0-2 プロローグ
短いですがよろしくお願いします
「人は害虫のようだ。いやらしく生き、欲のままに行動し、醜く果てて逝く。」
彼は、夜の書斎でひとりつぶやいた。書斎には彼一人であるし、外にも人の気配はない。普段ならば書斎の前には夜であろうと側仕えのものが最低一人は立っている。では、なぜ興に限ってそれがいないのか。答えは簡単で、この書斎の主である彼が人よけの魔術を展開しているからだ。彼はこの日のために様々な準備を行ってきた。自らの血を毎日少量づつ抜いていき、魔術触媒を作成した。その触媒は魔法陣を描くために用いられる。それによって描かれた魔法陣は今彼の足元にある。さらに、その魔法陣の近くには供物となる数十匹の魔獣の血と骨がおかれている。
彼は、黒いローブをはおり魔法陣の中心へと歩み寄った。そして、両の手を胸の前で指が絡むように握り合わせ、目をつぶり詠唱を始めた。
「"それは原初より定められし約定に従いしもの。絶対にして無二の存在にして魔を司るもの。全ての生命はその前に膝まずき、そのものはその全てを飲み込む。果たされるは約定。定められしは破滅。我ここに存在を捧げん『創魔変転』"」
その詠唱が終了すると同時に魔法陣から黒い霧が発生し、彼を包み込んだ。その黒い霧は、そのまま部屋中に充満し供物を呑み込んだ。そうすると黒い霧は紫の光を発しながら収束を始めた。それは、男が立っていた場所で繭のような形状になった。それからしばらくすると繭にヒビが走った。そしてそこから変わり果てた彼であったものが出てきた。
彼であったものは2mほどの上背で肌は全ての光を吸い込んでしまうほどに黒い漆黒、体つきは細身ながら筋肉質で無駄がい一切ない完璧な肉体。瞳は紅にそまり、側頭部からは巻角が生えており、背中には黒い翼が生え、髪は銀に染まり長さは腰ほどまである。その姿は伝説に登場する間の頂点たる存在そのもののようである。
彼は、自身の姿を見て歓喜の声を上げた。
「ククク......アーッハッハッハ!!!!
思惑通りだ。さあ、この世の終焉の始まりだ。全てに等しくこの私が終わりを告げようじゃないか!! ああ、やっとこの地獄は開放されくのだ!!
フハハハハハハ!!!!」
彼の笑い声は、夜に響き渡った。彼は、シック王国の王であった。彼の名は「ロクブンダ」闇に取り憑かれし凶王。シック王国はこの日その歴史に幕を下ろした。全ての人間は彼に殺し尽くされ、その骸からは彼の下僕たる魔獣が生まれた。
彼はこの日を境にシック帝国と名を改め、世界に宣戦布告をし、世界の終わりを告げた。各国はこれを受け旧シック王国領を魔国領とし、ロクブンダを「魔王」と認定した。
ここに、人類の新たなる戦いの火蓋は切られたのだ。
次回は、ナマケ君が登場します。
面白いと思われた方は、今後もよろしくお願いします。