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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百五十九話:竜の物語とエルフの王族

 映し出された光の像。美しいそのエルフの女性は、ファスをそのまま長髪にしたような姿で、無関係とは到底思えない。

 何も言えない僕の腕を掴みながら、ファスはやや震えた声でナルミの問いかけに応えた。


「私が誰かは、よくわかっています。私はご主人様の一番奴隷のファスです」


「貴女はエルフの王族の関係ではないのか? それがなぜ奴隷なんぞしている! ヨシイ包み隠さず教えろっ! 場合によっては許さんぞ」


 激昂したナルミが、僕の胸倉を掴む。ファスが制止しようとするが、先に僕がナルミの手に自分の手を重ねた。


「教えて欲しいのは僕等もだ。これまでのことを説明させてほしい」


「……無理やりではないのだな?」


 無言で頷くと、その手は離れた。

 流石に場所が場所だったので、ヒットさんにお願いしてギルドマスターの執務室へ行く。

 ここなら広いし、外へ話が漏れることはないそうだ。

 

 叶さんがいないことに気付き(こっそり抜け出していたのか叶さん……)転移の【紋章】を使って戻って来た、小清水、日野さん、紬さんも合流している。

 当初は、部外者だからと話の場へ同行するのは遠慮していたが……。


「別段隠す必要もありません。ご主人様と私のことを話す良い機会です。特にコシミズには是非聞いてもらいたいので」


 と言って同席している。


「あの時のことはもう許してくれてもいいじゃない……」


 小清水はなんかブツブツ言ってる。多分草原で奴隷であるファスやトアを見て、戦いになった時のことを言っているのだろう。


 というわけで、執務室にてギルマスの仕事で忙しいヒットさん以外のデルモ攻略メンバー全員で、僕とファスの馴れ初めから牢屋を脱走したあたりまで、ついでにファスが僕に出会うまで老婆に育てられたことも含めかいつまんで話した。


 僕、トア、フクちゃんは、すでに共有している話なので今更思うこともないが、初めて話を聞いたメンバーはそれなりに衝撃だったようだ。

 ……まぁ、ファスの呪いはかなりショッキングだよなぁ。ファスは自身の呪いをどう思っているのか……こうして人に話せる程度には乗り越えたのだろう。

 僕は、自分の自殺のことを話せと言われたら無理だ。

 そして小清水がプルプル震え、泣きそうになっている。


「あの、私、知らないとは言え、ファスさんや吉井に酷いことを……」


「僕は大丈夫だから……えと、ファス?」


「ご主人様が毎日苦しみながら呪いを引き受けてくれたことを踏みにじり、私の生涯初めての役割を奪おうとしたことは絶対に忘れませんが……ご主人様がそう言うなら、私から言うことはありません」


 めっちゃ気にしてる!? 薄く微笑みながらそんなことを言うファスさんに震えが止まらない。

 意外と根に持つタイプなんだよなぁ。


「う、うぅ……ど、土下座すればいいかしら……」


「逆効果だと思うよ千早ちゃん。でもそんなことがあったなんて、ファスさん、吉井君も大変だったんだね」


「真也が宙野達に好き勝手言われているのも貴族からの評価が低かったせいか、それにしても牢屋で引き合わされ無理やりに契約をされたのが二人の出会いとは……まるで戯曲のようだ」


「……じゃあ次は、私と真也君との出会いを話すね」


「いや、叶さん主旨がずれているから」


 なんでそこで張り合うんですかね。唐突にボケをかます叶さんを止める。

 最近キャラ崩壊が酷い気がするけど、まぁ図書館で二人きりの時はおおむねこんな感じだったか。


「それで、ナルミはこの話を聞いて、何か思うことあるの?」


 アナさんが問いかけると、ナルミは手に持ったウィスプが入った瓶を見ながら答える。


「話はわかった。ファスが自分のことを本当に知らないこと、二人が想い合っていることもな」


「それなら、今度は僕が質問する番だ。さっきの女性はいったい誰なんだ?」


 あのエルフの女王と言われている女性はファスに縁の人物に違いないという確信があった。

 そうであるならファスには知る権利がある。

 僕のその問い掛けに対し、ファスは僕の腕を取って自分の方を向かせる。


「知る必要はないと思います。どこかのエルフの女性、私とは関係のない人です。それでいいじゃありませんか? 私はファスです。ご主人様のファスです。それだけが全てです」


 その手は微かに震えている。人生で一番辛いはずの話を堂々と皆に伝えたファスが、自分の知らない自分を恐れていた。

 僕はどう言えばよいのだろう。

 

「……ファス、よく聞いて欲しい。どんな風になりたいかはファス自身が選べばいいと思う。……だけど、もしファスの生まれがわかってファスに選べる生き方があるのなら、奴隷でない道があるなら、選んで欲しいんだ。家族がいるかもしれない、どうして呪われていたかもわかるかもしれない」


「必要ありません。それともご主人様は私が信用できませんか? もし、仮に私がどこぞの貴族の生まれだとして、私がご主人様よりもその生き方を選ぶと、お思いですかっ!?」


 美しい翠眼の瞳から、宝石が零れるように涙が流れる。

 思わずファスを抱きしめた。


「思わない。思わせない、ファス、絶対に君を離さない。例えファスがどこかのお姫様でも、奴隷を辞めたとしても、僕はファスと一緒にいる。だから怖がらなくてもいいんだ、目を背けなくてもいい、ファスがどれだけ遠い存在でも、誰もがファスを僕から取り上げようとしても、絶対に僕はファスと一緒にいる。ファスがそう願ってくれるなら、僕は迷わない」

 

 前々から思っていた。実はファスは僕なんかよりも、ずっと遠い存在なんじゃないかって、でもファスは僕といたいと言ってくれるから、だから僕は応えなければならない。


「はい、わかっています。私も絶対に離れません。ここだけが私の居場所です」


 しばらく、抱き合っていると……なんかめちゃくちゃ恥ずかしくなる。

 ファスはグスグスと腕の中で泣いているが、周囲の視線がいたい。

 ええい、しかし、僕はファスから離れんぞ!!


「旦那様、ファス、一旦落ち着くだ。まだ何も話は始まってねぇべ」


「ファスずっといっしょー、マスターもいっしょー、ボクが守るからだいじょぶだよ?」


 トアとフクちゃんが寄ってくれたので、皆に向き直る。 

 呆れた目で見られていると思っていたが、叶さん、小清水、紬さんの反応は違っていた。


「……あんなこと言えるんだ真也君。……羨ましさよりもなんというか……」


「男らしいじゃないか、こんなドラマみたいな台詞、実際に聴くことになるとは……物語だと臭いとか思ってしまいそうだが、実際に聴くと……アリだな。うん、グッときた。私も言われたい」


「……女の敵」


 顔を赤らめた三人がいた。アナさんは普通に呆れていて、日野さんはどこか困った様子だ。


「コホン……話を戻していいか?」


 ナルミが咳払いをする。なんかゴメン。


「えと、ファス。大丈夫か?」


「はい、問題ないです。すみません、実際似ているだけで他人の空似という可能性の方が高いと思います」


「話を続けるぞ、あの方は五百年前の【三大竜王戦争】にて、勇者と共に竜王討伐に参加した伝説の魔術師と言われている、リヴィル・モナト・ニグライト様だ」


「五百年前? えらい昔だな。あれ? エルフって長命なのか? まだ生きているとか?」


「いいえ、ご主人様。人族と比べればやや長命ですが、それほど差はありません。容姿が老いにくい為に広まった俗説です。しかしそれほどの英雄の生前の姿だったのですか」


「カジノで見た、ドラゴンカードの元になった話だな。あのカードの魔術師がエルフだったなんて知らなかっただ」


「伝説の竜王ね、そういえば白星教会の資料によれば、今って翼のある竜って絶滅したんだっけ」


 叶さんが、顎に手を当ててそう話す。モンスター好きの彼女のことだから教会の資料見まくっていたんだろうな。


「その辺から話したほうがいいか。この世界なら子供が寝物語に聴くような話だが……要点だけ話せばこうだ。

『その昔、人と翼の竜は時に敵対し時に助け合ってきた。ある時、人と竜の両方を脅かす恐ろしい魔王が現れた。王国は対抗するために異世界より【勇者】と【聖女】を召喚した。

 【勇者】は【聖女】と共に【竜王】と協力して魔王を退け、地の底に封じた。しかし、恐れる対象がいなくなった【竜王】は【勇者】を裏切り、人々を支配しようと新たなる魔王となった。竜の力は強大で人々は窮地に立たされる。竜の眷属により村々は焼きつぶされ、【軍隊】は蹴散らされた。

 白星教の【教皇】と当時の【国王】は、最強の【魔術師】といわれる賢者に助けを求めた、世捨て人だった賢者は当初助力を拒むが、竜を鎮めようと【民衆】によって攫われ生贄に捧げられた【女王】を悼み、手を貸すことにした。

 勇者と聖女に竜を倒す力を身につけるための試練を与え二人はそれを乗り越える。試練を乗り越えた二人に賢者は協力し、最後には王国と教会の【騎士達】を従え、見事三体の竜王【白の竜王】【赤の竜王】【黒の竜王】を打倒した。

 竜王を失った翼のある竜達は力を失い、眷属も倒され、翼のある竜達は絶滅した。三体の竜王達の死体は王国によって加工され、今も国を守る武具として受け継がれているという』

 というのがあらましだ。この物語に出てくる【魔術師】がエルフの女王だったリヴィル様だ。エルフの王族が表立って手を貸したとは言うわけに行かず、世捨て人の賢者として物語には登場している。彼女を祖とするニグライト家は彼女の死後もエルフの王族としてこのラポーネ国の隣にある【大森林ニグナウーズ国】を治めていた」


 ……物語からして、色々情報がありすぎる。三体の竜王に勇者に聖女、そしてエルフの魔術師だと。

 どうにも、とっかかりが多いぞ。


「治めて()()ってことは、今は違うの?」


 叶さんが質問する。この手の考察はTRPGとかでも彼女の方が得意だった。


「……ニグライト家の人間は病弱で、若くして死ぬことが多かったらしい。程なくして世継ぎがいなくなり家は断絶している。その為、跡目争いが酷くてな、今もあの国では謀略が渦巻いている」


 病弱……もしそれが、呪いのせいだったとしたら? 竜を倒した魔術師、ファスに出現した竜の呪い。やはり無関係とは思えない。

 となると、ここで疑問が浮上する。カルドウスやアナさんが何度か口にした言葉。


「アナさん、デルモのことが終わったら教えてくれるって言いましたよね」


「わかってるって【竜の後継】についてだよね。私も言いたいことがあったの、ところでヨシイ?」


「なんですか?」


 ラポーネ国第三王女、アナスタシア姫はニンマリと笑い。

 ポケットからチケットを取り出す。


「空の旅に興味はある?」


 次の冒険が始まろうとしていた。

というわけで、そろそろ次の冒険の舞台に移っていきます。


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションが上がっていきます。

感想&ご指摘嬉しいです。いつも助かっています。何度も読み返しています。更新頑張ります。

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