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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第九章:ニグナウーズ国編【ツルハシと攻城戦】

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第二百四十八話:ツルハシとモグラ

 一晩明けた早朝。干し肉を齧った後は、ミーナさんに木々を見てもらいながら森を移動する。

 なんか、木の背丈が低くなってきたようだ。


「木々を飛び移るの逆に目立つか。ここからは歩きにしよう。フクちゃん、警戒をよろしく」


「あいあいさー」


 フクちゃんは昨日から、少女モードに切り替わっている。ミーナさんへの警戒心がある程度解けたようだ。


「地図によるとこの辺りは、黒鉄樹が多いらしいですわ。背が低い代わりに、地中へ長く根を張る種ですの。真っすぐ生えますし、しなやかで丈夫なので、エルフの弓の材料ともなっています。ほら、あの幹が太い木がそうですわ。モーグ・コボルト族はこの辺りで目撃されているようですわ。もともと、この辺りはエルフの集落があったのですが……リザードマン達の勢力が拡大したことで住民は近くの街へ移動していますの。この辺りも、結晶に浸食されてますのね」


 黒味がかった幹の一部に紫の結晶がのぞいている。……砦から数キロも離れているのに、『結晶竜』の影響があるようだ。

 

「砦を追われたモーグ族は、どうしてここの辺りに来たんだろう?」


「モーグ族は小柄ですから、背の小さな木が密集している場所の方が、身を隠せると思ったのでしょう。もしくは、ただ単に逃げた先がここだったのかと思いますわ。地図に描かれているのはここまでです」


「じゃあ、足で探すしかないか。フクちゃん、なにかわかるか?」


 今日のフクちゃんは、白いニーソックスに白いワンピース、肩甲骨まで伸ばした雪白の髪の姿だった。深い森では到底生きていけないような儚い少女の姿は、非現実的で幻想的だ。

 紅い目で周囲を見渡し、フクちゃんは顔をしかめて一か所を指さした。


「……血の匂い」


「何かあるかもな。ミーナさんは、僕とフクちゃんの間に入る形で移動してください」


「かしこまりました。ですわ、わたくし昨日のような失敗は致しません」


 やや汚れたメイド服で気合を入れ直す、エルフメイド……やはり心はタフなようだ。

 リザードマンを警戒しながら、日光がわずかに届く程度の高さの木々の間を歩くと、先程ミーナさんが言った集落のようなものを見つけた。ひどく荒らされており、苔と土と木の根の他に黒い血の跡が散っていた。これが人のものなら、一人や二人ではない、何十人もの人が死んでいたのかもしれない。


「……集落のエルフは避難したんじゃないんですか?」


「全員というわけではないでしょうが……それにしても多いですわ」


「違う。これ、魔物の血」


 フクちゃんが血の跡が着いた苔を拾って匂いを嗅ぐ。

 血の跡は、集落跡から続いているようだ。


「魔物の血、ということはモーグ族かもしれない」


「……砦から逃げて、集落に逃げ込んだ後に襲われたのでしょう。可哀そうに」

 

 砦の内部を案内してもらうのは難しそうだ。しかし、どうして血の跡が別の場所に移動してるんだ?

 血の跡が続く道は、砦の方だった。血の跡を辿ると、奇妙な物が道に落ちている。


 それは、ツルハシだった。折れているものや地面に突き刺さっているもの、大きさもマチマチの様々なツルハシが道に落ちていた。


「ツルハシ? なんでこんなものが?」


「そういえば。砦にいた時に見ましたわ。モーグ族は『コボルト』つまり、鉱山に住む魔物の種ですの、鉱山を掘る際はツルハシを使っていましたわ」


「彼らの仕事道具か」


「えぇ、モーグ族はそのツルハシをとても大事にしてましたの」


「となると、やっぱりモーグ族は全滅したのか。仕方ない、僕等だけで背後から入れる場所を探してみよう」


「そうですわね。リザードマンが出入りする場所は、結晶柱で視界が通らない場所を案内しますわ。ただ……どうやってもあの結晶を突破できません。私の大事なお友達は今も砦の中で……」


「なら、早く助けてあげないとですね。まずは、リザードマン達に見つからないように砦まで移動しないと」


 俯くミーナさんに声をかけ、道を進む。血の跡を辿ると窪地へ抜ける森の出口についた。

 脇に隠れて、窪地を観察してみる。


「エルフの軍に注意が向いているので、背後は本当に補給の為にリザードマンが出入りしているだけだな」


「コロス?」


「ダメですわ。軍に注意が向いているとはいえ、この辺りは完全にリザードマンに制圧されていますわ。もし、戦闘になれば奇襲なんてできなくなります。そもそも、ここまで近づけたのも凄いことですのよ」


 ミーナさんが驚くが、ファスの索敵が無いとはいえ、フクちゃんの鋭い感覚あってのことだろう。

 まぁ、もし見つかっても仲間を呼ばれる前に殺せば、死体はフクちゃんが食べてくれるしね。


「といっても、窪地は流石に目立つから、夜を待って移動するしかないか」


「ボクが【魅了】しようか?」


「そうか、それがあれば入れるかも」


 夜まで待つのも暇なので、森の中をうろついて一匹のリザードマンを探す。


「みつけたー」


「【呪拳:鈍麻】」


 糸で縛り上げ、【鈍麻】で動きを奪う。


「じゃあ、フクちゃんよろしく」


「あいさー。『下僕となれ』」


 フクちゃんの瞳が怪しく輝く。行動を封じられたリザードマンの瞳が目に見えてトロンとし、だらしなく舌を垂らす。一発で魅了状態に引き込んだみたいだな。


「上手く行ったよー」


「流石フクちゃん、じゃあ、そのリザードマンに砦近くまで隠してもらおう」


「……恐ろしい力ですわ。A級冒険者は伊達じゃないですの」


「ほぼフクちゃんの力だけどね」


「エッヘン」


 というわけで、ミーナさんはフクちゃんが作った袋に入ってもらい。僕とフクちゃんはリザードマンに張り付いて窪地を移動することに。

 他のリザードマン達の視線を避けながら【掴む】で張り付く。幸いなことに、リザードマン達の視力はあまり良くないらしい。これなら、意外と簡単に侵入できるかも。

 砦が徐々に大きくなり、結晶の柱が多く生えている場所まで近づいたときに、異変は起こった。

 

「……グゥエギャィイイイイイイ」


「うわっ! どうしたっ!?」


「ふぇへ!? どうしたのことですか?」


「うーん、ヤバイかも」


 突然、リザードマンがのたうち回り始めた。とっさに袋を回収して、ミーナさんを取り出す。


「ギャアァアアアアアア」


 周囲の結晶が光り始め、リザードマンが立ち上がった。目鼻から血を流し、敵意を込めてこっちを見ている。【魅了】が解けたことは間違いないようだ。


「仲間を呼ばれると厄介だぞっ」


「コロス」


 リザードマンが仲間を呼ぶ前に、フクちゃんが首を跳ね飛ばす。


「ピィ! ふ、ふぇ」


「泣いたら、縛る」


 ショッキングな光景にミーナさんの目尻に涙が浮かぶが、フクちゃんがひと睨みで止めた。

 僕も怖いぞ。


「な、泣きませんですわ」


「とにかく、この死体はアイテムボックスに入れて。柱の陰に、隠れよう」


 バレたかと思っていたが、出入口から離れたルートだったために、僕らのことはバレなかったようだ。一息ついて、三人で顔を寄せる。


「なんでフクちゃんの【魅了】が解けたんだ?」


「たぶん、柱のせい」


「魔力の流れを感じましたの。砦の影響か【結晶竜】の力で、異常な個体にはショックを与えているのでは?」


「へぇ、流石エルフですね。僕にはそこまで魔力の流れは読めなかったです」


「一応私、おう――えっと……」


「おう?」


「オウ?」


 話の途中でダラダラと汗を掻き始めるミーナさんを、フクちゃんと不思議そうに観察する。

 というか、この人もしかして……まさかな。


「お……王女様直属ですからっ! それはもう優秀なメイドなんですのっ」


 指先を当てて胸を張る。まぁ、確かに魔術も強力そうだったし、エルフとしてはエリートなのかもしれない。閑話休題、話を戻す。


「とにかく柱のせいであることは間違いなさそうだ。魅了で侵入するのは無理か。もう少し近づいて登れる道が無いか調べましょう」


「でしたら、あっちの柱が密集している所にしましょう。隙間に入ればリザードマン達から見つけられにくいですわ」


 反対することもないので、柱が密集している場所を通りながら鉱山砦の背面に到着した。

 下から見上げる砦は途方もなく高い、しかもリザードマン達が見張りをしていて、空からの侵入や登るのも難しそうだ。フクちゃんの隠密ならいけるかもしれないが。


「多分ムリ」


 とのこと。フクちゃん曰く、砦の背面の柱と結晶竜の感覚はリンクしているらしく、たとえ【隠密】状態でも、触れば侵入がバレるらしい。


「うーん。困ったな。やっぱりリザードマン達の出入り口を強引に突破する方法しか思いつかないや」


「出入口はリザードマン以外は入れませんのではなくって?」


「試してはないけど様子を見る限りその可能性が高そうです。どうしよう」


「どうしようー」


 フクちゃんも首を捻る。可愛い。


「フクちゃん、柱以外の結晶の壁は触って大丈夫なのか?」


「だいじょぶ」


 フム、それなら強引に突破できないか試してみるか。柱が生えていない、紫結晶の壁に手を当てる。


「じゃあ、殴ってみよう」


「へ、ちょっと、お待ちにな……」


「セイッ!」


 鈍い音が響く。……ピクリとも動かない。【拳骨】で固めた拳でなければ、砕けていただろう。

 ちょっと悔しい。ならば、次は。

 【手刀】を発動して、貫手を壁に充てる。ビキリと音がして、折れたのは僕の指先だった。


「痛っ、ダメだ。紫鱗種のリザードマンの鱗と同じで全く砕けないや」

 

「マスターダイジョブ? あわあわ~」


 フクちゃんが口から泡を出してくれたので指先回復完了。それにしても、マジで砕けないな。


「ありがとう治った」


「でたらめな回復速度ですわ。しかし、来たのはいいですが手詰まりですわね。やはり、この強固な結晶の壁を越えて奇襲なんて無理だったのですわ……」


「……」


 三人で無言になる。何か方法はないのだろうか?

 

「……音がする」


 不意にフクちゃんがそう呟くと、子蜘蛛の姿となり、結晶の柱が密集する場所に戻っていく。

 追いかけようと近づくと【念話】が響いた。


(マスター、穴があるよ)


「穴?」


「なんですの?」


 ミーナさんをつれ、ひどく狭い結晶の間を四つん這いで進むと、確かに砦の壁に横穴が開いていた。

 この強固な壁にどうして穴が? 入り口でフクちゃんが少女の姿に戻り、穴の奥を指さした。


「音がするの」


「わかった。慎重に進もう」


 入り口は狭い穴だったが、中は結構広い。結晶は薄く輝いており辛うじて中を見渡すことはできるようだ。

 砕かれ、放置された結晶に無数の折れたツルハシ。よく見れば折れてないツルハシもある。そして、奥から響く甲高い音。


「誰かが、穴を掘っているのか?」


「そんな馬鹿な。無理ですわ。先ほども試したでしょう、いかなる魔力も物理攻撃も防ぐ結晶壁ですのよ」


 それに穴をあけるなんてどんなヤバイやつなんだ。横穴は入り組んでおり、曲がり角がいくつかあった。曲がり角の先を見ようと顔を出すと。


 ブニュリ。


「うおぉ!!!」


「モググっ!」


 同じくこちらを覗こうとした顔に当たってしまう。


「モ、モググ~」


 顔に手を当てて、悶えているのはとても小柄なツルハシを持ったモグラ型の魔物であった。

次回からレッツ穴掘りが始まります。


当作品が100万字を突破しました。ありがとうございます! 私の中でこの作品を書き始めた時からの一つの目標でした。ここまで書けたのはひとえに読者の皆様の応援のおかげです。ブクマ、評価、感想、レビュー、誤字訂正、メッセージもいただき、いつも励まされています。これからも真也君達の冒険をしっかり描いていくので、どうぞよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「でたらめな回復速度ですわ。しかし、来たのはいいですが手詰まりですわね。やはり、この強固な毛結晶の壁を越えて奇襲何て無理だったのですわ……」 誤字ってません? [一言] モグラ! …
[一言] 100万字、おめでとうございます! 毎回楽しみにして読ませていただいてます!
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