第二百六十三話:牢屋にもエルフメイド
「こっちです。ミナ様、この先に囚われたエルフ達の牢屋があります」
ミナさんが描いた地図に全員の情報を合わせて、囚われている他のエルフ達の救出をする為に通気口を移動する。
「おっと、先頭は僕が行きます。フクちゃんは後ろをお願い」
「はーい」
何があるかわからないからな、砦の中はリザードマン達の吠え声が響き、バタバタと足音が響く。
人質に何があるかわからない。早く移動しないと。【ふんばり】と【掴む】で滑るように前へ進む。
「ちょ、早すぎますわ。まるで、ゴキブ……さ、流石に失礼でした」
背中からなんか聞こえるが無視しとこ。
先に進んで安全を確保しながら、しばらく進むと、目的の場所へたどり着いた。
「牢屋と詰所だ。城伯の世話をするエルフ達はそこにいる」
「じゃあ、とっとと倒します」
詰所の上と思われる天井を踏み抜こうと足に力を込める。
「待て。ここで戦ってしまえば応援のリザードマンもすぐに来るだろう。詰所のリザードマンを倒しても無駄だ」
確かに、敵からしたらまず人質を奪いに来るか。
「でしたら、先に牢屋に行きますの。退路を確保します」
「姫様。しかし、牢屋は……」
「迷っている暇はありませんわ。行きますの」
「了解」
「モグッ」
歯切れの悪いハルカゼさんを引っ張って隣の牢屋へ移動しようとするが、換気口が途切れている。
「当然牢屋は逃亡防止の為に、通気口は防がれている」
「ならこの場所から降りよう」
「先程のようにぶち抜く気か? バレるぞ」
「見ていてください」
【呪拳:浸蝕】を発動、【手刀】の形を鉤爪にして、少しずつ掘る。
犬が穴を掘るように少しずつ削った天井を後ろにかきだしてと、【浸蝕】の効果で天井はドンドン脆くなり、薄くなった部分を【掴む】で直系五十センチほど掴み取ることで穴を開けた。掴んだ天井部分を脇に置いて、下を覗く。見た所リザードマンはいない。詰所からも気配は無いし、他の場所に行っているのだろうか? これなら、ぶち破ればよかったな。
「よしっ、完璧。行けます」
「さすがマスター」
「モグモ~」
「結晶壁ではないとはいえ、鉱山の岩をくりぬいた場所だぞ……素手で破れるものじゃないだろう……」
「穴掘りにかけては、シンヤ殿は超一級ですの。……とはいえ、ここまで鮮やかですと、冒険者というより盗賊の方が向いているのではなくて?」
「そこっ、うるさいですよ」
フクちゃん以外を抱えて飛び降りる。
牢屋を見ると、中に石像が二体、他にはメイド姿のエルフが三人ほど不安そうに壁側に固まっていた。
「皆……あぁ、カノコ、ミレイ……石像にされて…グッ、他の子は大丈夫ですか?」
「ミ、ミナ様!? どうしてここに!?」
「あっ、私はミーナです。メイドのミーナですわ」
「説明は後です! さっさと脱出しましょう。ヌンっ!」
【ハラワタ打ち】で錠前だけを壊し、中へ入る。
閉じ込められた影響か全員ふらついている。アイテムボックスからポーションを取り出して配る。
「飲んだら、天井から脱出します。石になった人たちは後で【聖女】を呼んで解呪します」
「え、えと」「どうして」「私達は置いてお逃げください、ミナ様」
「いいから、言う通りにするのですわ。ほら、ポーションをお飲みなさい。……痩せていますわ。可哀そうに」
エルフ達の衣装はハルカゼさんと違い汚れており、元々細身のエルフだがさらに痩せている印象だ。
「ダメだ、冒険者。全員足が弱っている。……私も体力が落ちてしまっている。とても脱出なぞできる状況ではない、置いていけ」
「そうです。足手まといにはなりません」「覚悟はできています!」「すぐにお逃げください」
ここに来て、士気が低い。僕じゃだめだ。ミーナさんを見ると……青筋を浮かべていた。
えっ? 怒ってらっしゃる?
「黙りなさい! ここに来るまでに……モーグ族達が犠牲になっています。そこにいるモーグ族を見なさい、彼は家族や他の同族のドロップであるツルハシを使ってまで穴を掘ったのです! 何本も、何本も折れても必死にシンヤ殿と穴を掘ったのです。その上、ご自分の仲間を置いてエルフを先に救出するようにと言っているのです! これほど心砕いてもらっているのです、諦めることなど絶対にありえません! 貴方たちも誇り高いエルフならば、身命を賭して恩に報いる覚悟を決めなさい! 這ってでも脱出し、砦の情報を外に運ぶのです」
「モグ、モググ~」
指さされたモグ太が怖がって僕の後ろに移動した。それほどまでにミーナさんの言葉は真に迫るものだった。マジで、凄いな。森で泣いていたエルフとは思えない。その言葉を受けて、ハルカゼさんを含む四人のエルフメイドが頭を下げた。ハルカゼさんが口を開く。
「……私達が間違っておりました。この足が折れようとも進みましょう。しかし、ミーナ様。貴方の身が大事なことには変わりません。その時がくれば、私達一同、盾となって前にでるでしょう。それだけはお許しください」
「その必要はありません。盾になるのは、僕の役目です」
とか言っていると、背後から吠え声と足音が響く。チッ、リザードマンが来たのか。
長くなったのでここで区切ります。次は明日投稿できると思います。
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