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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第七章:恋人の街編【向き合う心と穏やかな誓い】

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第百八十三話:水と踊る(ファス②)

 白のワンピースに着替えたファスと街の裏通りをのんびりと歩く、裏路地には細い水路が通っており、涼やかな風が通り抜けている。


「風が気持ちいいですね」


「そうだな」


 フードも顔布もしていないファスは凶悪に可愛い。

 ……なんか僕ばかりドキドキしているんじゃないかと思うと、ちょっと寂しい。


「ご主人様?」


 呼ばれて横を見ると、翠色の瞳が揺れる。

 そこには、あの日と変わらない美しさがある。牢屋の中で「生きたい」と僕に示してくれたあの光が宿っている。

 どうすればファスにこの気持ちを伝えられるのだろう。

 

「なんでもない。行こう」


「わわ、待ってください」


 ここは恋人の街だから、なんか上手くて洒落た方法がどこかにあるかもしれないから。

 路地裏より、博物館を目指して坂道を上る。

 しばらく歩くと、いくつかの路地の合流点に行きついた。

 そこは建物の間にポッカリと開いた狭い円形の場所で、それにも関わらず立派な噴水が設けられていた。

 周囲に人はおらず、影の中に日が差して水が煌めく幻想的な光景に思わず足を止める。

 

「なんか……秘密の場所みたいだな」


「ですね。おそらく、元は広場だった場所の周囲が開発されてこのようになったのでしょう」


 なるほど。狭い場所に噴水を置いたのではなく噴水の周囲に道や建物ができたのか。

 中々良い雰囲気だな、こういうの嫌いじゃない。

 そう思っていると、ファスが何かを思いついたのか笑顔で前へ出た。


「そうだ、ご主人様見ててください」


「何をしているんだ?」


「私の『宴会芸』をお見せします」


 ファスが噴水の縁に手を入れて持ち上げる。

 その手から水は零れ落ちることなく、水球となって浮かび上がる。

 

「おお、すごい」


 一つ、二つ、三つ、あっという間に十以上の水球が宙に浮かぶ。

 ファスが手を振ると、水球は形を崩し空中を上下に流れていく、それはまるで光そのものが流動するように路地裏を彩っていた。

 ワンピースを指先で摘み、古い映画の様な優雅なカーテシーがされた所で思わずを拍手をする。


「どうです? 水の操作を練習していたのでちょっと遊んでみました」


「綺麗だった。一枚の絵みたいだったよ。……じゃあ次は僕だな。ファス、今度は水の道を展開できるか?」


「……なるほど。はい、少々お待ちください」


 僕の考えをくみ取ってくれたのか、ファスが手を掲げる。

 先程よりも大量の水が周囲に浮かび上がり蛇のように動き回った。


「タイミングを合わせるぞ……せーの!」


 水の流れに乗って【ふんばり】で宙を駆ける。

 ファスが上下斜めに変化させる水の流れの中を、跳ね、宙返りをする。

 ファスの魔力の流れを感じ、指先まで集中して、手刀の型を披露した。


 多少不格好かもしれないが、これは僕等の踊りだった。


 お互いに手を伸ばし、相手の意図をくみ取る。

 踏み出す一歩先に水の道ができ、次に現れる流れを呼んで僕が跳びあがる。

 僕は体で、ファスは魔力で応じた。


 次第に二人とも熱くなり、水流は一段と激しさを増し、そして最も勢いの強いタイミングで流れをいなし、ファスの前に着地した。

 ファスも僕もびしょ濡れで、せっかくの服が台無しかもしれないけど、楽しい。

 出会ってすぐのころ、ろくに【スキル】も無い状態でしていた魔力や体術の訓練を思い出す。


「あの頃よりは、多少は僕等できるようになったんじゃないか?」


「勿論です。ご主人様も私もずっと鍛えてきましたから……フフフ」


「アッハッハッハ」


「アハハハハ」


 二人で顔を見合わせ笑い合う、こんな所でずぶ濡れでなにやってんだか。

 下着まで透けているファスを衆目に晒せないので、抱えて壁を走り屋根の上へ移動して風にあたる。

 時間はまだ、昼前。博物館へ寄る前にとんだ寄り道をしてしまった。

 ファスの【スキル】で服の水分を吸いだし、乾かしてから屋根を移動して一気に博物館まで駆け抜ける。


 博物館に近い通りで降りると、丁度食事できる店があったので中にはいった。

 どうやら芋と肉がメインの店のようだ。

 ランチを注文するとワンプレートに香草が練り込まれたマッシュポテトにハンバーグが出て来た。

 果実酒もサービスで付いてきているようだ。


「へぇ、ピリ辛なんだ。肉に合うな」


「お酒には蜂蜜が入って甘いですよ。美味しいです」

 

 二人して結構な量を食べたが、ファスが食べると不思議と上品に見える。


 腹ごしらえも済んだので、いよいよ博物館に入ろうとすると。


「邪魔だっ! どけっ!」


「おっと」


 入り口手前で後ろから乱暴に何人かの男性が入って行く。ファスを庇って強めに体をぶつけられたが、なんだあいつ等?


「……氷漬けにしましょうか?」


「落ち着けファス。ちょっと当たっただけだ」


 ファスさんが本気で怒る前に手を繋いで入場手続きをする。

 先程の男達はもう中まで入っていたようだ。

 入場料は銀貨三枚だった。二人分支払い中へ入ると。


「ご主人様、先程の男達……」


「どうした?」


 ファスが壁の向こうを視て顔をしかめている。


「強盗のようです。どうしますか?」


「……状況は?」


「今、まさに押し入ったようです。二階の館長室で何人かを人質にしています。まだ私達しか気づいておらず客も静かですが、職員の中には昏倒させられている人間もいるようです。戦闘に長けた【ジョブ】がいると思ってよいでしょう」


「早っ。手際いいな……見過ごすのも後味悪いし、助けよう。トア達も呼ぶか?」


 フクちゃんの糸があるので【念話】を使い呼ぶことはできるけど。


「いいえ、私達だけで十分です。先程のご主人様への無礼、倍にして返しましょう」


「いや、手加減は大事だぞ?……ファス? 魔力を静めような?」


 強盗さん逃げて、マジ逃げて。


というわけで、次回強盗さん地獄を見る。


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションがあがります。

感想&ご指摘いつも助かっています。がんばります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何時ぞや披露した真也くんのワインお手玉の超絶パワーアップバージョンですね。 こっそり「お揃い♪」とか思ってそうなファスさん。
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