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第二話:剣持ってる人間に勝てるわけないだろいい加減にしろ!

 朝ごはんは豆のスープで結構おいしかった。


「まずは、スキルの確認を行いましょう」


 とローブの召喚士らしい人に言われ、拳士のスキルを調べることになった。なんでも他のクラスならともかく『拳士』という職は貴族の間では広まっておらず、する価値もないとされているようで、アグーさんとこでも把握できてないらしい。

 学生服では動きにくいと訴えると、単純な作りのシャツとズボンがでてきたので着替える、そのあと中庭に連れていかれた。周囲を観察してみる。一応ここは屋敷なのか? ちゃんとした建物には違いなさそうだけど。

 二階の部屋の窓からはアグーさんがのぞいているし、お抱えの騎士団?なのか甲冑をきた人がギャラリーが相当数いた。

 

 視線を感じながら訓練用の巻き藁っぽいものを試しに殴ってみると、おお、痛くない。楽しくなって突きだけではなく、手刀をつかった横面打ち、正面打ちなんかもしてみたが手に負担は一切なかった。これが多分【拳骨】の効果だな。


「おい、ふつうに殴っているだけだぞ」

「スキル使ってアレかよ、剣士の【重撃】なら余裕でへし折れるぞ」

「どんなスキルかしらんがしょせん【拳士】のスキルだ底が知れてるよ」


 ……とかいう声が背中から聞こえてくるけど無視だ無視。

 とりあえず今検証している【拳骨】だけど単純に拳が固くなるスキルかと思いきや、そうではないと思う、なぜならそれなりに本気で殴っているのに肘や肩にもほとんど負担がないからだ。

 ということはこの拳骨ってスキルは突きの強さに応じて体全体の強度を上げるスキルってことになる。

 昨日の鑑定紙のように魔力を使っているという感覚はないからいわゆるパッシブ系のスキルなんだろうか?


 試しに魔力魔力と念じて使ってみるとほんの少しだけ硬度が上がったような気がする。つまり自動で発動はしているが魔力を消費することで強くすることもできると、おそらく弱いスキルなんだろうけど、もといた世界の感覚だとかなり有用だと思う。

 

 他のスキルを試そうとすると、後ろから声をかけられた。


「おい、坊主」


 振り返るといかにも歴戦といった相貌の甲冑を着込んだおっさんが剣を足もとに投げた。


「武器が装備できないらしいが、どの程度か調べろと指示があった。持ってみろ」


 刃引きをしてない武器を持つのは初めてだった。ロングソードだと思う、形状的には刺すほうが適してそうな武器だ。


 普通に持ち上げられたので正眼に構えると、「心得があるのか」とつぶやかれた。いえ適当に構えているだけです。西洋の剣なんて使い方わかるわけがない。


「振ってみろ」と言われたので振ろうとすると、動けない。持つ分には問題ないのに振ろうとすると体が動かなくなる。


「振ろうとすると動けなくなります」といって武器を返そうとすると、おっさんが腰に下げていた自分の剣で切りかかってきた。持っている剣を使って防ごうとするが動けない。防御で使うのもダメなのか。


 そのまま動けず止まっていると刃がピタリと首にあたる寸前で止められた。


「防御も無理と」


 いやいや、たとえ動けても素人が今の奇襲に対処はできないと思う。

 

「なら素手だな。拳士だったか?俺はスキル無しでいい。どっからでもかかってこい」

「……剣はありなんですか?」

「そりゃそうだろ」


 なにをさも当然という風に言ってんだこのおっさんは、体格も筋量も上でさらに防具と剣を装備している人間にどうやって素手で勝てと?

 相手が防具を着ている以上、僕のへなちょこな打撃では反撃のチャンスを与えるだけ、拳骨で剣を受け止められるか? 多分無理だろうなぁ、となると捕り技か入り身で崩して投げ技に行くしかない。


 おっさんは左足を前に剣を担ぐように構えている。

 刀身が見えにくく間合いがわからない。

 タックルで足を取りにいくか? いや鎧の重量もあるし、ろくに練習してないタックルじゃ倒せない。


 諸手捕りで右手を取って四方投げか呼吸投げにしよう。プランを決めて半身に構える。向こうのほうがリーチがある以上、後の先を狙うしかない。


 おっさんはニヤニヤ笑いながらこっちをみている。重心はしっかりしているし、剣を握る手は脱力している。強いなぁこの人。この感じはじいちゃんに稽古をつけてもらっているときによく似ていて思わず笑ってしまう。


(手加減してくれよ)


 そう思いながら、右足から踏み込む、否、踏み込む前におっさんが踏み込み剣が振り下ろされていた。


(速っ)


 体重が残った左足を軸に体を開き躱す。

 捕った! と思ったが左手で相手の前の手を掴む前に、右の視界に剣脊が見え瞼の裏で火花が散りそこで僕は意識を失った。


 つまり今のやり取りを客観的に描写するとこうだ。

 おっさんの一太刀をよろめくように躱したが、体重移動と筋力にものをいわせた切り上げにより吹っ飛ばされ、のされてしまい。

 ギャラリーにはなすすべなく吹っ飛ばされたように見えたわけで(じっさいそうであるけど)つまりローブの責任者がいったような奇跡はおこらず。鑑定紙が示すように僕は使えない転移者、いわばソーシャルゲームのガチャの外れのようなものだという烙印をおされてしまったのだった。


ヒロインは次回でます。……多分。

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剣を振れないってなんだよ
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