15 第三次世界大戦
第二次日中戦争が勃発してから一週間後、韓国が日本に宣戦布告、北朝鮮からのミサイル攻撃も始まった。アメリカにもミサイルが飛んできたことで、米軍は北朝鮮をわずか一日で制圧、これに乗じ、自衛隊は拉致被害者を救出した。
一方、ロシアはヨーロッパに侵攻。事実上、第三次世界大戦が勃発した。
中国からの爆撃は、ミヤビと自衛隊で防衛。米軍の無人戦闘機が加わり、戦争中にもかかわらず死人は出なかった。ミサイルの迎撃率は百パーセント。中国への反撃を叫ぶ者も出てきた。
ミヤビ総理は、ケリー大統領とハワイで会談。
「ワオ! ミヤビ、ワンダフルじゃないか!」
大統領もすっかりミヤビにゾッコン状態。日米安保を再確認するとともに、全面的な支援を約束した。そして、ロシアのヨーロッパ侵攻については、中国を鎮圧後に話し合うことにした。
プライベート機で日本に向かった麗は、九州の自衛隊の誘導を受けて、佐世保に着陸した。佐世保自衛隊から連絡を受けたミヤビは大喜び。
「麗さん!」と、東京で会うなり抱きついた。
「懐かしいわね、ミヤビさん。いえ、ミヤビ総理。」
「ミヤビでいいぜっ!」
「相変わらずの元気娘ね。会えて嬉しいわ!」
「陽教授のことは聞いたぜ・・・。」
「あなたを・・・ミレニアム・レディを無事復活させることができて、ホッとしたんだと思うわ。たぶん、それだけを生きがいに生きてきたから。」
「恵比寿教授を知ってる?」
「もちろんよ、さっき話をしたわ。会うのは二回目。」
「いろいろ教えてくれて、助かってる。組閣は教授にやってもらった。議員からも信頼されてる。朱里とか伊達とかさ、俺の周り、怪しいもんが多いだろ? 教授がいるとホッとするぜ。」
「悪かったでおじゃるな、怪しくて・・・。」と朱里が登場。
「朱里さん!」と麗も笑顔。
「麗さん、久しぶりでおじゃるなあ!」
朱里は麗の周りを飛びまわる。
首相官邸の来賓室に麗を案内した。
「麗さん、一目見て中国人とわからないから、助かるぜ。」
「だから来たのよ。」
ソファに腰を下ろすふたり。
「中国に残ってる日本人を助けたくて、手配していたの。」
「そのことは気になってた。麗さん、ありがとう。」
「そしたら張に嗅ぎつけられて・・・。手下を連れて会社まで来たわ。」
「張? ああ、あの悪人面の。」
「張に、ボスの名前を聞いてみたの・・・。」
「さすが! 麗さん! って、麗さんたちもわからないの?」
「一切情報が流れてこないのよ。軍部からの指示と命令だけ。それで、『推背図』で占って、ある程度予想できたの。そして、張に聞いてみて、はっきりわかったわ。」
「もしかして、『王』とか、ゆうやつ?」
「・・・すごいわ! それも、マゼラン・ブレスレット・パワーよ。」
「なんとなくな・・・。一文字だけ、浮かぶんだ。」
「王雀鬼・・・。」
「雀鬼。悪そうな名前だぜ。」
「漢民族よ。データは、ほとんどないわ。ただ、まだ若い将校というだけ。」
「張はどうやって王雀鬼に近づいたんだろ?」
「わからないわ。『類は友を呼ぶ』ということかしら。」
「二日前、日本の爆撃機が北京を空爆したって話は?」
「知ってるわ。おそらく、王雀鬼の仕業・・・。」
「邪魔者を消したんだろ? 俺とおんなじだ。俺が総理になるためには邪魔だった国会議員がほとんど死んでしまった。」
「それは、ミヤビさんがしたことじゃないわ。」
「俺がしたも同然だぜ。だから、死んだ者たちのためにも、俺は絶対に中国を止める。」「中国も今、混乱してる。機を見て、王雀鬼も姿を現すと思うわ。」
「どこにいるかがわかれば、俺はすぐにでも倒しに行くぜ。」
麗は、立ち上がり、官邸から空を真上げる。
「きれいな青空だわ。戦争中とは思えない・・・。」
「世界大戦といっても、ミサイルの撃ち合いと、無人機と無人機だからな。でもロシアとヨーロッパは陸続きだから、すごいらしいぜ。」
「ミヤビさん、王雀鬼、わたしが倒すわ・・・。」
「・・・。そうかあ?」
「中国はわたしの国。母国が、悪の手に染まろうとしている。それを、黙って見ているわけにはいかないわ。」
「わかるぜ、うん・・・。」
「最初はね、ミヤビさんに任せればいいと思ったけど・・・。中国は、やはり、中国人の手で再建しないといけないわ。他民族国家だから大変だけどね。」
「どうやって、王を倒すつもりだ?」
「きっと、張とつながってる。わたしは経済界の代表だし、いずれ王と会うときがきっとあるわ。」
「わかった、それでいこうぜ。麗さんなら、きっとできる。」
ミヤビは、そう言って麗に近づく。そして、麗の右腕を取った。
「なに! ミヤビさん・・・。」
「勘違いするなよ。でも、まあ、似たようなもんか・・・。麗さん、目をつぶって、俺の呼吸に合わせてくれ。」
麗は言われるまま目を閉じた。数分が経ち、ミヤビの手から鼓動がはっきりと伝わる。それに呼吸を会わせる麗。いつしか、ミヤビの体温を感じなくなる。そのまま眠りそうになったとき、麗の右手がまばゆく光り、麗は腕の重みを感じた。見ると、マゼラン・ブレスレットは麗の腕にある。
「ミヤビ、さん? これ・・・。」
「貸すぜ、ブレスレット。」
「でも、こんなことしたら・・・。」
「大丈夫、大丈夫。誰がつけても、ある程度の力は発揮するんだよな。麗さんなら、ブレスレットのパワー、使えると思うぜ。」
「ミヤビさん、あなたっていう人は・・・。」
「ん? 麗さん、泣いてんの?」
「・・・ありがとう! かならず、王を倒すわ!」
「でも、ある程度のパワーっていうのがどんだけか、未知だぜ。麗さん、右腕、ゆっくり回してみて。」
麗は、細く筋肉質の右腕を回す。マゼラン・ブレスレットが徐々に光を増す。
「すごい! 体に力が漲ってくるのがわかる!」
「なにを言えば剣に変わるとか、言葉が頭に浮かんでくるぜ。やりたいと思ったことはすぐに体が反応してくれるし。」
麗はブレスレットを剣に変える。ミヤビの剣とは形が少し違うようだった。
「麗さんのほうが、かっこよくねえか?」
「そう?」
「アメリカの無人攻撃機のおかげで、俺は出番がなくなったしな。麗さん、中国で暴れまくってくれよな!」
「わかったわ!」
ふたりはしっかりと抱き合った。