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妻を満たせなかったと気づいたので、別れることにした

作者: 南鉄
掲載日:2026/03/26

※本作は作者の構想をもとに、AIの補助を受けて執筆しています。

※また、本作はNTRというジャンルに対する個人的な解釈と応答を含みます。

夜の街は、思っていたより明るかった。


少し離れた場所から、夫はその背中を見ていた。


見慣れたコート。歩き方。

そして、隣にいる男に向ける、やわらかい視線。


――まだ、引き返せるかもしれない。


そう思いながら、足は止まらなかった。


二人はそのままホテルへ入っていく。


夫は数秒だけ遅れて、その後を追った。


責めるためじゃない。問い詰めるためでもない。

ただ、最後まで信じるために。


エレベーターの表示を見上げる。


扉の向こうで何が起きているか、

想像しないようにしても、頭から離れなかった。


それでも、怒りは湧いてこなかった。


ゆっくりと息を吐く。


もう、十分だった。


胸に来るはずだった痛みの代わりに、

奇妙な感情が残る。


――ああ、そうか。


彼女は満たされていなかった。

そして、自分では埋められなかった。


今、その代わりを見つけた。


それだけのことだ。


「……よかった」


小さく、言葉が漏れた。




その夜、妻は男の隣で横になりながら、天井を見ていた。


確かに、満たされていたはずだった。


求められて、応えて。

そこには熱があった。


けれど。


ふとした瞬間に、思い出してしまう。


違う、と思ってしまう。


何が、とは言えない。

ただ、どこかが噛み合っていない。


その違和感に気づいた瞬間、

それを無視しようとする自分に、わずかな嫌悪を覚えた。






数日後。


食卓は静かだった。


子供が寝た後の、遅い時間。


「話があるんだ」


「離婚しよう」


空気が、わずかに揺れる。


「……どうして」


夫は少しだけ考えてから答える。


「君が満たされていないまま一緒にいるのは、良くないと思う」


「そんなこと……」


言葉が続かない。


「責めるつもりはないよ」


穏やかな声だった。


「俺では足りなかった。それだけだ」


否定できなかった。


離婚の話は、驚くほど静かに進んだ。


ただ一つだけ、最初から決まっていたことがある。


「子供のことは、二人でやる」


それ以外は、何も残さない。


判を押す直前、妻の手が止まる。


「……待って」


声が震える。


「やり直せない?」


あの夜のこと。

その後に残った違和感。


すべてが一瞬で繋がる。


夫はすぐには答えない。


少しだけ時間を置いてから、静かに言う。


「やり直すことは、できると思う」


一瞬、光が差す。


「ただ」


「それは“俺と”じゃない方がいい」


理解が追いつかない。


「見たから」


血の気が引く。


責められない。

怒られない。

ただ、理解されている。


それが一番、逃げ場がなかった。


判が押される。


小さな音で、すべてが終わった。






浮気相手との関係は、しばらく続いた。


けれど長くは続かなかった。


喧嘩をしたわけでもない。

壊れたわけでもない。


ただ、どこかで続ける理由がなくなった。


「ごめん」


と彼は言った。


「ううん」


と答えた。


それだけで終わった。




残ったのは、満たされなかったという事実だけだった。






仕事で失敗した日。


スマートフォンを握る。


連絡先を開く。


止まる。


――頼れば、楽になる。


けれど、閉じる。


自分でやる。


初めて、自分で選んだ。






「ねえ」


帰り道、子供が聞く。


「うちって、変?」


少しだけ考える。


「ちょっとだけね。でも、悪い変じゃないよ」


「そっか」


それで終わる。


春の朝、校門の前。


「いってきます!」


「いってらっしゃい」


声が重なる。


子供の背中が見えなくなる。


少しの沈黙。


距離が、ほんの少しだけ近い。


昔の癖で、手を伸ばしそうになる。


止める。


それでいい。


「……元気そうだな」


「うん」


少し迷ってから、会話が始まる。


「最初はさ」


彼女が言う。


「なんでこうなったんだろうって思ってた」


「でも今は分かる」


「満たされなかったのは、誰かのせいじゃなかった」


静かな時間。


「私が、自分で満たせなかっただけ」


夫は小さく頷く。


「……そうか」


それで十分だった。


校門の奥で、子供が手を振る。


二人は同時に手を振り返す。


並んでいる。


けれど、戻らない。


「じゃあ、また連絡する」


「子供のことでな」


「うん」


二人は別々の方向へ歩き出す。


振り返らない。


ポケットの中の小さな箱に触れる。


開かない。


ただ、そこにある。


前を見る。


誰かとすれ違う。


名前も知らない誰か。


それは、過去ではない。


満たし合う関係は終わった。


けれど、


選び直すことはできる。


誰かに奪われたわけじゃない。


ただ、


選ばなかっただけだ。


そして今、


それぞれが、自分で選んでいる。


それが、


三人の形だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この話は、よくある「奪う・奪われる」という関係の先にあるものを、

自分なりに考えてみたものです。


誰かが正しいわけでも、間違っているわけでもなく、

それぞれがどう選ぶのか、という話として書きました。


読んで何か感じるものがあれば、それが答えだと思います。

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