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DevilSleyer  作者: ゼロセフ
3/6

初任務


『デビルにはそれぞれランクが決められている。


S~Gランクまで様々だが、今回の任務はGランクのデビルフロッグの討伐だ。


名の通りカエルが悪魔病にかかった魔物だ。


ゆえに比較的簡単な任務となるだろう』


………


「(そう聞いていたが、信じるべきじゃなかったよぉ~)」


ルーカスは巨体を揺らしながら、デビルフロッグの攻撃をさけていく。


「ルーちゃん大丈夫ぅ?」


アンナがそんな様子のルーカスを心配そうに見つめている。


「アンナ、手助けにいくぞ!」


そして、ゼンは支給された武器≪錆びた刀≫を握りしめて、ルーカスの元へ走った。


「た、たすけてよぉ!」


ルーカスは、自分の体のみならず、持っている≪腐敗したハンマー≫の重さで中々デビルフロッグを突き放せないでいる。


「待っててねぇ~。今すぐフロッグちゃんを倒すんだからぁ」


そして、アンナは持っていた≪壊れかけ散乱銃≫を構え、引きがねを引いた。


ドーンっと重たい音が響くと共に、ゼンの頭のそばに弾がかすめていった。


「お、おお…


ア、アンナさ…ん?」


ゼンは死の一歩手前まで味わった恐怖で全身に冷や汗をかいていた。


「ごめ~ん。狙いが定まらなくってぇ。この銃壊れてるのかなぁ?」


「た、助けてよぉ~!」


「血が止まらない。オレこんなところで死ぬのかな…」


3人はバラバラにそれぞれのことを心配していて、まさに地獄絵図とも呼べる状態である。


「フロフフロロロフロロロっ!!!」


そして、その隙にデビルフロッグは跳躍をし、ルーカスを目掛けて目に見えぬ速さで水の弾丸を撃ちはなった。


「っ!!!」


ルーカスは、その場に立ち止まって、そして、死を覚悟した。









―――「ルーカスー!!!」


ゼンが、ルーカスを吹き飛ばし、代わりに水の弾丸の軌道に入った。



ルーカスは一瞬だけだが、ゼンの顔を見ることができた。




その顔は確かに、笑っていた。




「面倒くせえな…」


水の弾丸は真っ二つに切り裂かれ、そして、そのままデビルフロッグの額に鉄の弾丸が撃ち込まれた。


デビルフロッグは、力なくその場で倒れて、そしてビクともしない。


全ては一瞬の出来事であった。



「お前ら何のためにデビルスレイヤーになったんだ?」


ことを把握できないまま、ゼンは目の前の人影に目をやった。


そしてそこには、右手に拳銃、左手に片手剣をもったシアンの姿があった。


「0班だからできないやつらだとは思っていたが、まさかここまでとはな。


今まで見た中で最低のチームだ」


シアンは眉間にシワを寄せながらそう言いはなった。




「まずは、ルーカス


お前は、殺されに来たのか?


なぜ戦わないんだ?」


ルーカスは申し訳なさそうに、下を向く。


「そして、アンナ


お前は銃使い方がまるでなっていない。


正直子供レベルだ」


アンナも思い当たる節があったのか、


素直に反省することにした。


「そして最後に、MQ‐404


お前が一番酷い。


お前、自分の命をなんだと思っている?


お前みたいに自分の命を投げ出して仲間を救おうとするやつは何人も見てきた。


そして、そいつら皆俺の前から一人残らず殺された。


お前みたいなやつは、正直早死にをする。


絶対にだ」


シアンは珍しく、怒りに満ちた表情をしていた。



「もう一度聞くぞ?



お前らは何のためにデビルスレイヤーになったんだ?」



そして、その質問に3人はあからさまに表情を変えた。


それ相応の理由が有るのだろうか。












―――――「いやぁー!!!たすけてぇ!!!!!」




突然人の声がその場に鳴り響いた。


助けを呼ぶ声だ。


「お、おい…」


そして、それを聞き付けたと同時に3人ともすぐに声のする方へ走って向かった。


「ったく…」


シアンは面倒だと思いながら、仕方なく付いていくことにした。




「いやぁー!!!!!」


一人の女性が、デビルフロッグに追いかけ回されている。


その女性はかなり精神的にも、体力的にも疲労しているように見える。


そして、そのためか女性は走っている最中につまずき、その場で倒れてしまった。


追いかけていたデビルフロッグはその隙に一気に距離を縮めた。


空を飛んで、水の弾丸を女性に放つ。


「いやぁーーーーーー!!!!」












「殺させないっ!」


ゼンはそう叫びながら、剣で水の弾丸を切り裂いた。


真っ二つにされた水の弾丸は、女性のそばで力なく崩れて地面に落ちた。


「ゼンちゃん!


この人は私に任せて、フロッグちゃんを食い止めて


その隙に避難させるから!」


「ゼン!


僕も手伝うよ!」


「了解。


行こうルーカス!」


アンナは女性の肩を抱きながら、できるだけ遠くへ避難させることにした。


そして残された二人はデビルフロッグの相手をすることとなった。


「フロフフロロロフロロロっ!!!」


デビルフロッグはエサを横取りされたからか、怒り狂ったような表情だ。


「厄介だね」


ゼンが頬に汗を滑らせながら、そう呟いた。


「ゼン。


今から僕の言うことを聞いてほしい。


僕はデビルについて、詳しいんだ。


正直誰よりも知っていると自負している。





……僕に作戦がある」


ルーカスはいつにない真剣な表情でそう言いはなった。


ゼンはその提案に静かに頭を縦に振った。


「とにかく、僕が合図したら


あいつの正面を全力で切って欲しいんだ!」


「切る?


でも、このボロ刀じゃデビルフロッグの皮膚を切ることはできないよ?」


「大丈夫だ。





僕を信じてくれ」


ルーカスはそういうと、小さな岩を見つけては直ぐにそこへ向かった。


「フロロロロロロロ」


デビルフロッグは突然の動きをしているルーカスを警戒して、その場で見つめるだけでいる。


「よし、これさえあれば」


ルーカスはそういうと、小さな岩を拾い上げ、そして、デビルフロッグを目掛けて思いっきり投げつけた。


岩がデビルフロッグに向かって飛んでいく。


「フロロロロロロロロロロロ!」


それにびっくりして、デビルフロッグは反射的に岩を飲み込んでしまった。


「効くはずがないよ。


どうしてそんなことを?」


ゼンはルーカスの奇妙な行動に疑問をもたずにはいられなかった。


そして、さらに疑問を持つことになる。


「今だ、ゼン!


真っ正面を切るんだ!」


ルーカスの合図が思わぬタイミングで出てきてしまった。


「あ、ああ…」


ゼンは戸惑いながらも、しかし、ルーカスを信じることにした。


デビルフロッグに向かって一直線に走る。


「おらあああああ!」


そして、刀を振り上げ、デビルフロッグの真っ正面に向かって力一杯に下ろした。


「フ、フロロロロフロロフロロロロロ!!!!!!」


そして、気がつけばデビルフロッグは悶え苦しみながら、大量の血を吹き出し、そのまま倒れてしまった。


どういう事なのか全くわからないまま、どうやらデビルフロッグを倒せたようだ。


「ど、どういうことだ?


このボロ刀で切れるはずがないのに、簡単に倒せてしまった」


ゼンは目の前の現実に戸惑うばかりだ。


「皮膚は切れないなら


もっと柔らかい場所を切れば良いだけだよ」


ルーカスが、得意気にそう言い、笑顔を隠せずにいる。


「柔らかい場所?」


「そう。








胃袋さ」


「い、胃袋!?」


ゼンは驚きを隠せないのか、大げさに驚いて見せた。


「うん。


デビルフロッグは体内に異物を取り込んだとき、それを吐き出そうと一瞬胃袋を口から出すのさ。


だからその一瞬をたたっ切れば、倒せるんじゃないかなと思ったんだ」


「おお!!!


そうなのか!


ルーカスはすげえな!」


ゼンはルーカスを尊敬の眼差しで見つめている。


「そ、そんなことないよ…」


「いや、本当にすごいよ!


オレは頭が悪いからさ、素直に尊敬しちゃうよ」


「う、うん。


ありがとう」


ルーカスが照れからなのか、後頭部をかぎはじめた。


「おーい、皆ぁ。


避難終わったよぉ~。


そっちはどお?





…って、倒してるしっ!」


アンナがデビルフロッグの倒れている姿を見て、オーバーリアクションで驚く。


「すごいねぇ。


ゼンちゃんがやったのぉ?」


「いや、ルーカスが機転のきいた作戦を作ってくれたからなんだ」


「ええ!!


ルーちゃんがぁ!?


ルーちゃん実はすごいんだね!」


「い、いや。


そんなことないよ…」


3人はしばらく、それぞれの活躍について語り合い互いに褒め合う時間を過ごした。


そして、なんだか3人の中で確かな絆の芽生えができているような気がした。






「もう、褒め合い大会は充分だろ?」


そして、いつの間にかシアンが3人の前に現れていた。


「あっ!


シーちゃん!」


「シーちゃん?


なんだその呼び名は」


「シアンだから


シーちゃんだよぉ~」


シアンは頭を抱え、頭痛を感じる気がしていた。


「まあ、いい…。


とにかく、俺のお前らに対する評価は少し間違っていたようだ」


「えっ、それってどういうことなのぉ?」


シアンは一回咳払いをして、そして、口を開けることにした。


「まずはルーカス、


お前は臆病なところがあり、正直戦闘に関して言えば全く期待できないが、



しかし、デビルに対する知識と


それの活かし方は中々に役に立つものを持っている。


それを磨けば、いつかはこの班の絶対的な頭脳の素質を得られるように思う」


ルーカスはそれを聞き、そして、嬉しさからなのか、目に涙を浮かばせた。


「そして、次にアンナだが


銃の腕前と、その態度はさておき、


お前は状況判断がしっかりできるようだな。


的確な指示と行動力には光るものがあり、考えたくはないが、リーダーとしてこの班を引っ張る日が来るかも知れん」


アンナはリーダーの素質があることに驚き、そして嬉しさのあまり、やったーと叫びながら数回喜びのジャンプをやって見せた。


「そして、最後にMQ‐404だが…













正直、お前には光るものが見当たらない。


さすが、デビルが徘徊している所に住んでいただけあり、身のこなしは悪くはないが


しばらく特訓すれば得られないほどではない。


知識は乏しく、剣の腕前も良いところが見つけられない。


悪いがお前はこの班で一番の足手まといのように思う」


さっきまで賑わっていた空気が、一瞬にして凍り付いた。


皆、ゼンに気を使い、チラッと顔色を伺うが、しかし、そこには予想外の表情が見てとれた。



「ありがとうございます。


オレも二人に負けないように頑張らないとね」


ゼンは笑顔でそう口にした。


≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒




「どうよ!


俺様のお気に入りのデビルスレイヤーの初任務は?


結構イカしてるだろ!?」


悪魔殲滅組織猪ノ国支部のとある休憩室にて、長髪の派手な男と、シアンが会話を弾ませる。


「イカしてると言うよりも、イカれてます」


「あっははははははは!!!


うまいこと言うねぇー」


長髪の派手な男は手を叩きながら、盛大に笑ってみせた。


「何なんですかあいつは?


俺は色んなやつを見てきましたが、あんなに他人のために動くような、命知らずな男は初めてです。


ヒーローなんてこのご時世に流行りませんよ。


あれは確実に早死にします」


シアンは少し興奮気味に感情をあらわにする。


「そうだな。


あいつは、間違いなく早死にするタイプだ。


でもよう、こんなご時世だからこそ、ああいうやつは必要なんだ。


あいつにとって敵も見方も関係ねえ。


救える命がありゃあ、真っ先にそれを救おうとする。


真っ直ぐなバカ野郎さ」


長髪の男は、お手上げと言わんばかりに両手を広げ、あきれ笑いをして見せた。


「だとしても、限度があります。


あいつは今日2度も迷うことなく、自ら人のために盾になったんですよ。


正気とは思えません」


シアンは頭を横に振りながら、呆れたようにため息を吐き出す。


「あっはは!


そうか、2度もか!」


「笑い事ではありません!」



「あははっ!


そうだな。


でも、お前にもわかる日が来るさ。


あいつの良さがな。


それに、俺はあいつがいつか、この腐った世の中を変えてくれる気がしてならねえんだ」


男は、コーヒーを一飲みすると、座っていた席から立ち上がった。


「ダースさんがそこまで惚れ込む男だとは思えません。


俺は絶対にあいつを認めない」


シアンは右手の拳をワナワナと震わせながら、強く握りしめていた。


「そうだな。


お前がああいうタイプを嫌うのも無理はねえ。


だがな、お前もきっといつかは分かってやれると信じてる。


お前にもきっと、いつかあいつの笑顔に惚れ込む日が来るさ」


ダースは笑いながらそういうと、休憩室から出ていってしまった。


シアンはその背中を見つめながら、そっと


「一生分かることはない。


絶対にだ」


と誰にも届くことのない言葉を呟いた。











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