第二百十五話:己に問いかける
修行が始まってから丸六日。長いようで、実際長かった修行が……。
「全っぜん無理っ!」
終わらなかった。『刃筋を立てる』を目標に、フクちゃんの糸だのファスの氷柱だの切りに切りまくったけど、ファスの満足する領域には到達できていない。
進歩が無いわけではないが……。
『見てください。ご主人様の切ったフクちゃんの糸にケバがあります。切れ味が鈍いです』
『今魔力を緩めましたね。全開まで研ぎ澄ませた刃でないとだめです』
『実戦で使うためには、一瞬で刃を作る必要があります。魔力制御が甘いです』
『いっそ、力の流れを感じるために、徹底的に私たちの攻撃を空中で受け続けるというのはどうでしょう? 不均衡な攻撃の中で、相手の最も力が掛かっている所を感じ取るのです』
などなど、そりゃあもう散々稽古した結果、刃の切れ味に力を乗せる感覚はつかめてきたが、あと一歩が足りないのだ。
ちなみにファス達は今、外で修行について会議中らしい。
僕には秘密だそうだ、グスン。
一人でなにもしないのもアレなので、刃筋に関して、おそらく僕より詳しい千早に話でも聞いてみるか。
「どこ置いたっけ? ああ、あったあった」
パーティー共有のアイテムボックスから、紬さんよりもらった定期連絡用の【紋章】が描かれた紙を取り出した。
ええと、これに書きこめばいいのか。前の連絡時は、修行の合間に叶さんが書いてくれたようで、宙野のことは伝えているはずだ。しばらくしたら文字が消えるので、なんと伝えたかはもう確認できない。
ちなみに僕はその時、修行でグロッキーでした。
今、見てくれていればいいけどなぁ。とりあえず『もしもし』とだけ書くか。
1分と経たない内に返信が来た。
真也『もしもし』
千早『私がいるわよ。定期の連絡じゃないわね。何かあったの? また、宙野関係かしら』
おっ、ちょうど千早のようだ。助かったな。
……女子とメールしているみたいでちょっと緊張するな。
いや、紛れもなく女子とメールしているんだけど、というか千早からは告白を受けているわけで……あれ? なんかめっちゃ恥ずかしいぞ。
身もだえしながら、続きを書く。
真也『刃筋の立てかた教えてください』
千早『なに言っているの?』
説明が足りなさ過ぎた。というわけで、今の悩みを伝えてみる。
真也『――というわけで、本職の剣士である千早にご教授願いたい。武芸のことを教わるのは無礼かもしれないけど』
千早『別にいいわ。とって言っても、私もただの女子高生の枠を出ないし、コツというほどのもないわ。話を聞くにそこそこ仕上がっているんでしょ? それなら技術面を言ってもあんたの方が詳しいくらいね。ただ、刀を使っている者として言えるのは。『刃筋』の立て方ってのは、刀に教わるものよ』
真也『刀にってどういうこと?』
千早『例えば、握り方。鍔に触れる人指し指。刀そのものの重さ。そういういろんな要素が切り方を教えてくれるの。最初は誰だってわからないけど、正しい構えで素振りを何度も繰り返し続けていくうちに、どう振れば刃筋を立てて振れるかなんて、自然と身につくものよ。そもそも刀は切るためにあるのだから、真摯に向き合えば答えは刀が知っているわ。戦い方は人に教わり、切り方は刀に教わると私は習ったわ』
真也『じゃあ、この身を武器にするならば、僕は何に教われば良いの?』
千早『あなた自身に問うことね』
そうして、挨拶をすませ千早との会話は終わった。
「自身に問う、か。哲学だな」
刀は切るためにある。であるなら、僕は何のためにあるのか。
思想の果てに答えを得れるほど、僕は上等な頭をしていない。
「……素振りすっか」
まだ帰ってこないファス達を待ちながら、教わった剣の型を繰り返す。
あと一歩先の、答えを得るために。
長くなってしまったので、短いですがここで区切ります。
次回はファス達視点での真也君の成果の確認です。
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