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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第二章:初めてのダンジョン編【秘拳と爆炎、そして芋】

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第二十八話:レベル上げって楽しくない?

 朝ごはんは芋だった、何なら昨日からずっと芋とそこいらの柔らかい草しか食べていない。

 この芋も焼いたらそれなりに甘みがあり美味しいのだが、味付けないとやはり飽きてしまう。せめて塩があればなぁ。芋を持って脱出することも考えたが、まともなリュックも無いしマドモンキーとボス猿を突破して逃げるのは正直難しい。


「決めた。このダンジョンから無事出たら、まず美味しいものを食べに行ってやる」

「そうですね、お肉が食べたいです」

(アノサル、オイシソウ)


 確かにあのボス猿は食いでがありそうだ。


「フクちゃん、私の分も残して下さいね。こう見えても獣を捌くくらいはできますから」

「そもそも魔物って食べられるのか?」

「確か、白星教会では教義で魔物を食べることを禁止していますが、冒険者などは普通に食べるらしいです。なのでなんの問題もありません。どころか一部の魔物は高級食材として重宝されているものもあります」


 食べる気まんまんだなファスさん。まぁ僕も食べるだろうけど。


 というわけで、モチベーションも高まったのであの猿を倒すことにするが、まぁ無策でいくわけにもいかないだろう。というわけで、一番機動力がある僕が鑑定紙を持ってあのボス猿の情報を持ってくるということを提案したのだが。


「危険です。あのボス猿は群れで行動していました。ご主人様の足が速いと言っても周りはあの霧ですし囲まれれば逃げるのは困難です」

(イッショニ、イク)


 先日囮になろうとしたためか二人とも絶対に離れないと言う。困ったもんだ(僕のせいだというのは棚に上げよう)。


「そういや、視界の問題もあったな。忘れてたよ」

「その件なら問題はないと思います。実は昨日ご主人様が休まれた後に外の様子を確認したのですが霧の先を見ることができました。おそらくこの【精霊眼】の効果でしょう」


 そう言うので、セーフティゾーンの端まで移動する。この場所から少し先には霧が立ち込めており視界は最悪だ。ファスも僕の横に立ち霧を見つめている。


「やっぱり見通せます。魔力を読み取れば地中の魔物もわかりますので、もう不意打ちはさせません」


 ムン、と胸を張りこっちをじっと見つめてくる。


「……わかったよ、ファスの力が必要だ。もちろんフクちゃんもな」

「はい、頑張ります!!」

(リベンジ)


 その後相談した結果、まずはあのボス猿ではなく他のザコを中心に狩ることにした。

 ボス猿の群れを削るのも目的だが、戦闘に慣れておきたかったのだ。死の危険がある以上臆病なくらいでいいだろう、少しでも生き残る可能性を高めるためだ。


 ボス猿が周囲にいないことを確認して、セーフティーゾーンを出る。しばらくするとファスが圧倒的な視界で二匹のマドモンキーを索敵した。


 さぁ戦闘だ。


 昨日練習した、『衝撃を浸透させる突き』は現状利き腕である右腕でしか安定して(安定と言っても何回かに一回は失敗します)打てない。両手のどちらでも打てるようにしたり、打った後の隙を減らしたりなど改良の余地はあるが時間がないので仕方がない。


 あらかじめ立てたフォーメーションは僕が前衛、ファスが後衛だ。フクちゃんは本来ならば遊撃を担当してもらいたいが、呪いのことがあるので僕に引っ付いて糸や毒で援護してもらう。


「敵、前方20メートルです」

「そろそろ気づかれるかな、と言った瞬間に来たな」


 この距離だとまだ僕には見えないがなんとなく魔力の接近を感じる。これも毎日ファスと魔力を感じる特訓をしたおかげだな。


「来ます」

「応、行くぞフクちゃん」

(イエス、マスター)


 距離5メートルあたりで霧に影が映る。それが見えた瞬間に二歩で拳の間合いまで詰め、マドモンキーの頭部を打ち抜く。

 十分に速度の乗った突きは一撃でマドモンキーを粉砕した。まずは一匹。

 二匹目に体を向けながら手刀、当たった瞬間に体を小さくまとめてショルダータックルで追撃。ギースさんの技だ。


 ショルダータックルで飛ばされたマドモンキーがすぐに立ちあがるがその体に小さな炎弾が命中し爆発する。ファスが放つ威力を絞った【息吹】だ。


(マスター、マッテ)


 とどめを刺そうと踏み込む僕をフクちゃんが止める。


「どうした?」

(タベラレルカモ)


 フクちゃんがマドモンキーに飛び移り泥の体に牙を突き立てた。少しだけ何かを啜ると、マドモンキーの体はその形を維持できずに泥に戻った。


(ドロ、ジャナイブブン、タベラレタ)

「お腹壊すなよ?」


 ファスが寄って来てフクちゃんを抱き上げる。


「おそらくフクちゃんはマドモンキーからなにかを【簒奪】できると感じているのでしょう。私としても【息吹】のレベルを上げたいので行けるとこまで行きましょう」

(モットタベタイ)


 二人ともやる気だな。僕としても実戦でギースさんの技や昨日の突きを試してみたいしここは腰を据えてマドモンキー狩りをするか。



――そうして、ボス猿から離れながらマドモンキーを倒しては芋を食い、倒しては芋を焼き。長居できないといいつつも三日が過ぎた。

 なぜ三日も過ぎたのか、理由は単純だ。


「鍛錬楽しすぎワロタ」

「ワロタ? まぁ楽しかったですね。私も少し体力がついた気がします。受け身も少しできるようになりましたし」

(カリ、タノシイ)


 そう、マドモンキー狩りにハマってしまったのだ。だって楽しいんだもん。実際、体が泥でできたマドモンキーは泥人形みたいなものなので倒しても罪悪感は少ない。ほどよい素早さと連携で向かってくるので多人数戦闘の練習としてはこれ以上ないほどの教材になる。


 泥の足場の中で【ふんばり】を駆使しつつ、『衝撃を浸透させる突き』の練習をマドモンキー相手に延々とし続けたのだ。

 ファスは【息吹】と【精霊眼】のレベル上げ。フクちゃんはマドモンキーを50体ほど食べることで呪いの霧に対応するスキルを手に入れたらしく、短時間であれば単独で動けるようになった。


 そんな僕らの三日間の成果を確認しよう。まずは僕から。


――――――――――――――――――――――――

名前:吉井 真也 (よしい しんや)

性別:男性 年齢:16  

クラス▼

【拳士LV.22】

【愚道者LV.24】

スキル▼

【拳士】▼

 【拳骨LV.18】【掴むLV.16】【ふんばりLV.21】

 【呪拳(鈍麻)LV.9】

【愚道者】▼

 【全武器装備不可LV.100】【耐性経験値増加LV.20】【クラス経験値増加LV.12】

 【吸呪LV.21】【吸傷LV.13】【自己解呪LV.18】【自己快癒LV.16】

――――――――――――――――――――――――


「ありゃ、新しいスキルがあるな。気づかなかった」

「【呪拳】ですね。聞いたことのないスキルです。言葉のままならば対象に呪いを付与する拳ですが、どうなのでしょう」

「試してみるか【呪拳】!!……技名を出しても発動しないってことはまたしてもパッシブなのか」


 意識を集中し、拳の魔力を高めファスの呪いを引き受けた時のコールタールのようなイメージを強く持つ。するとうっすらと黒いオーラが拳から出てきた。といっても集中してやっと見える程度だが。


「やはり、対象に呪いを付与する拳のようですね。【拳骨】と同じように強弱の調整をするスキルのようです」

(マスター、カッコイイ)

「いやいや、パッシブってことは常時【呪拳】は発動してるんだろ? 日常生活に問題ありそうなんだが」


 握手で呪い付与しちゃったらどうすんだよ。


「パッシブスキルは確かに常時発動のスキルですが私の眼で見る限り、通常時はまったく効果はないようです。そもそもご主人様のスキルは特別なものである可能性があるので既存の法則に当てはまらないかもしれませんし」

「それを聞いて安心したよ。フクちゃんを撫でられなくなるからな」

(ナデテー)


 僕の精神安定には欠かせない行為なのだ。ピョンと跳ねるフクちゃんをキャッチしナデナデする。

 するとファスもジーとこっちを見ているので撫でてやる、結構髪の毛伸びてきたな。


「もちろんファスもな」

「わ、私は別に……それよりご主人様。そのスキルはもしかしたら私の呪いを吸い取った影響かもしれません。すみません」

「普通にしてたら問題ないんだろ? それなら新しい武器ができたのはプラスでしかないよ。ファスのおかげだ」

「ご主人様……ありがとうございます」

(ファスハ、イイコー)


 フクちゃんがファスに飛び移る。というか呪いならさんざんこのダンジョンでも【吸呪】してるしな。

 続きましてファスさんのステータス。



――――――――――――――――――――――――

名前:ファス

性別:女性 年齢:16


クラス▼

【???】

スキル▼

【竜魔法(黒竜)】▼

 【息吹LV.10】

【精霊眼】▼

 【精霊眼LV.7】

【???】

 【耐毒LV.10】【耐呪LV.50】

――――――――――――――――――――――――


順調にレベルアップできた模様。というか【???】のスキルが追加されている。


「前見たときになかった。【耐毒】【耐呪】があるな」

「呪いや毒に対しては元々耐性を持っていた感覚はあったので、どうして今鑑定にでてきたのかわからないです。クラススキルとして発現しているように読み取れるので、何かクラスに関する変化があったのでしょうか?」


 わからんが、まぁ悪いことじゃなさそうだ。他の【息吹】に関してはファスの元々の魔力操作も相まってレベル以上に強力なスキルに仕上がっている。【精霊眼】に関してはいまだ効果がはっきりしないのでわからないが『視る』行為全般の強化が行われているようだ。


 続いて真打のフクちゃん。



――――――――――――――――――――――――

名前:フク  

クラス▼

【オリジン・スパイダーLV.30】

スキル▼

【捕食】▼

 【大食LV.19】【簒奪LV.18】

【蜘蛛】▼

 【毒牙LV.24】【蜘蛛糸LV.28】【薬毒生成LV.15】【回復泡LV.20】

 【隠密LV.10】

【原初】▼

 【自在進化LV.18】【念話LV.10】【戦闘形態LV.5】【耐呪LV.8】

――――――――――――――――――――――――


レベル30だと!? 相変わらず成長が早いな、新しいスキルは【耐呪】だな。これがマドモンキーから簒奪したスキルか。ファスのものと同じスキルなのだろう。


「さすがフクちゃん。強いな、ボス猿との闘いでは頼りにしてるぞ」

「私も負けてられません」

(エッヘン)


 ここいらのマドモンキーは一通り狩り終えたし、そろそろあのボス猿と決着をつけるときだと思う、なぜならば。


「さすがにもう芋は飽きた。早くダンジョンから出よう」

「はい、流石にずっと焼き芋は辛いです」

(アノサル、タベル)


 芋に飽きたと感じてからさらに三日間も芋だけの生活だったのだ。そして現状手に入りそうな肉はただ一つ。

 待ってろよボス猿。芋生活脱却のため犠牲になってもらおう。


次回ボス猿と戦闘です。

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます励みなります。

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― 新着の感想 ―
なんで雑魚のくせに前に出ようとすんの?
焼き芋に飽きたら焼き猿。
[気になる点] 今更気付いたけど回復泡って蜘蛛としてのスキル扱いなの? 原初枠だと思ってた。 元々ヒールサーペントは回復粘液だったのが蜘蛛の特性として泡に変化したってことなのかな
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