない朝食を胃に詰め込みながら今日の予定を確認する。

 トアは料理には釈然としないようだったが、意識を切り替えて食べきっていた。


「いよいよ、冒険者として活動しようかと思う。といってもいまだ補欠のFランクだけどな」

「冒険者としての初歩の初歩の依頼しか受けられないらしいので、早くランクをあげたいです」

「頑張るだ」

(マモノ、タベル)


 フクちゃんが不穏なこと言っているのが気になるが皆士気は高いようだ。

 女将にトアを見られても面倒くさそうなのでさっさと宿を後にしてギルドへ行く。


 ギルドへ行くと、まだ早い時間にもかかわらず受付や掲示板の前には人が並んでいた。

 良い依頼は早起きして取りに来る必要がありそうだな。

 朝は皆自分のことで忙しいのか煩わしい視線もほとんどなく気持ちよく待つことができた。

 順番がくるとアマウさんが対応してくれたので、とりあえずトアを冒険者として登録し依頼を受けたいと言ってみた。


「やっと依頼を受けてくれますかー。私良い依頼をピックアップしてたんですー。やっぱり今の時期はこれですねー『ポキポキ草』の採取です」


 おおう、採取クエストかなんかワクワクしてきたな。


「どんな依頼か聞いてもいいですか?」

「はいー。このポキポキ草は錬金術や傷薬の材料になる薬草で今の時期によく生えているんです。需要は多くあるのですが、群生しないので一度に多くとることができずいつも品不足なのです。この町から半日ほどで行くことができる草原によく生えているので、草原の他のクエストと一緒に受ければお得なのです。ちなみに一束10本から銅貨一枚で買い取っています、納品すればするほどランクアップのポイントも溜まるので根気さえあれば誰でも受けられるのです」

「……納品すればよいのであれば、例えばポキポキ草を誰かから購入して納品すればギルドランクが上がるということができるのではありませんか?」


 ファスがアマウさんに質問をする。確かにその通りだ、というかネットゲームなんかではそれと似たような手でクエストこなしたりするよな。


「別にそれでも構いませんよー。財力も力ですからー。でも上のランクでは直接魔物を討伐する必要があったりするのでそんなコスイ手は使えませんしー。採取でも人の為のお仕事なのでしっかりこなして欲しいとは思いますけどねー」


 言葉の端々に棘を含ませながらアマウさんが言葉を返してくる。やっぱりこの人怖いな。


「例えばの話です。僕らはそんなことしませんよ。それでポキポキ草ってどんな草なんですか?」

「もちろん、わかっていますとも。では詳しく説明しますねー」


 アマウさんから見本のポキポキ草とそれが生えているという草原の位置を地図で見せてもらう。


「茎がポキポキ折れるのでポキポキ草と呼ばれているのです。匂いが独特なのと葉っぱがギザギザなのが特徴ですねー」

「ポキポキ草なら、食べたことあるだよ、少し湯がいて肉と一緒に炒めるのが美味しいべ。ちょっと高いからあんまり扱わないけどな」


 トアはポキポキ草を知っているらしい。助かるな、というか今の説明聞いてちょっと食べたくなったよ。


「それは心強いな、ファスはわかるか?」

「お婆さんの家では見たことありませんでしたが、見本の形を覚えたので問題なく見つけられると思います」

(ボクモ、ミツケラレル、トオモウ)


 ファスもフクちゃんも問題ないらしい。

 

「さっき、他の依頼と合わせて受けるって言ってましたけど。僕らでも受けられる依頼はあるんですか?」

「討伐依頼は受けられませんが、偶然狩ってしまった魔物を納品することはできますから。ダンジョンボスを倒したヨシイさんならボーナスを持って帰れるかもと思いまして、今ちょうどブルマンという牛のモンスターが草原で目撃されていて、他の低ランク冒険者にとって危険なので討伐依頼が出ています」

「つまり、討伐の報酬はだせないけど、モンスターの素材を納品すればギルドの評価が上がると?」

「その通りです。さすがヨシイさん」


 それってつまり、討伐費用を浮かせて安く働かせているだけじゃ……。まぁいいけど。


「ブルマンの肉は旨いから楽しみだべな」


 なんですと……。聞き捨てならないことをトアが呟く。


「と、トア。ブルマンって旨いのか?」

「そりゃあ、美味しいべ。草食だから肉食と比べて臭みが少なくて脂もほんのり甘味があるだ。それこそポキポキ草と合わせればジャキジャキとしたポキポキ草の食感と柔らかな肉が絡んでたまらんだよ、醤と合うんだよなぁ」


 OKわかった十分だ。必ず仕留めよう、必ずだ。


「ご主人様、是非狩りましょう。私が草の根掻きわけても探し出してみせます」

(マッテロヨ、ニク)

「あのー、メインはポキポキ草ですからね。わかってますかー? もしもーし?」


 アマウさんが何かよくわからないことを言っているが、僕等の意識はすでに肉にある。

 今回は料理人もいることだし、ちゃんと調理器具を持って狩りに行こう。

 受付での処理をすませ、意気揚々とギルドを後にする。まずは市場へ行って器具を買わなきゃな。

 くっ草原まで進めなかったか、トアさんの活躍は次回に持ち越しですね。というかファスがどんどんギャグ要因になっていくような……。

次回予告:主人公薬草取りに苦戦します。


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― 新着の感想 ―
草食肉は逆に匂うんだけどね。 牛なんかは飼料で匂いを減らしてるけど、牧草とか放し飼いした 肉は、濃い匂いだよ、山羊や羊は食べれない人も居るね。 不思議と魚もそうなんだよね、海草・コケ類を食べる魚は匂い…
【一言】 高校生男子の前にニクを置いたらダメですよねー。草なんかに目が行きませんよwww。 ニク、ニク、ニク、野菜、ニク、ニク、野菜、ニク、ニク、ニク、…ですよ。 >アマウさんが何かよくわからないこと…
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