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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第百七話:隠密同心

 ファスの索敵とフクちゃんの妨害により、張本と縦ロールの追手をさっさと撒いた僕達は、街の大通りから少し外れた場所で隠れるような雰囲気の酒場にいた。

 華やかな大通りとはうって変わって陰鬱としており、外には地べたで寝ているものも少なくない。

 この街へ入ってすぐにみた憲兵に追いやられる人こそいないが、どうにもこの街には明確なカーストがありそうだ。


「あー、疲れた。もうちょい遊びたかったが、転移者に目をつけられたのなら仕方ないな」


「申し訳ありません。どうにも加減がわかりませんでした。スキルに乗せられてしまったかもしれません」


 移動中にローブを着て、フェイスカーテンを変えて容姿を隠したファスがラッシーのような飲み物を飲みながら謝る。


「それを言うなら、オラ達も大分目立ったからなぁ」


「たのしかったなー、はい、マスター、あーん」


 そう言ったフクちゃんはクルミを割って差し出してくる。

 可愛いので頭をナデナデしてやると張り切ってさらに、手に持ったクルミを割って差し出してくる。愛い奴め。

 ただ、殻付きのクルミがまるでポップコーンのようにパキパキ割られているのはちょっと怖い。

 単純な握力も相当だな……フクちゃん恐ろしい子。


「ポリポリ……まぁアナさんが残ってなんかしていたし、後のことは任せよう。それよりも……」


 アイテムボックスから丈夫な麻の袋を取り出して机に置く、勿論口はしっかりと縛っており、中身が周囲に見えるようなことはない。


「どうするこれ?」


 35枚の白金貨である。日本円(ざっくり大体)で3500万なんだけど……。僅か数時間で当分遊んで暮らせるお金を手に入れてしまった。


「金なんていくらあっても困らねぇべ。あの姫さんも金が無いっていってたし、この際いくらか貸してみるのもいいかもしれねぇべ」


「それもいいですが、せっかくなので、ご主人様の装備を整えてはいかがでしょうか?」


 ファスの提案で、先の戦いで壊れてしまった手甲を思い出す。それにカースモンキーの防具もボロボロだ。一度しっかり修理した方が良いだろう。

 もちろん僕だけでなくパーティー全員の装備を整えてもいいかもしれない。

 そもそも、今の僕等の装備は砂や暑さに対して無力だ。街には砂を弾いたり、温度を調節するような装備が売っていた。

 今だこの街で何をすれば良いのか定まっていないが、腰を据えるのなら砂漠に準じた装備は必須だろう。


「賛成だ。皆の分も装備を新調しよう。防具だけでなく武器も手入れしたいしな」


「オラの斧は勝手に傷が直るから、日々の手入れで十分だべ。と言うかあまり他の人間に触らせたくないだ」


 えっ、そんな機能あったの? 知らなかったな。トアがいつも大事そうに斧の手入れをしているのは知っているので本人が大丈夫というなら大丈夫なのだろう。


「私の杖も、特に何かあるわけでないし、曲がらず真っすぐならそれで大丈夫です」


 そういや、ファスの杖は元々歩行兼護身用のもので、魔術とは関係ない代物だっけ。


「ブキ、もってない」


 と言ったのはフクちゃん。そりゃそうだ。


「僕も武器持てないしな」


 僕等のパーティーは武器に無頓着のようだ。普通異世界といえば特別な武器で盛り上がるイメージなんだけどな。


「その分、防具にお金をかければいいか。じゃあ、防具を見に行こうか」


「そうですね。そういえばヒットさんが地図に彫金師ギルドの場所を書いてくれているはずです」


「そういや、そんなこと言ってたな。もう大分暗くなってきたけどギルド開いているかなぁ」


 なんだかんだでもう周囲は暗くなってきており、カジノへ入る前とはうって変わって肌寒くなってきた。

 寒暖差が激しいな。

 交易の町のギルドは酒場もやっていたせいか、わりと夜遅くまで営業していたがこの街はどうだろう?

 ちなみに本日は冒険者ギルドに泊まることになっているので、宿を探す必要はない。

 本格的に夜になる前に彫金師ギルドへ行ってみてもいいかもな。


 酒場から外へでると、冷たい風が流れてくる。それでもこの街の喧噪は収まらない。

 商人や冒険者が多く歩いていた昼間と違い、ヴェールを巻いた扇情的な姿の女性が目に付く。

 かなりの薄着でいかにもって感じだ。


「あの人ら寒くないのかな?」


「あの、ヴェールが【耐寒】の装備の様です。しかしなんであんな姿をしているのでしょう?」


 ファスが小首をかしげる。

 そりゃあ……。


「客引きだべな。昼は喧嘩と金、夜は酒と女と相場が決まってるだよ。元居た街でも路地を一本横に入れば似たような光景を見ただな」


「えっと、なるほど。そういうことですか」


「マスターは、いっちゃダメ」


「いや、行かないから」


 フクちゃんが手を引いてくる。さっさと行った方が良さそうだな。

 女性を連れていることもあり、僕が声をかけられることはなかった。ただ、幾人もの男が女性を引き連れて、そういう店に入って行くのを見た。

 

 大通りに戻っても娼婦達はいたが、先ほどの路地ほどではない。

 夜でも電飾のようなものが至る所にあり、かなり明るい。

 不思議と寒さもそれほどでもない。何か理由があるのだろうか、そんなことを思いながらしばらく歩くと地図にある彫金師ギルドへ着いた。


 感想としては、めちゃくちゃ立派、というより成金趣味だ。

 小さな出入口だった冒険者ギルドに比べると、どでかいガラスの扉に門番までいる。

 利用している冒険者や商人達もそれなりに懐に余裕がありそうなやつばっかりだ。


 入ろうとすると、門番に止められる。


「見ない顔だな、ここを使いたいのならそれなりの金を……」


 また因縁をつけられたのかと思ったら、門番の顔が青くなっていく。視線を追うと、先ほどアナさんにもらった、上級貴族の印を見ていた。


「……通っていいですか?」


「勿論です。失礼しましたぁ! どうぞお通りください!」


 めちゃくちゃ頭を下げられた。すごい効果だなこのバッヂ。

 ファス達も当然という風を装い、中に入る。

 すると、揉み手をしながら、薄着の女性がやってきた。


「いらっしゃいませ、当ギルドへようこそ。大陸随一の彫金師達による最高のものが揃っていますよ」


 下着が見えそうなスリットの入ったスカートに、身体のラインをなぞるようなぴちぴちの服を着ているこの女性が受付のようだ。同じ受付でもアマウさん(見かけ小学生)とは全然違うな。


「えっと、装備を整えたいのですが」


「は? 装備?」


 怪訝な顔をされる。なんでだ。

 すぐにトアが前に出てきた。


「実は、旦那様は奴隷を冒険者としてダンジョン挑戦させるつもりなんだべ。金をかけた奴隷だから【鑑定防止】付きの装備が欲しいもんで。それ以外にも防具も見繕うつもりだべ。旦那様自身も砂漠を渡るから噂に聞く【防塵】防具が欲しいだ」


 ツラツラと嘘を並べていく。なるほど、そういえば僕は今商人って設定だったな(忘れてた)。


「なるほど、合点がいきました。それでしたら、最高級のものを用意しましょう。防具に関しても鍛冶ギルドへ行くまでもなく、こちらで最高品質のものを用意いたします。つきましては……」


「ふざけんなぁああアアアアアアアア!! 俺の工房を返せぇえええええええ! どうやって生きていきゃいいんだ」


 後ろから叫び声が聞こえる。

 振り返ると、小人族だろうか、背丈の小さな、一見子供に見える男が叫んでいた。

 一見子供に見えるといったのは、その童顔には髭が生えており、声はしゃがれた老人のような声だったからだ。恐らく僕等よりも年上だと思う。

 その小人族は門番と、奥からでてきたガタイの良い男達に殴られ、外に放りだされていた。

 

「あの人は?」


 受付にそう聞くと、受付は笑みと揉み手を崩さず。


「さて、知りませんね」


 そう言い放った。

 そして何事もなかったかのように、品物を並べ始める。

 ……気になるな。


「すみません。急用を思い出しました」


 そう言って、踵を返す。ファス達もそのつもりだったようで、無言で付いてきた。

 外に出ると、先ほどの小人族の男が泣きながら蹲っている。

 すぐにどうにかしたいが、門番の目が邪魔だな。


「ファス、門番の気を逸らせるか?」


「承りました【闇衣】」


 門番の周囲の暗闇が濃くなる。


「な、なんだこれは!?」


 門番が困惑している隙に小人族を抱き上げ、【吸傷】しながら人通りの少ない場所まで走る。

 ちなみにファスは【重力域】で体重を軽くした状態で、トアにおぶわれていた。

 しばらく走って、街の中心から外れた場所で男を降ろす。しばし茫然としていたが、すぐに騒ぎ始めた。


「な、なんだお前等!! 俺は一文無しだ、いや金貨が一枚あるが、これを盗られたら死んじまうぞ!!」


 急に攫われたせいで、パニックになっているようだ。


「落ち着いてください。僕等は冒険者です。この街についたばかりで右も左もわかりませんが、もしかしたら力になれるかもしれません。なぜ彫金師ギルド前で叫ばれたんですか? っと、その前に自己紹介ですね。僕の名前は吉井 真也と申します。こっちはファス、フク、トアと言います。僕の仲間です」


「力? 力だって? お前等あそこで買い物しようとしていただろう。ってことはデルモの息がかかってるってことだ。俺達の街を奪った彼奴の下僕に話すことなんてねぇよ!」


 一気まくしたてられる。

 まいった、なんでこの人が怒っているのかよくわからん。

 困った時のパーティー頼み、後ろに助けを求めると。少し思案顔のトアが前に出てきた。

 そんで、何を思ったのか、僕の胸についている上級貴族の証を外して小人族の男の前に置いた。


「旦那様、()()壊していいだか?」


「えっ、トア、それは不味いのでは?」


「おいそれは、上級貴族の……」


 ファスが止めに入るが、ここでトアが提案するってことはそれなりに意味があるのだろう。

 アナさんには悪いが、僕はトアを信じる。


「いいよ。意味があるんだろ?」


 バキンッ!


 勢いよく振り下ろされた斧により、バッジは綺麗に割れた。

 そして、唖然としている小人族の男を見てトアは言い放った。


「旦那様は、サルコ・デルモの悪政からこの街を救うためにこの街へ派遣された、王女直属にして冒険者ギルドの隠密であるべ!!」


 ……えっいや、待って、そうなの?

更新が遅れてすみません。早く戦闘パートにいきたいぜ、でももうちょい街の説明かもしれません。


次回予告:グランドマロの闇。


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