第十二話:基本はやっぱり走り込み
たくさん泣いて疲れたのか(というか僕の看病のせいか?)眠ってしまったファスに鑑定をしてみる。
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名前:ファス
性別:女性 年齢:16
状態
【専属奴隷】▼
【???】【???】【???】
【竜の呪い(侵食度62)】▼
【スキル封印】【クラス封印】【】【忌避】
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ヨシッ、【難病】が消えてる。この調子なら完治させることもそう長くはかからないだろう。
ついでに僕も見てみるか。
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名前:吉井 真也 (よしい しんや)
性別:男性 年齢:16
クラス▼
【拳士LV.2】
【愚道者LV.4】
スキル▼
【拳士】▼
【拳骨LV.2】【掴むLV.2】【ふんばりLV.2】
【愚道者】▼
【全武器装備不可LV.100】【耐性経験値増加LV.4】【クラス経験値増加LV.2】
【吸呪LV.7】【自己解呪LV.6】【自己快癒LV.3】
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愚道者のスキルがいくつかレベルアップしてるのと【自己快癒】ってのが追加されてるな、快癒ってことは病気とか怪我が治るってことか? あるいは毒に対しての耐性なのかもしれない。
しかし、自分の状態が数字で見れるってのは便利だなー。
(マスター、ボクモ)
「んっ? フクちゃんもか? 別にいいけど」
特に変わってないと思うが、いや毒の件でなんか変わってるかもな。
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名前:フク
クラス▼
【オリジン・スパイダーLV.7】
スキル▼
【捕食】▼
【大食LV.5】【簒奪LV.4】
【蜘蛛】▼
【毒牙LV.6】【蜘蛛糸LV.2】【薬毒生成LV.3】
【原初】▼
【自在進化LV.2】【念話LV.1】
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(エッヘン)
……なにこれ? めっちゃレベル上がってるんですけど。えっ? まだ昨日生まれたばかりですよね?
どこで経験値稼いだの? まさか……。
「ふ、フクちゃんさん?あの、人間とか食べてないですよね? ダメだよ食べたら」
(タベテナイ、ワカッタ。ニンゲンハタベナイ)
よかった。マジでよかった。となるとなにしたんだ? 確か狩りに行くっていっていたよな。
「フクちゃん、狩りってなにを狩ったの?」
(イロイロ)
うん、もう聞くのやめよう。なんか怖くなってきた。とりあえずフクちゃんのフワフワの毛を撫でて気持ちを和らげよう。
やることがないので、ファスを起こさないように注意しながら型稽古をすることにした。
といっても基本的に相手がいて成立する型ばかりなので一人でやってもいまいち練習にならない気もするが、とりあず相手がいる想定で、片手捕りからの呼吸法、四方投げ、一教、入り身投げの型のさわりだけやる。【ふんばり】を併用して体幹を意識しながらゆっくりと体を動かす。多分傍からみたら太極拳みたいに見えるだろう。
それが終わったら、打ち技(打撃技)として横面打ち、正面打ち、送り突き、迎え突き、とした後に体捌きをする、体の軸を意識して体を開くように下がったり、前にでたりする。【ふんばり】の恩恵は大きく明らかに動きやすくメリハリをつけて動ける。
面白いのかフクちゃんが真似するように前後に動いていて思わず笑ってしまった。
「いいぞ、フクちゃん。入り身のコツはまっすぐ進むように見せかけて斜めに少しだけ進むんだ。敵をギリギリまで引き付けて動くと錯覚させやすいぞ」
(コンナカンジ?)
八本ある足を器用に使って、僕の入り身を再現していた。フクちゃん……恐ろしい子!
「私にも、教えてもらえますか?」
横から声が聞こえる。どうやらファスを起こしてしまったようだ。
「おっと、起こしちゃったか。悪いな」
「いえ、しばらく前から起きて見ていましたから。ご主人様は武芸を嗜んでおられたのですね」
「才能はなかったけどな、実戦で使えるレベルじゃないしな」
「いえ、美しい動きでした」
そう言われたら照れるな。お世辞だとは思うが。
「そうかありがとう。まずは受け身からだな。ファスが慣れたら型稽古ができるだろうし、そうなったらいいな」
「はい、実は体の調子がすごくよくって、運動がしたい気持ちなんです。こんな気持ち初めてです」
その台詞は少し危険だからやめてくれ。まずはベッドをつかって後ろ受け身を教えようとすると、控えめにドアがノックされる。ファスがボロ布をまとって顔も見えないようにし、フクちゃんもどこかへ隠れる。
「お食事です。食事が終わったら、騎士団長による稽古があるのでなるべく早く食べて準備してください。替えの服はこちらになります」
そう言って食事を置くとすぐに出て行った。うーん、会話聞かれたかな? 大丈夫だといいが。
「これからは誰かが聞いてないか注意しないとな」
「そうですね、気を付けたほうがいいでしょう。すみません、はしゃいでしまって」
それは仕方ないだろう、というか鑑定の結果しらないのか。そう思って鑑定の結果を教えると。
「本当に、なんと言ったらよいか。この恩は忘れません。必ず、必ずお返しします」
とか言って土下座し始めたのでなんとか頭をあげさせる。恩を返したいのはこっちなんだけどな。
とかやっていたら、どこからかフクちゃんが出てきた。
(イト、タクサンオイテキタ、ケイカイ、マカセテ)
どうやらこの短時間に、自分の糸を張って誰かが来たらわかるようにしてくれたらしい。優秀すぎる。
とりあえず、朝ご飯を食べる、ファスは今回は全部食べることができていた。というか少しもの足りないようだった。僕のパンを差し出すが断固拒否された、ここから脱出できたらおいしいものを食べに行きたいもんだ、もちろんフクちゃんも一緒に。
食べ終わってしばらくすると、フクちゃんが警告をしてくれた。ファスが顔が見えないように深くボロ布をまとう。どうやら給仕が来たらしい。
「ヨシイ様、練武場で騎士団長様がお待ちです。お皿はそのままにしておいてください、別の者がとりにきますから、ではついてきてください。案内します」
「あの゛、私もついでいっていいですか?」
ファスがダミ声で質問した。喉が治ったことは知られないほうが良いからだろう。
「呪われ者が屋敷を歩けるとでも?」
心底汚らわしいとでも言うようなその言い方にカチンと来たが、ファスが目で制止してきたので留まる。
「……申し訳あり゛ませんでした」
ファスはそう言って深く頭を下げた。給仕は一瞥もくれず「こちらへ」と案内を続けた。ファスに「行ってくる」といい。給仕についていった。殴ってやろうかコイツ。
牢屋(のような部屋)がある建物からでてしばらく歩くと運動場のような場所に着いた。どうやらここが練武場のようだ道場みたいなもんかと思っていたけど違うんだな。
「なにをしている! このクソが! さっさとこっちへ来い」
不意に大声で怒鳴られる。ギースさんが叫んでいた。走って向かうと一発顔を殴られた。
親父にもなぐられたことないのに(親がいなかったので当たり前だが)、とかつい頭に浮かんでしまう。
「貴様なんぞのために、俺の時間が消費されているのがわからないのか、このクソが、忌々しい役立たずが!」
と言って、今度は腹を殴ってくる。
『悪いな、これを見ている奴がいるもんでな、この調子でやらせてもらう』
殴るときの態勢を利用してそう囁いてきた。そう思うならもう少し手加減して殴ってください。
強かに腹パンされてうずくまる僕の前に小手と脛当てが投げられる。
「それをつけろ、……さっさとしろ。日が暮れるぞ!!」
言われるがままに小手と脛当てを付ける。西洋のものではなくどちらかというと日本でいうところの具足のような形状で簡単にはめると自動でサイズが調整された。おぉスゴイ。ていうか重い重い。
装備した瞬間、急に重くなりまともに動けない。
「なにボサっとしてるんだ? さっさと走れ」
「えっ?」
思わずそう漏らすと、また一発殴られた。
「走れと言ってるんだ!! ここの外周を日が暮れるまで走り続けろ!! 早くしろ! 生きる価値もないクズが!!」
そう言われて、必死で立ち上がり。ノロノロと走り始める(ほとんど歩くような速度だが)。
「遅い!! 歩いているのか? その足へし折るぞ!!」
そう発破をかけられて、必死に速度を上げようとするがいかんせん手足の具足が重すぎて思うように動けない。
結果、散々怒鳴られ、周囲の騎士だとかその他の人間に笑われながら動けなくなるまで、動けなくなっても無理やり立たされ、走らされた。いや、少し厳しすぎやしませんかね?
やっと、主人公が鍛え始めましたね。
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