誰も悪くない
短編です
中学生の頃好きだった男の子からもらったキャラクターもののキーホルダ―。可愛らしい猫をモチーフにしたもので、ご当地ものだったからあまり有名なキャラではないけれど、私の好みにドンピシャだった。そんな私の好みを熟知していた彼が、初めてくれたキーホルダー。高校生になってカバンが変わっても、ずっとつけていたからか、金具が少し緩んでいたみたい。家に帰ったら、有るはずの場所にそれがなかった。
「なんでっ」
朝は有った。学校に行ってる間はあったはず。部屋中探したけど見つからない。登下校の途中で落としたのかも。
「ちょっと出かけてくる!」
「もう遅いんだから明日にしておきなさい」
「でもぉ!」
「今探しに行ったって見つからないわよ」
母にそう言われたけど、家の周囲だけでも探しておきたい。懐中電灯を持って家から駅までの道を探す。でも見つからない。お気に入りだったのに。
高校は別々になってしまったけど、彼とは未だに細々と連絡が続いている。お互いに連絡が密なほうではないから、返信が遅くても気にしない。でも、貰ったものをなくした何て言えない。申し訳なくて泣けてくる。
半べそをかきつつ探し回ったけど見つけられず、母から夕飯が出来たから帰ってくるようにと連絡を貰ってしまった。仕方がない、明日の登校の時にでも探そう。
結局翌朝の登校時には見つけられなくて、今日の私の気分は最悪。一日中あのキーホルダーの事ばかり考えていた。休み時間の度に学校中も探したし、先生にも落とし物が届いていないか確認したけど収穫なし。
友達が部活に誘いに来たけど、断った。私には使命があるんだ。顧問には小さく嘘をついて、私は下校時に通る道をくまなく探し回った。
排水溝の中、道の端、ちょっとした草むら、公園、交番。通る道々、気になるところは全部見た。学校から最寄り駅までは見つけられなかった。もちろん駅員さんにも落とし物が届いてないか確認してもらったけど、ガッカリする返答しか返ってこなかった。
しょんぼりした気持ちを抱えたまま、最寄り駅からの帰り道、よく行く神社に両手を合わせ、「キーホルダーが見つかりますように」と祈って帰路についた。
すると、どうだろうか、道中のポストの上にちょこんとそのキーホルダーが座っているではないか!
「あっ・・・あった!!」
じわじわと涙が出てきた。神様ありがとう!キーホルダーの金具が壊れてる!直さなきゃ!
浮足立つ心を携えたまま、私はまた駅の方へ。百円均一で金具の部分を買って、帰りにあの神社にもう一度お参りしに行こう、と考えていると、正面のカフェが目に留まった。カフェの窓際の席に、彼がいた。
「え、なに?ラッキーなんだけど!」
心の中でもう一度神様にお礼を言って前髪を直しつつカフェに近づくと、彼の正面に、彼と同じ高校の制服を着た女の子がいることに気が付いた。
「・・・え」
彼とその子は、なんだか楽しそうに話している。あ、手が触れた・・・。えっと・・・これは、どういうこと?
頭が混乱する。彼が窓の外を見たような気がして、思わず隠れてしまった。
手に持っているキャラクターが急に憎らしく見えてきた。
——ぬぐぐ・・・——
悪くはないんだけど・・・




