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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第九章:ニグナウーズ国編【ツルハシと攻城戦】

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第二百二十六話:A級任務と砂漠でしでかしたこと

 徹夜テンションで約束をすっぽかして、モツ煮の屋台をしていたことにより怒り心頭の様子のサイゾウさんにビクビクしつつ、アルタリゴノの冒険者ギルドへ向かう。

 入り口は正面ではなく、建物を取り込んでいる木の幹のわずかな隙間だった。

 こんな所から入れるのか、とか感心しているとあっという間にサイゾウさんの部屋にたどり着いた。

 色んな意味で、厄介なギルドだな。


「よいかっ! 仮にもA級冒険者が簡単に頭を下げるなっ! ましてや、土下座など言語道断。誰も見ていないから良かったものの、これが他の者に見られれば冒険者ギルドの面子に関わるぞ」


「えっ、怒っているのそこなんですか」


 開口一番のお叱りは頭を下げたことらしい。


「無論、依頼の話についても思うことはあるが、おヌシ等は少し自身の立場という物をわかっておらん」


「A級冒険者が、責任ある立場ということはわかっているつもりですが、どうにも立ち振る舞いとかはわからないです。僕は特別A級なので実質B級ですし」


 あくまで、A級の任務を受けられるB級というだけだ。……そうだよね。

 ファスを見ると、首を振られた。アレ? 違うの?


「シン……ここではご主人様で大丈夫ですね。ご主人様の認識で間違っていませんが、受け取り方の問題です。特別A級冒険者ということは、つまり正規の規定を捻じ曲げてまで『A級』という冒険者における最高ランクに据える価値のあるということです。特別A級冒険者証というのは『腕っぷしだけでA級相当以上』と他の冒険者は見るでしょうし、実際ご主人様に期待されているのはそういうことなのです」


「そういうことだ。ファス殿はよく理解されている。つまりはA級の冒険者の中でも中位以上の戦闘力、もしくはそれに類する異常性を保有しているということなのだ」


「なるほど、言わんとしていることはわかりましたけど。立場とか立ち振る舞いとかやっぱり僕には苦手そうです」


「普段から私達相手に主人としての自覚を持てば良いのです」


 ファスからも小言を受ける。主人役を押し付けたことを怒っているな。


「まぁ、真也君は難しそうだよね。ファスさんの方が得意そう」


「止めてください。それに立ち振る舞いというなら叶も聖女として演じるのは得意でしょう」


「わかんないー」


「ある意味、フクちゃんは自然に上位者の立ち振る舞いとかできそうだべな」


 そう考えると、アナさんがファスに貴族としてのマナーを教えたのはやはり意図がありそうだな。

 ……つまり、僕には無理って判断したのかもしれない。


「気を付けることだ。話を進めるぞ」


 サイゾウさんが、座るように促した後に、壁にある掛け軸を指でなぞった。

 

「【防音】の結界、しかも多重にかけています」


 ファスがさっそく、何をしたのか教えてくれる。


「噂に聞く、精霊の瞳か……ファス殿のことは、ワシの方でも調べておこう。して、昨日話したファス殿に主人の役を演じていただくということは、納得してくれたようじゃな」


「納得はしていませんが、了承しています。あくまで振りだけです」


「それで充分じゃ、さて、ではいよいよ、特別A級冒険者への依頼を話そう」


 サイゾウさんが懐から紙を取り出し、僕らの前に置く。一見白紙だが、サイゾウさんが自分の血を垂らすと文字が浮かび上がってきた。


「血を使った密書です」


 ファスが教えてくれる。なるほど、結界といい厳重だな。


「エルフの王族よりの依頼じゃ。数ヶ月前ここから、二つ森を越えた場所の鉱山砦が魔物に占拠された」


「ダンジョン化でもしたんだべか?」


 ファスが髪を耳にかけ乗り出す。確かに、砦のようなしっかりした防衛施設が占拠されるというのは穏やかではない。


「いいや、ダンジョン化ではない。周辺のリザードマンの群れの中より魔王種が現れたようじゃ。『結晶竜』と言われる個体じゃ」


「竜!?」


「えぇ、竜種って絶命したんじゃなかったっけ」


「絶命したのは『翼のある竜』です。走竜やトカゲ型のモンスターの上位種が『竜』とも呼ばれます」


 驚く僕と叶さんにファスがフォローを入れてくれる。そういや、前に竜車っていう走る竜に引かれた馬車みたいなのに乗ったことがあったっけ。それにしてもなんだか『竜』という単語には敏感になってしまうな。


「その通り、過去に栄えた竜王達の眷属ではない。その見た目より『竜』と呼ばれているだけにすぎん。だが、その凶悪さは『竜種』と比べても恥じないものである。厄介さは折り紙つきじゃ。『結晶竜』の鱗はあらゆる魔術を弾く、魔術に優れ、魔術師を中心に戦う我らエルフにとっては天敵と言えるじゃろう」


「魔力によって生み出された、氷や土などの攻撃も効かないのですか?」


「効かん、鉱山砦を奪還しようとした領主の軍は優秀な魔術師を抱えており、雨のように魔術を放ったが『結晶竜』一体に戦線を崩壊させられ、後は群れのリザードマンに蹂躙じゃ、壊滅しておる」


「物理攻撃はどの程度効きますか?」


「現状はほぼ効果がない。目や鱗の無い関節なども矢で射ったが、効果はなし。精強な巨人族の攻撃でも成果は上げておらん。唯一傷をつけたのは我がギルドのA級冒険者、巨人族のイグラが【凶化】を使った渾身の【重撃】で鱗の表面を傷つけた程度じゃ。ダメージにもならん上に、結晶の鱗は次々に生えてくる。飛ばして攻撃してくるほどじゃからな」


「A級冒険者の【重撃】でもダメなんですか……」


 イグラさんを見た時はかなりの実力を感じた。その一撃でダメなら、僕の攻撃でも難しいかもしれない。


「そういうのって、相手の結晶の鱗? を使った武器なら攻略できるとかゲームではありそうだよね」


 叶さんが目をキラキラさせている。この辺はTRPGゲームプレイヤーのなら思いつくよな。


「試したわい。じゃが、加工が困難での、それにどうやら体から離れても『結晶竜』による制御が可能なようで、すぐに我らが持つとボロボロと砕けるのじゃ」


「流石にメタっているか。でも、制御されるってことは、真也君の【呪拳】が効きそうだし。ファスさんの【息吹】なら、効果あるかも」


「落ちつくのじゃ、あくまで『結晶竜』の話をしておるだけじゃ。依頼の話はさらにややこしいぞい」


「その『結晶竜』を倒すって話ではないんですか? てっきりそうだと思っていました」


 というかそれ以外できないし。それで少しでも信用を勝ち取って、この国にあるファスの生い立ちや【竜の後継】の情報をもらうように旅を進めていく話だったはず。


「ここからは、少し面倒な話なる。占拠された鉱山砦は、希少な鉱物が取れるだけではない。エルフにおいて森の儀式を行う神聖な場所だったのだ」


「宗教的な意味がその場所にあると、それがどうしてややこしい話に?」


「名誉に目がくらんだ馬鹿貴族共が集まり誰がその砦を奪還するかで、内輪で争いが起きておるのじゃ……力のある冒険者を囲おうとする貴族共のせいでギルドでも統一した動きが取れておらん」


「うわぁ」


 額に手を当てて、サイゾウさんが俯く。……まぁ、気持ちはわかるけど。


「そのせいで砦の攻略が進まず、リザードマン達は砦を中心に支配領域を増やしておる。地脈の暴走も収まっていないなか、このままでは聖地がダンジョン化することも考えられる。冒険者ギルドとしても動きたかったが、此度は特別に足を引っ張られてな。他国のギルドとの連携に時間がかかってしまったのじゃ」


「なるほど、どうして移動を急かされないか不思議だったのですけど、そういうことだったのですか」


「正直、ワシ等としても困っていてな。そうした時にアナスタシア第三王女より援助の話があったのじゃ。信頼できる冒険者をこちらに送ると、そしてそのパーティーにはエルフがいるとな。しかも砦の奪還に関わっていなかったイワクラ家より支援の申し出もあった。これまでの不具合が嘘のように話が進んでいったのじゃ」


「イワクラ家?」


 なんだっけ? 聞いたことがあるような?


「ナルミの実家ですね。やはり貴族の生まれでしたか」


「真也君が現地でメイドにした子だね……」

 

「あれ、僕が頼んだわけじゃないから。なんかアナさんのいいように動いている気がするなぁ」


 いったい、どこからこの絵を描いていたのやら。やっぱあの姫様怖いや。


「……おい、聞き逃せんぞ。歴史あるイワクラのエルフをメイドにしたように聞こえたが……」


「まったくの誤解です。僕は無実です。決してイワクラさんのご息女に変なことはしていません」


 うん、サイゾウさん差別意識とか低そうだけど、それにしてもこれ以上エルフをどうこうしたとかって話になったら、ヤバイ。

 

「であればよいのじゃが……ともかく、イワクラ家と協力して砦の攻略をするのが今回の依頼の前提となる。その為にファス嬢には冒険者をつれているエルフになってもらわなければならん」


「どうしてそうなるのですか?」


 ファスが不機嫌な表情でサイゾウさんに問いかける。


「極秘になるが、この依頼は王族よりの依頼じゃ。砦の奪還に野心を持っている貴族にさせると後が怖い。王族と関わりが深く普段は政治に関わらない貴族であるイワクラ家ならば、納まりが良い。しかし直接イワクラ家が出てくるならば、角が立つ。ならばイワクラ家が客分として呼んだエルフが力を貸すという筋書きじゃ。これが巨人族や人族ならば余計な反発を招くことになる」


「えっと……」


 あれ、頭がこんがらがってきた。どういうことだ?


「話はわかったべ。ようは仲の悪い身内に恩を作りたくないから、知り合いの知り合いにそれとなく解決させろってことだべな」


「わかりやすっ」


「しっくりくるね」


 流石トア。初めからそう言ってくれればいいのに、サイゾウさんの話は周りくどいな。


「しかし、そうなると。エルフの王族が他国の王女に借りを作ることになるべ。それは大丈夫だか?」


「その心配もした。しかしアナスタシア姫はすでにそのあたりの根回しもしておる。外の人間よりも今は内部の方が危険だと王は判断し、此度の依頼を発注された。責任は重大じゃぞ特別A級冒険者殿。依頼を受けてもらえるか? 報酬は王族が管理する【竜の後継】についての情報開示、そしてファス殿の生まれについては冒険者ギルドが情報を収集しよう」


 刺さるような視線。しかし、僕等がやることはシンプルだ。


「わかりました。その依頼を受けます」


「うむ、良き目である」


 こうして、A級冒険者としての初めての任務が始まった。

 

「他にも話したいことはある。特にこの街のエルフ達について……なんじゃ?」


 部屋に置かれていた、水晶が光始める。


「これは連絡用の水晶よ。何用じゃ? 今は大事な話を――」


 水晶に触れながらサイゾウさんが話を切ろうとするが……。


「すみません、イワクラ家の使者を名乗る方がご面会に来られています」


「フム、ちょうどよい通せ。結界も解除しておく」


 しばらくすると、扉が開かれそこに立っていたのは。

 エルフの礼装だろうか、装飾された貫頭衣を着た褐色の肌を持つナルミだった。


「久しぶりだな。ギルドマスターもその節は世話になった」


「いいえ、話には聞いておりましたが、やはりシンヤ殿とはお知り合いだったのですな」


「あぁ、その男は砂漠で私を従者にした」


 室内を沈黙が支配した。


「いやいやいや、違うんですよ。サイゾウさん。あっちょ、室内でチャクラムは不味いって。ナルミ、お前、何言って!?」


「事実だ」


「きっさまぁあああああああああああああああああ」


 現役を退いたというサイゾウさんの、妙技をその身を持って体感したのだった。

とうわけで、ナルミが合流です。アナスタシア姫色々動いていそうですね。

更新遅くてすみません。


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションが上がりますので、よろしくです。

感想&ご指摘いつも助かっています。感想で新しい視点が得られるので楽しいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「しかし、そうなると。エルフの王族が他国の王女に貸しを作ることになるべ。それは大丈夫だか?」 この場合、力を貸すのがアナ王女なので「借りを作る」ではないでしょうか 「貸しを作る」だ…
[良い点] ここでナルミとの絡みが出てくるわけですね。 二人目のエルフ嫁なるか?!
[良い点] 面白いです。 3日でほぼ一気読み。 [気になる点] トアの訛り。 北海道在住ですが「〜べ」の語尾に結構な違和感を感じます。誰が喋っているのかを明確にするためには必要な事なので、しかしそこ…
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