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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百三十五話:潜入開始!!

「なかなか似合うじゃないか真也」


「本当? どうにも衣裳に着られている気がしてならないな」


 挑発気味に深く腕を抱いてくるのは目の覚めるような真紅のドレスに、落ち着いた茜色のアームカバーを付けた紬さんだ。

 ……実は彼女の方がわずかに身長が高いので、少し工夫して抱き着いているのが芸が細かい、演劇部のエースなだけのことはある。

 ドレスにはフクちゃんと地下職人渾身の、花と蔓をモチーフとした金糸の刺繍が施されている。大胆に肩を露出したその衣裳は中々に艶やかで、ともすれば服の色気に蹴落とされそうだが、彼女は造作もないと着こなしている。

 いつもの中性的な雰囲気は鳴りをひそめ、髪型もどこか丸みを帯びた女性らしいものとなっている。ぶっちゃけ、叶さんに勝るとも劣らないほどに美人だ。

 いやぁ、こうも変わるのか……女性って怖いな。


 対して僕は黒を基調とした、襟が無く丈の長い上着を腰巻で締め、ややタイトなズボンを履いているといった服装だ。布地には紬さんと同じ金の刺繍が施されており、動きやすい服装ではあるが、あくまで礼装としての緊張感を持った背筋が伸びるような服だ。カンフー映画とかでこんな衣裳みたことあるな。

 肘から手にかけては、茶色の染料を使って皮膚に竜の影絵のような図面がタトゥーの様に描かれていた。

 ヒットさん曰く、砂漠ではこういったワンポイントが流行りだとか。


「自信を持ちたまえ。その仮面も中々だ」


 メキシカンマスクはヒットさんに返したので今は白地に金の装飾がされたオペラ座の怪人が付けていそうな顔の上半分を隠すようなマスクをしている。

 【鑑定防止】のエンチャントがされているみたいだけど、どこまで通用するかな?


 ギルドで作戦をアナさんから聞いた後、礼装に着替えた僕等は別々の方法でデルモの屋敷へ向かっていた。

 叶さん、小清水、日野さんは転移の魔法陣を使ってホテルへ来ている送迎を使う。

 ファス、フクちゃん、アナさん、ヒットさんは予め待機させていた魔物がけん引する客車で向かうようだ。

 僕、紬さんは紬さんの魔法陣を使って、屋敷近くへ転移。屋敷前でナルミと合流する予定だ。

 ちなみにボルテスさんは「バカヤロウ、そんな危ねぇとこ行けるか」と言ってホテルで待機している。


 転移の魔法陣が敷かれた路地裏から大通りへ出ると、眩しさと喧噪に顔をしかめる。

 この街は夜の方が賑やかだ。この区画は貴族達の逗留場所となっていることもあって、いたるところに私兵がおり、問題がないか目を光らせている。

 カジノへ向かう客、奴隷を侍らせる貴族、それにたかる娼婦に商人。

 道行く人々は皆笑みを浮かべている。だがどこか下品に感じるのはなぜだろうか?


「……紬さん、腕は指をかける程度にしてくれ、何かあった時に守れない」


「なるほど、しかし、よい筋肉だ。やはり君は男で、私は女なんだな」


「?……そりゃそうでしょ」


 

 いくら中性的だからって彼女を男と間違えることはない、今の姿を見れば、テレビでも中々見ないような美人といっても過言ではないだろう。


「そうだな、だが、それはとても大事なことなんだよ。フフッ、叶はきっと羨ましがっているだろうな」

 

 名残を惜しむように、指を肩から滑らせ彼女は指先だけを肘に触れさせた。

 つい一時間ほど前に、ギルドで地獄を作ったばかりだと言うのに、この悪女はまだ地獄を作る気なのだろうか?


 忘れてはいけない、その気に成ったら数キロ先の草むらより、たった一本薬草を見つけるようなチートを持ったファスさんがいるということを。そしてその情報をすぐに周囲に伝えるフクちゃんもいることもなっ!!

 なんか、別の意味で緊張感出て来たぜ。


「人が悪いよ。紬さん、ファスや叶さんをからかってるだろ」


「半分当たりとだけ言っておこう」


「半分?」


「残り半分は秘密にしといてくれ。さぁ、もうすぐ着くぞ。あれこそ正しく摩天楼だ」


 錬金術によるネオンの装飾が一層煌びやかに光る、巨大な屋敷は遠目にも目立っていたが、近くに来るとさらに圧倒される。ただ大きいだけじゃない。

 統一感なく、壁や庭に飾られているのはこの街から収奪した職人達の作品だろう。

 実用的でない武器や鎧から銅像まで悪趣味に並べられている。

 意図的に意味がないように置いているのは、彼等の誇りなぞ金でどうにでもなるとでも言っているようだ。

 ピリピリと肌が震え、空気は粘度を持つかのように纏わりつく。


(皆、聞こえるか?)


(はい、ご主人様)


(イエス、マスター)


(おっと、待ってたべ、旦那様)


(感度良好だよ、フクちゃんの【念話】と紬の【紋章】による通話、いい感じだね)


(何?)


(き、聞こえるよ吉井君)


(ヨシイ。さっきも説明したけど。屋敷に入ったら【念話】は緊急時以外禁止ね。内容まではバレないだろうけど、やっぱり敷地内には結界があるみたい。使用をしていることくらいは察知されるかもしれないから)


(うーん、これ便利ねぇ。つくづく転移者には驚かされるわぁん)


(一応、察知をかいくぐるようにしているが、まぁ警戒は必要かもしれないね)


 皆から返信が入る。


(なんか、やな感じがする。注意してくれ)

 

 そう【念話】を送って通信を切る。

 人混みから違和感なく、ナルミが出て来た。


「遅いぞ、ヨシイ」


 そういうナルミの格好は、ボルテスさんが用意したのか白と金のアオザイのようなドレスを着ていた。耳こそ【変容】で丸くしているものの、それ以外は素の彼女の姿だ。長めの銀髪によく合う服装だ。

 なんつーか、マジで麻痺しそうだけど、この二人を連れていくわけだ。

 ……目立つと思うけど大丈夫なのだろうか?


「その姿でいくのか?」


「情報を集めるには女の方が便利だからな」


「いいじゃないか真也。両手に華とはこのことだ」


「……魔物と戦う方が百倍気が楽だよ」


 周囲の貴族の視線を感じながら、僕等はデルモの屋敷へと門を潜ったのだった。

男性:吉井君

女性:ファス、トア、フクちゃん、桜木、小清水、日野、中森、ナルミ

オカマ:ヒット


なんという男女比、肩身の狭い吉井君はボルセンさんをわりと本気で誘ったそうです。


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― 新着の感想 ―
今更だけども >予め待機させていた魔物に引かせている馬車(引いているのは魔物)に乗って行くようだ。 魔物云々が被ってる気がする
[一言] 形見の狭い…? 肩身の狭いだけど、この場合は状況が状況だけに形見を残しそうではある。 主人公の運命や如何に。
[一言] 実はオカマの方が誰よりも常識があったりするんだよね ただキレると素が出てくる辺り面白い
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