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ガチャ廃人のガチャ運営  作者: ペロロンチーノ


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9/11

改善と新たな試み

白紙のままの改訂案を見つめていると――

執務室の扉が、静かにノックされた。


「……入れ」


扉が開き、

現れたのはギルドガチャを考案してきたシンだった。


いつもと変わらぬ無表情。

だが、その視線は、

すでにこの部屋の空気を把握している。


「……話は聞いているか」


ギルドマスターは、

紙から目を離さずに言った。


「ええ……」

「トラブルの件ですね」


「正直に言おう」


ギルドマスターは、

椅子に深く腰を下ろす。


「このままでは、まずい」

「回数制限を設けるべきか」

「あるいは、運営そのものを……」


そこまで言って、

言葉を切った。


自分でも分かっていた。

今更、運営を辞めるという選択が

ギルドとして現実的でないことは。


本来なら、

それでも止めなければならないのだが――

決めきれない自分が、

ひどく情けなかった。



シンは、

一拍置いてから口を開く。


「その前に」

「一つ、提案があります」


「……提案?」


ギルドマスターは、

ようやく顔を上げた。


「ガチャを始めたばかりの今」

「ここで規制を始めれば、反発は避けられません」


「……分かっている」

「だが、それでも何かしらの対策を打たねばならん」


「ですので」


シンは、

机の上に一枚の紙を置いた。


そこに記されていたのは、

簡潔な一文。


【期間限定・属性別ピックアップ】



「……これは?」


「ガチャの中身の調整です」


シンは、

淡々と説明を続ける。


「火属性魔剣が出やすい期間」

「氷属性魔剣が出やすい期間」

「雷、風、闇、聖――属性ごとに分けます」


「……なぜ、そんなことを?」

「余計に冒険者を煽るだけだろう」


ギルドマスターは、

眉をひそめた。



「今の冒険者は」

「“当たりが欲しい”」

「“俺も楽して大金を得られるかもしれない”」


「そういう衝動だけで回しています」


「だから」

「止まらない」


シンの言葉は、

冷静で、容赦がなかった。


「ですが」

「敢えて強力な魔剣で、狙いを限定すれば――」


彼は、

紙の一行を指でなぞる。


「“今は回さない”という選択肢が生まれます」

「そうすれば、今よりは確実にマシになります」



ギルドマスターは、

はっとした。


「……待つ、という発想か」


「はい」


「今は」

「AランクだろうがBランクだろうが」

「何が出てもいいから、金のために回す」


「ですが」

「ダンジョン攻略を目的とする冒険者は、必ずこれに食いつく」

「そして、目当ての属性でない期間は」

「自然と手を止めます」



「……結果として」


ギルドマスターは、

ゆっくりと言葉を継いだ。


「比較的まともな冒険者が」

「溶かす金は、減る」


「ええ」

「ギルドとしても、そういった冒険者には活動してほしいでしょう」


シンは、

肯定も否定もしなかった。



「規制ではない」

「だが……誘導だな」


ギルドマスターは、

小さく苦笑する。


「人の欲を正面から止めるのではなく」

「整理させる、か」


「ええ」


「完全な解決ではありません」

「ただ――」


シンは、

一瞬だけ言葉を区切った。


「これで、しばらくは落ち着きます」

「ギルド側の対策としては、十分でしょう」



しばし、

沈黙。


やがて、

ギルドマスターは白紙の改訂案から、

その紙へと視線を移した。


「……回数制限などは」


「その後でも、遅くありません」


「……なるほどな」



「……お前は」


ギルドマスターは、

低い声で尋ねた。


「最初から」

「ここまで、想定していたのか?」


シンは、

わずかに目を伏せ――


「人は」

「欲には、勝てません」


「目の前で、自分と同じ立場の人間が得をすれば」

「次は自分かもしれない、と思う」

「その欲には……終わりがないんです」


それだけ答えた。



ギルドマスターは、

深く息を吐いた。


「……まずは、各種魔剣の確率アップか」


机の上の白紙は、

まだ埋まらない。


だが――

別の紙が、静かに重ねられた。


【次回ピックアップ案:火属性魔剣】



その頃、ギルドホール。


掲示板に貼り出された

その告知を見て、

冒険者たちは口々に言う。


「魔剣の確率が上がるのか」

「あそこの階層は火属性がないときついからな」

「無闇に引くより、待つ方が賢明か」


――そう言いながら。


その目は、

決して冷めてはいなかった。


回数制限が来る前に。

本当の規制が下る前に。


欲は、

形を変えて――

静かに、燃え続けていた。


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