閑話14:竜の後継を殺す為に②
【グランドマロ】で得た偽の情報によりクレイブルズを訪れていた宙野が、砂漠での屈辱に震えていると、酒池肉林の場の戸がノックされ、屋敷の主が直接訪れた。
「お邪魔いたします勇者様。火急の用件で会いたいという方がおられまして……」
「論外だ。誰であろうと今日は休みだ、明日以降に回していただきたい」
物わかりの良い貴族だと思っていたが、存外に無能らしい。鼻を鳴らして睨み付けるも、男は脂汗を流し、宙野に近寄ってきた。
「ですが、その者というのは白星教会の人間なのです」
「白星教会? なぜ?」
聖女を抱え込みたい貴族と教会側では、水面下で対立をしていたはずだ。国の催しなど、民から金を搾り取る為以外では、会うことはないはず。
「白星教の騎士であるかたが、聖女様の件で勇者様にお会いしたいと……」
「叶の……すぐ通せ、応接室に案内しろ」
「かしこまりました」
息が荒く、汗だくの屋敷の主に案内され応接室に入ると、真っ白な鎧を着こみ金髪を整えた教会の騎士が立っていた。
「この度は――」
「前置きはいい、叶のことを話してくれ」
宙野がさっさと座ると、騎士も剣を脇に置いて腰かける。
「わかった。私は教会騎士、ルイス・セイオッゾ。聖女様は今、下賤な冒険者と共にいる。……私が知り得た情報では、冒険者……シンヤ ヨシイは聖女様と奴隷契約を結んだ可能性がある」
「ッ!?」
眩暈がした。もし、これが冗談なら目の前の野郎を殺してしまいそうだ。
俺の叶が、あの麗しい俺の聖女が、どこの馬の骨ともしれない男に好きにされているかもしれないだとっ。
「ふざけるなっ! 叶は聖女だ。【星女神の祈り】がある、無理やりに契約をすることは普通はできないはずだろうが」
「……私も不思議だった。なぜ、聖女様があのような下賤な者と一緒にいるのか……自分からいるはずなどありえない」
「勿論だ。叶は俺と一緒にいるべきなのだから」
「聖女様は教会で女神の意思を、伝道していただくが……今はそのことは置いておこう。聖女様がなぜあらゆる災いをはねのけ、幸運を呼び寄せる【星女神の祈り】を持ちながら、そのようなことになっているか、その答えを手に入れたが……私ではどうすることもできない。聖女を救えるのは貴方なのだ勇者殿」
「もったいぶるな。吉井はなぜ、叶と契約できたんだ? 自分から契約するなんてありえない、きっと無理やりにされたはずだ」
「シンヤ ヨシイが【奴隷契約】を結べた理由。それは奴が【竜の後継】だからだ」
「竜の……後継…? なんだそれは?」
「古の勇者が打倒した、竜達の怨念らしい。その呪いは女神の加護すら弾く。哀れにも聖女様はその毒牙にかかったのだ」
「詳しく話せっ! それは【ジョブ】として発現しているのか? それとも【スキル】?」
「どちらでもあるらしい。しかし、安心されよ勇者殿。嘗ての竜王を滅したのが当時の勇者であったように、貴殿ならあの冒険者を必ず倒せる」
「もちろんだ。すでに俺は【竜の武具】を装備できる。あの【宴会芸人】に後れを取るわけがない」
「それだけでは、ダメなのです。【奴隷契約】がなされている今、奴を殺せば聖女様に害が及ぶかもしれない。契約を破棄させ、竜を打倒するには【竜殺しの鎖】という、伝説の鎖が必要になる。これさえあれば確実に【竜の後継】を殺せるのです」
「それはどこにある?」
「エルフの国【大森林:ニグナウーズ国】にそれはあります。入手方法は――」
必要なことを伝え、ルイスが教会の馬車に戻ると、すぐに艶めかしい女性がルイスにしな垂れかかる。
「これで、良かったのか?」
「はい、清廉な騎士、ルイス・セイオッゾ様。勇者があの竜殺しの鎖を使えば、竜の眷属はなにもできません。その力を継ぐ、【竜の後継】も抗えないでしょう……さぁ、私達も……行きましょう」
下半身を蛇に変え、毒婦は笑い、馬車は夜の闇に消えていった。
メリー苦しみます。
真也君のクリスマスイチャラブ話を書くか迷いますね。
前回に入らなかったので、短いですが、ここに書かせていただきます。
知らない所で、レッテルを張られまくりの真也君には頑張ってもらいたいです。
次回はバレノシッポ探索に戻ります。
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