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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第十一章:ニグナウーズ国編【本の樹上都市と呪いの秘密】

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第三百五十六話:王族の『小道』

 岩が降って来る中で、『ミルダ』の背中に飛び乗ったかと思えば、これまた乱暴に宙を飛んで右も左も分からず、元の空に放り出された。


 青い空に暴風、相変わらず紫の蝶が群れを成して周囲を飛び回っている。

 【空渡り】で姿勢を整えると、ファスが声を上げる。


「敵襲ですっ! トアとカナエが襲われています。」


 下を見ると、なんかデカい蔦が地面から顔を出しているし、燃えている大蛇が見える。


「ヤッバ! ファス、先に行って大丈夫か?」


「もちろんです」


 ファスがふわりと浮き上がり、フクちゃんもファスの頭に乗った。


「フクちゃん、ファスは任せた」


(イエス、マスター)


 【空渡り】で宙を蹴りつつ落下の勢いをつけて、【ツルハシ】で蛇の首を切断する。


「どんな状況!?」 


「『モルダ』が活動しているようですね。酷い有り様です」


 ファスがゆっくりと降りてくる。

 向き直るとトアと叶さんに抱き着かれた。


「急にいなくなって心配しただよっ! 旦那様ぁ!」


「信じてたけどね、信じてたけど、それはそれで不安だったんだから!」


 抱き着かれ、左右から。


「「おかえりなさい」」


 と言われる。


「ただいま、心配かけてゴメン」


 抱き返すが、横の岩壁から蔓……じゃなくて巨大な茨が飛び出してのたうち回る。


「ぬわっ! ちょ、二人共、動けないから」


「【氷華:カズラ】」


 氷の華と葉が二枚出て、茨を防ぐ。しかし、茨は氷を乗り越える。


「きりがありません。客車は……洞窟の中ですね」


「だべ、『小道』に通じているだ。って、また入り口が覆われてるだ」


 洞窟の入り口はすでに茨に覆われていた。


「仕方ありませんね。スゥウウゥ」


「待った、ファス。【息吹】を使ったらさっきみたいに、跡形もなくいろんなものが消し飛ぶぞ!」


「『さっき』って……上で何があったのか教えてね。ここは私とトアさんで行くよ【星竜光輪】」


「任せるべ【飛竜斧】っ」


 光の輪っかが茨を弾き飛ばし、風を纏う手斧が切り刻んでいく。

 できた隙間に全員で滑り込んだ。茨は洞窟の中にも生えてきているが、外ほどではない。


「客車は先に行ってるべな」


「この程度なら、進めそうです」


(マスター、これ)

 

 ファスにくっついていたフクちゃんが糸を差し出してくる。


「何だこれ?」


(センベツ、だって)


 よくわからないが、フクちゃんが差し出してくれた糸を引っ張ると、5センチ四方の魚の鱗のような形状の柔らかな板が引っ付いていた。薄い紫色で微かな光にも反応して見え方を変えるようだ。触ると少しピリピリする。


「『ミルダ』の毒鱗粉ですね」


「多分だけど、オラの毒耐性だとやばい気がするだ。とりあえず瓶に入れて置くだよ」


「綺麗……エリクシルの材料だっけ? 流石、真也君。順調に集まってるね」


 狙っているわけでないのに素材が集まって来る。……なんか、意思みたいなものを感じるな。偶然といえばそうなのだろうけど。収集瓶をアイテムボックスに入れて、全員で走りだす。

 奥に進むにつれて茨は少なくなり、松明を持ったメイド達と客車が見えた。


「戻ったかヨシイ、ガハッ、ゴホッ」


 ナルミが近づいてくるが、盛大に咳き込む。


「おいおい、大丈夫か?」


「お、お前のせいだ。『ミルダ』の毒鱗粉が……グフッ」


 どうやら、僕達に付着している毒鱗粉をわずかに吸ってしまったらしい。さっきのフクちゃんが引き寄せた鱗粉が砕けた状態で僕等に引っ付いていたのだろう。


「あっ、私達は耐性があるから気づかなったよ。【星癒光】、私達も鱗粉を被ってるから……【星女神の洗浄】」


 叶さんの回復を受けてナルミが一息つき、僕等は体に付着した鱗粉を叶さんの【スキル】で洗い流す。洗い物していたら手に入れた【スキル】なのだが、実際めっちゃ便利だな【星女神の洗浄】。


「解毒ポーションも飲むだよ」


 ナルミがトアから解毒ポーションを受け取り一気飲みする。


「死ぬかと思ったぞ。お前等、良く平気だな」


「フクちゃんで慣れているしね。それより、『小道』へ入らないのか?」


「それが……問題発生だ。前に行くぞ」


 客車の前に出ると、この世界でも見たことのない文字らしき記号がびっしりと書かれた岩壁の前でミナさんがうずくまっていた。


「うぅ……どうせ私は引きこもりのダメダメ姫ですの。あっ、シンヤ殿無事でなによりです」


「今はメイドではなかったのですか。ほら、ミーナ、落ち込んでいる場合ではありません。もう一度呪文を試してください」


 メレアがさんが叱咤激励し、ハルカゼさんがはらはらしながらそれを見守っている。


「やってみますの【エガコ・プルヴィ・セルビ】」


 岩壁はうんともすんともいわなず沈黙を保っている。『モルダ』の地響きが遠くで聞こえるんのみだ。


「まさかとは思うけど、これって……」


 ナルミが額に手を当ててため息をついた。


「ミーナが正しい呪文を思い出せんようだ」


「えぇ……」


 王族の秘密の通路って言っていたのに、忘れてしまったのか。


「忘れたわけではありませんわ、ちゃんと覚えているのに壁が反応しませんの。何でですの~、シンヤ殿~」


「僕に言われても」


 バンバンと壁を叩いて涙目でミナ姫が僕に縋りつく。


「壁を砕けばいいじゃないの?」


「『小道』は空間の歪んだ場所だ、正規の手続きで入らないと正しい場所から出れなくなるぞ」


 ナルミの返答に皆が黙る。


「……とりあえず、扉はミーナに任せてオイラ達は現状を把握するだ。『モルダ』の暴走で客車が一台置き去りにされたけんど、大丈夫だか?」


「人的損失はありませんが……食料と水の大部分、そして封印していた【竜の武具】が二本乗せられていました……弓と杖が喪失しています……『モルダ』が落ち着けば取りに行けますが……」


 申し訳なさそうにハルカゼさんが告げる。別にハルカゼさんが悪いわけじゃないだろう、宙野から取り上げた【竜の武具】は三本あったはずだけど。


「残りの一本はどこにあるんです?」


「勇者が使っていた赤い剣だけは、勇者を警戒してミナ様の客車に乗せていました。なのでこの一本だけは無事です。申し訳ありません。姫様の護衛の配置に気を取られ、封印で場所を取るようになった【竜の武具】よりも人員を多く客車に乗せた私のミスです」


「人命と道具なら人命でしょ。ハルカゼさんは悪くない……『モルダ』に関しては想定外だったし。動きづらくなるけど、他のアイテムを出してアイテムボックスを使って一本くらいは私達で管理するべきだったのかも……これは……やられたかもね。狙いは【竜の武具】か、逃げた【転移者】に扱える人がいるとは思えないけどね」


「クッ、ご主人様と私なら選択肢はあったのですが……」


 ファスが悔しそうに杖で床を叩く、確かに今の【竜の鉤爪】なら短時間で負担を少なく破壊が可能だったかもしれない。


「無理に外に出るのは、茨と毒鱗粉で危険だし、今は先に進むことを考えましょう」


 一応忠告してみる。すでに回収されてそうなものの為に危険をおかす必要は薄いだろう。


「地中を動く蛇とかいれば回収は容易そうだもんね」


「……しかし、肝心の『小道』があれではな」


 ナルミが視線を向けた先にはしくしくと泣きながら、壁の前で体育座りをするミナ姫の姿があった。

 全員で顔を見合わせて、近寄ってみる。


「あー、どうですか?」


「シンヤ殿……ダメですの、呪文は合っていると思うのですが……」


「ミーナは注意力は散漫ですが、記憶力は人並み以上です。魔力も流し、王族であることを証明しているのにどうして道が開かないのかわかりません」


「王族だけが読める古文書で何度も読みましたの、【エガコ・プルヴィ・セルビ】ですわ」


 メレアさんもお手上げのようだ。すると、僕等の横をファスが通り過ぎ、壁に手を当てる。


「発音が違う……【エガコ・プルヴィ・セルヴィ】」


 ファスが呪文を唱えると、壁の文字が緑色に輝き岩壁が上にずれて真っ暗な道が開く。


「……えと、開いてしまいました」


 困惑した、不安げな表情でファスが僕を見て、とりあえず僕はファスの頭を撫でたのだった。

PVが1500万突破しました。ありがとうございます!!!


ブックマーク&評価ありがとうございます。ここまで読んでいただけたことが嬉しいです。

感想&ご指摘いつも助かっています。一言でもいただけるとモチベーションがあがります。本当に上がるので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
アイテムボックス系のアイテムがあるのに重要品の輸送に使わないしのってどっかで説明あった? そろそろこの世界の人は全員呪いで知能が低下している設定出てきてもいいレベルな気がする
[一言] 奪われるのはテンプレだね。みんな予想してたんじゃないかな。
[良い点] 順調ではないけど強化もされたから±換算では+かな。 [気になる点] 発音が違うなら、セルビィじゃなくてセルヴィとかにした方がよくない?とは思った。 [一言] 更新お疲れさまです
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