第百九十八話:妥協なきフクちゃんのステータス
「みてみてー」
幼女の姿になって、頭を突き出してくるフクちゃんに鑑定紙を当てる。
皆、身を乗り出しているが、特に叶さんは乗り気のようだ。
「フクちゃんのスキルとか、めっちゃ気になるね」
「私もほとんど見たことがありません」
「フクちゃんは頑張ってたからなぁ。きっと成果がでているはずだべ」
ファスもトアも興味深そうに頭を寄せる。
さぁ、どうなってる?
――――――――――――――――――――――――
名前:フク
クラス▼
【オリジン・スパイダーLV.92】
スキル▼
【捕食】▼
【大食LV.75】【消化LV.60】【簒奪LV.85】
【蜘蛛(魔王種)】▼
【猛毒牙LV.24】【劇薬毒生成LV.25】【美麗回復泡LV.20】【蜘蛛の巣LV.42】
【女王蜘蛛糸LV.69】【聖糸LV.46】【切断糸LV.19】【致命の一撃LV.20】【縫製LV.21】
【上級隠密LV.80】【無音移動LV.40】【魅了LV.59】【催淫LV.12】【女王の威厳LV.40】
【邪視LV.32】
【砂渡りLV.30】【水渡りLV.30】【沼渡りLV.30】【山渡りLV.30】【壁渡りLV.30】
【跳躍LV.30】【高速移動LV.40】【精密動作LV.45】【危機察知LV.33】【硬化LV.30】
【凶化LV.30】【吸血LV.1】【煙幕LV.1】【部位再生LV.1】【投擲LV.1】【穴掘りLV.1】
【原初】▼
【自在進化LV.85】【念話LV.50】【魔人変化LV.70】
【全耐性LV.35】【環境適応LV.91】【上級従魔LV.50】【花竜の加護LV.不明】
――――――――――――――――――――――――
うわぁ……。
それが誰の声かはわからない。ただ全員が同じ気持ちだった。
こいつぁヤバいぜ。全員無言で座って鑑定紙を見る。
「えっへん」
真っ赤な目をクリクリさせながら胸を張るフクちゃん。
うん。可愛い、しかしスキルは可愛くない。
「ファス解説を」
「無理です。レベルが高すぎて、鑑定紙の上限を突破しそうですね」
即答されてしまった。
僕等の反応を見て、勘違いしてしまったのかフクちゃんが不安そうに見上げてくる。
「ボク、弱い? がんばったの」
「そんなことないぞ。フクちゃんが頑張りすぎていたから、びっくりしたんだ」
ナデナデしてあげよう。
甘えて来たフクちゃんを抱き上げて、膝に乗せる。
すると、叶さんが僕がプレゼントした魔物図鑑を取り出した。
「少しならこの本にも解説があるよ。気になるスキルを見てみようよ。そもそも、フクちゃんってなんでこんなにもスキルが多いの?」
ウキウキしながら、魔物のスキルのページを叶さんがめくる。
楽しそうで何よりです。
「フクちゃんのスキルには【簒奪】があるべな。相性の良いスキルを持つ魔物を食べてそのスキルを自分の物にすることができるんだべ」
「吸血や穴掘りといったスキルは、恐らく簒奪したものの全く使わなかったスキルなのでしょう。逆によく使うスキルや同じ蜘蛛である、アラクネのスキルは自分の物にしているようです」
流石に吸血をしているフクちゃんとか怖いからな。安心安心。
「えっと……ダメだ。本に無いスキルがほとんどだよ……」
「オラが見る限り、昔あったスキルが変化したものがあるっぽいだな【猛毒牙】とか【美麗回復泡】とかだべ。元は【毒牙】【回復泡】だべな」
「へー、あの泡ってそんなスキルだったんだ。あっ、図鑑に書いてあるよ『回復泡:ヒールサーペントが覚えるとされるスキル。傷を癒し、特に肌の状態を良好に保つ。古くより極一部の貴族の間で美容の為に取引される。非常に希少なスキル』だって。【美麗回復泡】ってこれの強化版なのかな?」
「エッヘン。マスターに可愛がってもらうの」
「オラ達毎日使ってるけんど、普通に考えれば貴族でも簡単にできないような美容をしているんだべな……」
「ご主人様に気に入っていただけるのなら、良い事です」
「だよね。冒険しているとお肌の状態とか気になるし」
「実際、回復力も上がってる。便利なスキルだよな。あと……【催淫】って……レベルがちょっと上がっているのはなんでなのかな、フクちゃん?」
「可愛がってもらうの」
足をプラプラさせながら、笑顔でフクちゃんがこっちを見る。うん可愛いけど、今は怖いぞ。
「……ご主人様は耐性系のスキルがあるので、効果は薄いはずですが……」
「【魅了】との合わせ技だよね。……やっぱり一番の強敵はフクちゃんかも」
「……僕に使ってないよなフクちゃん?」
「にこー」
……フクちゃん、恐ろしい子。
なんか、怖いので話題を変えよう。
「【花竜の加護】がついているな。やっぱり、皆についていたスキルなのか」
「まだわかりません。それにしても、昔からわかっていましたがフクちゃんは凄いです」
ファスが手を伸ばし、フクちゃんの頭を撫でる。
「努力して人化のスキルも手に入れたし、レベルも高いべ。オラも負けてらんねぇだ」
「可愛いし、強いし、可愛いから最強だよね。はぐみー、フクちゃん」
「やだ」
「なんでっ!?」
その後も、図鑑を見ながらフクちゃんのスキルを話し合っていく。
僕と違って、フクちゃん自身がスキルの内容を理解していることが多く、話は盛り上がった。
「――つまりこの30レベルで固定されているスキルは、相性が悪いのですね」
「うーん、そんな感じ」
「――フクちゃん。この【催淫】ってチーム全体に興味を向かせるとかできる? 例えば私達全員に対して、真也君に【催淫】してもらうとか」
「できるよ」
「叶さん、フクちゃんに変なことさせないで!」
「――物語とかで竜が人に化ける【人化】じゃなくて、【魔人変化】ってのが珍しいだな。フクちゃんのその姿は魔人ってことだか?」
「そだよ。魔物にも、人にも、どっちにもなれる」
「――【致命の一撃】ってたまに、フクちゃんの攻撃がやけにダメージデカいのがあるけどそれのことか」
「わかんない。でも自分で選べる」
「魔物のスキルは旦那様みてぇに、常時発動型が多く、詳しくはわかっていないスキルが多いんだべ」
みたいな会話を延々としてしまった。一通り疑問をフクちゃんに答えてもらったところで、トアが手を上げる。
「じゃあ、次はオラのスキルをお見せするだ」
次はトアか【料理人】のスキルがどう変化したのか楽しみだな。
というわけでフクちゃんのステータスでした。
魔王種としての能力に加え、汎用性も高いスキルが多いですね。
ちなみに【簒奪】は人間も対象にできます。真也君が人を食べることを止めなければどうなっていたことか……。
ブックマーク&評価ありがとうございます。更新遅れてすみません。頑張ります。
感想&ご指摘いつも助かります。モチベーションが上がります。






