閑話6:聖女一行とチャラ男三銃士
「おい、教会の聖女様が来てるってよ」
「教会のお飾りじゃない本物の【聖女】のジョブ持ちだろ? 一度でいいから拝みたかったんだ」
「その他の転移者様も来てるってよ。貴族側の――」
「馬鹿っ、そんなことよりも聖女様だろっ。晩餐会にでも誘えるならいくらでも積むぞ」
「これだから田舎者は、聖女様をもてなすのはデルモ様に決まっている」
白星教会の砂船が港に着き、その中に【聖女】のジョブを持つ聖女様がいるという噂は歓楽街を走り、物珍しさに老若男女問わず見物に集まっていた。
その中には少しでもお近づきになりたいと、鼻息荒く金をばら撒き自分の動線を確保するものまでいる始末。港はもはやパニック寸前だった。
そんな人々に、薄い青の光の雫が天気雨のように穏やかに降り注ぐ。
使い方によっては鎮静の効果を持つその光は美しく、騒いでいた群衆が静かになる。
そして、魔石をはめ込んだ杖に真っ白なローブ、そして艶やかな黒髪を揺らして少女が下船する。
その後ろには、同じく転移者の少女が数人。
この場にいるものはほとんどが白星教を信仰している。その信仰の偶像である聖女が目の前におり、その奇跡の一端を見ることができた者の中には、涙を流すものもいた。
教会の女性騎士が横を固めすでに用意されていた馬車に少女達を促す。
「まったく、この騒ぎにもいい加減うんざりだわ」
刀の柄に手をのせて千早が嘆息する。
「まぁ、仕方ないよ。実際に叶は絵になるからねぇ」
腕を組みながら紬がニヤニヤと笑う。
「【聖女】の肩書のせいで、自分のキャパ以上に持ち上げられるからね……」
叶がそんなことを言いながら、周囲に手を振るその姿は清楚そのものだ。
自身のアブノーマルな趣味を隠すために被っていた優等生の仮面、それがこの異世界で偶像として祭り上げられる生活で、より磨き上げられてしまったのは彼女の本意ではないが、周囲からの支持を得るという意味では僥倖なのかもしれない。
少なくともそう言った素養はもとよりあったということなのだろう。
「……千早ちゃん。向こうから馬車が来るよ。多分転移者が乗ってる」
【隠密】で姿を隠している留美子の声だけがイヤリングを通して叶、千早、紬、に届く。教会勢力の庇護下にある女性転移者達はバル神官が仕入れた秘密の通信機を共有しており、近い距離ならば話し合うことができる。
その情報に対して行動を起こす前に、黒と金の飾りがついた馬車が人を押しのけ止まる。
扉が開き、傭兵だろうか? 大柄の男達が野次馬を散らして道を作る。そして、赤い絨毯が転がされ叶達の前で止まる。
そして、真っ白な鎧を着込んだ男が二人各々華美な装飾が施された武器を持って降りて来た。
「おっ、やっぱ、桜木じゃん!」
「張本が教会側に行った女子達が来るって、言ってたけど本当だったな。小清水と中森とか三人とも大当たりかよっ。いつもは宙野がいたけど、今はいないし、チャンスじゃね?」
女性を値踏みするような話を、相手に聞こえる距離で当然のように話すこの男達の眼は、叶達にとって不快であったが、同時に慣れたものだった。
「えーと、ゴメン。二人のこと、私は知らないんだけど。ちょっと用事があるから失礼させてね」
言葉だけの謝罪を投げつけ、馬車に入ろうとする叶を邪魔するように、二人が間に入る。
護衛の騎士は大柄の男達がニヤニヤと笑いながら牽制をしている。
「ちょっと、話すだけじゃん。ホラ、転移者の42人だっけ? のうちほとんどの女子が教会に行っちゃったせいで、マジ出会いが無いんだって。俺、吉田 直人」
「俺は、鹿島 陽介、よーちんでいいよ♪」
二人とも、一般的な基準で言えば整っているといってもよい容姿をしているが、叶達の眼はますます険しくなっていく。特に千早は手を伸ばしてこようものなら、切りかかるとでも言うように鯉口を切っている。
「出会いがないと言うわりには、女性の香水の匂いがするぞ。馬車で楽しくやってたんじゃないのか?」
紬が煽るように両手を広げる。事実、空間が広げられてる馬車の中で二人はここまでの道程で高級娼婦をそれぞれ二人ずつ抱いていた。
「えっマジ? ゴメン、ゴメン。次から気をつけるよ、っていうか嗅覚すごくね」
「だからさー、女抱きながら移動するのはやばいって言ったじゃんよー」
悪びれることもなく、そんなことを言う二人の倫理観は完全に壊れていた。
元々張本 清人も含めて三人で女性を引っ掻けていた吉田と鹿島はこの異世界に来てすぐにそのジョブの希少性から貴族達に重宝された。毎日のように貴族達から貢がれる娼婦を抱いていた三人はすぐに飽きてしまう。
そして三人は艶を知らない娘にも手を出すようになる。しかし満たされない、三人に歪んだ欲望が宿るまでそう時間はかからなかった。
そう、彼等は元居た世界の女子達を抱きたくなったのだ。
同じ立場で、元居た世界の倫理観を持つ存在。自分達に対して媚びるでなく、対等に、あるいは嫌悪の眼を向けるようなそんな女を無茶苦茶にしたい。
自らの【ジョブ】の能力を十全に使えると言われ、それぞれのパトロンである貴族に連れてこられた新たな狩場。しかし、召喚された貴族の格の違いによりに手を出せなかったり、女子のほとんどが教会側に行き接点がなくなったこともあり欲望は煮詰まっていた。
張本はファスという例外ともいえる特別を見つけ、この二人は自分の情欲の行き先を見つけたと股間をいきり立たせていた。
叶さん達の話は次くらいで終わると思います。
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