第百八十二話:ファスとデート(ファス①)
千早達を見送り振り返ると、ファスがジッと上目遣いでこっちを見つめている。
「あー、ファス?」
「はい、ご主人様。なんでしょう?」
……最後のデートの相手はファスだ。
「誘ってください」と目で訴えてくる。
めっちゃ恥ずかしいけど、ここで退くわけにはいかない。
「僕と、デートをしてください」
目が合わせられない。
「フフ……よろこんで」
アナさん直伝の優雅な仕草で差し出された手を受けとる。
「さて、オラはフクちゃんと、旅の準備を整えとくだ」
「おかいものっ!」
「私は、葉月君の所に行って情報を集めるね。楽しんできて」
残った三人は冒険の準備を整えていくようだ。
準備を整えて、ファスと宿を出る。
しばらく歩いて、すっかりおなじみのアマウントのメインストリートに到着。
ファスはいつものローブにフードを深めに被り僕に寄り添ってくれている。
ちなみに手を繋いでいます。
なにこれ、めっちゃ恥ずかしい。でも嬉しい!!
いつも通り他愛無い話をしながらとりあえず歩いて行く。
「こうして二人きりになるのも、久しぶりですね」
「いつも一緒なのに不思議だよな」
「そうです。私が一番奴隷なのです」
「ハハ、それ久しぶりに聞いた気がする」
「もう、笑いごとじゃないですよ。……それで今日はどのように楽しみましょう?」
「逆に聞きたいんだけど、ファスはどこか行きたい所はあるか?」
「ご主人様の行く場所が、私の行きたい所です」
からかっているのかと思って、横を見ると翠眼と目が合う。
その瞳は真剣だった。今日のデートって意味ではなく、例え僕がどこに行こうとも離れないという意味だろう。
握っていた手を一旦ほどき、フードの上からファスの頭を撫でた。
「ずっと一緒だ」
「はいっ!」
顔布とフードで視えないけど、ファスが笑顔でいることは伝わった。
とはいえ、こうして惚気ていてもデートは進まない。
こうなれば、予めしていた下見通りに街を観光しようか。
「じゃあ、メインストリートは少し騒がしいし、静かな場所に行こう」
「いいですね。時計台でしょうか?」
「そこもいいけど、博物館みたいな建物があった気がするんだ」
古い町並みが並ぶ街の坂道をのんびりと上がっていく。
カップルは相変わらずどこにでもいるけど、徐々に喧噪から離れていく。
ファスの【精霊眼】も使いながら博物館を目指していると、途中に服屋の前を通り過ぎる。
「……(チラッ)」
ファスの視線の先には、真っ白なワンピースが飾られていた。
袖がついていて、先にはリボンが上品に飾られている。
「入ろうか」
「え、博物館は……」
「いいから、いいから」
手を引いて店内に入ると、若い女性店員が出て来た。
「いらっしゃいませ~、何かお探しですか?」
「そこに飾ってあるワンピースって、サイズの調整はできますか?」
「もちろんできます。【調整】の付与に代金を貰いますが……」
「構わないです。よろしくお願いします」
店員さんが、飾られていたワンピースを取りに向かうと焦った様子でファスが顔を寄せて来た。
「ご主人様。わ、私は、顔を出しては不味いのでは?」
「砂漠でボルセンさんから貰ったピアスをつけているだろ? この街なら他の冒険者や荒くれ者に絡まれる心配もないんじゃないか」
「確かにエルフの耳は隠せますが……」
「あのワンピース、ファスなら絶対似合うと思う」
「ですが……その……」
いつになく歯切れの悪いファス。あのワンピースが気になっているのは間違いないはずだけど……。
フードの奥の顔色は真っ赤に染まっていた。
「……あんな、可愛い服が似合うでしょうか?」
「えっ、似合うに決まってるじゃん。むしろ似合いすぎてトラブルにならないようにしないとな」
「本当ですね。後で笑うとか無しですよ?」
「そんなことしないって、なんなら今から気合入れないと気絶しかねん」
「ご主人様は大げさです」
これまで散々ファスにノックアウトを喰らった僕ですよ。
本気で断定した僕に若干引きながら、店員に連れられてファスが店の奥へ行く。
数分後、顔布も外して耳以外は普段通りのファスがやってくる。
「どうでしょうかご主人様?」
……スゥ……ハッ!
危ないっ、気絶しかけた。
抱けば折れそうな細い体に長い手足、白磁の肌とベリーショートと言えるほどまで伸びた綺麗な金髪が白いワンピースに映える。上目遣いで恥ずかしそうなその赤面した表情は物理的な破壊力を持っているようで……頭の悪い言い方をするのなら、完全無欠の異世界ファンタジー美少女がそこにいた。
この前のドレスもすごかったが、あっちは美しさに特化していたが、今回は可愛らしさが引き立っている。
「わかっていたけど、めちゃくちゃ可愛い」
「こ、こんな可愛い子だったなんて。彼氏さん、大丈夫ですか?」
店員さんも動揺していた。わかる、あまりの可愛さにどうしていいかわからなくなるよね。
「フフフ、ご主人様。顔が真っ赤ですよ。本当に似合っているのでしょうか?」
「隣に立つことが、怖いほどに似合っている。他の男に見せたくないな」
自分に自信がないせいで、不安になってしまう。
「私が傍にいたいのはご主人様だけです。……私、普通の格好で出歩くのが夢だったんです。お婆さんの所にいた頃は呪いで動けなかったし、人目を避けていましたから……本当に嬉しいです」
「僕こそ、ファスと一緒にいられて嬉しい。改めて今日はよろしく」
「はい、ご主人様」
こうして、ファスとのデートが始まったのだった。
タイトルまんまです。この二人普段からイチャイチャしているから、どうなるか悩ましいです。
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