第百七十四話:VS騎士団(桜木 叶③)
「見つけたぞ、冒険者めっ!!」
プレゼントされた本をお互いのアイテムボックスにしまい込み、不用心に店から出た所で騎士達に見つかる。
浮かれ気分で警戒心が薄れてしまっていたようだ。
「……この人達のことを普通に忘れてたなぁ」
「私も、次に真也君と何しようかと思ってた」
顔を見合わせて笑い合う。それなりに修羅場をくぐった割には、やっぱり僕等高校生なんだ。
「無視をするなっ、聖女様を渡してもらおうか」
騎士団のリーダーなのだろうか、一番前に立つ金髪イケメンのルイスさんが腰の剣に手をかける。
街中で得物を取り出すのは不味いな。
「叶さん。流石に危ないし、これ以上逃げたら周囲に迷惑かけそうだ。……少し時間を貰ってもいい?」
「……そうだね。むぅ、せっかくいいムードだったのになぁ」
プクッとほっぺを膨らませる叶さんを見ていると、彼等の前で猫を被るつもりがないのが良くわかる。
よしっ、やりますか。とりあえず、ルイスさんに話しかける。
「すみません。穏やかに行きませんか。街中で武器は不味いと思うのですが?」
「これは、聖女様を貴様から取り戻すための聖戦だ。蒙昧な民が何を言おうとも、女神はお許しくださるだろう」
そうだ、そうだ、と後ろの奴らも囃し立てる。どいつもこいつも、イケメンで腹立つな。
もう敬語も止めよう。やはり話し合いは難しいようだ。
「力づくっていうなら、場所を変えようか。人があまりいない場所を知ってるんだ」
高台の古い建物が集中している場所なら、人は少ないはずだ。
叶さんの結界があれば、多少荒事になっても大丈夫だろう。
「逃げても無駄だぞ……冒険者」
「逃げることは慣れているけど、今日は時間がないんだ。語るなら拳の方が手っ取り早い」
「なんと野蛮な」「どうして、聖女様はあんな奴と」「同じ黒髪だからか?」「弱みを握られて……」
なんかめっちゃ言われているな。そんなに、悪人面なのだろうか?
というか、武器を取り出そうとした人達が野蛮とかどの口が言ったんだコンチクショウ。
高台へと目指しながら、叶さんに聞いてみる。
「僕って、そんなに悪い事しそうなの?」
「どっちかというと、無害そうな顔かな。ああいう人たちは思い込みで人を決めつけるから気にしなくていいと思うよ……ていうか、どうして真也君の方が気にしているの? 普通にあの人達の方が悪いじゃん」
「いや、この世界に来てから、こんな扱いばかりだから……」
「慰めてあげようか?」
見上げてくる、その表情に一瞬見惚れる。
何するつもりですかね。笑顔の叶さんが怖いぜ。
「今は止めとこう。これ以上後ろの白い鎧の人達に恨まれたくないから」
背中から視線が刺さっているんだよなぁ。
「そうだね。そういうのは夜だよね」
「……えっ?」
※※※※※
〈ルイス視点〉
あの憎らしい冒険者め、また聖女様と親し気に会話しやがって。
すぐに我等の元に……いや俺の物にしてやる。
最初は異世界から来たってだけの、転移者を守護し、あわよくば恋仲になって教会に繋ぎとめるという任務に抵抗を覚えたが、一目聖女様を見ればそんな思いは消え去った。
あの清楚な微笑み、絹のような艶やかな黒髪。
何よりもそのそっけない態度が、俺の心を捕えた。どこの女も俗世にまみれ、俺達の顔を見れば頬を上気して、すり寄ってくる。
それなのに聖女様は、俺達には目もくれない。
そのつれない態度、貴族に囲われた他の転移者のように権力を笠に着ないその優しい姿勢に他の騎士達も夢中になった。
俺は物心ついた時には、教会に所属していた。
女神の教えを全うすることだけが、俺の全てだった。そんな俺が初めて心惹かれた女性。
それが聖女様だった。聖女様を護衛する騎士団の面子を見ればわかるが、全員が若い男。
このうちの誰かが、聖女に選ばれ教会のトップになるというわけだ。
問題は聖女様に執着している勇者:宙野だった。奴は俺達ほどではないが、顔もいい、勇者という権威もある。
俺達と勇者とどちらかが、聖女様を手に入れる。そういう戦いだったはずだ。
もし、聖女様が勇者の元に行ったとしても、相手が勇者ならば、俺達が負けても仕方がない。
しかし、あいつはダメだ。下賤な落ちこぼれの冒険者風情が聖女様と共に行動するなんて、許せるわけがない。
それはつまり、教会で選ばれた俺達よりもあの冒険者が優れているってことだ。
それだけはプライドが許さない。
俺達の前を聖女様と歩む憎い冒険者を見て、ただ剣を握る。
ここに俺達が来ることは表立って教会は許可していない。
生まれて初めて教会の意思に反した行動をとっている。しかし、これはプライドの問題なのだ。
女神よ、お許しください。
どんな手段を使ってでも、俺達は負けられないのです。
というわけで、叶さんとのデート……思った以上に長くなり終わりませんでした(土下座
次回は明日投稿します。
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