表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第九章:ニグナウーズ国編【ツルハシと攻城戦】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

281/526

第二百六十一話:薄明りの逃走経路

 さて、ハルカゼさんからある程度情報を聞き出せたし後は……そこでのびてる城伯をどうにかするか。


「ミーナさん。そこの城伯どうします?」


「えっ、まだ生きてましたの? 裏切者は耳を切り落として、洗いざらい吐いてもらいますわ」


 冗談かと思ったけど目がマジだった。泣き虫メイドさんかと思っていたが、わりと苛烈な一面もあるようだ。……異世界の倫理観ってのもあるだろうけど。


「そんな、物騒な……」


「モグモグ」


 モグ太も頷いている。でも確かに情報を聞き出すのはありだな。冒険者ギルドにスパイが潜んでいるみたいなことを言っていたし、役に立ちそうだ。


「食べるの?」


「人は食べたらダメだぞフクちゃん」


「わかったー。こいつ不味そう」


 虫の餌という単語に反応したフクちゃんが、指先で城伯を突いている。


「うぅ……」


 どうやら、ツンツンされて目を覚ましたようだ。すぐにフクちゃんが糸で縛る。


「フクちゃん、魅了できる?」


「……こいつ気持ち悪いからヤダ」


 プイっと横を向かれる。まさかの拒否、まぁ気持ちはわらんでもない。しょうがないので【呪拳:鈍麻】でもかけようか。


「や、やめろ! わかった、なんでも話す。命だけは助けよっ!」


「そりゃ、話は早い。さっき通路で話していたギルドにいる内通者について話してもらおうか」


 【威圧】を発動しながら、詰め寄ると城伯はすぐに口を開いた。


「聞いていたのか……奴はカルドウス様の寵愛を受けた――グッ、ウガァアア」


 城伯が唐突に苦しみ、胸を抑える。次の瞬間、紫の結晶柱が胸から突き出てきた。


「下がって!」


「きゃあああ」


「ミナ様っ!」


「モグミュ!」


 とっさにミーナさんとハルカゼさんを庇うが、城伯がそのまま前のめりに倒れて沈黙する。


「口封じ……自殺するって柄ではないから、なんか仕込まれていたのか」


 背中は綺麗、ということや体の内部から貫かれている。ひっくり返すと体内から結晶が生えてきたようだ。ギルドのことと言い、この手の魔術に長けている使い手がいるのか?


「……ここまでするなんて、敵は一体何なのですの?」


「裏切りに対する術式を心臓に仕込まれていたな。人族が奴隷に用いるものと似ている。これを仕込んだのは相当な手練れだぞ」


 ミーナさんが半泣きでこちらに問いかけ、ハルカゼさんが死体を調べる。


「敵はカルドウス……デーモンの魔王種を信奉する一派です。僕の師の仇でもあります」


 血の匂いには慣れたが、目の前で人が死ぬのはやっぱりキツイ。タメ息をついて、血を拭う。


「伝説のデーモンか? まさか、過去の勇者が討伐したはずだ。そんなおとぎを信じるとでも?」


 ハルカゼさんが怪訝な顔をするが、僕も詳しいことはわからないし説明する時間が惜しい。


「今は話す時間が無いです。それよりもまずは他のエルフの居場所を教えてください」


「……そうですわ。今は皆を助けることが重要です」


「ミナ……ミーナ様お待ちください。砦に囚われたエルフを助けるとおっしゃられておりましたが……」


「エルフだけではありません。モーグ族も助けだし、この砦を内側から切り崩すのです。今回はその為の情報収集に潜入しているのですわ」


 涙を拭い胸を張るミーナさんだったが、ハルカゼさんは沈痛な面持ちで首を横に振る。


「不可能です。せめて今の面子だけでも脱出をしましょう。他のエルフが囚われている砦の地下牢は堅牢かつ鉄壁です。苔芋虫の出る隙間すらありません」


「地下牢への道筋と状況を教えてください」


「話を聞いていたのか冒険者っ! 不可能と言ったはずだ。石になったエルフとまだ動けるエルフは、ここから東の通路の先だ……通常のリザードマンに加え、おぞましい紫の鱗をしたリザードマンが守っている。いくら手練れでも、奴らをこの人数で倒すのは不可能だ。砦の騎士たちでさえ、何もできず……」


 うーん。説明がめんどくさい。どうしたものか考えていると、フクちゃんが顔を上げる。


「マスター。敵がくる」


「マジっ? 天井に張り付くぞっ」


 フクちゃんの『糸』に反応があったようだ。混乱するメンバーを抱え、【空渡り】で天井まで飛び上がり、張り付く。すぐに派手な足音と壁が破壊される音が響く。勢いよく扉が開かれ、リザードマンが入って来た。


「ギシャアアアアアアア」「シャアアアアアア」


 四体ほど入って来ると、城伯の死体を見て大声で咆哮を上げた。


「ギャアアアアアアアアア」


 砦にリザードマン達の遠吠えがこだまする。


「な、なんですの?」


 フクちゃんの糸で天井に掴まりながら、ミーナさんが震える。その横でハルカゼさんが顔を青くした。


「最悪だ。侵入者の存在がバレた。この砦の全ての入り口が塞がれ、外部のリザードマン達も戻って来るぞ」


「なるほど、城伯に仕込まれていた自害する術式はそのまま警報になっていたのか」


「落ちついている場合か。お前や私ならば何人死のうが構わないが、ミーナ様は……」


 小声のままに、顔を寄せてくるハルカゼさんの肩にミーナさんが手を当てる。


「静かにするのですハルカゼ。ここは敵地ですのよ、そして、誰も死んではいけません。その為に私は戻ってきたのです。見ればこの部屋は手入れも行き届いていました、この区画を管理しているエルフが貴女以外にもいるはずですの、この騒ぎに乗じてその者達を救うのです。石になった者達もきっと助け出します。良いですか、私達は助けるために戻ってきました」


 森で静かにするように注意したことを今度はミーナさんが言っている。


「マスターのセリフ、まねっこだね」


「ミーナさんも横穴堀りを耐えていたからな。成長もするさ」


「モグモっ!」


 未だ泣き虫だけど、森で泣いていた時よりもずっと強くなったと思うよ。

 下を見ると、リザードマン達は僕等を見つけられないようだ。天井を這いながら踏み抜いた穴に戻って通気口へ入る。

 リザードマン達から離れ、通気口の中でランタンを灯す。ミーナさんが羊皮紙を広げた。そこには大まかな砦の内部が描かれており、ハルカゼさんがそれを指でなぞる。


「ここから少し先に使用人の為の居室があります。そこに三人ほどメイドがいます」


「すぐに助けますわ。それとハルカゼ覚えている限りで構いませんから、通路と部屋を教えてくださいまし、王族が使う隠し通路を利用して最適な逃走経路を考えますの」


「モグモッ!」


「モグ太も砦の後ろの道なら少しわかるって」


「教えてください。私、絵は得意なのですわ」


 至る所でリザードマン達の吠え声が響く中、狭い通路の薄明りの元、囚われの人達を救出するための通路を話し合う。ここまで来たのなら、皆助けて見せる……あれ? 一応今回は潜入のはず……ま、やるしかないか。

更新が遅れてすみません。もうちょい速度を上げられるように頑張ります。


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションが上がります。

感想&ご指摘いつも助かっています。感想をもらうと更新頑張れます。お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 合気道や躰道などの技をキチンと描写しているのは好感度高いです。 [気になる点] リザードマンに目突きから脳破壊とかちゃんとできているのに、いまだに「目の前で人が死ぬのはやっぱりキツイ」とか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ