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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百二十一話:VS闘士

「【【【空刃】】】」


「ですよねっ!!」


 全員からの空刃が飛んで来る。砂河(サボロ・リベロ)で生み出した、流れるような運足【流歩】で蛇腹に下がり躱す。


『おっと、新人に闘士達からの洗礼だあああああ。しかし新人躱す躱す。なんだあの速さは!』


 ご丁寧にも、逃げ道を塞ぐように散開しながら全員が距離を詰めつつ、追撃の【空刃】を飛ばしてくる。

 いままでの、雑魚や魔物と違う。ちゃんと人を倒すための動きだ。躱しきれない。

 呼吸を止めず、拳で魔力の刃を打ち砕く。


「オオォオオオオオオ【重撃】」


 頭上から雄たけび、見上げると、跳びあがったバルモが斧を叩きつけてくる。

 鉄の匂いが感じられるほどに引きつけ、体を開き躱す。

 巻きあがる土埃の中、一足の間合い。揺れる地面も【ふんばり】なら強く踏みしめられる。

 がら空きのドテッ腹に鉤突きを叩きこむ。


「オラアアアアァアアアアアア」


 雄叫びを上げながら右腕を振り切る。【重撃】の効果が残っているのか、岩の塊を殴っているようだ。

 ジンジンと痺れる拳。間髪容れず微かな足音。

 砂ぼこりの左右から曲刀が生えてくるように出てくる。【手刀】で魔力の刃を纏い受け止める。

 

「ギャヒヒヒヒ」


「イッヒヒヒヒヒ」


 二人の曲刀使いが狂ったように笑いながら、切り付けてくる。

 引きが早く、突き出すような角度の斬撃。見たことない軌道の剣術だ。

 【ふんばり】を使って、踵だけでバックステップ。


 甲高い金属音が交差する。


『さぁ、変幻自在の砂海剣術が新人を襲うぞっ!!』


 実況はもはや戦闘に追いついておらず、ワンテンポ遅れた場面を叫ぶ。


「ギャヒヒヒ【角蛇切り】」


「イッヒヒヒ【角蠍切り】」


 魔力の高ぶり、スキルの予兆。高速の連撃が変化する。

 這うような姿勢から、波打つ軌道の足切り。

 上下のフェイントを絡めた、逆手の突き刺し。


 【手刀】じゃ抜かれる。無理、躱せない。


「ッ!! 【拳骨】ッ」


 魔力を強めて【拳骨】を発動。腕と足に刃が喰いこむが。強化した手足を切り裂くに至らず刃が止まる。

 突き刺してきた方の曲刀使いを掴み、引き落としの要領でもう一人にぶつける。

 刃が抜ける。踏みつけでとどめを刺そうとすると、うなじに殺気。とっさに屈む。


 チョキン。


「へぇ、ヤルゥ」


 調子の外れたような声。首のあった場所にハサミが閉じられる。

 アブねぇ。死んでた!!

 屈んだ姿勢から海老蹴り(合気道の技じゃないけど)で反撃。


 感触はない。見えないが多分躱されてる。

 次の攻撃の気配が察知し、足を引っ込めて跪坐(爪先を立てた正座)。【呼吸法】で刹那の集中。

 一秒の十分の一それよりも、もっと短い時間。


 一連の動きで、吹き飛ぶ砂ぼこり。

 現れたのは正面左右から二本の曲刀、右後ろから鋏。


 ……かつて、正座が公の場で取られていた時代。その時を狙った攻撃に対応するために作られたのが『座技』の始まりだという。

 不意打ちされることを前提に作られたこの技術は、複数人による武器での攻撃も想定されている。

 そんな状況現代ではないだろうと思っていたけど。

 そんなことできるはずないと決めつけていたけれど。

 

「今ならやれるっ!」


 右前に膝行の要領で大きく一歩、『座技正面打ち一教』手刀の構えを相手の側面へ差し出す。

 肘を掴み、関節を極めながら爪先で【ふんばり】を発動。左膝を中心に回転。

 呼吸投げへ変化、左側に居た曲刀使いへ、投げつける。ゴキリと押し出した相手の肘の折れた音がした。

 流れのままに勢いを殺さず反転、膝をたたみ、クラウチングスタートのように力を溜める。

 上から差し込まれる鋏のさらに下を潜るように、滑り込み踏み出す。

 【ふんばり】体が流れないように固定、アッパーのように掌底を突き上げ、顎に手を当てる【掴む】で固定。カチあげて、今度は上から下に脳天を叩きつける。


 果物が地面に叩きつけられたのような音が響く。


 手ごたえあり!

 追撃に備えて、横っ飛び。

 立ち上がり息を吐いて、中段の構え。


 ドシャ降りのように歓声が沸きおこる。


『これは、これはあああああああああ、素晴らしい。素晴らしすぎる。まさかまさかの、ルーキーが闘士達を相手に一歩も引かない!! こんな展開はだれが予想できたでしょうか!!』


 切られた手足は、問題なく動く。鋏使いとバルゴは倒した。後は曲刀使いが二人……。


「イッヒヒヒヒヒ」


「ギッヒヒヒヒ、折れたぁ、折れたぁ」


「痛い痛い、頭の骨が折れたヨォ」


「……マジか」


 普通に立ってるんですけど。割と本気で頭から落としたはずだが……。

 

「ゴブゥゴブ、ゴラァ!! 俺が殺ズッ、殺してやるぅ”」


 向こうでは、バルゴも斧で体を支えて立っていた。血を吐いているが、まだまだやる気のようだ。

 ダメージの限界を無視している。明らかに普通ではない。


 全員から黒いオーラが浮かび上がっている。『薬』とやらの効果か。恐怖も痛みも感じてない様子だ。それどころか感じる魔力は今までよりもさらに強い。

 『狩り場』とやらで強化されたレベル、闘士としての技術。『武器』との戦闘。

 想定したよりも遥かに相手は強敵だった。

 正直なところ、魔物との戦いで少しは自分が強くなっていると思っていたが、どうやらまだまだなようだ。

 闘士達からの殺気が突き刺さる。

 恐怖が消え、魔力を滾らせる相手はまるでいつかの宙野のようだ。


 あの時と同じような闘技場。

 あの時と同じような歓声。


 敗戦の悔しさは、今もまだ魂に焼き付いている。その痛みと恐怖も。

 あぁ、爺ちゃん、ギースさん。見ていますか? 僕、ピンチです。


『真也、大丈夫じゃ。楽しみなさい』


『俺が鍛えたんだ。負けたらただじゃおかねぇぞ!』


 なんて二人なら言うんだろうな。まったく厳しい師匠達だよ。

 呼吸を一拍、指先まで気を張る。引きつるようにコケ脅しの笑みを浮かべる。

 覚悟は決まっていた。


「かかって来い!!」


 その言葉を合図に、五人の闘士が一斉に、走り出した。

もうね、書くのが楽しくて、長くなっています。いやぁ、戦闘は楽しいなぁ。


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― 新着の感想 ―
昨日返信いただいた、頭かち割ってたのにと私が表現したのはここです。 相手死んでませんでしたが。 >  【ふんばり】体が流れないように固定、アッパーのように掌底を突き上げ、顎に手を当てる【掴む】で固定…
[良い点] この戦闘シーンの描写、胸熱です!! [一言] 座技、初めて聞きました。たしかに、現代では使用場面がないかw
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