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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第九章:ニグナウーズ国編【ツルハシと攻城戦】

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第二百三十六話:結晶鱗のリザードマン

 枝が絡みつき、日光を遮るほどの深い森の中を、ダバダバとしか表現できない足音で巨大な蜥蜴が爆走する。

 光る苔や光虫のおかげで、先が見えないほど暗いわけではないが、速度もあるせいで周囲を把握することは困難だ。馬とも違う乗り心地に、困惑しながら必死で横を見て叫ぶ。


「大丈夫か叶さん。もうひと踏ん張りだぞっ!」


「……うっぷ。馬は大丈夫だけど、これは無理、お、乙女の尊厳が口から出そう……」


「が、頑張るだ叶。なんで蜥蜴はダメなんだべ。ほら、継続回復(リジュネ)を使うだよ」


 蜥蜴に乗ってからすでに四時間ほど、青い顔で口元を抑える叶さんを、皆で励ましているのだ。

 

「酔い止めの薬も用意したのですが、なまじ毒耐性があるせいで、薬の効きも薄いようですね。最悪、眠らせて、フクちゃんに縛り付けてもらいましょうか」


「いいよー」


「そんな、恥ずかしいこと絶対いやだよ……うっぷ【星涙纏光】、うぅ、次に習得する奇跡は乗り物酔いにならないのがいい」


 洗い物のスキルの次は乗り物酔いのスキルをご所望らしい。女神様も困惑するんじゃない?


「お前等、もう少し緊張感は無いのか……」


 呆れたようにナルミがため息をつく。フクちゃんはファスの後ろに乗って、楽し気に周囲をキョロキョロとしていた。この揺れでもフクちゃんはまるで関係ないようだ。【ふんばり】とも違う、フクちゃん独特の体幹操作なのかもしれない。

 

「ご主人様、魔術の残滓を感じます。戦闘が起きている場所に近づいています」


「ナルミ、目的地はそろそろなのか?」


 ファスが周囲を確認してくれているが、僕にはさっぱりだ。

 ナルミは首を横に振る。


「前線はまだまだ先のはず、何かが起きている……ファス、詳しくわかるか」


「魔力が乱れて数百メートルしか見通せません、戦闘を感じる最も近い場所へ行きますか?」


「シンヤっ! 判断しろっ」


「無茶言うなっ! 状況がわからないんだ。どうするかはナルミに任せるよ」


「どうすれば良いかわかっているなら、こんなことは言わん! このパーティーのリーダーはお前だ。目的地に行くか、戦闘があった場所に行くか選べ!」


 えぇ……そんな無茶な。うーん、例えばゲームならこういう時どう選択するだろう?


「……情報が欲しい。ファス、戦闘があった場所に案内してくれっ!」


「承りました」


 ファスが蜥蜴を操り、前へ出る。金髪が靡き、ファンタジー映画のワンシーンのようだ。

 というか異世界なんですけどね!

 クネクネと入り組んだ道が不意に開けて広い場所へ出る。

 ここは巨木が多い場所らしく、木々の間隔が数百メートル単位も離れている。

 そんな場所にはギルドで見た結晶が至る所に生え、すでに戦闘は終了したのかローブ姿のエルフや獣人が十数人ほど倒れていた。


「叶さんっ。回復を」


「任せてっ。うっぷ……【星涙癒光】」


 蜥蜴に乗ったまま、片手でロッドを掲げると青白い光の粒が降り注ぐ。


「ぐっ、これは?」「傷が治っていく」「おい、起きろ……ダメだこいつは死んでる」「精霊の使いか?」「まて、あれは人族か!」


 間に合わず、死んでしまったものもいるようだ。起きたエルフ達は状況が掴めないのか混乱している。しかし、何人かは僕や叶さんを見て、表情を歪めて居た。

 うーん、やりづらい。仕方ないここは……。ファスにアイコンタクトをすると、めっさ嫌そうな顔をされた。両手を合わせて拝むが、プイっと横を向かれる。それを見てナルミが前へ出た。


「落ちつけっ! 私はイワクラ家の使者である。そしてこちらはイワクラ家が雇った応援の冒険者だ」


 そして、すかさずファスに合図。この状況下では流石に断りづらい、盛大にため息をついてファスが前へ出た。


「ハァ~~~~~~~。私達はイワクラ家より依頼を受けた冒険者……ですっ! 彼らは私達のパーティーメンバーです。何があったかを簡潔に説明してください」


 蜥蜴の上にまたがるファスを、木々の間からさす日の光が照らす。はっきりとよく通る声、エルフの中でも並ぶものがいないと断言できるほどの美貌。何よりその翠眼に皆一瞬魅了され、押し黙ってしまう。というか僕も見惚れちゃうな。絵になるってのはこういうことを言うのだろう。

 見慣れた僕ですらこんな調子なのだ、初めてファスを見たエルフや巨人族は完全に吞まれていた。

 実際は、奴隷を名乗れなくてプンスカ怒っているのだけど、少し上気してほんのりと赤い頬が赤いことが、逆に美しさに拍車をかけているのだから質が悪い。


「す……翠眼のエルフ」「伝説の……」「この魔力、間違いない。王族?」「冒険者といったぞ」「なぜ、人族などと一緒に?」「なんという美しさだ」


 ファスの問いかけを受けても、ぼーっと見惚れたようにファスを見つめるのみ。

 ちなみに、僕の後ろでは、蜥蜴から降りて前かがみなっている叶さんの背中をトアがさすっていた。

 「うぇえ……」「ほら水だべ。ゆっくり飲むだよ」「ダイジョブ?」とか聞こえる。どうやら我慢できなかったらしい。今行っても嫌がられるだろうから、次に蜥蜴に乗る前に【吸傷】で疲労を引き取ってあげよう。


「同じことを言わせないでください。この場所で何があったのですか? そこの貴方、答えてください」


「は、はい、我らは、主に本隊の進行ルートを探るために展開している、哨戒の為の隊なのですが、ここの場所でリザードマンの群れを見つけ、戦闘したのです。ただのリザードマンごとき敵ではなかったはずなのですが……やつらのうちの数体に結晶の鱗が生えていて、魔術が弾かれてしまったのです。獣人族の前衛も押し込まれ、部隊は全滅しました。彼らがいなければ私達も死んでいたでしょう」


 言い訳がましく後ろの巨人族を指さすエルフ、すでに動かない数体の死体は全て獣人達だった。

 前衛として、後衛を守り切ったのか……。


「これまで、そのような個体を見たことは?」


「ありません。初めて見た個体でした。それに、彼らは私達にトドメも刺さずにどこかへ向かっていったのです」


「わかりました。他に何か気になることはありませんか?」


「気になること……いや、私達も何がなんだか……」


「発言してもよろしいでしょうか!」


 エルフの後方にいた獣人が声を挙げる。他のエルフが何か言う前にファスが「どうぞ」と許可をだした。


「戦っている最中なんだが、奴ら何かを聞いていたんだ。多分、同族の声だと思う。あいつら合流するつもりなんじゃないか?」


 合流するつもり? その言葉を聞いてナルミが顔を青ざめさせた。


「おい、合流だと。その特殊な個体の群れが合流しているって言いたいのか」


「ナルミ?」


 ナルミは蜥蜴を降りて、自分の剣の柄でガリガリと地面に絵を描いた。

 中央に丸を書いてそこから離れた場所にもう一つの丸。中央の丸を包囲するように長方形を書き足していく。


「この円が本隊だ。そこから左右に鉱山砦を囲むように展開されている。この場所からだと、この右翼の隊が近い。この右翼に巨人族を始め『結晶竜』へ有効とされる、魔術師以外の職が集まる予定だった。……つまり、今はまだ魔術師が主力の隊だ。そこを魔術に耐性のある個体のリザードマンに強襲させるつもりだとしたら、不味いことになるぞ」


 ナルミの説明を聞いて、倒れていたエルフや獣人も顔色を変える。


「ほ、報告をしないと」


「そうだな。チッ、()()()()()を使ったのが仇になったか。エルフのことといい、やはり砦で何かあったのかもしれん。どうする?」


 ナルミの後ろからトア達がひょこっと顔を出す。叶さんも大分回復できた様子だ。


「ふぅん、なるほどだべ。砦の包囲を戦力が揃う前に瓦解させると、魔物の考えでねぇべな。明らかに狙ったタイミングだべ。こりゃあ、いよいよ裏切りモンが仕事しているべな」


「のんびりしている場合か。一大事だ。まず本体と右翼の司令官に連絡をしないと不味いぞ」


「うぅ、大分楽になったよ。へぇ、戦略ゲームみたいだね。今私達がいるのってどの辺なの?」


「……何を言ってる? この辺だが」


 ナルミがガリガリと印をつける。


「皆、どう思う?」


「ワフッ、この立地なら合流する群れは、こんなルートを辿ると思うべ」


「私の見える範囲で、書き込むならこうですね」


 ファスとトアがどんどん書き足していくと、群れの合流点とそこからの移動先がどんどん絞られいく。最後に叶さんがパチッと石をある地点に置いた。


「ここが強襲予想地点だねっ。ファスさん場所の見当はつく?」


「問題ありません。木々と距離感から正確にわかります。ごしゅ……シンヤ、どうしますか?」


「報告している時間が惜しい。僕等で変異種のリザードマンの群れを叩く」


 かっこつけて言ったものの、ここまで僕何にもしてないな。そもそも、いくらゲーマーだからって叶さんそんなことわかるの? トアに至っては料理人のはずなんだけど。


「あるもんで献立を考えるのとそう変わんないべ。ようは、全体をみることだべな」


「えっ、普通にわかるよ。私ハー〇オブ〇イアンの特殊MOD縛りプレイとかしてたし」


「シンヤのことで、戦略なども話し合っていますから」


「恋のほういもー」


「……あ、うん、なるほど」


 え? 僕の知らない所でなんの話してるの? うちの女性陣がめっちゃコワイです。


「……こんな手書きの目印で、正確に場所までわかるのか……【精霊眼】があるとはいえ、とんでもない奴らだな」


「最近、僕の存在意義を考えています」


「シンヤは私たちの全てです」


「そうそう、さぁ行くだよ旦那様」


「また、蜥蜴かぁ。頑張るよ」


「れっつごー」


 時間が無いので、さっさと蜥蜴に乗って出発しよう。

 背後のエルフ達にお礼を言って、ファスを先頭にリザードマンの群れへ僕らは向かっていくことにした。


「なんだったんだ、あの方々は……」


 エルフ達も呆然としていたけど……まぁ気にしないようにしよう。

真也君の知らない所で、女性陣の戦略会議(仮)が行われているようです。

情報収集ファス、整理叶さん、考察トアという布陣です。主人公ェ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] トア一番好き
[気になる点] 他の話でも幾度か出てくるが、「やりずらい」は誤字。 正しくは「遣り+辛い」で「やりづらい」。 「ず(zu)」と「づ(du)」の平仮名表記は、原語の意味と表記を正しく理解していないと混同…
2023/07/09 19:09 退会済み
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