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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第十章:ニグナウーズ国編【英雄と勇者、そして謀略】

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第三百三十二話:忘れられない顔

「バフ撒くよ 【星女神の竜舞】【星守竜歌】【星光竜鱗】」


 叶さんがワンドを振り、攻撃、精神耐性、防御のバフが重ねがけされる。

 ゆっくりと包囲してくる敵は獣人ばかりのようだ、気配がおかしい。というより見た目がおかしい。

 筋肉を異常に肥大させ、牙も爪も歪に大きくなっていた。体のバランスを無視した変身をしているようだ。これは【獣化】というよりも……。


「【魔物化】……カルドウスの一派は芸がありません」


 冷ややかに【翠眼】で観察し、ファスが杖の石突で地面を打つと周囲に水の生物がズルズルと地面から這い出てくる。何それ怖い。


「……そうだな、芸が無いな」


「マスターも……」


「やめてくれフクちゃん泣いちゃうから」


 どうせ、パッシブばかりで地味だよ。


「まぁまぁ、旦那様には宴会芸があるだ。オラ、結構好きだよ」


 トアが斧をクルクルと回しながら黒い痣を浮かび上がらせ【獣化】を発動、フクちゃんが【空渡り】を使って糸を宙に張り巡らせる。


「ファス。【転移者】に注意してくれ、【竜の武具】があるかもしれないし、さっきフクちゃんが無理やり首輪をかけられたらしいんだ」


「かしこまりました。と言っても、すでに何人かは逃げ始めているようですね。【勇者】は逃がすわけには行きませんし、【竜の武具】もできる限り回収して敵の弱体化に努めましょう。といっても、まずは包囲を抜けることが先ですね」


「できるだけ殺さないように……と言いたいけど、皆の身が最優先だ」


 殺すなと言って、ファス達が怪我をすることの方が……ずっと辛い。

 僕はズルいな。いい加減割り切れればいいだろうに。そんな僕の心を見透かすようにファスはほほ笑む。


「ご主人様の気持ちはわかっています。私としてはご主人様の身の方を大事にして欲しいのですが……今回の【魔物化】はどうやらダンジョン化を伴っていないせいか、砂漠の時と違い本性から変わっていません。できるだけ殺さないようにしましょう。叶の【浄化】で戻せるかもしれません」


「【転移者】も殺すのは流石に抵抗あるからね。ただ、フクちゃんに首輪をかけた人はちょっとお仕置きかな」


「【勇者】が逃げる前に、【魔物化】している獣人を仕留めるだ。……変な匂いはまだ出てるだな」


「その匂いは毒を使う魔物が操っていたと思う。フクちゃんが食べたけど」


「OK、こまめに【解毒】も振るよ。【魔物化】した獣人さん達には【浄化】もいれるね」

 

 薄いピンクの香りを発生させる道具はまだ稼働しているらしい。話している間に獣人が周りに集まって来た。猿や猫型の獣人、ワニのような獣人もいる。どれも明らかに獣『人』の枠を超えている。


「まあ、逃げる気はないけどな」


 ナルミには悪いが、ここはもう引き下がれる状況ではない。

 【竜の威嚇】を発動し戦闘が始まった。


「【飛竜斧】っ!」


 トアの斧を目印に僕が敵を引き付けて、フクちゃんが糸で絡めとっていく。

 【鈍麻】と【沈黙】で動きを封じつつ、投げ技で対応。【掴む】を使った多人数取りで武器も合わせて巻き込んで抑え込む。……見かけによらず非力だな。


「……うーん。真也君の動きがもう人間じゃないよね。それが素敵っ! というわけで……新技【星竜光輪】っ! 真也君、掴んでみて」


 叶さんが青白い光の輪をこちらに発射してきた、円の直径は2mほどで途中敵に当たると勢い以上にぶっ飛ばしている。外側に触れた対象を弾き飛ばすようだ。

 キャッチして素振りするが、武器と違って普通に扱える。


「振れるな。武器扱いじゃないのか、これは便利っ!」


 【掴む】で内側を持って、輪刀みたいな武器のように使える。まぁ、そんなトリッキーな武器なんて使ったことないので練習が必要だけど。単純に僕が投げるだけでも威力でるし、敵の遠距離攻撃を防ぐのにも効果的だ。ある程度時間が経つと消えるので、その前に投げて相手にぶつける。


「おもしろーい」


 完全に回復したフクちゃんも光輪に糸を通して、アクロバティックな動きで移動している。

 なにそれおもしろそう。最初20体ほどいた変化した獣人は毒と呪いで半数ほど行動不能にした。

 

「っし、そろそろ。【転移者】を追ってもいいんじゃないか?」


 外側と内側で水の色が違う洞窟で見たスライムのようなカエルが数人の獣人を飲み込み、体内で溺れさせるというかなりエグイ新技を披露するファスに声を掛ける。


「そうですね。……っ! キャンセルです!」


 ファスが杖を振ると、パチンと空間の魔力が弾けて霧散する。


「何だ! 俺の【稲光】がっ!? なんで【宴会芸人】にあんな仲間がいるんだよっ!」


 懐かしい声が聞こえた。ファスが氷弾を放つと、声の主と奇妙な騎乗蜥蜴が姿を現した。

 他にも何人か【転移者】が乗っているようだ。


「透明になる騎乗蜥蜴ですか、希少種ですね。【隠密】系の【スキル】使いもいます。そして……貴方の顔はよく覚えています」


 カメレオンのようなとげとげしたフォルムの騎乗蜥蜴に乗っている複数人の【転移者】の中に見知った顔があった。

 あいつ、闘技場での宙野との戦いで僕に雷撃をくらわした奴か。軽薄そうな茶髪に片眼鏡をして、高級そうな魔術師のローブを着ていた。他の【転移者】は知らない奴が多いな。


「やべぇ! 見つかった! おい、【竜の武具】を使うぞ」


「いや、まだレベルと条件がそろってないだろ!」


「知るか、チートは使ってなんぼだろ」


 そう言って、茶髪は白い杖を取り出す。

 それは、棒に白い皮膜を巻いたような、生きているように脈打つ奇妙な杖だった。

 

めちゃめちゃ久しぶりに、出てきたキャラです。

異世界ファンタジーの日刊ランキング2位を取れました。皆様のおかげです、ありがとうございます!!


ブックマーク&評価ありがとうございます。ここまで読んでいただけたことが嬉しいです。

感想&ご指摘いつも助かっています。一言でもいただけるとモチベーションがあがります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あの時割り込んできたやつもいたんですね 最初の時からずっとつるんでるのかな 勇者戦が一方的なのもあって、ある意味竜の武具との初めての会敵ですね 主人公メンバーのような、竜属性特攻武器…
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