第二百一話:【氷華の魔女】ファスのステータス
「ファス。機嫌を直してくれよ」
「別に怒っていません」
目の前には、床に正座するファス。いや、立ってくれませんかね。
先に鑑定したメンバーの【上級奴隷】とか【竜王と女神の約定】とか意味ありげなテキストのせいで機嫌を損ねてしまったようだ。
涙を拭くためにフードと顔布も外している。
「こうなったら。さっさと鑑定するのが一番だべ」
「だね。ファスさんのステータス、私も興味あるし。きっと、上級奴隷なんだろうなー。憧れちゃうなー」
「さすが、上級奴隷は格がちがった」
そんな、某ナイト関係の台詞を叶さんとフクちゃんで言わんでも、なんでフクちゃん知っているんですかね?
「そ、そうですかね。ご主人様、鑑定をお願いします」
……ちょろい。まぁファスが感情豊かになってきたのは成長だと思うけど。
「わかった。じゃあ、鑑定するぞ」
紙を頭に乗せる。
――――――――――――――――――――――――
名前:ファス
性別:女性 年齢:17
クラス▼
【魔術士LV.88】
スキル▼
【魔術士】
【精霊眼LV.88】【耐毒LV.80】【耐呪LV.80】
【同時詠唱LV.79】【高速詠唱LV.40】【上位詠唱LV.30】
【広域Lv.73】【速読LV.22】【速記LV.26】
【高速魔力回復LV.70】
【竜魔法】▼
【黒竜の息吹LV.72】【白竜の息吹LV.72】【恐怖LV.80】
【生命吸収Lv.84】【魔力吸収LV.19】【慈愛LV.3】
【花竜の加護LV.不明】
【闇魔法】▼
【闇衣LV.66】【重力域LV.80】【闇斥LV.65】
【闇属性付与LV.1】【闇穴LV.1】【邪視LV.23】
【上位水創生魔法】▼
【上位魔水召喚LV.50】【上位水操術LV.50】【水蜥蜴(魔水流)LV.78】
【水鳥(魔水弾)LV.66】【水海月(魔水球)LV.85】【水亀(魔水壁)LV.30】
【水大蛇(大水流波)LV.65】【水鯨(魔水沼)LV.20】
【上位氷創生魔法:氷華】▼
【ホウセンカ(魔氷弾)Lv.80】【アヤメ(魔氷杭)Lv.82】【オウカ(魔氷雨)Lv.76】
【イバラ(魔氷縄)Lv.60】【アジサイ(魔氷毒)Lv.10】【ホオズキLv.69(魔氷牢)】
【マツリカ(魔氷冷)Lv.34】【竜氷森万花繚乱Lv.1】
――――――――――――――――――――――――
「ど、どうでしょうか?」
上目遣いでファスの見上げてくる。もうちょっと、感情の制御をさせて欲しい。
横から、トア達ものぞき込んでくる。そして、ちらっとこっちを見てくる。
「……ちらっ」→トア
「……あー、これは……」→叶さん
「マスターとは違って、すごーい」→フクちゃん
ガハァ……膝をついてダメージを受け流す。呼吸を……痛みに耐える呼吸法を……。
「スゥ、わかってたよっ!! いや、もうナニコレ!? 絶対強いよ。派手だよ! おめでとうファスっ」
「あ、ありがとうございます。え、えと。では拝見します」
紙を渡す。いいけどさ、別にいいけどさ。もうちょっと僕にだってこんな必殺技みたいなスキルをくれてもいいんじゃないんですかね。目から心の汗が……。
「……なるほど。とりあえず、ほとんど把握している通りですね」
「水魔法はあんま見たことねぇけんどな。いつも水球を呼んでもらうだけだべ。後は蜥蜴の奴はみたことあるべな」
「そもそも、こんなの【転移者】でもみたことないよ。【水精霊魔術士】の上位ジョブの子いたけどさ。少なくとも【創生魔術】なんて使ってないし」
「【創生魔術】は既存の魔術にイメージを付与することで、強化された魔術を作り出すものですね。私は柔らかい水に生き物の性質を、固い氷に花の性質を付与して使っています。通常の水魔術を使うこともできますよ。冒険者の中でも使っている人はいますよ。砂漠の街のカシャさんは炎に蜥蜴のイメージを付与して、変則的な軌道で敵に炎をぶつけていました。多少イメージのコツと、魔力の練りが必要ですが、そこまで難しいものではありませんよ」
いや、多分。ファスだからできるだけだぞ。はたから見ても、何しているかわからん時あるからな。
例えるなら、見えない水あめが凄い速度で精緻な形をとっていくような、到底できるとは思えない魔力の制御なのだ。
へー、魔術士ってすごいなーとか思っていたけど、冷静に考えたらやっぱりあれは異常なのだと思う。魔術の詠唱とか、はたから聞いていると鼻唄のようだが、ファスはほとんどしないしな。
「……ファス。多分その人、一番得意な術だけ【創生魔術】として使ってたんじゃねぇかなと思うだ。全ての術を創生魔術化するのはちょっと、聞いたことねぇだよ」
「そもそも通常のジョブの【魔術士】にどうして、転移者でも稀な【同時詠唱LV.79】【高速詠唱LV.40】【上位詠唱LV.30】なんてついてるの……」
「【速読】に【速記】は助かりますね。ギルドにある書物を読むのが楽になりそうです。後は竜魔法に【魔力吸収】【慈愛】【花竜の加護】が追加されています。おそらくは、ご主人様が白竜の祝福を得たことと関係はありそうですが……【魔力吸収】はともかく【慈愛】とはなんでしょう? 名称的には【聖女】であるカナエにこそふさわしいと思うのですが」
「使ってみたら? 流石に、物を壊すようなスキルじゃないでしょ?」
「そうですね」
「じゃあ、僕に使えばいい」
いつまでもいじけても仕方ないし、ファスも立ち直ったようなので飛び起きて手を上げる。
【慈愛】か精神が回復するスキルとか?
「では行きますね……【慈愛】……パッシブのようです。意識して強めていきます」
「真也君。何か感じる?」
「別に……あっ、何かファスから暖かいものが来ているような……」
目を閉じて集中するファスから、なんかこう暖かさを感じる。
陽だまりのような……このままこの暖かさに甘えて、スキルが地味なこととかどうでもよくなって……。
「真也君~。起きてー」
「起きるだ旦那様」
「ハッ……僕は一体何を?」
気が付いたら、ファスに抱き着いて頭をナデナデされていた。
「むぅ。もうちょっと、このままでも良かったですのに」
「今の真也君の様子をみるに、心地の良いオーラを出して相手の警戒心を解くとかいうことかな。ある意味【恐怖】とは対極だね」
「ご主人様以外にはあまり使う機会が無さそうですね」
「いんや、ファス。パッシブなら強弱ががつけやすいはずだべ。そんなら色々使い道はあると思うだ」
「マスター、弱い」
「面目ない」
精神攻撃に弱いのかなぁ……今後気を付けよう。
「他のスキルはここでは試せそうにありませんので、後日で良いでしょう。それでは状態を鑑定してください【上級奴隷】であるか見てみたいです」
「ファスもか、わかったよ」
もう一度鑑定紙を頭に乗せる。
―――――――――――――――――――――――
名前:ファス
性別:女性 年齢:17
状態
【上級専属奴隷】▼
【経験値共有】【命令順守】【位置捕捉】
【契約強化】
――――――――――――――――――――――――
「やりました。私も上級奴隷です」
「よかっただな。ファス」
「おめでとー」
「私もすぐに、上級になるからね」
「グス……安心しました。私が一番奴隷です」
……メンバーがとても団結しているけど、僕はどうすればいいんだろう?
もうこれ、奴隷を解放するとか言えないよな。まぁ全員に止められているし、いっそ開き直ってしまえば楽だけど、前の世界の倫理観からはそう簡単に抜け出せない。
むしろ、なんで叶さんはそこであんなに馴染んでるの?
このままでは、本当に奴隷パーティーのハーレム主の道を進むしかないことに密かに戦慄していると、控えめに扉がノックされた。
「ちわー、冒険者協会の者ですけど。シンヤ ヨシイ様はこの宿で間違いないですかね?」
男性の声で確認される。
「あっ、はい。います」
「お待ちください。ここは一番奴隷である、私が開けます」
「あっ、奴隷の方も一緒ですか。わかりましたー」
すっかり機嫌を良くしたファスが、そのまま扉へ向かう。
急なことで、誰も反応できなかった。
フードと顔布を外した状態で、ファスが扉を開けると、軽鎧を着こんだ男が数人扉の前に立っていた。
「どうも、ちょっとお話が……へ、な、なんつう美人!?」
「えっ、あっ……忘れていました」
【認識阻害】のイヤリングはしているので耳は人間の物に見えるが、絶世といっても過言ではないファスの出迎えに男達は茫然とし、そして辛うじて部屋に視線を向けると、フクちゃん、トア、叶さんがいるわけで……。油の切れたブリキ人形のようにゆっくりと男達がこちらを向く。
「……どうも、リーダーで『主人』の吉井 真也です。よろしく」
引くに引けず、彼女たちの主であることを宣言したのだった。
やっと、ステータスがおわりました。さぁ物語を進めますよ。
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