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DevilSleyer  作者: ゼロセフ
6/6

DevilDog


あれから数日後、


シアンとアンナ、ルーカスはいつも通り任務にかかっている。


猪ノ国


ナディア町


今回の任務はデビルランクD<デビルキャット>の討伐。


「はぁはぁ…。


さすがにランクDはちょっと厳しいかな…」


アンナが流れる頬の汗を拭いながら、そう口にした。


「普通の班なら低いランクから徐々に強いデビルを倒していくことになるが、


なにせ、お前らは0班だからな。


来た任務は断れない。


自分の身分を呪うんだな」


シアンが意地悪そうにそう言い放つ。


それにルーカスは悲しそうにため息をする。


「もう、ゼンはいなんだからね。


頑張らないと」


「はぁ。


そうだね…」


アンナもため息をする。


「ニャャャャニニニャャ!!!」


そうしているうちにデビルキャットが鋭い爪をアンナに向かって降り下ろす。


「いやっ!」


そして、アンナは間一髪それを避けることに成功できたようだ。


「アンナちゃんあとは任せて!」


ルーカスはそう言って、攻撃後の体勢の崩れたデビルキャットの頭をめがけて≪腐敗したハンマー≫を振り下ろした。


「ワァン!!!」


痛々しいデビルキャットの鳴き声がその場に響く。


そして、その場で力なく崩れるように倒れてしまった。


「た、倒せたのか…?」


「まさか…、


初勝利ぃ!?」


アンナとルーカスが、顔を見合わせながら、微笑み合う。


「お前ら!


油断するな!」


しかし、現実はそう甘いものでもなく


デビルキャットは起き上がったようだ。


それを忠告するためにシアンは叫んだが、どうやら手遅れらしい。


二人がデビルキャットの存在に気づいたときには、もう攻撃される一歩手前まで来ていたからだ。


「ニャャャャ!!!」


鋭い両爪がルーカスとアンナを襲いかかる。


そして、その体を切り裂く数ミリのところで、その手は不自然に止まった。



「た、助かったのか…」


「とりあえず、一旦ここから離れよっ!」


「うん!」


二人はできるだけ、遠くまで距離をとった。


そして、改めてその場の状況を確認することにした。



「ニ…ャャ…ャ」


どう見てもデビルキャットが怯えている様子だ。


「ランクDのデビルキャットが怯えている…」


「どうなってるのぉ…?」


その様子に二人は驚きを隠せないでいる。


「お前ら、撤退だ…」


シアンが静かにとそう呟いた。


「ええ?


まだいけるよぉ」


「そうだよ。


もう油断しません」


二人は撤退に納得できない様子だが、すぐにそう言われた理由を知ることとなった。


「バルルルルバルルルルルバルルル……ワアァーーーーーンンンンっ!!!!!」


地響きのするような低いうなり声の後に、突然耳を壊すような高い鳴き声がその場に轟いた。


「そういうことですね…」


「………………」


ルーカスはその鳴き声のしたほうへ目をやると納得をしせざるを得なかった。


「刺激しないように、ゆっくりと逃げるぞ」


シアンはまたもや小さな声でそう呟き、そして、先頭立ってその場からゆっくりと離れていく。


それにルーカスも付いていくが、アンナは棒立ちしたままである。


「どうかしたの?」


その様子を変に思い、ルーカスはアンナの近くまで駆け寄った。


「おい、早くしろ」


状況が状況なので、シアンも二人を急かす。


しかし、あまり意味がないようだ。


アンナは放心状態で突っ立っているだけだから。


「ねえ、アンナちゃん!


ここは危ないよ!早く逃げよう!」


そんなアンナにルーカスは必死で呼び掛けるが、全く反応はなし。


「どうしたんだろう…」


「ルーカス!


アンナを担いで、早くここから逃げるぞ!」


「あ、…はい!」


そして、ルーカスは言う通りにアンナを肩に担ぎ上げ、ゆっくりとその場を離れた。


「ワァァァン!!!」


「ニャャャャ!!!」


後ろを振り返ってみると、しばらくの戦闘の後


デビルキャットは無惨に食いちぎられている姿が見えた。


ルーカスはそれに恐怖し、震えながらシアンの背中を追いかけていく。


そして、しばらく追いかけると


「よし、ここなら安全だろう」


という声と共に、シアンが近くの岩に腰かけた。


ルーカスも一息をつき、アンナをその場に寝かせ、砕けるように腰を下ろした。


「な、ななんですか?


ああの、デビルは…?」


恐怖のあまり震えた声でシアンにさっきの出来事について聞く。


「デビルドッグ…」


そして、意外にもその質問に答えたのは今まで放心状態だったアンナだ。


「アンナちゃん!


大丈夫!?」


「うん。


もう平気」


「そうなの?


良かったぁ」


ルーカスはアンナが無事であることを確認できてほっとする。


「デビルドッグを知っているのか?」


シアンがまだ疲れの残っていそうなアンナに質問をした。


「うん。


ちょっとね」


「そうなんだ。


僕でも知らなかったよ…」


「当たり前だ」


シアンが後頭部を掻きながら、言葉を続ける。


「デビルドッグなんて、一般的には全く公表されていないデビルだ。


あまりの強さと、狂暴さからデビルスレイヤー…


さらに上層部クラスでないと知り得ない情報だ」


「そうなんだ。


僕でもまだ知らないデビルがたくさんあるんだね」


「そうだ。


しかし、それよりどうしてそんな情報を新米のお前が知っている?」


シアンはアンナに鋭い視線をやりながら質問をする。


「…………」


しかし、アンナは答える気は無いらしい。


「そうか。


とりあえず、一旦支部に帰るぞ。


デビルキャットの討伐は果たせたんだ。


文句はないだろう」


「そうだった…」


ルーカスはあの恐ろしい光景を思い出し、そして、身を震わせた。


「そういうことだ。


さっさと帰るぞ」


「はい!」


「………」


シアンの号令にルーカスは返事をし、アンナは黙ったままでいる。


それをおかしいと思いながらも、シアンは黙っておくことにした。









――――――「見つかっちゃった…」








「ん?


何、アンナちゃん?」



「なんでもないの。


気にしないで」


アンナはいつもの笑顔でそう言い放った。



≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


猪ノ国


悪魔殲滅組織


第3号病室にて


殺風景なその部屋には、真ん中に一つベッドが置かれている。


「久しぶり…」


そして、そのベッドに向かって一人の女が歩み寄った。


近くの椅子に座り、そのベッドで寝ている男の顔を見つめる。


「…………」


しかし、その男からの返事はないようだ。


「今日はねデビルキャットの討伐任務をしたよ。


ランクDのデビルなんだけど、ルーちゃんと一緒に倒すあと一歩までいったんだよぉ?


本当なんだからね」


その女、もといアンナは優しい笑顔でそう口にした。


「…………」


しかし、やはりその男からの返事は無いようだ。


色白で染められたその男の顔からは、生気が感じられない。


静かなその病室は、点滴の落ちる音だけが妙に際立っていた。


「あたしね、ずーーっと昔に友達がいたんだ…」


しかし、アンナはそれを気に止めることもなく言葉を続けた。


「子供の頃まわりと馴染めなかったあたしの唯一の友達…」


アンナの顔が次第に悲しみをおびていく。


「あたしはその唯一の友達を裏切ったんだ…。


そして、その友達が今日あたしの元へまたやって来た。


あたしを殺したくてしょうがないんだね」


アンナは座っていた椅子から立ち上がる。


「あたしはね、今までずっとその友達から逃げてきた。


逃げて逃げてデビルスレイヤーに入った。


ここならあたしを守ってくれるだろうって。


卑怯だよね…


自分で蒔いた種なのに」


アンナはもう一度その男の顔を見ると、悲しみの表情が一変暖かみのある笑顔へと変わった。


「だけど誰かさんのせいでもう卑怯でいるの嫌になっちゃった。


笑って人のために命をかけるおバカさんのせいで、あたし立ち向かう勇気ができたよ」


アンナは出口まで歩き、そして扉を開けた。


「もう行くね。


バイバイゼンちゃん。





ありがとう」





その言葉を残して、彼女の背中は扉の向こうへと消えた。




そして部屋にはまた点滴の落ちる音だけが鳴り響くこととなった。



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