12 ミヤビ首相、誕生
テレビ各局は、国会議事堂が燃える様子を放送した。
「信じられない光景です! まさか、こんなことが起ころうとは。確かに、中国との状況を考えれば、あり得ないことでないかもしれませんが・・・あまりにも無残、むごたらしい光景です!」
「今入った情報によりますと、爆発は会議室入り口で起こり、死傷者は未確認、ただ、状況から見ますと、多くの国会議員が犠牲となったようです。」
ミヤビをはじめ、一同は地下会議室でテレビに見入った。
「なんて、ことだ!」と僧坊は言った。
伊達も朱里も黙っている。
「そうだ! 伯父さん!」と伊達が叫んだ。
電話をするが、大河議員は出ない。
「これ、映画じゃないのか? 国会がテロなんて!」
エレベーターが開き、恵比寿教授が入ってきた。
「無防備じゃな。こんなときも、しっかり見張らんといかんよ、利右衛門さん。」
「すいませんですう。」と利右衛門が起立して謝る。
「教授・・・。」とミヤビは言った。
「やあ、こんにちは、みなさん。首尾よくやってますな。結構、結構!」
「教授、結構結構って、国会が燃えてるのよ!」
「伊達さん、これくらいで肝を潰してどうしますか? 中国は、日本を侵略しようとしてるんですぞ? ミヤビさん、どうしました? 少女の顔に戻ってますぞ。」
「俺も、どこか、考えが甘かったぜ。これはゲームじゃないんだな。中国がやってることが、俺には好都合だ。それが、怖いぜ・・・。」
テレビ中継でアナウンサーが叫ぶ。
「情報が入りました。安藤首相、その他、自民党、公明党、そして野党の議員、ほとんどが、絶望的ということです。繰り返します、安藤首相、死亡が確認されました。」
涙目になっていた僧坊が、急に目を輝かせた。
「選挙法改正は必要ない。立候補も、必要ない・・・。今、日本は無政府状態。これは・・・チャンスだ。」
利右衛門が恵比寿教授にお茶を出した。
「ありがとう、利右衛門。うん、うまい! あなたは、お茶の入れ方がうまいのう。ところで、韓国では朱子学、中国では陽明学が広まったのをご存知か。王陽明先生に弟子が意見を聞く。『先生、私はぜひとも古代の音楽を復元したいと思います』。先生はおっしゃる。『うん、しなくていいよ。それは全部、君の心の中にあるのだ』。これが、陽明学の「心即理」。思っているものは実在する、というのが中国の考え方なんじゃ。中国は日本併合を思っとるわけじゃから、実現することになりかねない。日本は、戦争で国民の誰一人死ぬわけにはいかないけども、中国は、何億死んでもいいと考えておる。簡単にいえば日本は甘いのじゃ。国会議事堂爆発というテロも、まさかという甘さが、警備の油断を生み、現実のものとなったんじゃよ。おっと、演説が長くなってすまんの。」
伊達のケータイが鳴る。
「伯父だわ! よかった、生きてる!」
伊達は大河議員からのメールを読んだ。
「でもケガしてるって。今、病院。生き残ってる議員は十数名で、今後、臨時政府を立ち上げるだろう・・・。自分は加わることができない・・・そこで、ミヤビさんに、代理をお願いしたい・・・。」
僧坊がガッツポーズをした。
「美都内閣、発足・・・。僕もついに、大臣だ!」
「あんた、大臣になりたかったの? そんな器じゃ、わたしたちについていけないわよ。」
「伊達第一秘書は、なに大臣がいいですか?」
「そうね、お金に興味があるから、大蔵大臣かしら。って、ノせるんじゃないわよ! ミヤビ、伯父さんとこ行って、議員バッジもらってくる。」
「頼む・・・。」
恵比寿教授は腕組みをして言った。
「急がねばならんの。中国はこのあとどう出るか・・・。」
「みんな! 東京に行くぜっ!」
そう言って、一同を見渡した。右腕をゆっくり回すと、マゼラン・ブレスレットからレインボーにきらきら光るものが降りかかった。
「みんなの命が消えないように、おまじないをした。でも、無理をするんじゃないぜ。東京に着く頃に、おそらく、中国軍が占領を開始するだろう。俺が応戦している間に、僧坊は自衛隊を掌握してくれ。」
「官房長官だ!」と僧坊。
「伊達先生は、大河議員から議員バッジを受け取ったら、生き残った議員と連絡を取れ。首相官邸に集めておいてくれ。」
「幹事長ね!」と伊達。
「教授はどうする? 来るかい?」
「ミヤビさん、こんなときに研究なんかしておれんよ。というより、マゼラン・ブレスレットの威力を見届けんことには、そのパワーがなぜ備わったか、わかるはずもない。ミヤビさんの傍で、とくとマゼラン・ブレスレットの力を見させてもうおうかの。」
「危険だぜ。」
「なあに、大丈夫。自分の身は、自分で守るでのう。」
「わかった! 心強い! 利右衛門は・・・。」
「もちろん行きますう。みなさんの、お世話をしますう。」
「助かるぜ! 利右衛門。 一人っ子なのに、すまんぜ。朱里・・・。朱里はどこ行った?」
「ここでおじゃるう!」とモニターから声が聞こえる。
「なにしてる? 朱里。」
ミヤビの部屋で飛び跳ねる朱里がモニターに映る。。
「ミヤビ姫の着替えでおじゃるよ。パンティーはどれを持って行くでおじゃるかあ?」
そう言ってパンティーを広げて見せる朱里。
「バカヤロー!」
長崎から高速に乗り、福岡空港に着いた。案の定、東京行きはテロのため運行停止となていた。
「こっちに来なされ!」
恵比寿教授は、部外者立入禁止区域に入り、ドアノブを拳銃で撃っては奥へ奥へと進んでいった。
「恵比寿教授、どっからそんなもの持ってきたのよ。」
「福岡というところはな、拳銃のひとつやふたつ、その気になれば手に入る。警備員、テレビに釘付けなんじゃろう、誰もおらん。」
航空機格納庫に着いた。
「空港、閉鎖してるようじゃ。おっと、見つかる、みんな、隠れて。飛行機に乗るまで、見つかっちゃあいかん。飛んでしまえば、なんとかなる・・・。」
「教授、操縦できるのか?」とミヤビ。
「ちょびっとな。ゲームセンターで、よう遊んだもんだ。」
「やだあ、怖い。わたし、遠慮するわ。車で東京行くから。」
「伊達さん、安心しなされ。ミヤビさんが乗った飛行機が、墜落するわけないじゃろう。」
六人は、隠れ隠れ、一機の飛行機の足下に来た。整備士が数名いるだけだ。
「亡くなった議員さんには申し訳ないが、テロって有り難いのう。こんなに簡単に飛行機を乗っ取ることができる。」
後部ドアのある中型ジェット機の扉が開いていた。恵比寿教授が操縦席で燃料を確認する。
「しめた、満タンじゃ! これで行こう! さあ、みんな、乗った乗った!」
心配していた一同だったが、恵比寿教授は難なく飛行機を始動させ、滑走路へ出た。管制塔から操縦席に通信が入る。
「DT30型4015機、応答してください。」
夜でもないのに、サーチライトが飛行機を追う。
「やめてよ、まぶしいじゃない!」と伊達が叫んだ。
操縦桿を教授が握り、朱里が副操縦席に座る。ミヤビはキャビンアテンダントの衣装を着て、みんなにジュースを配る。
「ミヤビ姫、コスプレで遊んでる場合じゃないでおじゃる。」
「ごめん、ごめん。」
「言葉遣いは男っぽいのに、乙女心はあるんだからもうー。」
「DT30型4015機、応答してください。」
「緊急時なのに、落ち着いてアナウンスしとる。さすがにプロじゃわい。ミヤビさん、応答してもいいかの?」
「いいぜ。」
教授はヘッドマイクのスイッチをオンにした。
「はい、こちらパイロット。離陸許可、ちょーだい!」
格納庫から大型車両が次々と出てくる。
「許可はできない。即、停止を要求する。」
「責任者に伝えなされ。そちらは飛行機を盗まれた。管理体制に問題がある。もし、わしらが悪人じゃったらどうする? 幸い、正義の味方じゃからよかったものの。我々は管理者の責任を追及する。そして、罰としてこの飛行機をちょうだいする。どうじゃ、わかりやすいじゃろ。」
「・・・。」
「心配せんでいい。これから東京に行って、中国軍と戦うんじゃ。どうせなら戦闘機がほしかったがの。わっはっはっ!」
「・・・許可する。」
「えっ? 嘘じゃろ?」
「鹿児島徳之島管制塔からの情報で、中国からの飛行物体を確認。編成から空軍機と見られる。周辺の自衛隊は待機している模様。無事を祈る。」
大型車両はストップ。滑走路から退いていく。教授はレバーを上げ、離陸を開始する。
客席では、僧坊が悲鳴を上げた。
飛行機が水平になったとき、一同はようやくコーヒーを飲む気になった。
「さっき、自衛隊が待機をしてるって言っていた。」とミヤビ。
「自衛隊といえば官房長官、あたしの出番じゃない。」
「伊達先生、どうする?」
「問題はアメリカよね。米軍はどうするつもりかしら?」
「伊達先生は、どうしたい?」
「そうね。爆撃機が近づいてんのに、指くわえて待ってるっていうのはどうかしら。」
「命令がないと、自衛隊は動けない。しかし、命令する官房長官がいない。」と僧坊。
「だから、官房長官は、あたしだってば。」
「だったら、命令しようぜ。」とミヤビ。
「わかったわよ。ミヤビ総理、攻撃して、いいかしら?」
「いいぜっ!」
「って、教授! なんでそこで悠々と茶なんか飲んでんのよ!」
恵比寿教授は、利右衛門が入れたお茶を飲み、どら焼きを食べている。
「・・・自動操縦じゃよ。安心なされえ。」
「あああ、そう。そういうもの、あるのね。でもなんだか怖いからさ、あっち行っててよ。」
「わかったわかった。これ食べてから。そうだ、管制塔に連絡じゃな。」
伊達は、操縦席でマイクを手に取った。
「もしもし、聞こえてる? あたし、官房長官。伊達っていうの。」
「こちら管制室。なんでしょうか?」
「そのお姉ことば、なんとかならないでおじゃるか?」と朱里。
「うるさいわね、仕方ないじゃない。あっ、こっちのことよ。いい、今から言うこと、九州各地の自衛隊に伝えてほしいの。新しく就任した、伊達官房長官の命令よ。中国の爆撃機が日本防空圏に侵入。直ちに応戦せよ。わかったあ?」
「了解!」
「管制室の人、いい人よね。やけに協力的・・・。」
ミヤビはにっこり笑った。
「一応、離陸するとき、管制室にマゼラン・ブレスレットを向けたぜ。」
羽田空港の管制室も問題なく着陸を許可した。
「伯父の秘書も重体らしいけど、事務所の者を迎えに寄越すって、メール来たわ。」
事務員は、国賓を出迎える大型リムジンを飛行機に横付けした。
「無政府状態ですから、なんでもありですよ。」と言った。
事務員から議員バッジを受け取り、ミヤビは胸に付けた。
「伯父は、どんな様子なの?」と伊達。
「意識ははっきりしてますが、やばいですねえ。内蔵をやられてますから。明日手術です。自分のことはいいから、存分にやってくれ、そう、おっしゃっていました。」
「他に、なにか情報は?」と僧坊。
「今から臨時国会が開かれます。衆議院議員十五名、八十三名の参議院議員も召集されました。国家の大事ですから、両院で、首相を選出します。」
「有力候補がいるの?」と伊達。
「堂本幹事長が有力ですね。次期総理と言われている人ですから。」
「生きてたか・・・。」と僧坊がくやしがった。「あの人には、ブレスレット効果、効かないからなあ。」
首相官邸。会議室に生き残った国会議員が集まる。
ミヤビを大河議員の代理と認めるか、簡単な審議があったが、選挙法改正で味方だった議員が多数いたのが幸いした。
「やあ、きみか。いつかの・・・。」と堂本幹事長は言った。
ミヤビはにっこり笑っただけだった。
「議長を務めます、横井です。今、中国軍が責めてくるという噂もあり、事態は逼迫しております。この議会は、首相を選出目的のみで、開会しております。その旨、ご理解いただき、迅速に協議が進むよう、ご協力お願いいたします。早速ですが、立候補から開始します。立候補者は、挙手してください。」
しばらくざわついた。
「あと、一分とします。」と議長が言う。
「一分は早すぎる、時間延長を希望する!」とある議員。
「国家の一大事です。一分でよい。俺が立候補する。」
そう言ったのはミヤビだった。一同はどよめいた。
「あなたは大河議員の代理である。立候補の資格はない。大体、歳はいくつだ?」
堂本幹事長の発言だった。
「この場にわたしがいることは、先ほど承認された。そして、代理だからという理由で立候補の資格がないというのは道理に合わない。わたしの立候補は、大河議員の意志である。堂本議員の発言は、大河議員に立候補の資格がないと言っているも同然である。」
一部で大きな拍手が起こった。
「他に立候補したい議員はいますか? あと三十秒。」
そう言って議長は時計を見た。ラスト十秒で、堂本議員が手を挙げた。
「こんな局面で、総理になるのは本意ではないが、小娘に好き放題されては困る。」
議長が小槌をたたく。
「美都議員、堂本議員、二名の立候補を受け付けました。早速選挙に入りますが、ここで十分の休憩を取ります。」
ミヤビの周辺には、大河議員を支持する議員が集まった。すでに『ミヤビズム』に染まっている議員たちだった。
「美都議員、九十八票のうち、ここにいるのは三十四。あと十一票必要です。」
「演説の時間は五分ですね。なんとか、支援を訴えたいと思います。」
十分の休憩中、慌ただしく票集めが始まった。
「はあ・・・。女言葉で話すのは疲れるぜ・・・。」とミヤビはつぶやいた。
国会が再開。一同は席に着いた。
「投票の前に、立候補者に五分ずつ、演説を許可します。堂本議員。」
「わしからだと? 小娘からやらせろ!」
「堂本議員。」
「わかったよ・・・。」
堂本議員が登壇すると、大きな拍手が起こった。
ミヤビのアイフォンに伊達からメールが入る。
堂本議員は、米国と早急に会談を実施し、対応を講ずると演説、自衛隊の武力行使については、敵からの攻撃を受けてから発動すべきだと主張した。
ミヤビが登壇する。その美しさに、議員たちはどよめいた。堂本派議員も、大多数が動揺した。マイクの前に立ったミヤビの顔は、神々しさに満ち、堂本議員の存在など消し去るほど威厳に満ちた佇まいだった。
「みなさん、十九歳のわたしが、総理を決定するこのような厳粛の場にいることは、本来なら、考えられないことです。しかし、中国が十年前に防空識別圏を主張して以来、日中米に緊迫した状況が続き、そしてついに、国会議事堂爆破という、不測の事態が起こりました。これは、テロなどではなく、宣戦布告です。中国は、日本を侵略、併合しようと企んでいます。軍部が実権を握った中国が、日本侵略を始めたのです。こうしている間にも、中国の爆撃機が、刻一刻と近づいています。九州の自衛隊各本部は、官房長官不在のため、中国機をレーダーで捕らえながらも動けずにいました。実は、わたしが福岡から東京にくるときに、福岡空港の管制塔からそのことを知らされ、火急のことと判断し、中国機の迎撃を命じました。」
議員から大きなどよめきが起こった。賞賛と怒声が入り交じるなか、ミヤビは続けた。
「今、俺の部下から、中国機のほとんどを撃墜したと連絡がありました。」
怒号は消え、賞賛の声と拍手が起こった。
「ただ、十数機を逃しているとのこと。それは現在、関東方面に向かっています。ですから、俺は、直ちに、日本国内の自衛隊の体制を整え、戦闘態勢に入るべきだと考えます!」
さらに歓声が上がった。
「議長に提案します。投票している余裕はない。ですから、挙手による決定を希望する。」
議長は小槌で机をたたいた。
「その申し出を許可する。これより、挙手による投票を行う。第七十八代日本国総理大臣に適任と思う立候補者に、挙手をお願いします。まず、堂本信孝議員。」
誰も手を挙げない。
「まて、議長! 挙手で投票とは聞いたこと、ないぞ。ちゃんとした選挙をすべきだ!」
「議長への意見、反論は受け付けません。それでは、堂本信孝議員、ゼロ! 次に、ミヤビ議員。」
九十八名全員が手を挙げた。
「美都ミヤビ議員・・・数えるのが大変だが・・・九十八名・・・。よって、第七十八代日本国総理大臣を、美都ミヤビ議員と決定する。以上、閉会!」
万歳三唱が始まった。会議室の最後尾に、伊達、僧坊、朱里、恵比寿教授、利右衛門が入ってきた。
ミヤビは全員を登壇させた。
「国の一大事です。組閣は情勢が安定してから行う。それまで、ここにいる俺の側近の者が、わたしの手足となる。議員のみなさん、よろしくお願いするぜっ!」
議員は再び歓声を上げた。そのとき、地鳴りがした。それが中国軍の空爆であると、阿誰もが悟った。
「外に出ろ!」と叫ぶ議員。
「ここにいる伊達に官房長官を命じる! 自衛隊の編成に、全議員であたるように!」
「おおお!」と歓声。
全議員が動き出した。
「伊達先生、首相官邸に総司令本部を設置、自衛隊の編成状況と、情報収集にあたってくれ、頼むぜ!」
「わかったわ! ミヤビは?」
「無論、戦う! 僧坊たちは国民の安全を確保してくれ。」
「テレビで呼びかける!」と僧坊。
ミヤビは首相官邸の屋上から東京の上空を見上げる。中国機が爆撃を繰り返していた。
右腕をゆっくり回し、次第にスピードを上げる。
「マゼラン・ブレスレット! 聖剣! アラブリード!」
太陽光がブレスレットに集まり、ミヤビは左手を胸に当て、目を閉じる。
ブレスレットは白く光り、『聖剣アラブリード』に姿を変える。耳がオオカミのように伸び、『ミヤビ』のコスチュームに変身。
「朱里、行ってくるぜ!」
ミヤビは空中へと飛び上がる。
「行ってらっさいでおじゃる。」
ミヤビは空を自由自在に飛びまわり、爆撃機を切りまくる。自衛隊機が飛来してくると、ミヤビは首相官邸に戻った。
「自衛隊が来なくても、ミヤビ姫ひとりで十分でおじゃるな。」と朱里が言う。
「自分の国は自分で守るという気持ちが大事だぜ。俺ひとりでやれないことはないけど、日本人みんなが心をひとつにしなきゃ、中国には対抗できないぜ。」
東京に火の手が上がる。
「犠牲者が出てしまったな・・・。苦しむ人が出てしまうのは、本当に苦しい。犠牲者を一人も出したくなければ、俺が中国に行って戦えばすむだろう。しかし、それはしてはいけないんだ。」
「複雑な心境でおじゃるな・・・。」
首相官邸に市民が集まってくる。爆撃機を切るミヤビの姿を人々は見ていた。
「ミヤビ姫、みんなが集まってくるでおじゃる!」
東京にしばしの平和が訪れた。救護ヘリ、報道ヘリが飛び交っている。
テレビでは、僧坊が幹事長を名乗り、美都ミヤビ総理誕生を報道していた。NHKのカメラが首相官邸屋上のミヤビの姿を全国に映し出した。
「国民のみなさん、こんど、総理大臣になった美都ミヤビだぜ! 見てのとおり、中国が攻めて来やがった。俺もがんばるけど、みんなも協力してくれ、頼むぜっ!」
民衆から拍手と歓声が上がる。民衆に応えるミヤビ。
「朱里、やるぜ! 俺。みんなを、絶対に守る!」
「ミヤビ姫・・・いや、ミヤビ総理。立派になられて、朱里は感無量でおじゃる!」
「さて、次は外交だ。アメリカと話をしねーとな。」
ミヤビは、もう一度手を振り、民衆に応えた。