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欠落百合姫のステイルメイト  作者: 島村時雨
第二章
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第八話   言葉の裏側

 放課後。

 燦々と照り付ける黄昏の日差しを遮るように、楠木妃芽は手を空へ掲げる。

 昨日の一件によって登校しなかった海霧紗凪を探す。そのために決起した行動は妃芽自身が考え抜いた答えではないことを承知しながら、学校の外へ行き見慣れた街を歩いていた。


 彼女がずっと秘めていた強さを見出すために、定めた目的へ向けている。

 猪突猛進の勢いで前を進もうとしていると。


「そういえばなんであなたが居るのよ」

「居て悪いのかよ」


 機嫌悪そうに話す神栖雛奈と答える桐生天也。それと距離を置いて彼らの後ろにはメガネを掛けた菅宮師翠がいる。


「いいんです。呼んだのは私本人ですから」

「……うん。妃芽が決めた事で言えることは無いけど、友達だし力になりたい」

「ありがとう」


 短く言葉を告げると致し方なく雛奈は渋々承知するが、笑顔を浮かべてくれる。よほど天也とは行動を共にしたくないのか妃芽の隣で並行して歩む。


「……友のためにお互いを鼓舞し助け合う友情! これって青春一歩してる?」


 ちょっと後ろがうるさかったので無視をすることにした。


 紗凪を見付けるべく出来るだけの人数が欲しかった妃芽は頼れる人達を呼んだ。疎漏のないよう効率よく進めるために決行したこの行動。


 風紀委員である雛奈がいると心強くて、殿を務める師翠は腕に大鷹の腕章を付けながら周囲の人の流れを目視している。二人は委員会があるのに師翠が折り合いを付けてくれたお陰で現在に至ることになった。


 もし妃芽一人だったら不安に押し潰されてながら向こう見ずに誰にも頼らないで己の力のみで進んでいたに違いない。ここにある繋がりに心の底から感謝する。


「……さっきから静かな感じがする」

「どうしたの? 彼がそんなに不快に思うの?」

「お前ちょっとばかし酷すぎるだろ!」

「そういうのじゃないよ。ただ、歩いてる人の視線が避けられているような感覚がある気がして……」


 無作為に、いいや、無意識に目線を避けようとしてる。

 単純な恐怖というよりも威厳に対して恐れ多いような、重い感覚。決して触れてはいけない禁忌を目の前にする強烈な錯覚。そんな例えようのない現象に妃芽は深く思考を巡らせていると、


「きっとアレだ。理性の狡知って奴だ」

「……?」


 唐突に天也に言われても、はてなと首を傾げる妃芽には全然分からない。

 それでもからかわない少年は言葉を続ける。


「言っても実感ないか。悪辣な人間を制裁する風紀委員の肩書きを持ちながら人柄として働く兄弟を、楠木はどう捉える?」


 言われながら妃芽は菅宮師翠という人間に付いて考えてみる。

 昨日の出来事と今日の会話を重ね合わせる。冷酷なほどまでの厳格の風体と優しく見せる温厚篤実の性格。一転する姿にはどちらが本性なのか悩ませるものがあるが、それを含めて菅宮師翠なんだと妃芽は判断する。


 そして二つの形を重ねる事で、一つの答えが浮かび上がった。


「正しい事をしてるのに怖がられてる……?」

「ああ、その通り。他の人から見ても風紀委員は怖い存在なのさ。もしもの話、何もしてないのにだ、質問されたら正直嫌だろ? そんなもんさ」


 初枝高校の風紀委員は警察官同等に悪事を裁く権利が与えられる。

 それも選ばれた人でしか行使を用いる事は出来ない。その証とする警棒はまるで鞘のように腰に収める。顕然する姿は人を惹き付けては去っていく。

 畏敬の念そのものに怯えていた。


「楠木から見れば兄弟はいい奴に見えるが、他人から見たらそうじゃねえ。正義のために人を守る奴が一番怖い存在って事さ」


 これらを立ち向かう事は。

 違反をしてまでも手に入れようとした物に立ちはだかる正義。その壁に身構える姿勢は、計り知れない重圧がのし掛かってくる。


 不良達が感じた恐怖は『世界』そのものだった。

 最後に立ちはだかる『現実』を。


「背伸びしようとして間違った方向へ進んだ。何かを越えようとして。それが悪い事だと自覚してもさ、今の自分を越えたり理由があるんだろうが、相手が悪い」


 昨日の出来事に関して天也はそう簡単に言葉を閉ざす。

 それは既に起きてしまった過去に過ぎないのなら、どんなに縋り付いても未来は変えられない。物事が生まれた瞬間に未来がやって来るから。


「まあ、兄弟は初日からそんな奴らを屠ってきたし、畏れられるのは当然か」


 威厳に満ちる師翠は周りが廻ろうとしても中心に立つ者として変わらない。間違いを改めるためにある正義は誰かが必要な事だと理解している。

 絶対的な道義は揺るがない。


「でも彼らのお陰で私達は生きていられる。その事を忘れないようにね」


 自分がすべき事を理解して未来のために進もうとしてる。そこには確信する決意を抱きなから、より良い世界を作るために様々な人達の活躍によってこの世界はこれからも築いていく。


 名前の知らない誰かが、世界を綺麗にする。


「……そうだね。私もこの街が好きだから」


 この先過ごしていく街を妃芽は静かに見据えた。

 そこにはまだ知らないものが広がっていて物語は始まってもいない。だからこそ妃芽は探す。楽しい生活を送るために誰一人欠けてはならないのだ。


 独りが怖いと気付いたら、心が押し潰されそうになる。何も映らない孤独の世界が側にあって紙一重に擦れ違う。それでも鮮やかな色に触れたら見違えるほど自分に大切な意味があると教えてくれた。


 選択は自分で決める。たったそれだけの事。

 そしてようやく妃芽達はある場所に着いた。


「バッティングセンターだな。鬱憤晴らしか?」

「多分だけど紗凪は強くなりたいんじゃないかな。何かと気掛かりだったし……」


 対決と打って遊んだ場所、バッティングセンターのある施設。

 世間は狭いと言うが実際はそうなのだろう。関わりの多さのある人なら理解するもので妃芽には届かないものだ。これまでの行動を察して、彼女が強くなりたいと叶える場所は限られていたりする。


「なるほどね。遊んでみて、紗凪が行きそうな場所を選別したのね」

「ははは、直感だよ」


 ただそれだけしか思い浮かぶものが無かったのだが、ここは黙っておく。

 すると静観していた師翠は言葉を告げた。


「効率よく見付けられるとしたら、二手に分かれた方がいいな」


 その指示に忽ち妃芽と雛奈は頷く。

 紗凪を探すために守ってくれる強い人の存在が欲しかった。その大切さを知って声を掛けようとする自信がある。


 独りは心細いと気付いて以来、心のどこかでは誰かに嫌われる事に怯えていた。

 けれど今は違う。本音を伝えなければ分かることも分からない。


「お、分かれるのか。それじゃ俺は……」

「二人は任せた。桐生行くぞ」

「ですよねー、とほほ……」


 落胆して歩くスピードを落とす天也を気付かず、師翠はこの場から颯爽と姿を消した。この施設は少し広い事とあって探すのに手間が掛かる。あまり時間が残されてないと言っても過言ではない。


「私達も探しましょうか」

「うん。こっちも頑張らないとね」


 もし紗凪が居なかったとしても次の作戦がある。それがたとえ姑息だと言われても構わない。手段が手元にあるなら彼女を見付ける。


 昨日遊んだばかりの場所に紗凪が居ると思うと、胸元が痛く感じる。


 あの時にやって来た選択は何が正しかったのか今でも分からない。一緒に戦っていても逃げようとしても、募った心は晴れないと思う。完璧な答えはないと同じようにたった一つの行動で未来は変わる理論なら、最低理不尽に感じてしまう。


 だけど、妃芽がした選択は選んだ選択。後悔はない。

 これから沢山話し合えばきっと分かり合えるかもしれない。何が正しいのか共に考えながら。それは簡単な事じゃはいけれど妃芽は中身のない馴れ合いは嫌だ。

 ただ彼女の事が知りたいだけ。


 走りたくなる衝動を抑えながら、歩いていく。

 すると視界に捉えたのは昨日居た変Tシャツの女の子がいた。どうやら一人のようだが黒色のキャップを被っていてスカートなどの服装が漆黒色に統一していた。


「あの子真っ黒よ……」

「昨日も居た人だ。それにしても、黒いね」


 何度見ても驚きが絶えないのだが、少女の容姿とその成り立ちがモデルのように美人だったから。浮いてるという目立つというか牽かれる要素がある。

 そんな独特の美少女がいるという事は……。


「あの、ちょっといいかな?」

「はい? なんでしょうか」


 尋ねられた黒髪の少女は素直に答えてくれるようだ。身長は若干越されているようなので同年代だろうと妃芽は思ってみる。

 しかしながら自分よりもお持ちに恐縮してしまう。


「この制服を着た人って見てませんか?」


 携帯端末の画面に映る写真を見せると黒髪の少女は反応した。


「あ、このお姉さんならさっきバッティングしてたけど?」

「そ、そうなの!? あ、ありがと……、ん?」


 近付いてきた安心感に、どこか引っ掛かる要素が妃芽の思考を硬直させる。

 思っていたものが違うような錯覚に襲われたような気がしてならない。

 今度は違う質問をしてみた。


「お姉さんってどういう意味で?」

「え? そのままの意味だと思うよ。私中3だしお姉さん達は高校生だよね」

「そんな、有り得ない。年下に負けた……?」


 目の前に居る女の子が妃芽よりも年下という現実に、受け入れられない葛藤が生まれた。だって、舐め回すように見たら、こんなのおかしいに決まってる。

 不完全してネジ一本欠けたロボットのようにカチコチ体を動かすが、見ていられなくなった雛奈は妃芽を促して急がせた。


「ほら、自分の世界に行かないで急ぐわよ」

「どうしてこの世界は残酷なんだろうね、あはははは……」

「ちょっとよく分かんないけど、お姉さん頑張ってね~」


 二人の背中姿を手を振る少女、波瀬(なみせ)仄佳(ほのか)はこれ以上眺めることは出来ない。仄佳にもちゃんとした事情があり人を待たしている身なのだ。

 約束事は軽い気持ちで破ってはいけない。

 しかし急用な用事で断るざるおえない場合もある。


(善は急げって事だね。私もそろそろ行こうかな)


 一方で何かと食いしばって落ち着かせた妃芽はほんの少しだげ疲労が蓄積していた。睡眠不足もあってか思うように力が働かない。

 それも息をすることも苦しくなっている。


 ここに来て溜め込んでいたものが沸騰したのだろうと妃芽は考える。

 何せこの一週間、学校生活とプライベートを含めて目まぐるしくパワフルな毎日を送ってきたのだ。これまで退屈な日々を過ごしてきた妃芽にとっては、普通のことが素晴らしいものに変わった。


 二人といる時間が楽しくて、無我夢中で手を伸ばそうとしたから、つい頑張り過ぎた結果だと思えば本当に自分は無理してきたんだなって感慨する。

 初めて手に入れた大切な居場所だから。


 視界に映る景色がスローモーションのように遅れて見える。遠退きそうな感覚が来襲してきて本格的に休まないと今にも倒れそうだった。

 そんな虚ろな瞳に映るのは、忘れもしない掛け替えのない人物。


「紗凪……」


 微かに動かすだけでその黄色掛かった長い髪が滑らかに揺れる。光沢のある残滓を残しながら髪を掻き上げる綺麗な容姿をした少女はゆっくりと顔を見上げた。


「妃芽に雛奈、どうしてここに……」


 この場所にやってくる事を想像していたのか海霧紗凪は酷く驚くことはなく、目を覚ましながら見据えている。けれど聡明と妃芽の(やつ)れた姿を見て苛まれるように気の迷いが生まれていた。


 紛れもなく初めて見る妃芽の弱々しい姿。

 彼女に向ける言葉が見付からない失望感を認める前に、思考は途切れる。


 妃芽は紗凪にしがみ付きながら包むように抱いたのだ。


「……それは、こっちの台詞だよ」


 触れる事ができる温かみを感じる喜びよりも、らしくない彼女の行動に疑念が勝る。喪失してきた気持ちを上乗せしながら気持ちを言葉としてぶつける。


 全てが優しいとは思わない。けれど一つの事に対して背を向けるのはおかしいと感じてる。確かに人は弱いのかもしれない。だけど現実から逃げても何も変わらないって事を紗凪は知っているのに。


「困っている事があったら、私達に言ってよ……」


 妃芽は納得がいかなかった。

 せめて悩みがあるならそう言って欲しかった。そしたら全力で紗凪が抱えるものを改めようと誓う。大切な友達のために妃芽はここまでやって来たのだから。

 共にした時間を無駄にはしたくない。


 熱烈に感じる妃芽の震えを身に染みていく紗凪。自分がする行動は誰かが影響を受けることを身近に感じた。決して許される行動ではないけれど、確かに紗凪には大切な友達という価値があったのだ。


 改めて自分は弱いと知る。

 闇雲に答えを探そうとしても、一人では乗り越えられない壁があると。

 けれど紗凪はもう独りではない。


 こうして心配してくれる人達がいる事を紗凪は忘れてはならない。支えてくれる人の存在が有る限り、あらゆる事に挑戦できる切符を持っている。

 自分は活かされているのだ。


「……そうだよね。私には友達がいるんだよね」

「紗凪……?」


 温厚を含ませた声で妃芽の背中を優しく撫でる紗凪。妃芽として委ねることの無かった彼女があっさりと認めることに些細な違和感を濁らせる。

 それでも紗凪は微笑みながらゆっくりと剥がした。


「……分かってはいたんだ。何かしても進展なんてないし行き詰まる事だって。私はどこか意地を張ってきたんだと思うの」


 これまでの失敗は消えない。でも越えることは出来る。前を進められる事が出来るのなら紗凪は幾多の失敗を恐れずに力の糧に変えてみせる。

 培う分、今以上に笑顔を浮かべられるのだから。


「だから、今度は逃げないよ」


 再び見せてくる勇ましい笑みにの中に、大人びたような穏やかさと淑やかさが携えてる。こちらを見据えてる瞳はどこか厳かなものがあった。

 揺るがない決意、というのだろうか。


「困った時、私を見付けてね」

「紗凪……」


 それでもあざとく幼そうに笑みを溢す紗凪の姿を見たら、安心した。そこまで根に持ってなくて相変わらずのらしさに、抱えていた不安の種が飛んで行った。


 振り絞っていた力は解放されて妃芽はその場から崩れる。


「だ、大丈夫なの!?」

「妃芽、あなたは無茶し過ぎよ」


 屈みながら心配そうにする紗凪と、後ろに倒れそうになるが背中を支えてくれる雛奈。思うように力が入らないが口は動かせることが出来た。


「変な感じ、力が入らないよ……」


 危機的な状況なのに妃芽は笑っていられた。改善する一歩は未来に向けて出発したばかりだけど、ようやく日常を取り戻したような感覚が妃芽にはあって。それに比べたら疲労より喜びの方が何倍も強い。


 とりあえず近くに設置してあった椅子に座る介抱の身になった妃芽。すると駆け付けた師翠と天也が合流するが、この現状に驚いた様子。


「おい、大丈夫かっ!?」

「……極度の緊張から解放されて一時の不安障害が起きてるようだ。桐生、楠木に何か温かい飲み物を買って差し上げろ。自費で」

「やはりパシリも一流だぜ兄弟!」


 急いで自動販売機を探しにいく天也の背中姿を見届ける師翠だったが、そこで不意に紗凪に声を掛けられる。


「どうしてあなたが……?」

「君を探しに来た。彼女の話を聞いてクラスメイトとして手伝ったんだ」


 あることだけを告げる師翠は詮索する姿勢は無かった。当然の理由と事態に総じて人柄の徳行に述べただけ。

 横槍のない行跡は妃芽の責任を軽減しているように見えた。


「私も事情を知ったわ。だからって良いってことではないわ」


 糾弾にも近い口調。厳しい姿勢で雛奈は紗凪を見つめる。許される行動ではないからこそ怒るのは当たり前。掛けてきた責任は一人ではとても重い。

 これは責務ではなく、友達としての答え。


「……でも明日、ちゃんと私達に話してよね」


 師翠なりの配慮と雛奈なりの立腹。全ての行動が自分による結果だと知った紗凪は静かに拳を握り前を見据えて、口元を綻ばせながら言葉を告げようとする。

 だが、それを遮るように、透き通った知らない声がその場を響かせた。



「別に学校に行くなんて強制的じゃないわよ?」



 ローファーを鳴らしこちらに歩み寄るのは、亜麻色でロングの髪をする大人びた女子高生だった。気品のある制服は聖マリアンヌのもので、それから美しい容姿をしている。日本人離れした白い肌とモデルのような美麗の体躯は、紛れもなく育ちの良さを感じさせる遠い存在に君臨する学生だった。


 唐突に現れた学生にその場は静寂と還る。

 紗凪以外の人物が、凍ったような表情をしてる。


「あれ? もしかして歓迎されてない? そっか、イレギュラーだものね」


 悪びれもなくにこやかに笑ってみせる学生。雰囲気の流れになぞらない。疑問の象徴とも捉えられる学生に妃芽は恐る恐ると言ってみた。


「あの、あなたは……?」


 すると缶入りのロイヤルミルクティーを買ってきてこの場に戻ってきた天也は、視界に映る現実に畏れるように驚愕した。


「ぬ、ぬわーっ! は、美岬先輩!?」

「や、桐生くん。なんだが久しいね」


 天也にとって面識のある学生はにこやかに受け答える。誰もが見ても才色兼備の女性は高嶺の華のよう。なんとなく向けられる笑みに話し掛けにくい。

 特に会話をする気がない師翠の雰囲気を天也は読んだ。


「えっと、このお方は初枝美岬先輩。一様初枝高校と聖マリアンヌ高校の理事長の孫で令嬢だ。岳斗の一つ上の姉ちゃんだな」

「この人がマリアンヌのお嬢様……」


 そっとロイヤルミルクティーを渡してくれる天也に無言で感謝してるものの、未だに目の前にいる人がそう見えなかった。


「そんな大層な身分じゃないけどね。初枝(はつえ)美岬(みさき)。みんなよろしく」


 風紀を統べる初枝高校と徳行を統べる聖マリアンヌ高校。

 人としての成すべき知識と意識を教養する居場所を見出した人達の子孫が、目の前にいる。それから亜麻色の髪が路地裏に現れた中性的な少年にも似ていることから、あの少年が岳斗という名前なのだと理解する。


 けれど目の前にいる女性、美岬さんは優しくて怖くとも捉えた。


「えっと、楠木妃芽です」


 単なる自己紹介が咄嗟に出たものだった。後から雛奈が告げている。ごく普通に会話を続けている美岬さんは楽しそう。お転婆な姿は至って元気を揃えてる。

 けれど警戒そのものと言える人物は静かに告げた。


「……菅宮師翠です」


 冷静沈着と無表情で。特にそれ以上の会話を拒むような姿勢。一度は見せていた行動は距離を置くためにする牽制。

 それを隠そうとしてないのがなんとなく分かった気がする。

 何せ妃芽も苦手だから。


「……へぇ、みんな、いい名前だね」


 美岬さんはみんなの表情を見て微笑んでいる。

 何かを覗こうとしてそうな感じが恐縮させているが、単なる知らない人だからなのだろう。未だに体は疲労を蓄積して動けないけれど、温かい飲み物のお陰で心に少し余裕が出来ていた。


 それは紗凪の存在があるからか、支えてくれる人達がいるからか。

 それとも疑う人の存在がいるからか。妃芽には到底答えられるものではない。


「初枝先輩、ちょっとだけ質問があるんですけど」


 区切りを告げるような変化の兆しを見せる雛奈。それを美岬さんは、潔く頷いてくれて「もちろんいいよ」と告げる。その余裕はどこから出るのか。


 了解を得た雛奈は鋭い視線を向けながら問い質す。


「さっき、学校は行かなくてもいいって告げてましたよね? それはどうして?」


 風紀委員にとって聞き逃せない要素のある発言だったため、雛奈は咎めるような口調で語る。疑問を含めた警戒心が妃芽にはある事を知る。

 少なからず疑心暗鬼になるのは明らかだ。


 何せ、華奢な身形が到底この場に溶け込むような感じではない。


 だって、聖マリアンヌの理事長の孫にして令嬢なのだ。今いる場所は力を試すようなスポーツが出来る所だ。

 そんな人物の存在によってアンバランスを生じている。

 美岬さんはバッティングとか絶対にしない人なのだ。


 どんな理由で施設にいるのは本人しか知らない。そんな美岬さんは答えた。

 それはまるで当然のような答えだった。


「だって学校が楽しくなかったら、そこに居ても何も生まれないよ? なんなら外で何かを見出せば楽しい。図書館とか遊べる場所なら構わない。ダラダラ時間を過ごすなんて勿体ない! 妥当な理由だよ」


 それは居場所がない、という事を含めるのか。

 確かに学校は常識を学ぶためにあって遊ぶ場所ではない。窮屈と思える人にはさぞかし不満を募らせることだろう。


 つまらない人はあると思う。身近に感じた事として、無機質な表情を浮かべる女の子がいる。常に独りでいる姿を見掛けて楽しくないかと尋ねたかった。

 妃芽も独りになった事があるから。


 そんな妥当な理由として、捉われない概念を美岬さんは見付けたのだ。


「どうしてもっていう時にはね、人は逃げ場が必要なんだ」


 告げられた言葉が何故か紗凪の方へ向けられているような、そんな感じがした。

 視線を伏せている彼女は聞きたくなさそう。

 そんな忍び寄る何かを断ち切る言葉を含ませたのは師翠だった。


「あなたは今、楽しいですか」


 明確に。

 挑発の領域に達する師翠はどこまでも冷静沈着に凝らしている。完璧に美岬さんの事を信用せず、それも疑いを隠そうとしないで。

 冷めることのない敵視がこの場の空気を変えようとしている。


 奥に潜めた獣を穿(ほじ)くるような問いに聞こえる。どよめく大きな何かが遮る前に、突いた質問に妃芽はただ静観するしか方法はない。

 少し気掛かりなものが、それを遮っているからだ。


(何か、見落としてるような……)


 これ以上探求しても、意味はないと感じてしまうのだ。

 正解はないような。


「ちょっと馬鹿、先輩に失礼だろっ」


 諌める如く天也は死守の発破を掛ける。肩を揺さぶられても師翠は動じる事もなく、無表情で美岬さんを冷たい眼差しを向けていた。容赦なく放たれる威圧が制服を越して肌身でも分かった。


 ピリピリと張り詰める鋭利な雰囲気が交錯する。

 全員が見守る中で美岬さんはさぞかし面白そうに笑ってみせた。


「あはは、うん。楽しいし私はとっても幸せよ! だって不自由なく過ごしているもの。マリアの肩書きを背負ってる身分だけど、大したことじゃない。それから、勉強しないと良い大学には入れないゾ?」


 どこも可笑しくはない、自然な笑顔。

 それは本心なのか美岬さんしか知らない。でも妃芽は心の底から怖いと思ってる。

 左右に行き交う局面に対して、ここまで笑顔を振る舞える人を見たことが無い。


 疑問が晴れそうにない中で表情を変えなかった師翠は小さく微笑む。


「……そうですか。ならあなたは沢山の青春を謳歌していって下さい」

「あれぇ? 私には他人のように聞こえるけど?」


 何事も無かったかのように談笑が弾む。

 先ほどの危機迫る雰囲気が消えた。嵐のように過ぎ去ったみたいに。

 それを妃芽は信じられないと首を小さく左右に振る。目の前にあった事が幻のように霞んでしまったのを認めたくない。


 あの時の恐怖は確かにあったのだがら。

 肝を冷やす天也の疲労の溜まった表情と、未だに訝しむ雛奈。ただ起きる出来事を見据えるだけの紗凪と、全ての出来事に疑うばかりの妃芽。

 まるで、意図も簡単に弄ばれた感覚が。


 春を告げる雪解けが始まる。裏側に隠された真実を知らぬまま。この身に感じた活劇は嗜虐的な思念をちらつかせるために、この場を利用して。


 その行動に秘めた美岬さんの気持ちは一生分からない。

 どんなに見付けようとしても無謀だから。


「……うふふ、なんだか楽しいな。ね、師翠くん」

「そうですか」


 コントラストを織り成す様々な表情を見比べては楽しそうに見ている美岬さん。

 話を変えてみると美岬さんは正直敵わない。

 大人びた美貌はやはり先輩であって、それほど年の差はないのに。


 けれど認めざる負えないのは恵まれた容姿があるからか。女性陣の中で慎ましいのは妃芽であると自ら納得してしまって、目の前が真っ白になった。

 その反応を見た雛奈は怯んだ。


「ど、どうしたの?」

「笑えば良いと思うんだよね。うん……」


 一方で美岬さんは面白いものを見付けたような興味の眼差しで師翠を見ていた。


「師翠くんみたいな寡黙を貫く人は好きかな。ちゃんと応えてくれるし」

「そうですか」

「一言しか言ってねぇ相棒だけどな……」


 全くブレることのない師翠。もはや頑な行動が直実だと分かる。

 妃芽達に見せる優しさは美岬さんには示す微塵もない。


「それでも私には良いんだよ。話していると心地良いんだ。まるで箕嶺(みれい)のような距離感があって、なんとなく気楽に声を掛けられる所がね」

「じゃあ帰ってもいいですか」

「嫌な顔してない辺りますますお姉さんポイント高くなったよ!」


 美岬さんは勝手に一人で賑やかなムードを盛り上げる。その中で新しい人の名前のワードに反応する妃芽。


「箕嶺、……さん?」


 名前的に女の子だろうし想像してみた。亜麻色の髪をして双子ぽいのでそれなりの印象は美岬さんに統一させてみる。唯一違うのは性格だろう。

 もしかしたら冷たい人柄なのかと思考をほんわか膨らませていたのだが、


「将来は箕嶺のような人と結ばれたいな」

「んんんーっ!?」


 衝撃の発言にロイヤルミルクティーの味がしなくなった。

 流石にインパクトがあり過ぎて脳裏に浮かぶ。協会で二人仲良くウエディング姿で階段を下っていくのを。それを見送る妃芽は引きずった表情をしてる。


 女性同士の結婚式なんて、考えたこともない。

 その前に羞恥が勝った。想像するだけでも抵抗感があって。

 大体姉妹で結婚できる訳がないのだが……。


「それほど箕嶺さんのことが好きなんですね?」

「ちょっと恥ずかしいけど、そうだよ。ずっと屋根の下で暮らしてきた大切な双子だもの。箕嶺が好きなものぐらい私は知ってる。でも今は別居してるし兄妹だから学校も別々なんだよね」

「へー、そうなんですか。……兄妹。けいまい?」


 アホみたいに首を傾げる自分がいた。正しい答えにするにはこ相当の理解の鵜呑みを要求している。(つか)えたものが未だに取れない感覚。

 どこか勘違いしてると気付いた天也は怪訝そうにした。


「何考えてるかよく分かんねえけど、箕嶺先輩は男だ」

「それもウチの生徒会の副会長よ」


 加えて言う雛奈は片手で頭を抑えていた。少しは校内も学べと。

 ちなみに妃芽は自校の構造についてよく知っていない。帰宅部を選んですぐ帰るようなって放課後の学校はそれほど感心が無かったりする。

 ……ちょっと調べてみようと思う。


「箕嶺はね、格好良くて優しいんだ。マリアの方でも結構噂になっていて、ちょっとだけ嫉妬した。箕嶺の何を知ってるの? てね」


 ハッキリとした口調で悋気を述べる歪んだ兄妹愛に引いた。箕嶺さんのイメージがガラリと変化しても愛情を注ぐ方向性に無理があると分かっているから。


 何せ聖マリアンヌの令嬢と初枝を統べる生徒会の副会長だ。

 まるで、結ぶことが許されない禁断の片想いをする乙女だった。


「まあ兄妹だし振られるのは当たり前なんだけど」


 ひっそりと哀愁漂らせる美岬さんは物悲しそうにして言葉を告げる。多分だけど箕嶺さんが別居してる理由がそれにあるのでは。

 事は告げられない。単純に怖くて言える訳がない。


 身の毛がよだつ強烈で歪な愛。意識はあるのに向けられる情意は異常だ。

 一歩間違えたらストーカーになってたかもしれないのに。

 無謀だと分かっていても、手を伸ばそうとしてる美岬さんは本気だった。


「沢山の人に好きって言われたけど、なんか納得が行かなかった。やっぱり箕嶺の良いところを見たらピンと来ないね。箕嶺を越える人は果たしているのかな?」


 何かを試す視線を師翠に向けているが、目すら合わせなかった。

 会話の雰囲気の雲行きが怪しくなるまいと天也は振ってみせる。


「恋愛は誰でも出来ますからね。あ、俺は美岬先輩の事を応援しますから!」

「うふふ、ありがとう。優しいんだね」


 それが禁忌な恋愛である事なのに背中を押すしか方法がないのか。それとも空気を読んだのか。でもムードメーカーとして活かす立場がこんな大変なものだと妃芽は頷いては感心する。


 自分は変わらない方がいいと再確認した。


「あ、そうだ。みんなはこれからどうするの?」


 両手を叩いて話題を変える美岬さん。何故か勝手に仕切ってる。それでも反対する人が居ないだから任せてもいいと思う。


「俺はこれから風紀委員の仕事があるので。学校に戻ります」

「同意だな。とりあえず箕嶺先輩の観察でもしてやりますよ」

「へぇ、じゃあ人権侵害で刑罰されたいんだ……?」


 それぞれのやるべき事があって、限られた時間を活用するために努力をする。

 特に用事がないみ妃芽だが今回ばかりは美岬さんと一緒に居たくない。

 出来ればそのまま帰りたいのが本心である。


「……私は帰って休みます。多分この状態じゃ遊べないから」

「それなら私が送ってあげるわ」

「雛奈、ありがとう」


 理由があって良かった。本当はあってはならないのに今日だけは格別違う。美岬さんといるだけで体力があっても尽きてしまいそうだ。

 彼女と居ても何も見出すものが無いような気がしてならない。


「なるほどー、それなりに忙しいのか。少し残念」


 美岬さんには申し訳ないけど、これは致し方ないのだ。一度感じた恐怖は払拭出来ないしイメージが固定されている。とても優しい人なのだろうが。

 そんな迷える先輩を手を差し伸べる者がいた。

 これまでずっと黙っていた紗凪だ。


「それじゃあ、私暇なのでどこか遊びに行きませんか? 美岬さん」


 尋ねる口調はいつもの声音。向ける瞳の色も変わりない。

 けれど彼女から放つ雰囲気が少しだけ違う。淑やかに包まれた振る舞いはどこにも勇ましさはない。むしろ丁寧で目上の人には応対をそつなくこなしてる。


 紗凪は中学時代では秀麗学院の生徒だから特に違和感を持たない。

 いつもより大人しいけれど。


「じゃあ洋服とか見に行かない? なんなら映画館とか行ってみる?」

「お任せでいいですよ」


 綺麗な受け答えは人柄の良さでより引き立っている。

 ほんの少ししか紗凪の事を知らないでいる妃芽はまだ無知だと実感した。


 分かっているような気分は自らの毒になる。自惚れにならないために、念入りに思索を繰り返してみせる。二度と過ちを繰り返さないためにも。

 また明日から始めればいい。


「それじゃあ、ここでお別れだね。紗凪」

「……うん。体調に気を付けて」

「また明日」


 隣にいるのに、距離がとても遠かった。

 目指している方向性とその居場所が違うから、会うこともない。人はそれぞれの時間が存在して、共に紡ぐ空間はそこにない。

 離れ離れになっても何も変わらないと妃芽は信じてる。距離が広がっても見出してくれた人は明日になれば笑い会えると思うから。


 妃芽はゆっくりと立ち上がり、笑みを浮かべて紗凪に手をふわりと振った。

 体は言うことを聞いてくれるようだ。


「じゃあね諸君! いい青春を送ってくれたまえよ?」

「はい!」


 手を振る美岬さんと横に佇む紗凪。出入り口が二ヶ所あるためここでお別れ。


「先輩も楽しんでください!」

「紗凪をお願いします」


 天也は何故かビシッと敬礼。雛奈はピンとした姿勢をしてお辞儀をする。

 ただ師翠はメガネを掛け直すだけで美岬さんに対する反応は皆無。


 一瞬だけ浮かべた笑みの鱗片はどういう意図があったのか。あれほど警戒していたのだ。手の平返しに何かしらの目的があったと妃芽は考える。


 違う疑問がそこにあるという事だ。


 各々の背中姿を見せながら踵を返す。次の目的のためにその一歩が動く。

 誰かの秘めた心の気持ちはなんて知る方法はない。傷付くものが多い世界だとしても分かり合える日を待っている。

 妃芽が見据えてる居場所は明日への助力なのだ。


「良かったな。海霧元気そうだったしこれで解決だろ」

「まあ、そうかもしれないわね」


 少しだけの会話だったけど、紗凪の本音を聞けた気がした。どこか認めたくなかった部分を認めるための時間が紗凪にはに必要だった。

 でも一人で抱えるよりもみんなで一緒に分かり合える事が出来ると教えたから。

 明日には紗凪は戻ってくる。必ずと信じて。


 バッティングしないまま施設を出た妃芽達。本当に学校の用事がある師翠と天也はバスを利用するためその場から解散する事に。


「楠木、少しは体調管理しといた方がいいぜ?」

「分かってる」


 ちょっかいが難痒さがあるものの、天也なりの配慮であると分かっている。会話を繋げたり雰囲気を明るくさせたのは紛れもなく彼のお陰。

 連れてきて良かったと思う。これは使える。


「しっかし美岬先輩が居るとは思わなかったわー」

「……」


 一番気掛かりな部分、それは美岬さんの存在。

 憚るように現れて自由気ままに去っていく豪勢な先輩。歪んだ兄妹愛を告白してもさぞかし喜びに感じてる姿はただならぬ狂気を含ませていた。

 不気味と艶美を兼ね備えた人はどうしてこの場にいたのか分からない。

 考えるのが馬鹿馬鹿しくなる。


 外の景色はより一層と夕暮れに深みが掛かっていた。こちらに迫ってきそうな錯覚のある大きな白雲の光を差して。

 もう少しでこの空が暗くなるのかと思うと、時間が経つのはあっという間なんだと妃芽は寂然な所感に思いを(ふけ)る。ぼーっとしても時計の針はそこまで動いていないのに、一つの事に集中すると気付いたら時間を忘れてる。


 妃芽は器用じゃないから転々と物事をこなせない。

 誰だってそう、一人なら周りの事なんて蚊帳の外だ。


 どうしても夢中になるぐらい紗凪を動かすものがある。コンプレックスみたいな拘りが行動を促す。それが意外と身近な事だったりして。

 周りは知らないものだらけ。


 知らないもの、たからこそ物の価値を確かめることが出来る。念入りに時間を掛けて眺めるのだ。自分が必要になる物を厳選する手立ては。


 紗凪は一体どんな価値のあるものを見付けたのだろう。

 友達といる時間、とかだったらいいな。


 すると師翠がいる止まり場にバスが停車してきて、自動ドアが開く。人混みはそれほど無く空いてる。この時間帯では珍しい。

 師翠達は会話を中断を余儀なくされるが、乗り込む前に言葉を告げる。


「……気を付けてくれ」


 微かな間を置いて掛けてくれた言葉が温かかった。

 妃芽の悩みを打ち解けた時、促進して協力してくれた師翠。前向きな姿とほのかな微笑が瓜二つ重なって。何かが正しいのか知っていて、それを認める人。

 きっと向けられた言葉の中に、謎めいた意味が含まれていると思う。

 疑問が晴れないまま終わらせてはいけない。


「ありがとうこざいました」


 ぺこりと会釈してみせて手を振る妃芽に、頷く師翠と笑顔の天也。完全に自動ドアが閉まり再びエンジンを稼働する音を響かせる。バスは動き出し、その場から離れるように快走していく。


 それを見届けた妃芽達もまた別の場所へ歩み寄るため、進む。


「……なにかと騒がしい一日だった気がするわ」

「だね」


 それはもう目紛しいもので、先の見えない展開に転んでしまう。

 誰が正義なのか分からない無法地帯。

 でも、自分自身を見失ければ大丈夫。相手に決めてもらう脆さは要らない。何が正義がなんて己が決めるだけの事。


 それと妃芽には信じてくれる人達がいる。

 僅かな会話でも繋がることを証明して、納得がいく自分がいた。背中を押してくれる人の存在だけでも妃芽は頑張れるさその人のために助けたい。


 これからも困難のような騒がしい日々が続いていくのなら。

 本当の答えを見付けるまで諦めない。絶対に、隠された真実を暴くまでは。

 繰り返しに妃芽は眩しいこの街の景色を眺めた。

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