第二百四話:友人にハーレムを作っているとバレた。
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「領主様よりの書簡だ。読んでいただけますかなサトシ様」
【恋人の街アマウント】を含む高原地帯。その領主の伝書士からの手紙だった
「異世界の文字はニュアンスがわからないので、教えていただきたいのだが……」
「私にはその権限はありません」
そう言って伝書士はその場を後にする。舌打ちをして巻かれた紙を広げると、ツラツラとご機嫌伺いの文句が続き、本題が書かれていた。
「……なんだこれは!?」
紙を丸め、燭台の火に当てた。怒りを隠そうともせず、葉月 悟志は友人である吉井 真也の元へと向かった。
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仮免みたいな扱いとはいえ、A級冒険者証を貰った僕達はいよいよ街を出ようと荷造りをしていた。
といっても、僕のすることはとても少ない。
「なぁ、ファス何か手伝うことは……」
「大丈夫ですご主人様。ゆっくりしてください。トア、野営用の道具はできるだけまとめてください。保存食は足りていますか?」
「問題ないべ。フクちゃん、こっちの着替えは使わねぇから。縛って欲しいだ」
「はーい」
「リスト作りは任せてよ。こう見えて図書委員では、新刊のリスト作りが担当だったから。……あとはポーションの在庫が心もとないかな? 材料があれば私とトアさんで作るよ」
「材料はあるだ。今晩にでも予備もまとめて作っちまうべ」
「足りない服はボクが作る」
「あの、荷物持ちとかしようか?」
「ご主人様は最後のチェックのみで大丈夫です」
「流石に旦那様にこれをさせては、群れの序列に関わるべ」
「荷物の把握は大事だから、後でリストは渡すよ。えへへ、私もパーティーの一員って感じだよ」
「……わかったよ」
なんだよ、なんだよ。皆して奴隷の仕事だからって仲間外れにして、僕だって色々準備したいぞ。
寂しいので筋トレでもしようか。
「……ご主人様、客のようです」
ファスが誰かを視たようだ。
「誰かわかるか?」
「ご主人様と同じ【転移者】のようです。恐らく話していただいた、ハヅキ様かと」
「じゃあ、僕がでるよ」
丁度暇してたし、のんびり話でもしようか。
程なくして、強めにノックされたタイミングでドアを開ける。
ファスの予想どおり、元の世界から親友である葉月 悟志がそこに立っていた。
「よっ、どうした?」
「どうしたじゃない。……話がある。桜木はいるか?」
「いるけど……」
どうやら、和やかに話をするって感じじゃなさそうだ。
急いで来たのか、肩を上下させ見るからに不機嫌そうな様子で立っている。
叶さんも呼ばれているようなので、一緒にリビングに座る。
「どうしたの葉月君? 私達、明日にでも街を出るから忙しいんだけど……」
「出る前に悟志にも挨拶しようと思っていたんだよ。それにしても、何怒ってんだ?」
「今朝、これが俺のパトロンの領主から届けられた。見てみろ」
机に置かれた異世界の文字で書かれた手紙をジッと見ていると意味が頭の中に流れて来た。
『社交界で流れている噂について。【勇者】宙野様より。マルマーシュ第二王女経由で【宴会芸人】吉井 真也の情報が話されていた。勇者様の調査によると、吉井 真也は砂漠では上半身裸にマスク姿で大衆の面前に立つ露出癖をさらし、さらには街の子供たちに自身を崇めさせている。酷い思い込みで【聖女】桜木 叶に付きまとい、彼女を追い詰めている。カジノでは女性を侍らせ金を巻き上げ、挙句の果てにパーティーに麗しい少女を揃えハーレム主となり日夜、酒池肉林を楽しんでいるという。第三王女までその毒牙にかけ、なんなら砂漠のギルマスと男同士で熱く語り合っている所が目撃されている』
……うーん。これは……。
「酷い話だ。第三王女はまだ社交界へは戻れないそうだ。それを良いことに好き勝手お前の悪い噂を流しているそうだ。真也さえ良ければ、ネリネスト第一王女の派閥より正式に働きかけをしてもらおうかとも考えている。よりによって、お前がハーレムなんて作るわけないからな」
なるほど、この律儀な友人は僕のことで怒ってくれているのか。怒っているポイントが気になるが。
「いや、あー。そうだな、根も葉もないことだ。ほとんどは」
「そうだよ。私達は相思相愛だからね」
「そうだろ!? 宙野の奴、言いたい放題だ……おい待て、ほとんどは?」
どうしよう、義憤に駆られていた友人の眼がまっすぐに見れない僕がいる。
「おい、真也。ちょっと聞きたいんだが?……」
「……そうだ悟志、この街の名産の蜂蜜いるか?」
「誤魔化すなっ! この手紙というか噂のどこが嘘か話せ」
「上半身裸のマスク姿で大衆の前には出ていたよね」
「それはそう」
「何やってんだお前ェ!」
叶さんがあっさりと暴露した、闘技場だったのでしょうがない。
「子供達に崇められているよね」
「強制はしてないよ」
めちゃくちゃ懐かれただけだし。
「私が真也君の素晴らしさを布教したからね」
「何やってんの叶さんっ!?」
聖女が布教ってガチな感じがあるので止めてください。
「ま、まぁ。砂漠では色々あったみたいだしそれはしょうがないか」
「その次の、勘違いってのはまったく嘘だよね。私達相思相愛だし」
「……」
「真也君、照れてる」
僕等の様子を見て、悟志は満足そうに頷く。
「デートは上手くいったようだな。おめでとう二人とも。すまない取り乱した」
「……あぁ、デートプランのことでは世話になったな」
色々街のことを教えてもらったのは助かった。
「へぇ、そんなことしてたんだ。私からもお礼を言うよ、おかげで私も本当の意味で真也君のハーレムの一員に入れたから」
「はっ?」
その場が凍り付き、そんなことは知らないファスがフードを被ったまま顔を出してくる。
「歓談中にすみません。カナエ、ちょっとリストのことで聞きたいことがあるのですが」
「ん、何々。二人ともゴメンね。行ってくる」
そして、叶さんがフェードアウト。おいおい、正面の彫りの深い顔から小動物なら射殺せそうな視線が飛んで来るんですけど。
「俺の聞き間違いだよな、真也? 桜木の口からハーレムと聞こえたが、そして先程のローブの方は女性だよな? 紹介してくれないか」
「別に構わないけど、殺気が漏れてるぞ悟志。僕等友達だろ?」
「あぁ、そうだな。だが、俺のダチにハーレムを作れるようなモテ男はいない」
「待て待て待て、誤解だ。勘違いをしてるって」
「旦那様、よろしいだか? お茶をお持ちしましただ」
一触即発の雰囲気の中、トアがお茶を運んでくる。
素晴らしいタイミングだ。助かったぞトア。
が、悟志はトアをジッと見つめている。
「オラがどうかしましただか?」
「いえ、貴女は真也のパーティーメンバーなんですよね? 旦那様?」
おい馬鹿やめろ。このままでは、トアの口から良くないことがバレてしまう。
「トア。お茶ありがとう、準備に戻ってくれていいぞ」
「真也。少し黙ってろ。すみません、貴女は真也にとってどのような関係ですか?」
「オラだか? オラは旦那様の三番奴隷トアと言いますだ。では失礼しますだ」
「……」
「……話してくれるな」
「わかった」
というわけで、ざっくりと現状の説明をする。
つまり、僕が四人の奴隷を貰っちゃっているということだけど。
話している途中に、旅の仕度が終わったのか他のメンバーもリビングに集まっている地獄。
「――というわけで、今はこういう感じでパーティーを組んでいるんだ」
「じゃあ何か、砂漠の街でカジノで女性を侍らせて金を巻き上げたのは……」
「まぁ、それっぽいことをやったかもしれん。記憶がちょっと無いけど」
嘘です。やりました。
「そこの小さい子も奴隷なのか?」
「フクちゃんはまぁ、奴隷と言うか従魔だな」
「二番奴隷のフクだよ。エヘンッ」
「そこの、ローブの女性もか?」
「当然です。一番奴隷のファスと申します」
「……表出ろクソがあああああああアアアアアアアア。俺が弓の訓練をしている時に、上半身裸で露出しながらカジノで女性を侍らすとはいい度胸じゃねぇか! このハーレム野郎がっ!」
「裸でカジノには行ってないわ。上等だ相手になってやる! 僕だって大変だったんだよっ!」
取っ組み合いのまま宿の外へ出る。
「カナエ、止めなくていいのですか?」
「いいんじゃない。明日には街を発つわけだし、後でしっかり説明すればいいよ。翔太君と違って葉月君は話はできると思うから」
「マスター、楽しそう」
「問題は、旦那様のことが至る所で話されていることだべ。厄介なことにならねぇといいけんど……」
結局、ひとしきり暴れた後。疲れ切った悟志にファス達がしっかりと説明をしてくれたおかげで、何とか悟志には納得してもらった。
街を出る前からどっと疲れたぜ。……これまでのことは、元の世界でのことも含めてちゃんと手紙とかで伝えよう。
真也君について、宙野が砂漠で調べたことに偏見がかかってこうなっています。
葉月は純粋に心配しているようですね。
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