エピローグ
マゼラン・ブレスレットを取り戻したミヤビは、鹿児島市に帰り、上条を蘇生させた。
「えっ? 僕は、死んでたんですか?」と上条は言った。
日本分割は、各国の撤退によって自然消滅。ミヤビは東京に戻り、日本連邦共和国を建国した。北海道、東北、北陸、関東、中越、関西、中国、四国、九州、沖縄を『州』に呼称を改め、各州に連邦議会を設置、議会により選出された首相を置いた。さらに、各州から大統領立候補者を募り、国民投票によってこれを選出する。初代大統領に僧坊が当選し、ミヤビは総理大臣を退いた。
ある日、福岡の恵比寿教授からミヤビに連絡が入った。
「ミヤビさん、月に行かんかね?」
マゼラン・ブレスレットのパワーを研究している教授は、月の岩石を採取しに行くというのだが、一緒に行かないかと誘った。
「気晴らしに行ってみようぜ、朱里。」
「ひさしぶりに、実家でゆっくりしているでおじゃるのに・・・。」
「まあ、そう言うなよ。そうだっ! 麗さんも誘ってみよ。」
鹿児島県、種子島宇宙センター。
「ミヤビさん、久しぶりです!」と上条が出迎えた。
「上条も行くのか?」
「はい! お供します!」
「みんな、勢揃いだな。」
「えっ? ミヤビさん、ひとりじゃないんですか?」
「ん? おーい、朱里、早くしろよ!」
バスから朱里、伊達、そして麗と陽教授が降りてくる。
発射準備を急ぐ発射台から、恵比寿教授が叫んだ。
「おーい、みんなあ、よく来たのう!」
お互いに手を振る。
「上条ちゃん、これ、いつ発射なの?」と伊達。
「一時間後ですよ。」
「早っ!」
月に到着したのもあっという間だった。
月の裏側に回り、星を鑑賞する。地球から見る宇宙とはまったく違い、その美しさは言葉にならなかった。
恵比寿教授と上条は岩石を採取し、陽教授は写真や映像を撮影した。朱里と伊達は、餅つきを始めた。
「月で餅をつくのが夢だったでおじゃる。」
ミヤビと麗は、地球を眺めた。
「今考えると、馬鹿馬鹿しいわね。日本だの、中国だのって、争って・・・。」
「ほんとだぜ。かなり昔のように感じる。」
「星もきれいだけど、地球が一番素敵! これが、わたしたちの星なんだなあ!」
「子どもみたいだな、麗さん。」
「ミヤビさんは、これからどうするの?」
「普通に生きる。今まで、異常すぎたからな。麗さんは?」
「わたしも・・・。」
ふたりはお互いにブレスレットを見る。
「これ持ってると、そうもいかないわね。」と麗。
ミヤビは立ち上がって、地球を手のひらに載せてみる。
「こんなにきれいな地球なんだからさ、どの国も仲よくやろうぜっ!」
麗は、クリストファー・ブレスレットを、ミヤビは、マゼラン・ブレスレットを腕から外す。
ふたつのブレスレットを月に埋めるふたり。ブレスレットのない右腕を左手でさすりながら、ふたりはほほ笑んだ。
「ミヤビ姫〜、麗様〜。お餅が焼けたでおじゃるう!」と朱里の声。
振り向くと、みんなが集まっている。
ミヤビと麗は、手と手をつないで歩き出す。
マゼラン・ブレスレットとクリストファー・ブレスレットは、光りながらゆっくりと月の底へと沈んでいった。
(了)
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瀬木 遊馬




