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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第二章:初めてのダンジョン編【秘拳と爆炎、そして芋】

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第二十四話:初めてのダンジョン!!

 またしても醜態をさらしてしまった。勇者(茶髪アシスト有り)に負けた挙句、悔し泣きしてそれを慰めてもらうという……あぁ恥ずかしい。

 何となく気まずくて帰りの馬車の中でフクちゃんを膝に置いて撫でる。ファスもなにやら黙っていて非常に肩身がせまいぞ。


「…………」←僕

「…………」←ファス

(ナンデ、ダマッテルノ?)


 フクちゃんよ、雰囲気を察しておくれ。


「あぁ、すみません。貴族達のことを考えていたんです。そうだご主人様にも伝えたいことが」


 ありゃファスは考え事をしていただけらしい。空気が読めてないのは僕だったのか。


「戦いの後で心苦しいのですが」

「いや、話してくれ。ケガならもう痛くないしな」


 強がりじゃなくて本当に平気だ。桜木さんの回復術は大したもんだ、馬車でフクちゃんの【回復泡】も傷に擦り込んだしな。


「では、ご主人様が持ち帰ってくれた夜会の食事に入れられていた毒の内容がわかりました。どうやら気分を高揚させ思考を鈍らせるものだそうです。フクちゃんが昨日の毒を再現して屋敷の人間に対して試した結果わかりました。毒というより薬といったほうがよいかもしれませんが」


 と小声で言ってきた。えぇ……。何してるんですかファスさん。


「えーと、大丈夫かそれ、問題ないのか」

「転移者に食べさせるものです。危険度は低いでしょうし、どんな毒か把握しておくことは必要です」

「そりゃそうだろうけど、というかフクちゃん、再現ができるならそんな物騒なことしなくても、その毒がどんなものかわかるんじゃないのか?」

(ビミョー、チョットワカルケド、ワカラナイコト、イッパイ)

「詳しくフクちゃんに聞いたのですが、えーとそうだ料理に例えましょう、毒の再現というのは調理の過程をすっ飛ばして料理の完成品をだすようなもので、通常の生成に比べると調理の方法や味付けがわからないという感覚で、その毒がどんなものかわからないみたいです。毒を理解するためにはフクちゃんが自身をその毒に侵されるか人に使うかする必要があるみたいです」


 なんか最近、僕のいないところで二人がよく話しているようでちょっと寂しい。仕事で忙しい父親ってこんな感じなのだろうか。


「なんとなくわかったけど、過激だなぁ。次からそうするときは僕に試してくれよ。耐性があるから大丈夫だし」

「その場合は私が実験体になります。実はそうした理由は他にもありまして。ご主人様の朝食にもこの毒が混ぜてあったのです。これもフクちゃんが屋敷を探索して見つけました」


 フクちゃんの有能さが天元突破しそうだ。


「伯爵との食事に混ぜてあったのか? そういややけに体調を気にしてたな」

「おそらくは転移者がパニックを起こさずにするための方策でしょう。洗脳のためではないようです、もちろん全ての貴族がそうしているわけではないでしょうが、あまりいい気分ではありません」

「その毒に麻薬のような依存性は?」

(ナイヨー)


 膝から返事が返ってきた。それでもいい気はしないな、でもそれを誰に言うというんだ。とりあえず後で屋敷にくるという悟志と桜木さんに伝えてはおこうか。


「伯爵は理解しているのかな?」


 いい人だと思っていたのだけど、だとしたらショックだなぁ。いやある意味転移者のことを思ってやっているとも考えているのだろうか。


「知らないというのは不自然だと思います」

「だよなぁ。後で悟志と桜木さんに教えないとな」

「あの、ご主人様。闘技場で見たお二人は、その……ご友人ですか?」

「そうだよ、数少ない僕の友人だ」

「そうですか」


 おっ、ちょっと嬉しそう。どこに反応したんだ? まぁそれは置いといて。うーん、これからどうするかなぁ。

 この件だけで伯爵を悪人だと思うのは少し性急な気がするが、それでも警戒をしないわけにはいかないだろう。あの赤毛メイド、じゃないやお姫様はこのことを知っているのかそれも気になるところだ。

 あぁ面倒くさい。やはり逃げるのがいいのではないだろうか?

 そんなことをファスに話しているとあっという間に屋敷に戻ってきてしまった。

 とりあえず部屋に戻ってじっくり考えよう。


「あの、ご主人様。私、実は無断で抜け出してしまったのですが……」

「別に正面から戻ればいいだろう、僕と一緒ならそう強くは怒られないさ、いざとなれば僕も謝るよ」

「すみません」


 シュンとして申し訳なさそうにしているのがかわいくてフード越しに頭をなでると少し気持ちが和らいだようだ。


 実際のところ怒られるなんてことはなく屋敷に入ると初めて見る執事が現れて、すぐに医者を手配すると言われた。やんわりと断って部屋に戻るというと、まだ部屋の準備が整ってないから別の部屋で休んでほしいとのこと。

 まぁ勝手に帰ってきちゃったしな。伯爵のことを聞くと勇者が主役の夜会が開かれておりそっちに参加しているらしい。

 言われるがままに案内された部屋に入ると先客がいた。ハゲ頭にチョロンと乗った金髪、でっぷりとした腹、アグー子爵だ。そしてジャイ〇ンに付き添うス〇オのようにソヴィンと呼ばれる細身の召喚士が立っていた。

 

 無言で戻ろうと振り返るが扉が派手な音をたてて閉まり、ガチャリと鍵がかけられる。


「任せたぞ」


 一歩前に出て、フクちゃんにファスを守れと言外に指示を出す。


(マカセテ)


 と念話が飛んでくる。さすがフクちゃん。ファスは僕が守りやすいように真後ろに位置どる。


「ご主人様、周りに結界を張られています。発動されるまで気づきませんでした申し訳ありません」


 と耳打ちをしてきた。


(マスター、ボクノイトガ、ナクナッテル)

 どうやらフクちゃんが事前に張っていた糸もなくなっているらしい。そのせいで警戒ができなかったと。

 これはどう考えても罠だろう。最悪この場で戦闘になるかもな、いやそれならこの場に二人が直接いるのはおかしいんじゃないか? 

 開手を中段に置くいつもの構えをとって、不意打ちにそなえる。


「そう構えんでくれ、転移者どの。ワシはあなたと話すためにきたのだ」

「じゃあ、今すぐに周囲の結界を解いてくれませんか?」


 集中して魔力の流れを読んでみると、足元に熱を感じる。なんかしているのは明白だ。

 アグーはグフフと笑い、こちらを見ている。その眼はやけになったギリギリの人間のそれだ、僕も首を吊るときあんな目だったのかな? 最悪のことを考え吸傷を発動する覚悟を固める、アグーはグフグフ笑い話を続ける。


「そうしたら、逃げ出してしまうだろう。何、そう時間はかからんよ。ほんの少しだけワシが犯した罪について聞いてもらいたいだけだ」

「罪?」

「ワシの領地は小さいが鉱山があり、先代からの蓄えもあって、まぁそれなりに裕福な暮らしをしていた。だがワシの代になって鉱山からの収入は減り使う金は増える一方だった。オークデンの家を守るためには新たな稼ぎが必要だった。そのあてを探していた折に転移者召喚を行える地脈の暴走が起こるというではないか、転移者がいれば国から報酬がでる、転移者が活躍すれば出資者にも困らない。だが残念ながらワシの領地に地脈の暴走による魔力溜まりは起きなかった」

「起きなかった? ならどうやって僕を呼んだんだ?」


 そう僕が聞くのと同時に後ろのファスが息を呑んだ。


「まさか、地脈を塞いだのですか!? そんなことをしたらどんな影響が起こるかわかりません!!」


 ダミ声を忘れているぞファス。まぁこの期に及んでは些細なことか。幸いアグーはファスの声については興味を持たなかったようだ。


「その通りだ、奴隷のくせに学がある」


 顎でソヴィンに話すように指示を出し、心なしか前見た時よりガリガリなソヴィンが前に出て解説を始めた。この隙に逃げられないもんかなぁ。 


「本来、地脈を塞き止めても地脈が暴走することはありませんがネ。しかし地脈が暴走しやすい基盤がある時期ならばちょっときっかけを与えてやれば地脈の暴走は再現できるのですよ。ただしそれは意図的に災害を起こすことと同義であり、重罪ですがね。そんなこと召喚さえ上手くいきさえすれば問題なかったのです。それがまさかこんなことになるとは……」


 知らんがな、というかそんな方法で呼んだから僕の能力がおかしくなったんじゃないか?


「結局その地脈の塞き止めで起きた『影響』のせいでワシの進退は極まったわけだ。そう遠くない未来にオークデン家は取り潰されるだろう。だがその前に貴様だけは、我が家の凋落の原因たる貴様だけは許さん!!」


 アグーのその言葉を合図にソヴィンが魔力を結界に流す、すると足元に魔法陣が浮かび上がり始めた。というか体が上手く動かない。


「うおっ、なんだこれ。ファス大丈夫か?」

「ぐぅ、大丈夫です。これは、召喚陣? いえ少し違うようです」

(コロス)


 フクちゃんが戦闘形態でファスのローブから飛び出す。驚いたのかアグーは後ろにひっくり返る、いい気味だ。しかしフクちゃんも満足に動けないのか床に打ち付けられる。


「フクちゃん大丈夫か? チッ、よくわからないが二人とも僕の近くにいろ」


 フクちゃんの近くに移動しながらファスを引き寄せる。最悪なにがあっても二人に【吸傷】を行えるようにしたかった。


「ソヴィン、変な魔物がいるぞ早くしろ」

「ご安心を。もう、転移に入りました。逃げることはできません」

「グッフッフ、貴様を呼んだせいで起きたことだ。それが貴様を殺すのだ!!」


 そのアグーの声を最後に景色が歪み体を浮遊感が包む。この世界に来た時に似ている、片腕でファスをもう片方の腕でフクちゃんを抱きしめ奇妙な感覚が過ぎ去るのを待つ。


 バッシャンと水に落ちる感覚、というか本当に落ちてる。一瞬パニックになるが足はつく。干潟のようなぬかるみにつかり全身泥だらけだ。確認するとファスもフクちゃんもちゃんと両腕の中にいた。


「ファス、フクちゃん。大丈夫か?」

「はい、ありがとうございます。あの陣は転移陣でしたか」

(ドロドロー)


 二人とも無事だ、よかった。あたりを見渡すと沼地のようだが様子がおかしい。なんと例えたらいいのかまるで森がその部分だけ腐り落ちたような光景がそこにあった。枯れ木であったり腐った木が散乱し地面は臭い泥が広がっている。そして立ち込める魔力の量が半端じゃない。闘技場の結界内のような密閉されたような感覚だ。


「ご主人様。これはおそらく……ダンジョン化した場所だと思われます。おそらくはこれが地脈を塞いだ影響かと」

(マスター、ココ、ボクガ、ウマレタモリノ、オクノホウ)


 ……なるほど、地脈を暴走させた結果起きたのがこのダンジョンで、場所としてはフクちゃんと出会った森の深部であると、なんなら森の浅い場所にオウガスパイダーがいた原因も多分このダンジョンのせいなんだろうな。


 息を深く吸って吐く。さぁ行こうか、僕は死にたくないんだ。死にたくない奴隷とかわいい従魔もいる。

 この世界にきて本当によかったと思う。


「よっし!! 行くぞファス、フクちゃん」

「はいっ!!」

(レッツゴー)


 こうして僕らのダンジョン攻略が始まった。

というわけでダンジョン攻略に乗り出します。次回ファスの呪いがついに解けます。

ブックマーク&感想ありがとうございます。本当に励みになります。

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― 新着の感想 ―
レベルアップしてこの国を完全に破壊し、貴族を全員殺す時が来ました。
【一言】 流れ的に危険な所(ダンジョン)から逃げるのかと思った。 ダンジョン攻略に向かうんかい!クラスレベル考えようぜΣヽ(゜∀゜;)
[良い点] まさかここからダンジョン攻略ですか。予想を裏切る展開にメッチャwktkしながら続きを読んでいきます。 [気になる点] 全くなし [一言] 作者様の書きたいように書かれていると思われる展開に…
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