第百九十七話:吉井 真也の地味なステータス
茶色がかかった紙にジワリと文字が浮かんでくる。
「頼むぞ……」
祈りながら、薄めを開けて鑑定紙を確認すると。
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名前:吉井 真也 (よしい しんや)
性別:男性 年齢:17
クラス▼
【拳士LV.87】
【愚道者LV.75】
スキル▼
【拳士】▼
【拳骨LV.80】【掴むLV.85】【ふんばりLV.84】
【手刀LV.70】【威圧LV.70】
【呪拳(鈍麻)LV.67】【呪拳(沈黙)Lv.50】【呪拳(浸蝕)Lv.27】
【愚道者】▼
【全武器装備不可LV.∞】【耐性経験値増加LV.68】【クラス・スキル経験値増加LV.62】
【吸呪LV.69】【吸傷LV.72】【自己解呪LV.74】【自己快癒LV.75】
【呼吸法LV.70】【眷属化Lv.10】【白竜の祝福LV.不明】【花竜の加護LV.不明】
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部屋に沈黙が満ちる。いや、だって……これ前とどう違うんだ?
「ファス、お願いだから。前よりスキルが増えていると言ってくれ」
まぁ、【呪拳:浸蝕】とか【白竜の祝福】とかあるけど。
「え、えと。前のご主人様のスキルよりも増えていますよ。【呪拳:浸蝕】というものと【眷属化】、後は【白竜の祝福】と【花竜の加護】ですね。【武器装備不可】のレベルが∞になっているのは単に計測不能ということだと思います」
「……なんかこう、派手そうなスキルは……」
「ドンマイ、マスター」
フクちゃんに頭を撫でられる。ちくしょう、どうせこんなんだと思ってたよっ!
「まぁまぁ、旦那様。【呪拳】はかなり便利だし、新しいスキルが出たのはいいことだべ。どんな【呪拳】なんだべか?」
「うーん、ちょっと確かめてみるか。前もそうだったけど【呪拳】はスキルが出現しても実感がないんだよな。えと【浸蝕】ってなんだろう?」
「【上級鑑定】があれば、おおまかなことはわかるんだけどね。後は実際に使うと、感覚的に理解できたりもするんだけど」
叶さんが補足してくれる。【鑑定士】の日野さんに鑑定してもらえばよかったな。
「マスター、使ってた」
フクちゃんが布まみれになりながら、僕の膝に乗って来た。
「フクちゃん、それっていつのこと?」
「槍をこわす時、あとは、でかいお顔のおじさんの時も」
「デカい顔のおじさんってデルモのことか?」
「そだよ」
えー、使っていたっけ全然自覚ないや。
首を捻っていると叶さんが、人差し指を立てる。
「『浸蝕』ってのは『蝕み、侵す』ことでしょ。真也君の【呪拳】と併用されていたんじゃない。例えば呪いが相手に入りやすくなるとか。あぁ、でも、それだと槍を壊した時には当てはまらないか」
「叶、『浸蝕』というのは、風や水が岩や地層を削ることを言ったりします。ご主人様は相手を執拗に攻撃し続けることがありますので、少しずつダメージを蓄積させて相手の状態を損なうことを指すのかもしれません」
「それはありそうだべな。攻撃に追加してダメージや呪いを累積させるわけだべな」
「うわぁ、ありそうだね。真也君のスキルって強弱を調整しているだけで、基本的にパッシブということだから……攻撃を防いでいても、ダメージは累積するのかも……自動回復系の武器とかスキル持ちに刺さりそうだね」
流石ゲーマー、メタい考察だな。
「マスター、地味でエグい」
「地味って言わないでっ!!」
わかってた。紙を見た時点で気づいてた、地味だよね! 僕だって、拳から炎とか出したかったよ。
フクちゃんの言葉で涙が出そうになる。またこんなのか、いや強そうなんだけどね。
僕って格上というか強い相手だと、徹底的に持久戦するから有用なんだろうけどさ。
「思えば旦那様は、闘技場の地下でも力づくで結界を破壊してたけんど、あれも効果乗っけてそうだべな」
「あの時は【呪拳:鈍麻】は意識していたけど、それ以外は気合入れていただけだから。検証しないと実際の所はわからないな」
今度、ファスの魔術相手にでも試してみよう。
「次は【眷属化】ですね。これは魔物が持つスキルとして本で読んだことがあります。確か、自身の力の一部を配下に与え、隷属させるスキルですね」
普通に、あくどいスキルだった。隷属って……。というか魔物のスキルなのか。
「まぁオラ達は奴隷なわけだけんど、奴隷持ちだからってそんなスキル発現するんだべか?」
「いいえ、いくら奴隷を購入しようと【眷属化】は魔物のスキルです。通常は発現はしないはずです」
「それこそ、私がこの前騎士達と戦った時に、スキルの精度が劇的に上がっていたことと関係あるんじゃない?」
「マスターと契約すると力がもらえるのー」
フクちゃんが前にも言ったセリフを言う。やっぱりこれって【転移者】としての資質以外の物もあるのだろうか?
「私の【息吹】もご主人様の力で白竜姫の炎を出せるようになったのだと思っています。そもそも、私とトアはご主人様と奴隷契約を結ぶことで、レベルアップが早くなったり、本来出現しないスキルが出現しました。契約後に叶のスキルが上昇したというのなら、関係はあると思います。ご主人様は『竜』と関係があるようですし、私のように魔物のスキルが発現したとしても驚きません……しかし、であれば【愚道者】は本来は人のジョブではないのかもしれません」
「なるほど【竜の後継】がなんなのかわかんないけど、ファスの考えは納得できるな」
ここに来て、人じゃないとかもう些細な問題ですよ。
それよりも、マジでこのスキルを他の転移者に見られたが最後、僕の評価は地の底に落ちるだろう。
……もう落ちてるか。
「よくわかんねぇけど、オラは旦那様の眷属だって言われて嬉しいだ。家族みたいだべ」
「だよね。眷属って身内感ある言葉だと思う」
「マスターといっしょー」
「私も光栄ですご主人様」
四人からジッと見られる。最近わかってきたけど、このパターンの時、絶対僕は勝てないよな。
「僕も、皆と……その、身内に成れて嬉しい……でも眷属とかはどうかと思うけど」
「いや、もう諦めようよ。ご、主、人、様」
ニンマリと叶さんが肩をつついてくる。
「つ、次を考えよう。【白竜の祝福】と【花竜の加護】だな」
顔が熱い。話を逸らそうとすると、ファスが口を開く。
「お待ちください。祝福や加護に関しては、私達にも出現している可能性がありますので、先に他の者のステータスを見ませんか?」
「確かにそうだな。じゃあ次は誰のステータスを見ようか?」
「ボクっ!」
フクちゃんが元気よく手を挙げた。そういや、フクちゃんのスキルは全然調べてなかったな。
というわけで、フクちゃんに鑑定紙を持ってもらう。
どんなスキルがでるのか……ちょっと怖いな。
というわけで、地味なので一番手の主人公でした。
まぁ、相手からしてみれば魔法を掴んで投げるような奴が、高速で移動しながら、アホみたいな膂力で殴ってきつつ、デバフと継続ダメージ巻きまくるのでかなり嫌だと思います。
次回:めちゃくちゃ久しぶりにフクちゃんのステータスです。もうちょいサクサクいけるようにします。
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