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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第六章:砂漠の歓楽街編【竜の影と砂漠の首魁】

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第九十八話:ヴェノム・スコルピオ

 遭難19日目、先日吊り上げた深海魚のような見た目の魔物はトアの調理のおかげでかなり美味しく食べることができている(トアはもっと調味料を使いたいらしいが節約中とのこと)。

 ファスのおかげで水にも困らないし、フクちゃんの泡によって体も清潔に保てている。

 ビタミンとか取れているのか不安になるが、今の所不調はない。


 しかし行けども行けども、茶色一色の世界が続くと飽きてくるというものだ。


 このままでは体が怠けてしまうので、最近はもっぱら砂河でのトレーニングに皆で励んでいる。

 僕の場合は【ふんばり】で砂の上に少しなら立てるので、沈む前に足を出すことで滑るように移動することができる。

 それを利用して、船から降りて常に動きながら体捌きやギースさん流の剣術を手刀で再現したりしている。

 合気道ではとまらず動き続ける体捌きがあるので、個人的には良い稽古だ。

 打ち込みで足が止まると、沈んでしまうので自然と手刀を使った切り付けるような動きになる。

 この動きの中で取り技とか練習したい。


 トアは【獣化】の練習を延々と行い、その合間に日に4~5回は襲ってくる体長1.5mほどの巨大毒サソリをどうにかして美味しく食べられるように奮闘している。

 僕等のパーティーはフクちゃんのおかげで毒状態→解毒ということができるので、【毒耐性】スキルの低いトアでも毒料理を食べることができる。というかこの数日だけでも大分スキルのレベルアップできたんじゃないか?


 僕とファスはもとから毒耐性が高いので問題なく不味いサソリ肉を食べてたけどな。

 ハサミの部分に肉が有り、ほじくって食べると生臭さが口いっぱいに広がるのだ。我慢すれば食べられるが好んで食べるもんじゃないなあれは。


 ファスは砂漠での水魔術の操作が上手く行かないことに気付き、逆によい練習になると、水を呼び出しては鳥とか犬とか猫とかの形にしている。たまに氷弾を砂河にいる僕に撃つという稽古もしていた。

 横で見ていると、馬鹿げた魔力がドンドコ消費されているので不安になるのだが本人は楽しんでいるようだ。


 フクちゃんは毒サソリを始め、様々な砂漠の魔物を狩りまくったおかげで砂河を自在に泳げるスキルを習得したらしい。さらには毒にも磨きをかけており、もっぱら僕と人間状態で組手をしたり巨蜘蛛状態で戦ったりしている。50戦ほど模擬戦闘をした結果、12勝38敗とそれなりの戦果を挙げている(負け越してるとか言わないでくれ、本当に強いんだよフクちゃん)。


 これは常に船に平行して動いているからであって、本来の罠を張り『待ち』の状態からのフクちゃんと戦うとさらに苦戦するだろう(というか勝てない)。


 そんな感じで、遭難ライフをエンジョイ? している。


 今日の稽古も終わって、船に【掴む】を使ってよじ登るとファスとトアが出迎えてくれた。


「お帰りなさいだべ、今日は一眼魚のタタキにするだよ」


「先に水浴びしますか? 私とトアは済ませています」


「じゃあ、水浴びで」


「ボクもー」


 というわけで、フクちゃんと一緒に船の後ろの下が格子になっている場所でファスが召喚した水で水浴びだ。というかフクちゃん、ほぼ子供の状態とはいえ、人間状態で水浴びされると目のやり場に困るぞ。


「体洗う、練習」


 と言われ蜘蛛状態になるのを拒否された。


「マスター座って」


 と言われ座ると、ブクブクとフクちゃんの口から泡がでて頭にかけられる。

 そんでシャカシャカと洗ってもらっているわけだけど、元居た世界なら完全に犯罪だよなぁ。

 次に僕がフクちゃんの頭を洗って、水浴びは終了した。


 替えの服に着替えて出ると、トアが船に備え付けてある囲炉裏のような場所で魚っぽい魔物の白身を網でやいていた。かなりの強火で焼いているので焦げているように見える。


「いいタイミングだべな」


 そう言って、黒く焦げている肉を取り出すと、片面の外側を包丁で落とし、綺麗な白身をさらに盛り付ける。

 なるほど、確かにこれはタタキだわ。 

 フワフワと柔らかい触感のタタキを粗目の塩で食べるとご飯が欲しくなる。

 焦げた部分の皮が香ばしく、皮と身の間の脂が何とも言えない甘味を感じさせる。


「うわっウッマ!」


「頑張ってなるべく傷つけず仕留めたかいがありましたね、モグモグ」


「マスターの呪い、便利」


「毒入れると味が変わるべな、旦那様の【鈍麻】は獲物を生け捕りにするには便利なスキルだべ」


「食べる分には呪いとか関係ないもんな、トア、おかわりある?」


「今焼いてるべ、発火石も節約しねぇとな」


 そう言って、さくに切られた身に串を指したものをトアが火にかけ始める。


「私もおかわりです」


「ボクもー」


「まだ肉はあるから、ゆっくり食べるだよ」


 そんな感じで砂漠のご飯を食べていると、ガクンと船が揺れる。


「サソリか?」


「いえ、敵影はありません。というかこれは……船の先が」


「斜めになってる」


 それまで普通の河だったはずなのに、急に砂でできた滝がポッカリと目の前にあった。

 ……これはやばい!!


「僕に捕まれ!! フクちゃん、糸を頼む!!」


 すぐにフクちゃんが僕とファス、トアを糸で固定する。


「落ちるぞぉおおおおおお」


「きゃあああああああ」


「ちょ、ふ、深いべ。なんだべな!?」


 下を向いた船から見えたのは真っ暗な穴だった。


 うん、死んだかもしれん。

 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ビクビクと体を振るわせながら一人の少年が歩いていた。右手にはランタン、腰に付けたベルトからは薄緑の煙が昇っている。

 少年が歩いているのは、洞窟であり幾重にも坂道が絡み合った複雑な砂岩でできた道が見える。

 天井や壁は流れる砂により作られて絶えず流動しているために目印にはならない、流れる砂は少しだけ光を放っているようだ。

 淡い光の中少年は周囲を見渡しながら恐る恐る歩いている。砂が動く音、虫の足音も聞こえるような静寂の中、ランタンで前を照らし少年は歩く。

 ガサガサという周囲の生き物の音が遠くでするたびに立ちどまり周囲を確認するが何もいない。

 

「うぅ、嫌だなぁ。……この辺にあるはずなんだけど……」


 懐から、羊皮紙でできた地図を取り出しランタンで照らして確認する。

 地図を指でなぞった先には毒を表す印と魔物の画が書かれていた。

 さらにしばらく坂道を下るとかなり開けた場所にでた。


「ここが、毒虫の巣の下……殻を持ち帰らないと……」


 少年はこの場所へある魔物の死骸を探しにきていた。本来なら冒険者に頼む仕事だが、金がなく、また緊急な用件だったために自ら死骸を取りに来たのだ。

 そしてランタンの明かりの先に目当てのものを見つける。

 それは紫色の外殻を持った1.5mほどのサソリの死骸がいくつか折り重なっていた。

 どうやら砂の流れの一つの行きつく先がこの場所のようだ。砂時計のように天井から染み落ちる砂の中にサソリの死骸が混じっていた。


「間違ってないよな? スモール・スコルピオの死体……背中が裂けているから脱皮の皮か? で、でもこいつがあれば薬が……」


 興奮した様子で、特徴を調べる少年。殻を分解して持って帰ろうと、小さな鋸を取り出したところで異変に気付いた。

 それまでガサガサとした音が鳴っていたのに、静かになっている。

 唾を飲む、ゆっくりと上を見上げると目の前にある殻の紫よりも毒々しい紫に赤の斑を持つ、サソリの魔物がその両の鋏と頭だけを天井から覗かせていた。

 その鋏だけでも少年の身長ほどはあるだろう。


「……あ……あぁ」


 ため息のような声が漏れる。

 『ヴェノム・スコルピオ』、毒虫達のボスと静かに目が合う。

 

 死ぬ、俺はここで死ぬんだ。


 その実感だけが頭に巡り、ズズゥと音をさせゆっくりとヴェノム・スコルピオが降りて来た。

 ダンジョンの砂流を移動できる魔物がいる、そんな話は聞いていたが、まさかこんな化け物だったなんて。


 息もできず、静かに頬を涙が伝う。

 次の瞬間、少年はさらに目を見開くこととなった。

 天井から、()()()()()()()()()()のだ。



――――――――――――――――――――――――――――




「「のわああああぁああああああああああ」」


 誰のものかわからない叫び声をあげながら僕等は落下し、やっとこさ巡り会えた()()()何かに船ごと激突する。

 砂の滝から落ちた僕等はそのまま、砂に飲まれて運ばれていった。

 ファスが【闇斥】(斥力を発生させるスキル)で周囲の砂を飛ばし続けてくれることで何とか呼吸は出来ていたが、それでも最終的には砂に飲まれて全身ジャリジャリだ。


「おえぇ」


「だ、大丈夫ですかご主人様、最後の最後で魔術が維持できずすみません」


「し、死ぬかと思ったべ」


「楽しかったー」


 砂河に適応したフクちゃんは人間状態でもへっちゃらだったらしい。

 くそぅ。耐性系のスキルに「砂呼吸」とかあればいいのにな。


「大丈夫だファス、よく砂を防いでくれた。ところでここはどこだ?」


「砂河の流れの先なのでここがグランドマロではないでしょうか?」


「どう見ても洞窟だべ」


「マスター、下、下」


 うん? フクちゃんが下を指さすので見下ろしてみると船の残骸の下には紫の地面が見える。

 

「マスター、上、上」


 今度は上を指しているので、見上げるとここ最近毎日見ていた、毒針のようなものが………まさか。


「下ァ! サソリ!」


 最低限の情報だけ叫ぶとトアが飛び退いて斧を構えた。

 僕はファスを肩に乗せて、横っとび、振り返るとまだ背中に残っていたフクちゃんに向かって尾の毒針が刺されようとしていた。


「フクちゃん!」


 声を上げるがフクちゃんは動かず上を見上げ、目前に迫る針を見ながら両手を左右に振った。

 キィイイイイイイと耳障りな高音が響き、巨大なサソリの尾が細切れになる。

 白髪のワンピースの少女フクちゃんは朱い目をきらめかせニタリと笑う。


「おっそいね♪」


 距離を取ってその全長がわかる。いつも食べてたサソリの10倍ほどの戦車のような大きさのサソリがのたうちまわっていた。


「旦那様!」


 緊張感のある声が響く。


「なんだ、トア?」


「あれだけデカければ、どっか食える部位があるはずだべ。生け捕りで頼むだよ!」


 ……いや、あのバカでかいサソリを生け捕りにしろってか? 


「今日のご飯のため、犠牲になってもらいましょう」


 助けを求めファスを見るが、すでに生け捕る気全開のようだ。 

 だめだ僕等のパーティーは食に貪欲すぎる。

 もうここはフクちゃんにまかせればいいじゃん。だってあいつめっちゃ怖いよ。


「生け捕り、わかったー、マスターよろしくー」


 追撃を入れようとしていたフクちゃんが構えを解く、まぁ生け捕りなら【呪拳:鈍麻】がある僕だよな。


「チクショウ! やってやんよ! 行くぞオラァアアアアア」


 気合を入れてサソリを見る

 尾を落とされ、のたうち回っていたサソリが動き始めた。

 その方向、数十メートル先に人影がある。

 【ふんばり】からの加速、怪我をしているのか尻もちをついて動けない人影にサソリがぶつかる前に横っ腹をぶん殴る。

 

 ズズゥン


 流石に吹っ飛ばせはしなかったが、ドリフトするように横滑りさせることに成功した。

 サソリはなおも明後日の方向へ逃げようとする。

 いや、一応規則性はあるな、フクちゃんから離れるように逃げている。


 ……あのサイズの魔物が一瞬で心折られるとか……フクちゃん、恐ろしい子。


「大丈夫ですか?」


「ヒィ、あ、た、助けてっ」


 怪我はないようだ。


「大丈夫です。立てるなら下がってください。……できれば、あそこの白いワンピースの子の所へ行けば絶対に安心ですよ」


 一瞬不思議そうな顔をするが、尻もちをついていた人影、少年だったが、フクちゃんの方へ走って行った。

 さて、このまま逃げられるとトアに怒られるな。


「かかってこい!」


 【威圧】を発動し、威嚇する。逃げれば背後から襲うという迫力を相手にぶつけ、逃走という選択肢を消し去る。

 先のカルドウスとの戦いを経て僕の【威圧】も強くなっているようだ。

 逃走を止め、巨大サソリが突進してきた。息を整え集中。


 右からの鋏が襲ってくる。手甲が無いので受けられないのが痛いな。

 半身でよけてすれ違いざまに節を【手刀】で二度切り付ける。

 切り落とせはしないが、肉を断ち切った感触はあった。鋏の動きが鈍ったので脇腹にくっついて【鈍麻】つきの拳を数発叩きつける。

 八本脚を器用に使って転身しようとするが、反対側で獣の吠え声が響く。


「ガァアアアアルルル【喰い裂き】ィ!」


 サソリの足が盛大に宙をまう。なんつう力技だ。

 二本ほど足を落とされ、サソリの動きが鈍る、しかしサソリから魔力が迸り、尻尾が再生された。

 そのまま毒液が発射される。


「スキル持ちの魔物か、上等。ファス!!」


「準備はできています」

 

 離れた場所にいるファスが杖を高く掲げる。

 空気が震えるような魔力。

 それを感じ、トアが飛び退く。

 次の瞬間天井が落ちて来たのかと思うような、高重力が僕ごとサソリに叩きつけられる。

 毒液は見当はずれの方向へむなしく飛び散った。


 高重力下の中サソリが、動けないままに魔力をさらに溜め始めた。集中するとファスの魔術に干渉しているようだ。


「マジックキャンセルか、器用だな」


 させるか、高重力下の中でサソリに【鈍麻】つきの拳を叩きつける。

 普段から【重力域】で稽古している僕にとっちゃむしろなれた環境なんだよ。

 7・8発殴り殻にひびが入るころにはサソリは完全に沈黙していた。


「フゥ、こんなところか。やっぱ手甲は欲しいな」


「お疲れ様ですご主人様」


「よっしゃ、色々バラしてみるべ。今度こそサソリにリベンジだ。美味しく食ってやるからな」


「楽しみー」


 最後にやってきたフクちゃんの後ろにはさっき助けた少年が、化物を見るような目でこっちを見ている。


「あっ、えっと、大丈夫でしたか?」


「あ、あんた。素手でヴェノム・スコルピオを殴り殺すなんて……そ、そこの女の子も尾を刻んでたよな……俺なんて助けても金なんてないからなっ!」


 酷く怯えた様子で、こちらを睨み付けてくる。殺してないよ、生け捕りなんだけど。

 まぁ、この状況で僕等がというか僕がやることは一つだ。

 ……僕等は顔を見合わせ、そして僕が一歩でて深々と頭を下げた。


「むしろ、お金あげるんで人がいるとこまで案内してくださいっ!」


「ハァ?」


 素っ頓狂な声を上げる少年に、僕は頭を下げ続けたのだった。

というわけで、第一村人発見した吉井君達です。ヴェノム・スコルピオは毒虫達の主ではありますが、ダンジョンマスターというわけではありません。


次回予告:砂漠の町のギルドマスターといつぞやのプリンセス


ブックマーク&評価ありがとうございます。モチベーションが上がります。

感想&ご指摘助かります。生きる糧となっています。更新頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冷静に考えると蜘蛛の姿ならまだしも、少女が口から泡吹いてるって絵面酷そう。しかもそれを頭から全身に浴びるってレベルたっけぇ変態やなって。もう皆慣れてるんだろうけど……慣れって怖い
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