第八話 その日、仕方なく家に招いてみる。
さて。
何ら事故も事件もなく(大嘘)無事に自宅へと帰宅した立花鳴海はふと思う。
なんで二人がいるのだろう。
絶対に利用して利用した挙げ句捨てる要素が確実視されている少女、藤咲真弓と青色のフレームのメガネをあげてそれを掛けている少女、夜桜香織が揃いも揃って自宅の敷地にいた。目線が怪しくキョロキョロと浮いている。
「......少し恥ずかしいから、あまり見ないでくれるかな」
そうは言ったものの既に遅し。香織は目をキラキラと輝いていた。まるで普通の家なのに妙に興味があってお嬢様高校だからか男友達はいないのだろう、友達感覚か。
対して真弓は冷たいものだった。
特に気に入ったものがなくてただ周りの物を見ているだけである。おい話聞いているのか。この場所を知られてしまった以上、どこにも逃げ場所がない。もしかしたら自宅に待ち伏せる可能性も見えてきた。
何事なく過ごせばいいのに不安が拭えない。
とにかく行動を常にリードしないとメンタルが駄目になるので、鳴海は鍵でロックを解除して扉を開く。すると無音の玄関がいつものように待ち構えていた。
靴を脱いでいると二人から声を掛けられた。
「ねぇ」
「ん?」
振り返ると香織は改まってか緊張したように真弓の細い腕に掴まっていた。あら~という概念も浮かばずに鳴海は見た。ジト目で見ている真弓をよそに香織は何もない所を見ている。
「あの、さ。もしかして、今は誰もいないの……?」
「いないけどもうすぐしたら妹が帰ってくる。両親は同じ会社に勤めている訳」
「そうなんだ」
捉えがたい表情をする香織にイライラしている鳴海。
お茶と菓子しか出さないからな。
「とりあえず茶を出すよ。付いてきて」
「お邪魔するわ」
「お、お邪魔してます」
動作がよろしくて脱いだ靴は向きを変えていた。
先導する鳴海はごく普通にスムーズな速さで細長い廊下を真っ直ぐ進んで、途中にある扉を開いてみる。後を付いていた真弓と香織は恐る恐る部屋に入ってみると、確かな事に表情が柔らかくなっていた。
「わあ……っ」
「……」
それはゴミ一つない清潔なダイニングルームが視界に広がっていた。白いカーテンに差し込む陽射しが部屋を明るくさせる。本棚とソファーがあって、防音を施している部屋なのでピアノが置いてあった。
それから真っ白なキッチンと長方形のテーブルがあって花瓶に一輪のカーネーションが孤高に注目を集める。正面にある窓側に置物にもこだわりがあるのか一度は遊んでみたい玩具が置いてある。
香織が黙まりながら凝らしていると戸棚からお菓子を取り出した鳴海は告げる。
「とりあえず座ったら?」
「う、うん」
言われた通り香織と真弓は椅子に腰掛ける。真弓と隣に並びながらも香織はこれまでの疲労を癒すために椅子に背を預けてリラックスする。安心して息を吐いているとどこかで良い香りがする。
そこでテーブルに出されたのは小皿に乗せたティーカップだった。
ケトルを持った鳴海が紅茶を出していたのでその香りの正体が分かった。自分の用意をちゃっかりしていた鳴海は二人の正面にして椅子に座った。
それぞれのティーカップに紅茶を入れといた間、静かな空間をこの身に感じた鳴海は、無事に帰宅して掴み取った安心に手を組んでいた。
すると、静寂を破ったのは真弓だった。
「……ちょっと聞きたい事があるのだけど」
「聞きたい事?」
不意な質問に首を傾げるしかない鳴海。
絶対に信用してはならない人物である彼女にあっさりと鳴海は話を聞く立場になる。しかし自宅を知られてしまったので話を反らすことも反論さえ言えない立場に自分はなっていた。完全に掌握されてる。
しかし真弓は真面目に話していた。
「この紅茶、アールグレイよね?」
「そうだけど……」
早速香織が紅茶を飲んでは何かを思ったのか口が開きぱなしだった。
それから逆手にとって質問してきた。
「これ、とても美味しいけど!」
「あ、ありがとう。冷えているからね」
率直な感想にこちらがビックリしてしまう。いきなり真剣な瞳を見せて称えてきたので、そこはなんとなく嬉しい。というかなんだこのシチュエーション。
「本当に美味しい。程よい甘さの中に苦味があるのに、常識なのに、この絶妙なバランスは質がいいのか過程が裏にあるのかしら……」
真弓もアールグレイを口に含めてみるとこれは驚いたように深々と感想を述べた。食い付くように鳴海を見てきた。いや、美少女に見つめられても百合だから揺れないけど。
「誰が作ったの?」
「母さん。多分市販の紅茶を買ったんだど思う。一度沸かして冷めているからその行程に工夫したかもしれない」
「あれ? なんで知らない感じでいるの?」
「立花家秘伝なんだ。その作り方は母さんしか知らないんだ」
どのような経緯でどのような時間帯で紅茶を作っているのか。他に知っているのは父親と祖父母でしかない。
しかしその根拠はあるようで。
「でも何らかのノルマを達成しないと教えてくれないらしい。もちろんヒントも出してくれなかったけど」
「ふぅん」
お互いに違うタイミングで紅茶を口に含める。鳴海は慣れた手付きでお手本のようにミルクで足してみせてスプーンでゆっくりとかき混ぜていく。
「昔母さんは喫茶店に働いていたから、その技術は本物だと思うよ」
「うわ、もっと美味しくなった……」
ミルクを追加した事で甘さがより強調されて飲みやすくなっていた。
「……是非教えてほしいわね」
知らない所で真弓は負けたように顔をしかめながら笑っていた。ひっくり返す事も出来ないのだろう、初めて飲んでこれほど美味しい紅茶が家で出来てしまうのが驚きだったのか。それとも他の要素があるのか。
すると香織はメガネの奥でキラキラさせながら尋ねてきた。
「ねぇねぇどこまで挑戦したの?」
「そこを聞くのか」
一旦手を置いては目線を逸らしてみる鳴海。口に指の関節を触れてはどことない空間を見ている。
そしてある程度思い出した所で鳴海は言葉を告げる。その表情が至って変化なし。
「ある程度家事とかやったけど、全部違うと言われた。それなら学校関係かなって頑張って期末テストオール満点取ったけど、やっぱり違うと言われた」
「あなた今さらっとすごい事を言ったわよ……」
「いや中学のお復習みたいなもんだったから」
「それも今年なのね。もしかして凄い人だったりする?」
「帰宅部だから当然」
断固として告げてみるが、家に帰る前に学校で終わらせているので家ではそれなりに時間を費やさない。費やすのは全くもってゲームである。
それを知られても大変困るのだけれど。
「ま、全然分からないし、今はお休みしてるんだ。紅茶を作っても味はとことん変わってその味を出すのには到底届かない訳さ」
「立花くんはそん知りたくないのかしら?」
「いやいや、知りたいよ。けれどそれが時間の問題だとすれば手足出せないからね」
「そっか……」
すっかりお手上げ状態の鳴海は軽く両手を挙げた。
「ああ、こっちも聞きたいことがあったんだ」
首をがぶり振る。ようやく意識を集中させてみると、どれだけアールグレイの威力が高いのか流石に驚きました。
鳴海が聞きたいのは若干気になった事だ。
「二人は友達なの?」
すると鋭い目付きになった香織は強い口調で答えてきた。地面に取り出した地雷をうっかり誤作動してしまったみたいに。
「もちろん友達に決まっているでしょ!」
「そこまで強く言わなくても……」
身を引くレベルで鳴海は怯むしかなく、致し方なく反論もできなかった。人には触れたくないスイッチがあって、たまたまそのスイッチを見付けてしまった。と勝手に解釈する。つまり女の子は怒らせると怖い。
しかし思う所があって香織はしゅんとしていた。どれだけ優しいんだ。
「まあまあ、気にしなくてもいいよ」
「そうよ。何も知らない彼だもの、ある程度教えることも必要。両者共々、明るい未来を望みたいならこの迷える鳴海くんに嘘でもいいから話をしましょ」
「どんだけ信用されてないんだ僕は」
やっぱりこの少女だけは信じてはいけない。
そこまで言うには香織は訝しく告げるが何らかの変化があった。
「言うからにはちゃんとした理由があるんでしょうね」
「ちゃんとあるよ、紅茶飲んでからいいですかね」
「紅茶には気持ちを鎮める効果があるからベストなタイミングね」
ほとんど同時に三人は紅茶を口に含めた。それぞれケトルで紅茶を追加しながらティータイムは何事にも委ねなかったのは意志疎通していた。
息を整えた鳴海は冷静に理由を述べた。
「いや、感覚の違いかもしれないけど、今時の女子高生は結構内輪の内容が大雑把だから、そんなに騒ぐように話すもんだから本当はどうなんだろうと思ったけど、夜桜さんは名門校だから手本のような振る舞いをしていたからさ。やっぱり感覚の違いだったかな。意外普通でさ」
「感覚の違いにほどがあるわよ」
「その人が悪い。というかごめんなさい」
「なぜ謝ったし……」
張本人が円城ということから悪気はないけれどそう彷彿させるのが悪い。教室の隅であっても聞きたくないのに聞こえるのでイヤホンをするしかない。
女子トイレか廊下で話せばいいのにと毎度思う。
それは頷くしかない。
というか身近に二条がいるのだから手本となる人を間違えた。
まあ関係ないので話す必要もないか。
「ところで鳴海くんは友達はいるの?」
「なんで聞くのかね藤咲氏」
物凄いジト目で真弓を見ている鳴海。それが妙に恐ろしげで、ごく普通の表情に戻ると心の裏では些か都合が悪いのか本心が笑ってないと気付いた香織。あまり会話に入りたくなかった。
どちらにも加担しない立場に立つ。
「ただの念入りよ。繊細に情報を手に入れないと私達の安全が保てないから。何も知らないと危険でしょ? だからピリピリしてるんだと思う。それからただの質問だから、答えてあげて?」
「スタンガンでビリビリされた人がいるんですが……」
メガネの奥に見せる綺麗な瞳に嘘は付かない。
まだ信じられる彼女だからこそ鳴海は答えてくれた。
「それは、いるよ。でもここ数年は会ってないから友達じゃないかな」
「たったそれだけなの?」
「そうだよ。皮肉にその人しかいないよ藤咲さん」
清く、正しく、そして凛として。
当然の結果だと言わんとばかりに。
「有り得ないわ……」
まさかの現実の残酷さに真弓は信じられないと首を振り、椅子に座りながらも動揺の色は隠せない。椅子と共に後ろへと後退していった。
「友達がいないて楽しくないの?」
「別に。ネット仲間がいるから大した問題じゃないよ。それにみんなと囲みながら遊ぶのが少し苦手で」
「顔とか分からないのに?」
「それがいいんだよ。気楽にチャットで話せるし」
少しだけの間、真弓と香織は目線があった。
暗黙の了解というものなのかその何らかの行動の意味が鳴海には全然分からない。いかに友達とも言える関係だから怒ることも嬉しいことも共有できるのだろう。
コンビネーション、という言葉に首を傾げると、その空いた時間で思考が冴える。
「もしかして偏見してる?」
「ち、違うわよ、意外だったの! 普通の学生だと思ったらやたら優秀で動物に懐いていたり紅茶がとても美味しく作れる家庭にいるのに友達いないとか、寂しくても大丈夫な感じが不思議だったの!」
「いやいや、褒めても嬉しくないよ」
鳴海から見ても香織と真弓も普通の人ではないと見ているのであまり情を讃えるほどでもない。その根拠として友達からの百合ならば、どうあちらが誉めたって暖かい目で見るしかないのであった。
同情は要らない。
自由時間という蝕れない空間を取り戻したいだけなので。
しかし真弓だけはからかうようにクスリと笑ってみせた。
「友達がいないとか、寂しい学校生活ね」
「友達がいてもその秘密を明かすことはないだろうに」
どっちもどっち。
過度なユーザーと見られてる百合は完璧ではなかった故にこうして何かが欠落した者が集まり、こうして紅茶を飲んでいる。笑えてしまうほどの組み合わせなのだが、
「……なんだが、私達と似ているわね」
動物のビスケットを食べていた鳴海は噎せた。
紅茶を一気に飲み干して流し込むと潤んだ目を向けながら言った。
「は? どこが?」
「え、だって普通なら恐縮するものよ。知らない人ならあまり深く会話しないあなたが信じてる。ちゃんと聞いてくれる。聞いてくれるだけで、少しは針積めた雰囲気が和らいでくれると思って」
「だった会話が出来るだけのことで……」
こちとて誰でも話せるようにある程度の知識は持っている。だからって百合の子に共感されても困る。しかし、あれだけ疑う鳴海がこうして自宅を教えたのは不思議でならないのが自身でも分かる。
だが忘れてはいけない。
困るのはどちらなのか。
「でも忘れてはいけないよ。それこそ意識を緩んでいたら相手の思うつぼ。大概の人は口が軽い。すぐに裏切る。僕はたまたま人柄が良かっただけ。常に不安は付き物なんだから簡単に信じては駄目だ。後になって後悔する前に、人を疑うんだ」
「そうね。相手がまだ良心的な人だったからと言えるわね」
「既に悪辣な方向に向けていた人がいたんですがね」
「まだ何も知らないじゃない。全てを知った上で私の判断で決めるわ」
「頭が高いが世界はそうさせないぞ?」
続くお互いの揺るがない強い正義によって睨み合う鳴海と真弓。反発するように方向性が逆の位置にあるようで、その意識は絶対に分かり合えない。
(絶対にこの状況を抜け出せる答えを見付けてやるからな)
(秘密を見られた以上、鳴海くんはもう逃げられないわよ)
「何だか知らないけど顔に出ているわ」
ため息を吐く香織はゆっくりと立ち上がった。
「話変えるけど、お手洗いはどこなの?」
途端に何事もなかった様子で笑顔を見せながら鳴海は答える。
「部屋を出で廊下を右に進めばいいよ」
「ありがと」
そう言って香織は素っ気なくこの部屋を出た。
彼女が抜けて、部屋にいるのは鳴海と真弓だけで、気まずい雰囲気が忽ち漂ってくる。
というか初めてである。
最低会って二日も経ってないのに自宅にいれてやった少女、藤咲真弓。パーカーで短パンの身なりはどこの高校なのか分かることもなく、同年代のカテゴライズに当たるだけの、未だに不明な人である。
そんな不思議で鬼畜な少女にどう話すのか。
「何か考えているわね」
「顔に出ていた?」
「そうね、香織が飲んでいたティーカップを飲むか飲まないか考えていた?」
「僕をそんな目でみていたのかい」
「あくまでも私は鳴海くんを監視するためにいるから」
「ほかにもっと有効なことがあると思うけど」
香織がこの場にいなくともテンションは変わらない。
誘うような表現の中にあるのは最後に人を裏切る、騙すことしか想像できない。例えるとすれば綺麗な薔薇には刺があるような。だが彼女は百合なのに隠し潜める刺があることを、理解しなければならない。
それが毒があることを。
奥に潜める刺という毒をこの身に染みることで免疫を付かないといけない。それは一歩でも早く終わらせるための自滅覚悟の一手を掛けていた。
とにかく今は藤咲真弓という少女に振り回される立場にある。
悪い予感しか感じないのだが。
「はぁ……」
深いため息しか出来ない現状の鳴海に、何かを見付けたのかきょとんとしてる真弓の視線が合った。
「何か用ですかね」
「ふふ、ちょっとだけ考えていたの。その時間に有効なものにする方法。鳴海くんが言ったから、もちろん分かるよね?」
「有効? 僕だったら趣味に注げるな」
「趣味。それはいいわね」
すると香織は部屋に戻ってきた。視線は香織に集中するが何ら心境の変化は見られずに椅子に腰掛ける。すると入れ替わるように真弓が立ち上がった。
「お手洗い、いいかしら?」
にっこりと微笑んだ。
それがあまり意味のないものだと鳴海は丁寧に対応した。
「……どうぞ」
真弓がこの部屋から出るのを見て安堵が生まれた鳴海は静かに携帯端末を操作していた。
「私がいない間何があったの?」
「特に意味のない話だから聞かない方がいいよ」
「ふぅん、意味のない話ねぇ……」
そう頷いて紅茶を口に含める香織。頷いてどうするのだろう。
「でも意外。真弓があなたと対等に話せるなんて」
「は?」
「な、なんでもない。こっちの話よ……」
たまらなく威圧に声が小さくなってしまっている香織に追及しなかった。ごく単純に真弓の過去など知っているから言えるものなのだ。
当然のこと。真弓に関してはあの出来事によって自身を守るための行動をしただけ。けれど常識が通用しない相手に行動はほとんど無駄に終わる。
香織を信じてるのは、信じようと思ったから、それだけだ。
優雅なひとときを楽しんでいる香織はお菓子をたんと味わってそれから絶賛した紅茶の風味を記憶に刻もうとゆっくり飲んでいる。
静寂に包まれた空間の中で携帯端末の画面をスクロールさせている鳴海。流れ去っていく情報の海が真実だけを静観していく。
それぞれの時間が続く。誰も邪魔されない限り、至高の時間は終わらない。
「……あの、さ」
「何かな?」
「真弓、結構遅くない?」
携帯端末の画面をスクロールさせていた手が唐突に止まる。
「まさか……!」
すると急に颯爽のごとく立ち上がってこの部屋を出た鳴海。その素早さに香織は遅れてしまって付いていけなかった。
どおりで姿を消すのが早いと思っていたが、そう意識させなかったのも感じた。
「ちょっと早い! というかまだ分かんないわよ!」
しかし既に洗面所のある場所に着いていた鳴海はそこまで愚かでは無い。トイレに繋がっているドアを軽く引いてみると、あっけなく開いてしまった。
ということはいないのが分かる。
(じゃあ、考えられる場所は……)
もう一度廊下に戻った鳴海だったがその場にいた香織と目が合った。
「い、いなかったの!?」
「でもこの家のどこかにいる」
そう言ってみせてはある所に目線を貫かせる。螺旋状に繋がれた二階へと続く階段に、思考に迸るものがあった。確信して香織に言葉を告げる。
「二階に行くぞ」
「もう、何してくれてるのよ真弓……」
悲観して肩の荷物が重そうな香織に目もくれず、忽ち階段へと上がっていく。
「え、待って、一人にしないでっ」
弱そうな声に足を止めてしまう。着いていくのが精一杯な香織のペースから外れないように階段に上がる。無事に二階にたどり着いて廊下の奥に光景が広がっている。
そこで扉が開いていた。
「ありがとう……!」
「静かに。藤咲さんが今、僕の部屋にいる可能性が高い。急ごう」
「なんでそんなことを……」
香織を置いて単独行動をした真弓に、鳴海は微かにイライラしていた。
いつも一緒にいたのだろう、香織は独りになると酷く怯えた様子でこちらに見てきた。その姿が奥で悲しそうな顔を覗かせていたのを知った。気付いてしまった。
その儚い笑顔が綺麗な少女を悲しませる、罪ある行為に、鳴海は動き出す。
彼女達を知りたくなったのを知らずに。