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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第十章:ニグナウーズ国編【英雄と勇者、そして謀略】

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第三百三十六話:最初の裏切り

 ファスによく似た女性が泣いている。……脳裏に女性の言葉が響く。映像の女性も竜に手を当てて、口を開く。映像に音声はないが、僕には何を言っているかわかった。


「『私は竜の止まり木、どうか安らかに女神の詩を紡ぎ眠っておくれ』」


 ……僕は竜の記憶を見ていた。そしてこれは別の視点での記録。


「……ご主人様?」


 台詞を口にした僕をファス達が不思議そうに見る。特にナルミとミナ姫は驚いた様子だった。


「【結晶竜】との戦いで気を失った時に何度か夢を見たんだ。……よく覚えていないけど、多分竜が見た記憶か映像だと思う。そこでこの女性が泣いていたんだ。場面は少し違くてファスに似た人で両手を組んで祈るように……何度も繰り返し今の言葉を言っていた」


 とても、悲しい記憶だった。少なくとも僕が見た記憶の持ち主はそう感じていた。


「……これは儀式でも使われる聖句ですの。ニグナウーズが国として興る前、大森林は複数のエルフの派閥が治めていた場所でした。竜王を倒す為に巨人族と共に団結し、国となったのです。【腐黒竜:アビロトギヌス】は三大竜王の中で一番最初に討伐された竜王だったとされています。その死体から『最初とされている』【竜の武具】がラポーネ国で作られ、【竜の武具】を使った【転移者】達によって翼のある竜は滅ぼされましたわ。御伽噺ではぼやかされていますが、人の勝因は【竜の武具】を扱えたことにあります」

 

 映像の記録が変わっていき、いくつかの【竜の武具】が映される。ナルミがファスを見た。


「御伽噺とアナスタシア姫が言った真実は覚えているな? ……かつて【人】と【竜】を滅ぼそうとした【魔王】がいた。【人】と【竜】は手を組んだ。【勇者】【聖女】【賢者】そして【竜王】により【魔王】は倒された。御伽噺ではその後に【竜王】が裏切ったとあるが……」


「アナ姫の説明では【人】が裏切ったのですね。【勇者】【聖女】【賢者】が【竜王】を殺した」


「その通りだ。どうして人が裏切ったのか、何があったのか詳しいことは表向きには伝わっていない。……賢者のみがそれを正しく記録した。お前達がこの国に来た理由の一つが【竜の後継】について記されている賢者の古文書を【精霊眼】で読むということだが……おそらくその古文書は王城に保管されており、この【水晶の書庫】を合わせることで真の文書として意味を持つ。アナスタシア姫が見たというラポーネにある文書が不完全だったのは【水晶の書庫】を知らずに古文書を複製したせいだろう」


 【精霊眼】【水晶の書庫】【賢者の古文書】と何重にもかけられたセキュリティだったのか。それほどまでに隠したい真実って何なんだ?


「……話が見えてきません。【賢者】の真意がこの場でわからない。……それが【竜殺しの鎖】とどう関係があるのですか?」


 ファスの問いかけにナルミがミナ姫を見る。ミナ姫が口を開く。


「ナルちゃんはわかりやすく順序だてて説明したのですわ。これは、シンヤ殿に約束した報酬として教えるつもりだったことです。最初に殺された【竜王】である【腐黒竜】は【竜の武具】無しでどのように倒されたか……その根幹を担うのが【竜殺しの鎖】の正体なのです」


 ミナ姫の言葉に呼応するように、さらにウィプス達が用意する場面が変わる。

 巨大な牙が楔のように両端にあり、細く複雑に紡がれた銀の鎖がいくつもの巨木に巻き付けられていた。

 なんか有刺鉄線みたいな感じだな。


「これが【竜の鎖】? なんか細いね」


「なんで木に巻かれているんだべ」


 叶さんとトアが映像を覗き込む。ナルミが腕を振ると映像が拡大された。


「竜王戦争の前、この森は【翼のある竜】達の縄張りでもあった。竜とエルフが争いを行わぬように、その境を明らかにしていたのが複数のダンジョントレジャーを組み合わせて作られた鎖だった。決して切れず、魔物の力を抑え込む鎖……本来の効果は『ダンジョン化を防ぐ』ことだ」


「え? そんな効果だったのか?」


 ピンポイントにカルドウスメタというか……まぁ、ダンジョンが広がれば住む場所は追われるだろうけど。


「そうだ。リヴィル女王がその鎖に【竜殺し】としての性質を付与した。そして……これが王族に関係する者達が秘密にしてきた【竜】に対する【人】の最初の裏切りだ」


 映像が切り替わる。黒く歪な体の竜がリヴィル王女に何かを差し出していた。あれは……牙?


「これは無かったことにされた式典の映像だ。鎖が作られる前にあったこと、エルフと竜の境界を定める為の約定の式典。大森林の不可侵の条約を保証するものとして、腐黒竜は己の牙をリヴィル王女に差し出した。エルフと竜の友好の証として……【竜の素材】としてな」


 その言葉の意味することは一つだった。友好の証として差し出された牙を【竜殺しの英雄】はどう使ったのか……。ミナ姫が立ち上がる。


「伝承では【竜殺しの鎖】は【転移者】である【勇者】が使っています。その理由は単純です。【竜の武具】は【転移者】しか使えませんの。すなわち【竜殺しの鎖】とは、友好の印として差し出された竜の牙を素材に作られた、真に最初の【竜の武具】であったということですわ。【腐黒竜】は己の牙により命を落としたのです。これが最強たる【竜王】が倒された理由であり、【竜殺しの鎖】の正体なのですわ」


 部屋を沈黙が支配する。……アナ姫が砂漠で説明した人が竜を裏切ったという話もひどかったけど……。


「エルフはやっぱりクソですね」


 ファスの言葉にミナ姫、ナルミ、メレアさんを除く全員が思わず頷いた。

呪いがある理由。


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― 新着の感想 ―
そりゃ呪いもするとは思うけれど、黒竜さんはエルフではなく女神に向けて呪詛を吐いてたような。
[良い点] 竜を殺せるのは竜の力(素材)だけ!故に竜は無敵!! 竜「友好の証として牙をあげるやでー」 エルフ「友好の証で竜を殺せる武具を作ったわ」 人間「よし、竜を殺そう」 転移者「竜を殺したわ」 …
[気になる点] 話がよくわからないんですが、なんでエルフがクソってことになったんでしたっけ? 龍殺しを付与したから? エルフも【人】の中に含まれてるんですか?
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