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13 中国と米国のトップ

 アメリカ大統領、ケリー。

 ホワイトハウスの大統領室で大好きなハワイ産葉巻をくゆらせていた。

「中国め。東京爆撃とは、やってくれやがったな。しかしやるじゃないか、自衛隊も。」とつぶやいた。

 補佐官のアレンが入室した。

「ケリー大統領、情報部から打診です。」

「わかった。」と受話器を取る。

 アレン補佐官は、葉巻の煙を見て空調を強くした。

「わたしだ・・・。東京空爆? 見たよ。それがどうかしたのか?」

 ケリー大統領は葉巻を消した。

「どういうことだ?」

 退室しようとしたアレン補佐官が振り返る。

「空中を・・・人が、飛んでいる? 飛行機を切っている? なんの映画の話だ? わかったわかった。もう一回見てみる。拡大映像を送った? よし、そっちを見る。」

 受話器を置くケリー大統領。パソコンに送られた映像を見る。画質は荒いが、戦闘機を真っ二つに切る人影が微かに見える。

「なんだ? 今のは・・・。アレン、来てくれ。お前も見てみろ!」

 アレンはパソコンの映像を見る。

「情報部のジョークでしょうか?」とアレンは言った。

「安藤、それから多くの議員が死亡したから、我々に出動要請がないのは当たり前だが、日本はどうなっとる? まだ大使館から連絡はないか?」

 電話が鳴る。アレンは受話器を取り、大統領に言った。

「その大使館からです。」

 大統領は机の受話器を取った。

「わたしだ。なに? 新しい総理・・・。もう決まったのか。やけに早いな、のんびり屋の日本政府が。なに? もう一回言ってくれ・・・。十九歳だと? 女? おまえ、大丈夫か、本当にローガン大使なんだろうな? 美都ミヤビ? 美都ミヤビというのか。新兵器を使った? そうか、ビデオはその新兵器だな?」

「大統領、日本から映像が届きました。」

 アレンはテレビを大統領に見せた。

 テレビは、首相官邸屋上から民衆に応えるミヤビ総理の姿を映し出していた。

「すまん、ローガン大使、きみの言っていることがわかった。中国の日本爆撃も映画だが、日本の新総理誕生も映画だな。・・・ミヤビ総理と言っているのか、日本のメディア。まあ、これが現実なら、その十九歳の娘から電話がくるだろう。新兵器の情報を集めてくれ。気になる・・・。」

 ケリー大統領は再び葉巻に火を付けた。

「第三次世界大戦か・・・。まさか、俺のときにやってくるとはな・・・。アレン補佐官。中国大使館にもう一回連絡してくれ。」

「わかりました。」とアレンは退室した。

「中国の軍部・・・。誰がトップになったんだ? なぜ情報が入らない・・・。仕方ない、ロシアのハゲタカ野郎に聞いてみるか・・・。」

 ケリー大統領は、窓際に立ち、外を眺めた。


 中国。

 北京、上海では、日本人に対する虐待が始まっていた。『東京空爆大成功!』とメディアは伝え、『日本人追放!』を掲げる横断幕が立った。

 麗は、その様子をオフィスから眺めていた。

「王雀鬼・・・。」とつぶやいた。

 机には、『推背図』と軍部主要人名簿があった。

「『日本をこの世から消し去る者は、それにふさわしい名の者である』。予言から考えると、『王雀鬼』、この人物が軍部を支配したに違いない・・・。」

 中国国内においても情報は閉ざされ、海外ニュースも放送されなかったが、ミヤビが総理になったことは、日本支社からの連絡で知っていた。

「中国の空爆が、ミヤビさんが総理になるチャンスを作った。やっぱり、予言通りに時代が流れてる。わたしは、どう動いたらいいかしら・・・。王雀鬼・・・。彼の味方になるべきなのか、あるいは・・・ミヤビさん。」

 チャイムがなり、麗の部下が入ってくる。

「社長、取引したいという人物が見つかりました。」

「そう・・・。その任務、あなたに任せるわ。」

「わたしが、ですか?」

「そう。『シンドラー』役・・・。日本人が虐殺される前に、命を買い取るの。やりがいがあると思わない?」

 部下は一礼して退室する。

「どっちの味方をするかじゃない。人として、どう生きるか・・・だわ。」

「いい心がけだぜ。大したもんだ・・・。」

「だれ!」

 麗の目の前に、張署長が立っている。

「おまえは、張・・・。なぜここにいる?」

「社長さん、俺を覚えているんだな? なーに、日本人を逃がしたいと言ってきたやつがいたもんでな、裏切り者を成敗しに来たら、ここにたどり着いたまでさ。」

 張の背後から黒装束の賊が現れ、血だらけになった部下を放り投げた。麗は、息絶えた部下の、開いたままの目を閉じ、張を振り返る。

「王雀鬼か?」

「・・・いや、俺だ。」

「おまえのはずがないわ。」

「答えたら、おまえの命もないぜ。」

「それが、答えになってるじゃない?」

 麗は張に蹴りを入れる。張が躱すと、賊が襲いかかってくる。麗は桁外れに強く、一撃で賊を倒していく。

「前のリーダーたちは、やはり甘かった。陽と同じように、おまえも幽閉、いや、殺しておくべきだった。」

「知らないの? 『後悔先に立たず』。」

 麗は、張を回し蹴りで倒す。

「知るわけないわね。これ、日本のことわざだったわ。」

 張の股間を思いっきり蹴る麗。張は気絶する。そこへ大勢の社員たちが武器を持って入ってくる。

「あなたたち、遅いのよ。このゴミを片付けといて。それから、飛行機を準備して。」

「社長、どちらへ?」

「・・・日本よ。」

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