プロローグ:お約束って大事だと思います。
大好きだったなろう小説が完結してしまい。自分の好きなジャンルがなかなかなかったので自分で書きます。不定期になりますがよろしくお願いします。
「ふぅ、終わったなぁ」
寒稽古ってわけではないが、寒い日の朝に道場を掃除するのはやっぱり身が引き締まる。これが最後になると思うと感慨深い。結局才能の無い僕では身につかないものではあったが、スポーツとして武道は大好きだった。
名札掛けから自分の名札を外して最後に一礼。
「ありがとうございました」
さぁ、最後の登校だ。家に戻って準備をする。教科書はもういらないな、好きな作家の本数冊とゲームを数本鞄に詰めて家を出た。
結構余裕をもって到着。さてホームルームが始まる前に用事をすませるとしよう。数少ない友人の葉月 悟志はもう教室にいた。
「おっす、悟志」
「あ?真也か、昨日の魔装少女見た?作画の落差がやばくて笑ったわ」
「見てない。忙しくてな、実は祖父が死んで家と道場が売られることになった。もうこの学校にはいられないんだよ」
「は?マジ」
「マジ、今日で最後」
うわ、怒ってる。オタクの癖にガタイが良くて妙に目つき悪くて怖いんだよなぁ。
「……なんで黙ってた?」
「いろいろありすぎて僕もパニックになってた」
ちなみにとんでもない額の借金あります……とか言えないよなぁ。言ってもどうにもならないし。
「というわけで頼みがある。秘蔵のお宝全部やるから飼育委員代わってくれ。責任感のないやつにウサミを任せたくない」
鞄から紙袋に入れた飼育ノートと、DVDだのエロゲームだのエロ本だのを無理やり押し付けた。
「別にこんなの無くてもやるからさ、あとで家寄れよ。俺のお宝やるから交換な。それで転校するのか? お前親いないだろ、施設とかか?」
「そのへんもわからん。あと今日は用事あるから、家行くのは無理」
「なんだそりゃ。お前携帯も持ってないんだから連絡先教えろよ。俺はお前のこと結構大事な友達だと思ってんだ」
「はっはっは気持ち悪いな。いや、ありがとう。本当にありがとう。おっと、騒がしいのがやってきたな、また後で」
スクールカースト上位のイケメン達がやってきたのを理由に離れながら心の中で頭を下げた。多分もう会うことはない友人に。
いつも通りの授業を終え放課後になる。
さて行きますか。図書室にいくと美少女の図書委員がいる。そんな高校に通えた奴は幸せだ。つまり僕は幸せな人間だということだ。
黒髪ロングでちょっと信じられないくらいに整った顔をしているにも拘わらず、コロコロ変わる表情と、本を読むときの真剣な表情のギャップが素敵な彼女を一目みるために図書館に通う男子は多い。まぁ、僕もそんな一人なわけで、いや別に好きというわけじゃなくてアイドルをみるというか可愛い動物を見る心理に近いというか、僕はいったい何に言い訳してるんだ。
とにかくムッツリを自負する僕にとって桜木 叶という存在はこの学校における大事な存在で、向こうはそう思ってないだろうがまぁ数少ない学園の友人だったりする。
「お疲れ、今大丈夫?」
ちなみにこの一言いうだけでかなり緊張してたりする。女子と話すのはなれないなぁ、男子ともあまり話さないが。
「あー、吉井君。延滞が溜まってるよ。谷崎潤一郎の全集とあと他数冊」
「大きな声で谷崎潤一郎の本借りてること暴露しないでよ、ちゃんと返すから!!」
僕にフェチズムという概念を教えてくださった谷崎大先生には頭が上がりません。あの世で酒でも酌み交わしたいものです。
とりあえず借りていた本全部と紙袋を取り出す。中身確認しとこう、悟志にわたしたやつと間違えてたら社会的にも死んでしまう。
「ほい。これで、借りてた本全部。あと桜木さんが読みたいって言ってた妖怪図鑑と都市伝説オカルト本」
本を延滞しまくってたら名前覚えられて、話をしてみるとかなりオカルト好きという点で趣味があい、何度か話すだけの間柄だったが、僕の人生においてかわいい女子と話ができるという貴重な経験をくれた彼女にお礼がしたかった。
「わぁ~珍しいこともあるのね。吉井君が全部本を返すとか明日は槍が降るわね。あっこの本読みたかったんだ―最近また八尺様とか猿夢とか都市伝説盛り上がってるからね。コンビニ本もいいけどきっちりまとめてる本が読みやすくて好きなの、やっぱりわかってるわね」
「あーわかる。コンビニ本はまた別枠の良さだからな。ところで僕今日で学校辞めるから。いままでありがとう。その本は差し上げます」
桜木さんはその場で完全に停止していた。いやホント表情が変わる子だなぁ。
「な、なんでっ!? そんな話聞いてないよ」
「そりゃ言ってないし。いろいろあってここを離れることになってね」
その後は連絡先教えろとかどこの学校行くの? とか予想外にいろいろ聞かれて少し嬉しかったけど適当なところでまた教えると言って話を切り上げた。
さて学校から出てホームセンターに寄って最後のお金でロープを買った。あらかじめ学校のパソコンで結び方を調べてプリントアウトしてる。
なんの資料かっていうと、まぁ首をつるためのものです。
祖父が死に、家族がいなくなり。さらに両親が作った借金の返済ができず。正直もう生きているのが苦しくなったのだ。茫然として不安で押しつぶされそうになって、そのあと死のうと考えると全てが軽くなって、そこからやっぱり止めるという思考まで盛り返せなかった。
適当にブラブラして山に入る。枝の太い木にロープを結び付けて、そのまま首にかけ目を閉じ、飛び降りた。
途端に浮遊感と耳鳴りが身体を襲う。首に衝撃はないことに疑問を持った瞬間ドサリと地面に落下した。
飛び立つ衝撃で枝が折れたか、ロープの結びを間違えたか。
最後までしまらないとあきれながら目を開けると、金色と赤色が目に悪いやけに明るい部屋の中で見るからに魔法陣らしい文様の上にいた。
これはもしかするとあれだ、何度も妄想した展開だ。
周りを見渡すと、やせ型のローブをきた魔法使いであろう人間が数人と目の前に目もくらむような美少女。
……ではなくでっぷりと太った男がコロ〇ビアとでも言いそうなガッツポーズをしていた。
「いやそこは美少女だろ!!」
それが、転移した僕の異世界での第一声だった。
長くない?もっと短くする予定でした。