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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百四十一話:手を血に染めて

 雪崩が起きたような地響きが通路に響く。

 何事かと足を止めると、耳の良いトアと【忍者】である日野さんが警戒の声を上げる。


「魔物の足音だべっ!!」


「え、えっと。【状況鑑定】……空間の魔力が高まっています」


 大広間からの音、もしかしなくてもファスだろう。

 僕等は職員用の通路を下り、地下へ続くスロープを延々と走っていた。

 

「……トア、魔法陣はまだか?」


「ファスが言っていた通りなら、もうちょいだべ」


 全員それなりの速度で走っているはずだが、終わりは見えない。

 広すぎだろこの屋敷、結構下まで潜ってるってのにな。

 ここで戻るわけには行かない。心配だけど広間に残った仲間を信じて……。

 

 ニョロリ


 目の前から、ヌタヌタした触手が床や壁から生えて来た。


「キャアアアア」


 日野さんが悲鳴を上げる。というか僕も悲鳴上げる一歩手前だ。


「ガルッ!!」


 トアが斧で引き裂いたが、さらに生えてくる。


「おいおい、なんだこれ」


【手刀】で切り払いながら、全員足を止めず、というより逃げるように前進する。

 その疑問に誰かが答える前に【念話】が響く。


(マスター、カナエががんばって戻ってきてッて、おもし……ザ……こ…ザァ……)


「おい、フクちゃん。聞こえないぞ」


「魔力が荒ぶっている。擬似的なマジックキャンセルが起きて【念話】が妨害されているようだ」


 紬さんから冷静な解説が入る。頑張って戻って来いって? 

 送り出しといて、無茶ぶりだ。

 

「吉井君、接敵します」


「フン、結局こうなるのか」


「戦闘は任せるよ」


 日野さんが暗闇の先から魔物を見つけ、ナルミがナイフを出す。

 地下から湧いてきた魔物は、()()でそれほど大きさはないが、通路を埋め尽くすほどに数がいる。ちょっと大きめのゴブリンって感じだ。しかも、蝕手まで動きを邪魔してくる。

 やっかいだな。


「皆は下がってるだ。旦那様、合わせ技でいくべっ!」


「砂漠で練習したやつだな。任せろっ!!」


 無駄に遭難してたわけじゃないって所を見せてやろう。

 【手刀】を発動し、腰を落とす。足に力を溜めて前傾の姿勢を取る。

 後ろでトアが手斧を振り被るのと同時に【呼吸法】で息を合わせ、投擲と一緒に一気に突っ込む。


「【飛斧】っ!!」「いよっっしゃああああああああ」


 気合を叫び、全力の突撃。僕の周りをトアの斧が回り、敵を引き裂く。

 横面打ち、正面打ち、抜き手、袈裟、逆袈裟、止まることなく、吹く風の如く。

 斧の援護を受けながら【流歩】で止まらずにひたすらに前進。


 【刃風・虎落笛(もがりぶえ)


 トアの斧と【手刀】合わせて四本の刃で敵陣を八つ裂きにし、通路を埋めていた魔物達を蝕手ごとミンチにした。

 残身を取って停止。斧が回転しながら飛んでいきトアの手に戻る。


「皆、通路は空いたぞ」

 

「よし、行くだ。魔法陣は近いだよっ」


 トアがすぐに駆け寄ってくるが、他の面子がなんか動かない。

 あれ? どうした?


「何だ今のは……一歩間違えれば、アイツも斧に刻まれるぞ……狂っている……」


「一瞬で敵が全滅か。捨て身の突撃に見えるのだが……怖くないのか……」


「……み、見えませんでした。気が付いたら壁や天井に血が……うっぷ……これは……」


 なんか言っているみたいだけど、聞こえない。


「トア、皆はなんて言ってるんだ?」


「……旦那様の凄さに感心してるだ」


 耳をペタンと倒して、めっちゃ目を逸らしながらそう言われた。

 絶対嘘じゃん、ドン引きされてるじゃん。

 

「何でっ!? わりとかっこいい技だと思ったんだけど!?」


「まぁ、はたから見れば、旦那様を弾丸みたいにして発射している技だもんなぁ。」


 この【刃風・虎落笛】は僕とトア、ファスとフクちゃんのペアで模擬戦をした時に、思いついた技だ。

 氷魔術と糸での面攻撃を突破する為の突撃技なわけだけど、個人的にはかなり気に入っていて、名前までつけたのに……。


「とりあえず、行こうか」


「だべな、皆もすぐに来るだよ。その……元気出すだ」


「……うん」


 触手もまた、生えてきそうだし早く行こう。

 カッコイイと思うんだけどなぁ。

 僕等が走り出すと、後ろの三人もすぐに追いついてきた。

 日野さんはなんか涙目だけど、そんなに怖かったのか。


「あの……吉井君」


「うん? 何?」


「あの魔物達……人間も交じっていたかも……」


 言葉の意味が理解できず、思考が止まる。


「【鑑定】したの……普通の魔物もいたけど、人間から変化したような魔物も……多分これが『呪い』の正体だと思う……」


「……」


 言葉が出ない、じゃあ僕はさっき、人を殺したのか?

 いつかこんなことがあるとは思ったけど、まさか、こんな唐突に……。

 もしかしたら、元に戻せた人もいたかもしれない。

 手にべっとりとついた血を見る。これは人の血なのか。


「旦那様」


 トアが声をかけてくれる。

 わかっている。後悔するのは後回しだ。


「大丈夫、いつかこうなるとは覚悟はしていたんだ。……だから大丈夫だ。人間を魔物に変えるっていうのが『呪い』なら、なおさら魔法陣は破壊する必要がある。そうだろ?」


「……後で、めちゃくちゃ旨い飯を作るだ」


「……ありがとう。楽しみにしてる」


 正面に、デカい扉が見えた。すでに開かれており魔物が湧いている。

 速度を落とさず、突破すると扉の先は開かれた場所になっていた。

 

「ここが魔法陣の場所か」


 部屋の中央に黒い、オーラを放つ魔法陣が設置されており、部屋には実験室ように机にフラスコ、薬としてばら撒くための素材が所せましと置かれていた。

 部屋には先程のゴブリンモドキが、呻き声を上げながら薬を口に入れている。 

 奥は地下のダンジョンに通じているらしく、魔物が出てくる。

 

 警戒し一歩前へ出ると、黒い稲光が走り、吹っ飛ばされる。


「ッ、痛って!」


「旦那様っ!? 大丈夫だか?」


「結界か」


 ナルミがナイフを投擲すると、見えない壁がぶつかり黒い稲光が流れ、ナイフを弾いた。

 地面で蠢く、魔法陣が変化し、その周りに朱い陣が展開されていた。

 魔物は普通に通れているようだ。チッ、急いでいるってのに……。


「防御用の陣だな。私の出番だ、周囲の触手と魔物を頼む。まずはこの防御用の結界を解析するぞ」


 紬さんが前に出るが、顔をしかめる。


「やっかいだな。結界の魔法陣だけあって、書き換えるのはかなり時間がかかりそうだ。恐らく私を想定して組まれている」


「中の呪いを付与する魔法陣はすぐに壊せそう?」


「あぁ、壊すというより、別の物に書き換えるというのが正しいがな。アナスタシア姫の考えが正しければ、あの黒い魔法陣を変えることで、呪いの影響を変えることができるはずだ」


「なら、手っ取り早くいこう。……オラァ!!!」


 両手を結界に、突っ込む。


「真也っ、何をっ!?」

 

「グッ、紬さんは中の魔法陣を書き換える準備をしてくれ。この結界は僕が破る」


「力尽くでは無理だっ!」


「やってみるさ」


 黒い稲光が抵抗するように、身体を打ち据える。

 火が背骨を走るような痛みだが、構わず結界を【掴む】さらに【呪拳・鈍麻】で性質を弱らせる。

 トアは僕の意志を尊重してくれたのか、周囲の魔物達を抑える為に動き回っていた。


「こっちは任せるだよ、旦那様」


「無茶苦茶だ。まったく、宝どころじゃないな」


「私も……」


 ナルミと日野さんも、戦闘に回っている。紬さんは無言で腕を組んでこっちを見ていた。

 その視線からは色んな感情が読み取れる。

 言葉にして答えるよりも、行動で示さないとな。

 手についた血が渇いて、こびりつく。


 声を上げながら、指を突き立て、こじ開けるように左右に開く。

 爆ぜる音が部屋に響き、結界が僕を攻撃する。


「負けるかァアアアアアアアアアア!!」


 空間にヒビが入り、結界が破れる。

 見えない壁を黒い光が走り、まるでガラス片のように部屋に舞い落ちていく。

 痛みと疲労でしゃがみ込むと、横に紬さんが並ぶ。


「見事だ。私ではこれほど早く結界を破壊できなかった」


「ハァ……ハァ、この手に限るね」


 せめてもの強がり、紬さんはこっちを見て、顎の下に指をかけ、僕を上に向かせる。


「先程の魔物になった人間の為に、無茶をしたのだろう?」


 チュッ


 紬さんの顔が近付きその唇が僕の額に当てられる。


「休憩していてくれ。ここからは、私の仕事だ」


 ジュストコールを翻し、紬さんは無数の【紋章】を展開した。

 ふと両手を見ると、乾いていない僕の血が指先から滴っている。

 それを見ながら、救えなかった人達を思い。

 

「ごめんな」


 小さな声で謝った。

地下の戦闘でした。今回のことが吉井君にどう影響を与えるのか……。

次回:デルモの誤算。


ブックマーク&評価ありがとうございます。皆様の評価が燃料となります。

感想&ご指摘いつも助かっています。更新頑張ります。

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― 新着の感想 ―
この街の闘技場で巨漢を頭から落として頭かち割ってたときは殺す覚悟したんだなと思ってたんですが、そうでもなかったんですね。
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