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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百五十七話:別れは酒と笑い話を添えて

 ……これは夢なのだろう。だって死んだはずの爺ちゃんが目の前にいるわけだし。


「久しぶりだね。爺ちゃん、夢でも会えて嬉しいよ」


 爺ちゃんは何も言わず、今回もミカンを投げて来た。

 

「またこれ、ちょ、持てないから」


 三つ、四つと投げてくる。

 夢の中なので【スキル】も使えない。しかし、ゆびを広げて前よりも多くのミカンを掴んだ。

 数は……なんでだろう数えられないや。


「――」


 爺ちゃんが、何かを言っている。何言っているかもわからない、なんか体を揺すぶられているような……。


 …様、……様。


「起きるだよ、旦那様っ~!」「ご主人様、起きてくださいっ!」


「ふぇ、あぁ、ファス、トア。おはよう」


「マスター、おはようー」


 また、トアに背負われてしまっているようだ。ファスの【息吹】を使った合わせ技は負担がデカいんだよなぁ。


「おはよう、っじゃないよ真也君。周りを見てみて」


「周り?……」


 寝ぼけ眼のまま、あたりを見渡すと……。

 なんか、めっちゃ崩れていた。わー、岩とかも落ちてるや。


「えっ!? ヤベェ!!」


 トアの背中から降りて、僕も走り出す。

 ダンジョンマスターであるデルモが消えて、歪められたダンジョンが崩れているのだ。

 通路にもガンガン瓦礫が積み重なっていく。

 フクちゃんが先に糸を飛ばして、瓦礫が邪魔にならないようにしてくれているが如何せん崩壊の速度が速い!!


「ファス、僕に乗れ。トアは叶さんを」


「わかったべっ!」


「たのしいねー」


 というわけで、走力に優れる僕とトアがファスと叶さんを背負って後は全力で走る!

 ちなみに、フクちゃんは普通に僕等の速度についてこれます。

 

「走れええええええええええええええ!」


「ご、ご主人様、速すぎますっ。【氷華:ホウセンカ】」


「わ、私も援護……無理無理、揺れすぎっ!」


「きょうそうだー」


 悲鳴を挙げながら螺旋状の通路を全力で走り抜ける。

 途中で塞がれていた瓦礫なんかは背中のファスが氷弾で弾き飛ばしてくれたが、地味に距離が長い、下手すりゃ砂に埋まって窒息だぞっ!

 徐々に狭くなる通路、地上までもう少しというところで出口が完全に塞がれていたが、構わず蹴り抜いて地上に飛び出した。


「ぬわああああああああ」「キャア」「抜けたべ」「たのしかった」「死ぬかと思ったよ。でも冒険って感じだったね」


 そのまま地面に倒れ込む僕等、先の戦いからのダッシュはマジでキツイ。

 

「おかえりなさい。よく頑張ったわね」


 出口では、仁王立ちするアナさんがいた。ここは……闘技場の一階のようだ。

 

「ただいまです。街の様子は?」


「ヨシイあなた、血まみれじゃない。聖女様がいるとはいえ大丈夫なの? なんかヨシイだけ装備もボロボロだけど。というか焦げてない?」


「あぁ、途中血を吐いたんで、焦げているのはいつものことです」


 叶さんの回復にフクちゃんの泡もあるしな、ちょっと気を失ったけど動きには支障はなさそうだ。

 疲れていることは疲れているけどね。


「……真也君、普通に大怪我だからね。私の回復なかったらどうなっていたかわからないよ」


「旦那様、今回は自業自得の部分もあるんだからな」


「あとでゆっくり話しましょうね、ご主人様」


「マスターのあほー」


「ま、まあまあ。今は街の様子が先だ。それで、他の皆は? 怪我した人はいませんか?」


 ヒットさんを始め、小清水や日野さんもこの場にはいないようだ。

 アナさんはため息をついて僕等に移動するよう促し、歩きながら現状を説明してくれた。


「皆無事よ。地下で浄化が行われたことを【セテカー】経由で知った後は、ツムギ様が街中に仕掛けていた【紋章】を起動して、ダンジョン化と魔物化を反転させたわ。結果は成功、ただ住民はパニックに陥っていたから、今は冒険者達が街の衛兵と一緒に事態を落ち着かせようと動いているわ。ヒットはギルマスとして指示を出すために先にギルドに居るから、他のメンバーは……まぁ、見た方が早いわね」


 案内された先は闘技場だった。ただ、その場には金貨がうず高く積まれ、剣だの防具だの何かの素材だのがいっぱいに積み上げられている。

 その前に、小清水、日野さん、紬さんがいた。

 

「うわぁ。これ、ダンジョン化の時に見た偽物ですか?」


「全部本物よ。白金貨も混ざっているわ。デルモが溜めていた宝が地下から吹き出したのよ。これがダンジョントレジャーと言うわけね。ちなみにナルミはエルフの宝を探すために、金貨をかき分けているわ。正直、探し物を見つけるまでかなりかかりそうだけど」


「すごいですね。何万枚とありますよ」


「これだけあれば、街の復興も早そうだべ」


 脱出の疲れもあり、なんかボーッと金貨の山を眺めているとこちらに気付いたのか、小清水達がやってきた。


「あなた、血まみれじゃない。防具も凹んで……。頑張ったのね」


「す、凄いです。地下は激戦だとわかっていたけど、吉井君も叶ちゃんもファスさんもトアさんもフクちゃんさんも、凄すぎです」


「戦いを近くで視れないことは残念だったが、真也が頑張ったことはわかる。だめだ、上手く言葉にできない。ハグさせてくれっ!」


 そう言う二人も所々怪我をしているし、砂まみれだ。

 小清水は感極まったように、僕の防具の凹みを撫でるし、紬さんはかっこよく両手を広げて迫ってくる。

 叶さんが回復スキルをかけると同時に、僕と小清水、紬さんの間に入る。


「……【星癒光】三人共お疲れ様」


「ちょ、叶何するのよ」


「何って回復だよ、千早ちゃん。近づいたほうが正確だからね。そういう二人こそ何やっているのかな?」


「嫉妬深い女は嫌われるよ叶。ここは度量の広さを示す時じゃないか」


「な、何って何よ、何もしてないわよっ」


 なんか、三人の間に緊張感があるんだけど……。

 言い争いを始める二人をよそにアナさんが話を始める。


「観客席にいた貴族達はすでにとりあえず避難させているわ。この金貨は……とりあえず暫定的に街を管理することになったこの私が預かるわね、グフフ……」


 しれっと権利を主張してきた。まぁ、こんな大金をどうにかするなんて僕等には無理だ。


「別にいいですけど、街の復興にも使ってくださいよ。地下の職人たちがちゃんと工房や店を取り戻せるようにしてくださいね」


「わかっているわ。というか、ちゃんとヨシイ達にも相応の報酬を出すわよ。もちろん街の冒険者達にもね。その上で、落ち着くまで私が治めるってだけだから。あ~あ、しばらくはメイド服ともお別れね。とりあえず、いくつかの倉庫へこの金貨を運ぶからヨシイ手伝ってね」


 パチンっ、とウインクされる。


「いや、これ何トンとありますけど……」


「わかっているわよ。何も今すぐって話じゃないわ。ここは結界を張って他の人が入れなくしようと思うから、作業は明日以降ね。体制作りやグランド・マロを拠点にネリ姉さまとも連絡をとらないと……でも、とりあえず今日は宴会よっ!!」


 その言葉に全員が賛成し、闘技場を出る。昨晩の夜会から休憩を挟んで、今は昼、いやぁハードだったなぁ。

 闘技場へは叶さんと紬さんが結界を張り、アナさんも何か道具を使って色々して結界を張っていた。

 ギルドへ向かう最中に街の様子を観察するが、地下が崩れた影響は少ないようだ。

 場所によっては崩れた建物や、治療場所が人で溢れていたが悲壮感は少ない。

 しかし、貴族達は今回の一件で危機感を覚えたらしく、いくつもの砂漠船が出港しているのが見えた。


 それらと入れ替わるように、地下の人々がどんどん地上へ出てくる。

 僕が見た場所以外にも地下で生活していた住人はいたらしく、どんどん街へ上がってきていた。

 すでに再開している露店もある位だ。


「この街の人はたくましいですね」


「そうね。幸いこれから彼らの仕事はいくらでもあるわ。崩れたダンジョンのこともあるし、冒険者達もいっそう忙しくなるわよ」


「カジノや闘技場はどうなりますか?」


 デルモが管理していた場所だ。取り潰すのだろうか。


「当然この街の資源として利用するわよ。別にデルモがしたことは全てが間違いってわけじゃないわ。金が集まれば物には質が問われる。職人たちにとっても冒険者にとってもいい方向へ動くと思うわよ。これからは、職人と冒険者に応えるような歓楽の都にすればいいわ」


 アナさんにはすでに街の将来が見えているようだ。

 なんだかんだいって、この人施政者なんだよなぁ。

 

 ギルドへ着くと、中はすでに宴会ムードだった。衛兵たちも交じっているようだ。

 街のことはいいのか。

 至る所で木のジョッキが合わせられる音が響いており、包帯まみれの冒険者達が武勇伝を語り合っている。

 その中で一際目立つモヒカン、ヒットさんがこっちに気付く。


「あら、お帰りなさい。もう、始まっているわよ」


 笑顔で迎えてくれているが、なんとなく察してしまう。


「戻りました。ヒットさん、チャンピオンは……」


「彼は王者として、成すべきことをしたわ」


「そうですか……ちゃんと戦いたかったです」


 本来なら、決勝の舞台で拳を合わせるはずだった王者のことを思う。

 ヒットさんの言葉から、彼の最期が誇り高いものだったことは明白だ。


「……うちのギルドメンバーも何人も死んだわ。だからこそ今日は飲んで騒いで死んだ仲間のことを話す。それが冒険者なりの見送り。当然、付き合うわよね?」


「勿論です。こう見えて僕、お酒結構強いんですよ」


「お供しますご主人様」


「オラは料理だべ。さぁ厨房に行くだよっ! っとその前に体を洗うだ」


「ごはーん。マスター食べさせてー」


「えっ、真也君お酒飲めるの? 私も挑戦してみよっかな?」


「ダメよ叶。私達未成年じゃない。……って言える雰囲気じゃないわね。私も飲もうかしら」


「わ、私はジュースがいいかなぁ」


 結局、その日の宴会は街の鎮静化の為に出払っていた冒険者も合流し、さらには地下の職人もやってきたことでいよいよ収拾がつかなくなってしまい宴会は夜を超えて朝まで続いた。

 二徹をした僕等はまだまだ続く宴会を抜け、ギルドの休憩室で倒れこむように眠ったのだった。

グランド・マロ編の後日談。ナルミさんは探し物を見つけられるのでしょうか?


次回:エルフの宝


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションが上がります。頑張ります。

感想&ご指摘いつも助かります。更新頑張ります。感想何度も読み直しています。

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― 新着の感想 ―
ファスの正妻ポジは好きだし主人公がやりすぎな時もあるけどこの後説教な?って方面に持って行きすぎな気がする。 無茶してどうにかなるのが大半だしいくら強くてもファスだけでカバーは出来ないだろうし、女性には…
[気になる点] マジックバッグ使えば大量の金貨運ぶのも楽そうだけど、そこまで容量入らないのか、もしくは隠したいのかな。
[一言] 小清水さんがメスの顔になる日が楽しみです(邪悪な笑顔)
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