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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百三十三話:支えさせてください。

チョキチョキとハサミが髪を切る音が部屋に響く。

 ここ数日の連戦による疲労(普通に回復している)と、ファスの艶姿(致命傷)によって気を失った僕はすぐに目を覚まし、いつもの服に戻ったファスに髪を切られていた。


「冗談でも、倒れるのはびっくりするのでやめてください」


「それくらい綺麗だった」


「ありがとうございます。……ご主人様」


 冗談で倒れたと思っているかもしれないが、マジで動悸が激しかったからな。

 ここ数日の特訓ってのは、アナさんによる上流階級の立ち振る舞いだったらしい。

 ちなみに、アナさんとヒットさんは紬さんの【スキル】を使って、叶さんやトア、フクちゃんと連絡をとっているらしい。紬は少し休憩といって、ソファーで眠っている。

 とりあえず、フクちゃんが戻ってきたらまた集まって今晩の作戦会議だ。

 その前に、僕も身だしなみくらいは整えとけと伸びた髪を切ってもらっているというわけだ。

 

 静かにハサミの音だけが部屋に響く。

 

「……髪の毛、伸びましたね」


「できるだけ、短くしてくれていいよ。戦う時邪魔だからな」


「また、そんなこと言って……キチンと整えます。お婆さんの髪の毛だって切っていたんですよ」


「任せる。ファスがいいなら僕はそれでいいから」


 気を許している人に頭を触られるのって気持ち良いもんだ。

 昔爺ちゃんにバリカンで丸刈りにされたのを思い出すな。

 いまではこの感覚ってあんまり無かったかもしれない……。

 

「そういえば、少ししか見なかったけど。上流階級の立ち振る舞いを覚えていたってことは、ファスはどこかの貴族としてデルモの屋敷に行くのか?」


「みたいですね。耳に関しては一応、装飾品で人間の耳に誤魔化すこともできるようですが【看破】持ちがいることも考えて、耳を隠すような被り物をするようです」


「僕は闘士としてだから、マスクだろうけど。まぁ目元を隠すものとかでもいいか」


 使っていたマスクはヒットさんへ返した。あれは僕が持っていいものじゃないと思う。

 

「アナさんは私の付き人らしいです。フクちゃんは蜘蛛状態で一緒に屋敷に行きます」


「僕はナルミとボルテスさんと一緒に行動か。叶さんグループもいるし、どうなるかな?」


「私はできるだけ、多くの人を見て【精霊眼】で呪いの様子を探ります。デルモを直接見れば何かわかるかもしれません」


「回りくどいなぁ。なんか今回の事件はわからないことが多すぎる」


 地下に追いやられた人々、蔓延している薬、地下で処理されている魔物。

 集められている転移者、カジノに渦巻く金、政治。

 要素が多すぎてややこしく、そのせいで物事が見えない。まるで砂漠の蜃気楼のように。


「……それが狙いなのかもしれませんね」


「うん?」


 狙い? どういうことだ。


「目に見える問題は囮で、本当の狙いはまだ見えていないかもしれません」


「デルモがこの街でしたいことか……」


 異世界の権力者がしたいことなんて、僕にはわからないが、思い出すのは闘技場で見た死体、地下で寝込んでいた子供達。誇りを奪われた王者。


「ご主人様なら大丈夫です」


 ハサミを布で拭いて、ファスが砂落とし用の刷毛で頭を払うと切れた髪の毛も落ちる。

 これ、マジで便利だな。元居た世界でも重宝されそう。


「大丈夫かな?」


「ええ、私達がついています」


「……ずるいぞファス」


 ここで否定すれば、ファス達を否定することになる。

 だから僕は大丈夫でなければならない。

 本当に、厳しいなぁ。

 爺ちゃん、男って大変だよ。頭の中の祖父はいつも通り笑うだけだった。


「意地悪でしたか? ご主人様が元気がなさそうだったので」


 ……バレたか、敵わないなぁ。


「まぁ、別に元気がないとかじゃ無いけどさ。……元いた世界の友達に会ったんだ」


「はい」


 ファスは首に巻いた布を取って、僕の後ろで静かに立っている。


「名前、思い出せなかった。結構話していたはずなのに」


「はい」


 どうして、彼女はこんなに優しい声が出せるのだろう。


「紬さんのことも思い出せなかった。まぁこっちは、本当に知らないことだったんだけど」


「その件については、後でしっかり聞きます」


「お手柔らかに……ここに来る前のことを思い出したくなかったんだと思う。そして今、そのことに思い当ってちょっと沈んでいる。これから敵の懐に飛び込むってのに……僕は変わっていないのかもな……なんてね。アナさんの所に行こうか」


 立ち上がろうとすると、ゆっくりと後ろから抱き着かれる。

 頬を摺り寄せ、ファスは僕の頭を撫でてくれた。


「ご主人様は強くなりました。貴方はあの日、牢屋で私と出会ってから、自分のしたことと向かい続けています。私はそんなご主人様が本当に大好きです。トアもフクちゃんもカナエもきっとそうでしょう。だから、たまにこうして支えさせてください」


「ファス」


「はい」


「……もう少し、こうしていてくれ。すぐにいつもの僕に戻るからさ」


「はい」


 その返事は静かに、部屋に響き僕の心に染み込んでいった。

 

これが、正妻力……。またやってしまいました、いちゃつく二人が悪い(違う

次回こそは話を進めます。


ブックマーク&評価 ありがとうございます。本当に力になります。

感想&ご指摘 いつも助かっています。感想は何度も繰り返し読んでいます。

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― 新着の感想 ―
う〜ん正妻。
[一言] いいなぁ、ファス。 ほんとにタイトル通り奴隷に鍛えられてますね。
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