第百九十九話:【野風の料理人】トアのステータス
手を上げるトアに鑑定紙を差し出すと、三角耳をペタン倒して頭を下げられた。
背の高いトアの上目遣いはギャップがあってグっとくる。
「お願いしますだ」
本人の希望とあらば、頭に鑑定紙を置くと文字が浮かび上がってきた。
――――――――――――――――――――――――
名前:トア
性別:女性 年齢:20
クラス▼
【料理人LV.73】
スキル▼
【料理人】▼
【上級解体LV.21】【味覚強化LV.73】【栄養増加LV.70】
【旨味抽出LV.23】【食材鑑定LV.18】【解毒LV.33】
【猛毒耐性Lv.54】【高速調理LV.67】【悪食LV.56】
【片手斧】▼
【飛竜斧Lv.10】【喰い裂きLv.47】【旋風刃Lv.1】
【黒犬】▼
【腕力強化Lv.69】【嗅覚強化LV.70】【痛覚耐性LV.50】
【獣化Lv.22】【精神耐性LV.21】【花竜の加護Lv.不明】
――――――――――――――――――――――――
「おお、なんか。フクちゃんの後だと安心するな」
ある意味、僕のステータスに近いよな。【料理人】としてのパッシブスキルが多そうだし。
戦闘スキルはほぼアクションスキル(発動型)らしいから、パッシブが多いのは生産職だからなのだろうか?
鑑定紙を見ると、トアも納得した様子。
「タハハ、魔物を調理しているうちに【解毒】が身についているべ。それと上級の【解体】は嬉しいべな。【食材鑑定】も実は使っていたからあるのは知っているだ。ただ戦闘系のスキルは割と【旋風刃】? ってのはまったく気づかなかったべ。使ってねぇからレベルが1だべ」
「【飛斧】も【飛竜斧】に変化していますし、ご主人様の影響がありそうですね。それに【栄養増加】のレアスキルも順調に上がっています。【料理人】としてはおそらく大陸でも中々いないレベルなのでは?……栄養があるのに、どうして私の胸は大きくならないのでしょうか……」
「トアさんの料理食べると、体の調子が目に見えて良くなるし美容にも良さそうだよねー」
うんうん、筋肉痛とかすぐ直るもんな。スキルだけじゃなくて、ちゃんと食材の栄養バランスも考えられた料理のおかげで思う存分鍛えられていると言っても過言ではない。
このパーティーにおける縁の下の力持ちは間違いなくトアだ。
「だったら、嬉しいだな。元気は食事からだべ」
「せっかくだし、戦闘のスキルも見たいな。中庭で使ってみてくれよ」
「わかっただ。多分大したことないと思うべ【飛斧】はそのままの名前でも発動していたし、変わりはそんなにねぇと思うだ。問題は【旋風刃】だべな」
中庭に出たトアが、慣れた様子で二振りの手斧を取り出し、ジャグリングしながら構える。
ニカッと笑い犬歯が煌めく。斧が振りかぶられた。
「【旋風刃】ッ!」
そのまま体が回転しながら、円を描く軌道で斧が振られた。
威力は十分の様子で、斧が起こす風が数メートル先まで届くようだ。
「おっとっと、目が回るだな」
「面白そうだな。それって、普通の攻撃に組み合わせるのか?」
「やってみるだ」
「相手がいないと、面白くないだろ。僕がやるよ」
新スキルとかわくわくするよな。手甲を着けてから簡単に打ち合う。
適当に大振りを誘って、コンビネーションを受ける。
「いくだ。ガァアルルル【旋風刃】ッ!」
全身のバネを使う、しなやかな斧の軌道が変化し、より強力な威力を持って振られる。
回転切りと言えば簡単だが、この軌道はかなり読みにくい。しかもトアの顔には黒い痣が浮かび上がっている。身体能力を爆発的に上げる【獣化】状態での攻撃、こりゃわりと本気ださなきゃな。
なんせ斧は二本あるのだ。
「おっしゃあああああ」
上下を手甲で合わせて、受けきる。【重撃】ほどとは言わないが、かなりの衝撃だ。
「【喰い裂き】だべっ」
「それできんの!?」
受けたはずの斧が、ジグザグに喰いこむ軌道で左右に変化。
防御を弾かれる。
タイミングを完全につかみ損ねちまった。
「うおっち!」
下がりながら斧の制空権から逃げ出す。
いや、これが悪手なのはわかってるよ。
次に来るであろうトアのとっておきに備えて【拳骨】を強め、防御の構えを取る。
「ラスト、いくだよ【飛竜斧】ッ!」
投擲された二本の斧が、小さな竜巻のように……。っていうか本当に風を纏っているようだ。
あれー? めっちゃ魔力を感じるぞ。今までの【飛斧】とは明らかに威力が違う。
「えー……」
なるほど、いままではあくまで【飛斧】だったわけで、これが今のトアが出せる【飛竜斧】なのか。
……うん、無理。対角線上のめっちゃ躱しにくい角度から、魔力を孕んだ引き込むような竜巻を纏う手斧。
初見で対応できないな、というわけで全力で防御。
「にゅぎゃああああああああ」
なんとか、急所だけは手甲と【手刀】で凌ぎつつ、盛大に吹っ飛ばされたのだった。
「だ、旦那様!?」
「真也君がマンガみたいに錐もみ状に吹っ飛ばされてる!」
「見ている場合ですか、ご主人様!?【重力域】、とにかく回収と治療です」
……その後、叶さんから回復受け何とか復活。
申し訳なさそうに、尻尾を垂らすトアがお茶を用意していくれた。
「ズズゥ……大丈夫だから、そんな悲痛な顔しなくても」
「いんや、旦那様だからって、不用意にスキルを使ってしまっただ。ごめんなさいだ。ファス、オラを逆さ吊りにしてけろ」
「しません。今のは調子に乗って技を受けに行ったご主人様が悪いのです」
「マスターの油断ー」
グゥの音もでない。油断したわけではないと思いたいけど、不用心だったのは確かだ。
「実際、普通ならわりと大怪我しそうな攻撃なのにかすり傷なあたり、流石真也君だよね」
「危険度ならファスやフクちゃんのスキルの方が上だからなぁ。それにしても【旋風刃】に【飛竜斧】、どっちも便利そうだな。また組手頼むよ」
「ええと。まぁ旦那様がそういうなら、よろしく頼むべ」
「ほどほどですよご主人様」
ファスに釘を刺されたが、このパーティーで近接戦の練習はトアがメインなのでガンガンやっていくつもりです。
じゃあ、次はファスか叶さんのステータスかな? と思っているとトアが寄ってきた。
「じゃあ、旦那様。奴隷の状態も見てほしいだ。フクちゃんが【上級従魔】だったのなら、奴隷としての状態にも変化があるかもしれないべ」
「そういえば、【奴隷】は奴隷としてのスキルがあるのか」
「契約の一部なのでレベルはありませんが、擬似的にスキルとしても使えるのです」
というわけでファスの補足を交えつつ、もう一度鑑定紙を頭に乗っける。今度は状態がでるように念じると文字が浮かび上がってきた。
―――――――――――――――――――――――
名前:トア
性別:女性 年齢:20
状態
【上級専属奴隷】▼
【経験値共有】【命令順守】【位置捕捉】
【契約強化】
――――――――――――――――――――――――
「やったべっ!」
トアが万歳をして、そのままフクちゃんとハイタッチする。
「ボクといっしょー」
そしてファスさんが、頷きながら鑑定紙を確認していた。
「……なるほど、大きく変更はありませんが【契約強化】が追加されていますね。これはご主人様以外との契約がいかなる形であろうともできないというものです」
「えーと、私が知る限り【奴隷】は主人の物なわけだから元々勝手に契約はできないんじゃないの?」
ファスの呟きに叶さんが疑問を投げかける。
「契約の強度が違うのです。おそらくトアの強い忠誠心が奴隷の状態を強化した結果でしょう。何が違うと言われればその程度ですが、トアとご主人様の結びつきが強くなっていることを表します……ムムム、ならば私も確認します。ご主人様、鑑定をお願いします。一番奴隷の私には最上級奴隷とかついているはずです」
「いや、そんなの聞いたことないだ。落ち着くだよファス」
「そうそう、順番でいったら次は私でしょ。トリはファスさんに譲るからね」
「気になりますが……しかし、順番も大事です。わかりましたカナエが先でいいですよ」
「やった。じゃあ真也君よろしくね」
「わかったけど、叶さんもそうやるのか……」
頭を下げて、上目遣いをしてくる。トアと違ってわかってやっているあたり流石というかあざといというか、そういうところも含めて叶さんらしい。
さてさて【聖女】のステータスはどうなっているのだろうか?
はい、トアのスキルでした。変化したスキルは本人が自覚したり、使っていく中で変わるほかはそのままです。なので鑑定はこまめにするのが冒険者達の常識だとか。
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