表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガチャ廃人のガチャ運営  作者: ペロロンチーノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

徐々に狂っていく冒険者

――七日目。


ギルドホール。

もはや見慣れた光景になった人だかりの中心で、

アリサは静かに立っていた。


「……はい」


声は、少しだけ硬い。


「ギルド公認ガチャ」

「一週間検証配信、最終日です」


拍手。

歓声。

だが、どこか空気が違う。


期待よりも――

結果を見届けに来た、という人が多かった


〈最終日か〉

〈最後の最後で出たら伝説〉

〈頼む、Aでもいい〉


アリサは笑う。


「うん、私もそう思う」

「最終日だし……さすがに、何かあるよね」


自分に言い聞かせるように。



「じゃあ……いきます」


七日間。

回した総額は、もう考えない。

トータルでは明らかにマイナスだ。


ガチャが回る。


【排出:Eランク】


「……」


間を置かず、次。


【排出:Dランク】


「……まだ」


さらに。


【排出:Eランク】


笑顔が、固まる。


〈……〉

〈きっついな〉

〈最終日でもダメか〉


「だ、大丈夫!」

「最後まで回すって決めてたから!」


震えを、声で誤魔化す。


最後の一回。


「……お願い」


ガチャが回る。


【排出:Eランク】


「…………」


静寂。


アリサは、

しばらく排出口を見つめたまま動かなかった。


そして――

ゆっくり、息を吸う。


「……以上です」

「一週間検証、終了です」


明るい声。

完璧な締め。


「結果は……まあ、見ての通り!見事な爆死!」

「でも! Aが実在することは証明されてるし!」

「私が引けなかっただけ!」


〈お疲れ!〉

〈よく頑張ったよ!〉

〈十分検証になったので参考にさせてもらいます〉


配信は、拍手の中で終わった。



配信終了後。


アリサは、

ギルドホールの端で、しばらく動けずにいた。


「……私」

「何したかったんだろうな」


Aランクは出なかった。

Bランクも出なかった。


“夢はある”と示したつもりが、

自分が一番――

夢に縋っていた。


その時。


怒鳴り声が、聞こえた。



「――ふざけんな!!」


視線の先。

別のガチャ筐体の前で、

三人の冒険者が揉めていた。


「悪かったって、そんな怒るなよ」

「勝手に使ったって、どういう意味だよ!」


一人が、叫ぶ。


「……パーティー資金」

「お前、勝手に使ったのか!?」


男は、視線を逸らした。


「……A出たら」

「これまでの負債全部戻ると思って」


「思って、じゃねぇ!!」


【排出:Eランク】


筐体の無機質な表示。


「……ほら」

「またEだ」


誰かが、乾いた声で笑った。


「その金は次の遠征資金だぞ…」

「資金きえて、これじゃあ遠征行けねぇんだぞ…」


「……だって」

「初日にA出たやつ、いたじゃんか……」


拳が、飛んだ。


周囲が止めに入る。

怒号。

罵声。


ギルド職員が駆けつけ、

三人は引き離された。



アリサは、

その光景から目を離せなかった。


胸が、冷たくなる。


「……あれ」

「私も、同じだ」


配信。

検証。

理由はいくらでもつけられる。


でも――

引いている理由は、同じ。


「……当たるまで」

「やめられない」


他人の揉め事が、

急に現実味を帯びて迫ってきた。


一歩、間違えれば。


仲間。

信頼。

未来。


全部――

ガチャの前で、簡単に壊れる。



その様子を、

少し離れた場所でシンは見ていた。


アリサの背中。

そして、揉める冒険者たち。


「……そろそろ、だな」


楽しさの段階は、終わった。

今は――

怖さが、伝播し始めている。


「それでも」

「止まらないんだけどな」


ガチャは、今日も回る。


希望と絶望の区別が、

つかなくなった世界で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ