第百九十六話:新スキルをください。
その日は、もう夜だったこともあり宿に帰って、簡単な食事を済ませた後すぐに寝た。
翌朝、周囲の物音で目を覚ますと、すでにファスと叶さんが着替えをすませているようだった。
「ふあぁ……おはよう、二人とも早いな」
「おはようございます。起こすつもりはなかったのですが……」
「私は、色々新発見があったから、千早ちゃん達に報告してたの。【竜の武具】を真也君が入手したっていう噂も流してもらうように、お願いしたからね」
外を見るとまだ薄暗い、日が顔を出すか出さないかの時間のようだ。
ちなみに。
「すぴー……わふー」
鼻提灯でもついてそうなほどに、眠っているのは我らが料理人。
寝巻がはだけて色々大変なことになっているので起こすか。
「トア、起きろ。凄い格好だぞ」
「もうちょい、あと、もうちょっとだけだべー」
そう言って、体を揺すっていた僕の手を胸に抱き込む。
そうなると当然、その豊満な胸部装甲に引き込まれるわけで。
……し、沈み込むだと。馬鹿な、獣人の性能は化け物かっ!
「トア、起きないと。朝食前に天井に吊るしますよ……」
「同世代では、私も自信あったのになぁ。あれはちょっと勝ち目が無いかな」
「わふぁ、ちょ、ファス。起きたべ、起きたべぇええええ」
この件に関しては、小人の作ったナイフよりも切れやすいファスさんによって、宙に浮かべられるトアなのだった。
一歩間違えれば、僕も標的になるかもしれないので、心の中で合掌だけしとこう。
そして、叶さん。シャツの上から胸を触るのは止めてください。朝からよこしまな気持ちになりそうです。
「そういえば、フクちゃんは?」
「私達が起きた時にはすでにいませんでした。……リビングにいますね。何かを作っているようです」
とりあえず着替えてリビングにへ行くと、真っ白な布地が部屋中に広がっていた。
反物とでもいうのだろうか、様々な長さや形状の布地がフクちゃんの周りに散乱している。
「あ、マスター。おはよう」
「おはようフクちゃん。これ、どうしたんだ?」
「すごいです。布地ごとに魔力の質が違いますし、とても複雑な練り方をしています」
「透かしが入っているのもあるだ。これ、市場に流出したら大変なことになりそうだべな」
「肌さわりも凄いよ。献上品とか色々触って来たけど、断然こっちの方が良い物だと思う」
ファスがなんか感動し、トアと叶さんも、布地の質に危機感すら口にしていた。
地下の職人の技術を短期間で吸収したフクちゃんだが、どうして急にこんな量の布地を?
「なにかね。胸がフワフワするのー。何か違うのー」
ムン、と平らな胸を張ってフクちゃんが布を掲げる。
絹を超えて、流水のように滑らかなさわり心地の布は、確かに今までよりも何かが違う気がする。
「そういえば昨日、花竜が何か祝福とか言っていたよね。ある意味ダンジョンを攻略したわけだし、何か特典があってもいいよね」
「なるほど。そんなこと言われたな。僕は実感ないけど……」
「でしたら、ご主人様。久しぶりにステータスを確認してみてはいかがですか? 私達、最近まったくステータスを確認していませんでしたし」
「そういや、オラも【旨味抽出】のスキルが使えるようになったけんど、確認したわけじゃねぇだ。でもその前に、腹ごしらえだべ」
腕まくりをしたトアの号令により、一旦部屋を片付け、簡単な柔軟と運動をしていると朝ご飯が用意された。
たっぷりの卵にハムとチーズ。ご機嫌な朝食を平らげて、久しぶりに鑑定紙をアイテムボックスから取り出す。
ファスの呪いが解けるまでは頻繁に鑑定をしていたが、正直その後はあんまり気にしていなかったんだよなぁ。
「じゃあ、まず僕から見てみるか。ところでトア【旨味抽出】のスキルを覚えた時って、鑑定とか無しでスキルの存在に気付けたのか?」
「そうだべ。鑑定はしてないけんど、何となくできる気がしたんだべ」
あれー? おかしいな。僕、それなりに激戦を潜り抜けたはずだけど、一切新スキルの感覚とかないぞ。
新しいスキルを覚えた気がしないんだよな。
まさか、新スキルゼロとかないですよね。
待て待て待て、えっ? 本当に大丈夫?
ここで新スキルなかったら、いよいよパーティーでの存在感がないような気がするんだけど……。
「ご主人様? どうされたのですか?」
「……今、全力で祈っている所なんだ」
神よ、仏よ、精霊よ、ついでに女神様よ。勇者ほどとはいいません、せめてちょっとくらい派手なスキルが出てますように。
「どーんと構えるだよ旦那様。あるもんでやるのも大事なことだべ。工夫する旦那様はかっこいいと思うだ」
「そうだよ。私みたいにスキルが多くても、扱いに困るからね」
「マスター、ドンマイ」
「全然フォローになってないからなっ! あとフクちゃん、まだ結果出てないから。……よし、行くぞ。そりゃああああ」
鑑定紙を持って、魔力を流す。
そこに出たステータスは……。
主人公焦る。頑張れ真也君、きっと派手なスキルがでているさ。
展開遅くてすみません。色々書いていたら、文字数が多くなってしまったので一旦区切ります。
ブックマーク&評価ありがとうございます。更新頑張ります。
感想&ご指摘いつも助かっています。モチベーションがあがるので、一言でも感想をいただけたら嬉しいです。






